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「親父!」
珍しく平日に自宅に戻ったグレンを見て慌てふためいているメイドを蹴散らしながら、グレンは両親がディナーを取っているダイニングに踏み込んだ。
「どうしたグレン。イーリオ様とはうまくやってるか?」
「できるわけねーだろ!!」
「グレン?」
母親は優雅にグラスを傾けながら微笑んでいる。
「やあ、お母様、今日も一段と麗しいですね。父上!話があるのでちょっと書斎でお時間いただけますっかっ!」
グレンが言い終わらないうちに、親父は席を立っていそいそと書斎に向かった。
グレン的にはその背中を蹴り飛ばしてやりたい心境だった。
「あの王族って奴!フェアリーじゃねえかよ!!」
グレンは後ろ手で書斎のドアを閉めながら言った。
親父は人差し指を口の前に立てて、声を潜めた。
「お前、フェアリーってなんだか知ってるのか?」
「誰だって知ってるさ!俺をいくつだと思ってるんだ!」
「じゃあ、フェアリーとは何だ?」
「講義かよ!あまりにも美しすぎるために愛玩用に狩られて絶滅しかけている種族だろ」
「そうだ。だからフェアリーとの婚姻も売買も固く禁止されている。今、この国にはフェアリーは保護区にしかいない。あの方がフェアリーであるはずがない」
「バカか!あんなの!一目見てフェアリーって分かるだろ!」
「そうかな。確かにきれいな顔立ちだが、特別ってほどでもない」
「とぼけるな!」
「一体、何が問題なんだ?」
「だからあいつが綺麗すぎるんだよ!」
イーリオの姿は目にくっきりと焼き付いている。
色素が薄いせいか、彼の周りが光って見えたほどだった。
今日は一日講義も訓練も身が入らなかった。
バランス的には大き過ぎる瞳と唇はしっとりと潤って輝いているし、陶器のように滑らかな肌も潤っていて触ったら吸い付きそうだった。
それに得も言えない良い香りが全身から漂っていた。彼が部屋に入ってきた瞬間から、空気が変わっていた。
彼の近くの空気を嗅いだら全身に鳥肌が立って膝が震えた。
「よろしく」と力の抜けたハスキーな声で言われて、手を握られ、グレンは本当に腰が抜けて、椅子に座ったまま立ち上がれなくなってしまった。
その後の講義も訓練も全く身が入らず、何度同期生に投げ飛ばされたか分からない。
今日、彼は挨拶だけで帰ってくれたからいいものの、常に近くにいたら士官学校の訓練なんて無理に決まっている。
「俺が、士官学校を中退しても良いのか?あんなのが近くにいたらまったく勉強にならない!」
「・・・・・・グレン。このことは本当にまだ極秘なんだが。イーリオ様はただの王族じゃない。国王のご子息だ」
「・・・・・・まさか」
国王に子供はいないとされていた。突然、あんなデカい子息なんて、もちろん正室の子供じゃない。
つまり、国王がフェアリーを囲って・・・・・
グレンは水からあげられた魚のように口をパクパクさせた。
「公表したら、大変なことになるぞ・・・・・」
「近々、公表するつもりだそうだ」
「国王の弟はどうするんだ。第一継承者だったのに」
「もう知ってる。で、国王はイーリオ様を王位継承者とする前に軍人に仕立てたいらしい。長らく軍事費は縮小され続けているというのに、我々からすると願っても無いチャンスじゃないか。それで、お前を見込んでだな・・・」
「無理!むりむりむりっ!そんなこと聞いたら余計に無理だっ!要は国王の大事な王子様だろ!俺が処刑されたらどうすんだっ!」
「・・・・・なんで処刑されるんだ?」
「トボけるなっ!とにかく無理!断ってくれ」
「お前がそんなにはっきり断るなら仕方ないな。残念なんだがなあ」
親父は腕組みしてブツブツつぶやきながら部屋を出て行った。
