前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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4章

106話:集結へ

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 宿に一度戻ってからギルドに向かうと九兵衛さんとリエンダとアエロリットさんが馬車を用意して待っていた。

 「早かったね~」
 「立花さんこっちは準備万端ですよ~」

 私達がバーに行っている間にギルドに行き馬車を手配してもらっていた。

 「ありがとうアエロリットさん」
 「いえいえ、立花さん達には大役がかかってますからこれぐらいは当然です」

 九兵衛さんの腹心の一人だけあってある程度のことは把握しているようだ。

 「また近いうちにこの街に来るからその時はよろしくね」
 「はい、ぜひお待ちしておりますね。その時は胸を借りるつもりでぜひお手合わせお願いします」
 「ええ、いいわ。

 アエロリットに挨拶を済ませ馬車に乗りこむ。

 「それじゃあ首都ファラモンドまでだね~」


 ◇


 馬車に揺られること一日と数時間首都ファラモンドの手前までたどり着いた。途中は特に平和に進み検問も襲撃もなかったので問題なく着くことができた。

 「ここが首都ファラモンドね」

 街を囲うようにバリアのようなものが貼られているが外から見ても大都市であることがわかる、流石は大国の首都だ。

 「これがインフィニティシールドね……」

 インフィニティシールドとは第十位階魔法であるが連邦の基礎を作った四戦姫フォースヴァルキリーの一角であるミッディ・パールキャップが残した秘術を用いて発動されるらしく、都市全体を長期間覆うのに上級魔導士三百人分の魔力を使用したらしい。効果は最強の防御で二十柱クラスでも破壊には少し骨が折れるのでこんな大規模になれば容易にはいかない。

 「さてヘクターに変身してと……」

 ヘクターへと変身し馬車を降りる。

 「さて里菜行きましょうか」
 「うん」
 「それじゃあちょっと行ってくるね」 
 「了解~」

 一部インフィニティシールドを一時的に解除できる部分がありそこが関係者の出入り口になっているらしい。本来ならこんな融通利かせてのシールドの発動は難しいがミッディが作り上げた秘術がこの都市全体に張り巡らされていることでそれを可能にしている。

 「ここよ」

 何やら厳重そうな検問所の前だ。兵士がたくさん配置しており不法侵入でバレずに侵入するのは難しいだろう。
 それだけ厳重だと言う事だ。

 「隠密部隊は機密行動が多いだけに検問所での出入りは比較的自由だけど突っ込まれたら議長に伝えることがあると言えば大丈夫なはず」
 「わかったわ」

 検問所の前に行き入ると兵士達が声をかけてくる。

 「これはヘクター殿」
 「ごくろう、ちょっと用があり帰還した」
 「わかりました、連れの騎士三人はいらっしゃらない様ですが?」

 当然突っ込まれるか……だがそれは予想済み。

 「別任務で今はターウィの街だ。今活発になっている獣人族共の動きを見張る必要があってな」
 「なるほど……すぐに開けるので少々お待ちください」

 検問所の門を抜けると更に門がありそこから先を覆うようにインフィニティシールドが張り巡らされている。

これぐらいの規模だと私も展開に数十秒かかってしまうわね。

 「こんな感じなのね」
 「うん、他の部隊はもっと厳しいんだよ」

 里菜とヒソヒソと会話すること数分、二つ目の門が開きその部分だけシールドが解除される。

 「どうぞ~」

 里菜と共に首都ファラモンドへと潜入した。首都の中は殺伐としていて軍人がうろついており一般人の活気もない。厳戒態勢と言ったところだろう。

 「立ちゃんどこに行くつもり?」
 「まずは迷宮の手前まで行くわ。その前に裏の通りに行って一般人に変装しましょう」

 裏通りに行き一般人へと変装する。流石に里菜が単独で動いていたり日本人の容姿をしていると不審がられてしまうからだ。

 「これで迷宮の前まで行ったら任務完了よ」
 「うん」

 人混みの中に紛れ込み迷宮の前へと向かった。


 ◇


 魔大陸に一人向かったロードリオンは魔大陸中央に位置する炭鉱都市ファピノでレダ・スパイラル達との再会を果たしていた。

 「やっと見つけたよ」
 「これはこれはリオン殿じゃありませんか。久しぶりですね」

 レダはリオンが来た事で態度を軟化させるが後ろの二人の顔の表情は険しい。

 「神代もアレキサンドラも久しぶりだね。随分と機嫌が悪そうだけど何かあったのかな?」
 「最近魔王軍抜けてからちょっとしたちょっかいがあってピリピリしているの。今魔大陸を一度離れようとしている所だから変に騒ぎを起こさないよう二人を抑えているせいよ」
 「それは大変だね、任務ご苦労様。二人も久しぶりだね」

 リオンが笑顔を見せるとレダ同様二人も無理やり笑い顔を作って会釈をする。

 「それで一体何の用ですか?」
 「フッ、それは具もんじゃないのか?連れ戻しに来たんだ、戦いの準備だ」
 「なるほど……でもまだ私はあの時のことをシュウから聞いていない。シュウはもう記憶を完全に取り戻したのかしら?」

 レダはあの時の事にずっと固執していた。それだけ彼女は仲間を大切に想っている証であり仲間を犠牲にした勝利など望んでいないからだ。

 「そのことだけど僕はあの時の事をアファームドの奴から眠っている間に聞いたよ」

 それを聞いたレダは表情を変え怪訝な顔になる。

 「それは信用できるのかしら?」
 「ああ、信用していいよ」

 レダはそれを聞くと何かを悟ったのだろう、納得したのか頷く。

 「わかったわ……」
 「レダさん!」
 「姉さん!」

 レイチェルと椿が声を荒げる。

 「シュウが自分から仲間を見殺しにする訳がないのはあなた達もわかっているはずよ!特に椿は付き合いが長いしよりわかっているはず」

 椿とレイチェルは口を紡ぐ。

 「ただ私は本人からその口を聞きたいわ。だから今は言わないでほしい」
 「ああ、了解したよ。それじゃあ合流してくれるのかい?」

 レダはコクンと頷く。

 「神代もアレクサンドラもそれで大丈夫かい?」

 二人も頷く、複雑な表情をしているもののレダには従うと言った感じの様子だ。

 「真相は三人共を聞けば納得のできる内容だよ。だから心配しないでほしい」
 「大丈夫よリオン殿、私達はシュウに理由を聞きたかっただけで敵意はないわ。シュウは今も昔も大事な仲間だもの」
 「私も同じよ。付き合い長いし」
 「私はただ納得のいく理由を本人の口から説明してくれればそれでいいです。大事な仲間ですから……」

 レダは微笑む。リオンは騎士団の絆は健在だというのを垣間見る事ができたのか安堵する。

 「よかった……ところでシンと直樹は?」
 「直樹は一人でギャランとプルームへ向かったと思うわ。シンはファーガスに向かったわ」
 「ふむ、ならもう回収するのは三人で大丈夫そうだね」

 僕の任務は達成、これで騎士団の再集結と戦争に向けての準備は整いそうだ。

 「それじゃあ早速ギャラントプルームに戻ろうか」
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