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第一章
13話 遠い世界のキミ
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「あー!!眠いっ!」
食堂であかりは叫んでいた。
「サポート班の授業、大変だったみたいだね」
隣で今日のおすすめメニューであるオムライスを食べていたふうがあかりを横目で見る。
食堂の席を取って待っていたあかりの元についさっき二人が来て一緒にご飯を食べていた。
「そうなのっ!ずーっとエジャスター達が今までこなしてきた作戦の記録のビデオを見させられて……。見ては気がついたことを話し合う、見ては話し合う……の繰り返し!さすがに目も頭もクタクタ~」
疲れ切ったという主張とは裏腹に、あかりはデザートのケーキ、プリンをそれぞれ2個づつものすごい勢いで頬張っていた。
「そんなに食べて大丈夫なの?太るよ?」
ふう越しにあかりのそんな様子を見ていた、両手で水が入っているコップを包んでいるきいが呆れ顔で言う。
「大丈夫だって!!たくさん頭使ったから糖分補給しないと死んじゃうからっ!……ん、うまっ!」
「にしても食べすぎでしょ……」
「だね」
きいとふうは美味しそうに食べているあかりを見て顔を見合わせて苦笑した。
「きいは食べないの?」
ふうがちょうど水を飲み干したきいに問いかけた。
「え、ボク?」
「うん。水だけしか飲んでないよね?」
ふうが指摘したようにきいの目の前には既に空になったコップしか置かれていない。
「実はボク、ダイエット中なんだ。今日は大して動いてないし昼はちゃんと食べたから、夜はいいかなって」
はぐらかすように笑うきいにふうは自分のオムライスを一口分乗せたスプーンを差し出した。
「少しだけでも食べたほうがいいよ。倒れたりしたら大変だし。ちょっとくらい食べたって、きいの可愛さは変わらないーでしょ?」
きいは驚いたように目を見開いた。じっとスプーンを見つめた後、頬を緩めるとぱくっと差し出されたオムライスを口に入れた。
「……うん。ありがとう」
「そういえば、ふう達戦闘班は今日何したの?」
あかりがプリンを口に頬張りながら聞く。
「私達はひたすら戦闘をしたよ。一対一の戦いをいろんな組み合わせで何回も」
「へ~。戦闘班って確かひょーがくんとかるまくんだったよね?大丈夫だったの?ひょーがくんは分かんないけど、かるまくんって結構気性荒そうだけどっ」
「確かに。この前のやつ見た感じ手加減って言葉を知らなそうだったね」
「今回は氷野くんとしか戦ってないんだよね」
「そっかー。気をつけてね?ふうの顔に傷でもついたら大変だからっ!」
あかりはふうの顔を包み込んだ。
「ありがとう」
ふうは微笑んだ。
「さてさてっ!第二回女子会を開催したいところだけど、疲れたし明日も疲れるだろうから今日はちゃっちゃと風呂に入って寝ようかな~」
無事にすべてのデザートをたいらげたあかりは背伸びをする。
「あかり、私は後で入るから先に行ってていいよ」
「ボクもゆっくり部屋に向かうから気にしないで」
ふうときいの言葉にあかりは頷いて立ち上がり、食堂を後にした。
◇◇◇
「ふう。今日は、ありがとう」
あかりが去った後、食器を片付けるふうに付き合っていたきいは言う。
「気にしないで」
「あのままだったらボク、きっとあいつら殴ってた。先生に見つかったらひょーくん達以上の罰を受けてたかもしれない。それに……あの服が台無しになっちゃうところだった」
「……うん。気持ちは分かるけど、でも止められて良かった」
ふうは少し困ったようにきいに笑いかけた。
二人は並んでゆっくりと歩きながら寮へと向かう。
あかりときいがふうに話しかけにいった後、三人で行動を共にすることが多くなった。
きいとふうの二人になると途端に静かになる。きいも基本的にはお喋りな方ではあるが、あかりはそれ以上のお喋りな上に声が大きいのであかりがいると、とにかく騒がしいのだ。
「ふうも買い物とかしてたの?」
「そんなところかな」
「どうしてボクに気が付いたの?細い路地にいたし、普通は気付かない……よね?」
疑問だった。奴らはわざと人目につかない暗くて狭い路地裏にきいを引っ張り込んだ。それなのにふうはそこにいたきいをみつけてくれた
ふうは少しの沈黙の後、静かに呟いた。
「気を付けてるから」
「え?」
きいはふうの横顔を見る。
「そういうところって犯罪とか起きやすいから、普段から気を付けてみてるの。帰る途中に覗いていたら、たまたまきいがいたって感じかな」
ーああ、キミはもう既にヒーローなんだね。ボクなんかとは……
ふうの横顔は凄く頼もしかった。その瞳は、揺るがない意志を持って真っ直ぐに何かを見つめていた。
きいにはその瞳が眩しくて、目を逸らした。
「ねえ、ふう」
「ん?」
問い掛ければ、優しい声が返ってくる。
「……聞いてもいいかな?キミがエジャスターをーヒーローを目指した理由を」
後で聞くと言ったものの、聞けず次舞だった。
「私はー」
その答えを聞いて、きいは微笑む。
「そっか。何かまだふうと出会って間もないけど……何だかキミらしい理由だねって言えるよ。ボク、凄く素敵だと思う」
「そう、かな?ありがとう」
ふうははにかむように笑った。
ー本当に、眩しいな。
「あ、じゃあボクはここで」
「うん。また明日」
「また、明日」
ふうが手を振ってきいと別れる。