「親父!」
珍しく平日に自宅に戻ったグレンを見て慌てふためいているメイドを蹴散らしながら、グレンは両親がディナーを取っているダイニングに踏み込んだ。
「どうしたグレン。イーリオ様とはうまくやってるか?」
「できるわけねーだろ!!」
「グレン?」
母親は優雅にグラスを傾けながら微笑んでいる。
「やあ、お母様、今日も一段と麗しいですね。父上!話があるのでちょっと書斎でお時間いただけますっかっ!」
グレンが言い終わらないうちに、親父は席を立っていそいそと書斎に向かった。
グレン的にはその背中を蹴り飛ばしてやりたい心境だった。
「あの王族って奴!フェアリーじゃねえかよ!!」
グレンは後ろ手で書斎のドアを閉めながら言った。
親父は人差し指を口の前に立てて、声を潜めた。
「お前、フェアリーってなんだか知ってるのか?」
「誰だって知ってるさ!俺をいくつだと思ってるんだ!」
「じゃあ、フェアリーとは何だ?」
「講義かよ!あまりにも美しすぎるために愛玩用に狩られて絶滅しかけている種族だろ」
「そうだ。だからフェアリーとの婚姻も売買も固く禁止されている。今、この国にはフェアリーは保護区にしかいない。あの方がフェアリーであるはずがない」
「バカか!あんなの!一目見てフェアリーって分かるだろ!」
「そうかな。確かにきれいな顔立ちだが、特別ってほどでもない」
「とぼけるな!」
「一体、何が問題なんだ?」
「だからあいつが綺麗すぎるんだよ!」
イーリオの姿は目にくっきりと焼き付いている。
色素が薄いせいか、彼の周りが光って見えたほどだった。
今日は一日講義も訓練も身が入らなかった。
バランス的には大き過ぎる瞳と唇はしっとりと潤って輝いているし、陶器のように滑らかな肌も潤っていて触ったら吸い付きそうだった。
それに得も言えない良い香りが全身から漂っていた。彼が部屋に入ってきた瞬間から、空気が変わっていた。
彼の近くの空気を嗅いだら全身に鳥肌が立って膝が震えた。
「よろしく」と力の抜けたハスキーな声で言われて、手を握られ、グレンは本当に腰が抜けて、椅子に座ったまま立ち上がれなくなってしまった。
その後の講義も訓練も全く身が入らず、何度同期生に投げ飛ばされたか分からない。
今日、彼は挨拶だけで帰ってくれたからいいものの、常に近くにいたら士官学校の訓練なんて無理に決まっている。
「俺が、士官学校を中退しても良いのか?あんなのが近くにいたらまったく勉強にならない!」
「・・・・・・グレン。このことは本当にまだ極秘なんだが。イーリオ様はただの王族じゃない。国王のご子息だ」
「・・・・・・まさか」
国王に子供はいないとされていた。突然、あんなデカい子息なんて、もちろん正室の子供じゃない。
つまり、国王がフェアリーを囲って・・・・・
グレンは水からあげられた魚のように口をパクパクさせた。
「公表したら、大変なことになるぞ・・・・・」
「近々、公表するつもりだそうだ」
「国王の弟はどうするんだ。第一継承者だったのに」
「もう知ってる。で、国王はイーリオ様を王位継承者とする前に軍人に仕立てたいらしい。長らく軍事費は縮小され続けているというのに、我々からすると願っても無いチャンスじゃないか。それで、お前を見込んでだな・・・」
「無理!むりむりむりっ!そんなこと聞いたら余計に無理だっ!要は国王の大事な王子様だろ!俺が処刑されたらどうすんだっ!」
「・・・・・なんで処刑されるんだ?」
「トボけるなっ!とにかく無理!断ってくれ」
「お前がそんなにはっきり断るなら仕方ないな。残念なんだがなあ」
親父は腕組みしてブツブツつぶやきながら部屋を出て行った。
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