「きっと一生、隣には立てないだろうな」
寂しそうに笑いながらきいは階段をあがっていくふうの背中を見つめ続けた。
食堂であかりは叫んでいた。
「サポート班の授業、大変だったみたいだね」
隣で今日のおすすめメニューであるオムライスを食べていたふうがあかりを横目で見る。
食堂の席を取って待っていたあかりの元についさっき二人が来て一緒にご飯を食べていた。
「そうなのっ!ずーっとエジャスター達が今までこなしてきた作戦の記録のビデオを見させられて……。見ては気がついたことを話し合う、見ては話し合う……の繰り返し!さすがに目も頭もクタクタ~」
疲れ切ったという主張とは裏腹に、あかりはデザートのケーキ、プリンをそれぞれ2個づつものすごい勢いで頬張っていた。
「そんなに食べて大丈夫なの?太るよ?」
ふう越しにあかりのそんな様子を見ていた、両手で水が入っているコップを包んでいるきいが呆れ顔で言う。
「大丈夫だって!!たくさん頭使ったから糖分補給しないと死んじゃうからっ!……ん、うまっ!」
「にしても食べすぎでしょ……」
「だね」
きいとふうは美味しそうに食べているあかりを見て顔を見合わせて苦笑した。
「きいは食べないの?」
ふうがちょうど水を飲み干したきいに問いかけた。
「え、ボク?」
「うん。水だけしか飲んでないよね?」
ふうが指摘したようにきいの目の前には既に空になったコップしか置かれていない。
「実はボク、ダイエット中なんだ。今日は大して動いてないし昼はちゃんと食べたから、夜はいいかなって」
はぐらかすように笑うきいにふうは自分のオムライスを一口分乗せたスプーンを差し出した。
「少しだけでも食べたほうがいいよ。倒れたりしたら大変だし。ちょっとくらい食べたって、きいの可愛さは変わらないーでしょ?」
きいは驚いたように目を見開いた。じっとスプーンを見つめた後、頬を緩めるとぱくっと差し出されたオムライスを口に入れた。
「……うん。ありがとう」
「そういえば、ふう達戦闘班は今日何したの?」
あかりがプリンを口に頬張りながら聞く。
「私達はひたすら戦闘をしたよ。一対一の戦いをいろんな組み合わせで何回も」
「へ~。戦闘班って確かひょーがくんとかるまくんだったよね?大丈夫だったの?ひょーがくんは分かんないけど、かるまくんって結構気性荒そうだけどっ」
「確かに。この前のやつ見た感じ手加減って言葉を知らなそうだったね」
「今回は氷野くんとしか戦ってないんだよね」
「そっかー。気をつけてね?ふうの顔に傷でもついたら大変だからっ!」
あかりはふうの顔を包み込んだ。
「ありがとう」
ふうは微笑んだ。
「さてさてっ!第二回女子会を開催したいところだけど、疲れたし明日も疲れるだろうから今日はちゃっちゃと風呂に入って寝ようかな~」
無事にすべてのデザートをたいらげたあかりは背伸びをする。
「あかり、私は後で入るから先に行ってていいよ」
「ボクもゆっくり部屋に向かうから気にしないで」
ふうときいの言葉にあかりは頷いて立ち上がり、食堂を後にした。
◇◇◇
「ふう。今日は、ありがとう」
あかりが去った後、食器を片付けるふうに付き合っていたきいは言う。
「気にしないで」
「あのままだったらボク、きっとあいつら殴ってた。先生に見つかったらひょーくん達以上の罰を受けてたかもしれない。それに……あの服が台無しになっちゃうところだった」
「……うん。気持ちは分かるけど、でも止められて良かった」
ふうは少し困ったようにきいに笑いかけた。
二人は並んでゆっくりと歩きながら寮へと向かう。
あかりときいがふうに話しかけにいった後、三人で行動を共にすることが多くなった。
きいとふうの二人になると途端に静かになる。きいも基本的にはお喋りな方ではあるが、あかりはそれ以上のお喋りな上に声が大きいのであかりがいると、とにかく騒がしいのだ。
「ふうも買い物とかしてたの?」
「そんなところかな」
「どうしてボクに気が付いたの?細い路地にいたし、普通は気付かない……よね?」
疑問だった。奴らはわざと人目につかない暗くて狭い路地裏にきいを引っ張り込んだ。それなのにふうはそこにいたきいをみつけてくれた
ふうは少しの沈黙の後、静かに呟いた。
「気を付けてるから」
「え?」
きいはふうの横顔を見る。
「そういうところって犯罪とか起きやすいから、普段から気を付けてみてるの。帰る途中に覗いていたら、たまたまきいがいたって感じかな」
ーああ、キミはもう既にヒーローなんだね。ボクなんかとは……
ふうの横顔は凄く頼もしかった。その瞳は、揺るがない意志を持って真っ直ぐに何かを見つめていた。
きいにはその瞳が眩しくて、目を逸らした。
「ねえ、ふう」
「ん?」
問い掛ければ、優しい声が返ってくる。
「……聞いてもいいかな?キミがエジャスターをーヒーローを目指した理由を」
後で聞くと言ったものの、聞けず次舞だった。
「私はー」
その答えを聞いて、きいは微笑む。
「そっか。何かまだふうと出会って間もないけど……何だかキミらしい理由だねって言えるよ。ボク、凄く素敵だと思う」
「そう、かな?ありがとう」
ふうははにかむように笑った。
ー本当に、眩しいな。
「あ、じゃあボクはここで」
「うん。また明日」
「また、明日」
ふうが手を振ってきいと別れる。
「きっと一生、隣には立てないだろうな」
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