上 下
107 / 109
4章

106話:集結へ

しおりを挟む
 宿に一度戻ってからギルドに向かうと九兵衛さんとリエンダとアエロリットさんが馬車を用意して待っていた。

 「早かったね~」
 「立花さんこっちは準備万端ですよ~」

 私達がバーに行っている間にギルドに行き馬車を手配してもらっていた。

 「ありがとうアエロリットさん」
 「いえいえ、立花さん達には大役がかかってますからこれぐらいは当然です」

 九兵衛さんの腹心の一人だけあってある程度のことは把握しているようだ。

 「また近いうちにこの街に来るからその時はよろしくね」
 「はい、ぜひお待ちしておりますね。その時は胸を借りるつもりでぜひお手合わせお願いします」
 「ええ、いいわ。

 アエロリットに挨拶を済ませ馬車に乗りこむ。

 「それじゃあ首都ファラモンドまでだね~」


 ◇


 馬車に揺られること一日と数時間首都ファラモンドの手前までたどり着いた。途中は特に平和に進み検問も襲撃もなかったので問題なく着くことができた。

 「ここが首都ファラモンドね」

 街を囲うようにバリアのようなものが貼られているが外から見ても大都市であることがわかる、流石は大国の首都だ。

 「これがインフィニティシールドね……」

 インフィニティシールドとは第十位階魔法であるが連邦の基礎を作った四戦姫フォースヴァルキリーの一角であるミッディ・パールキャップが残した秘術を用いて発動されるらしく、都市全体を長期間覆うのに上級魔導士三百人分の魔力を使用したらしい。効果は最強の防御で二十柱クラスでも破壊には少し骨が折れるのでこんな大規模になれば容易にはいかない。

 「さてヘクターに変身してと……」

 ヘクターへと変身し馬車を降りる。

 「さて里菜行きましょうか」
 「うん」
 「それじゃあちょっと行ってくるね」 
 「了解~」

 一部インフィニティシールドを一時的に解除できる部分がありそこが関係者の出入り口になっているらしい。本来ならこんな融通利かせてのシールドの発動は難しいがミッディが作り上げた秘術がこの都市全体に張り巡らされていることでそれを可能にしている。

 「ここよ」

 何やら厳重そうな検問所の前だ。兵士がたくさん配置しており不法侵入でバレずに侵入するのは難しいだろう。
 それだけ厳重だと言う事だ。

 「隠密部隊は機密行動が多いだけに検問所での出入りは比較的自由だけど突っ込まれたら議長に伝えることがあると言えば大丈夫なはず」
 「わかったわ」

 検問所の前に行き入ると兵士達が声をかけてくる。

 「これはヘクター殿」
 「ごくろう、ちょっと用があり帰還した」
 「わかりました、連れの騎士三人はいらっしゃらない様ですが?」

 当然突っ込まれるか……だがそれは予想済み。

 「別任務で今はターウィの街だ。今活発になっている獣人族共の動きを見張る必要があってな」
 「なるほど……すぐに開けるので少々お待ちください」

 検問所の門を抜けると更に門がありそこから先を覆うようにインフィニティシールドが張り巡らされている。

これぐらいの規模だと私も展開に数十秒かかってしまうわね。

 「こんな感じなのね」
 「うん、他の部隊はもっと厳しいんだよ」

 里菜とヒソヒソと会話すること数分、二つ目の門が開きその部分だけシールドが解除される。

 「どうぞ~」

 里菜と共に首都ファラモンドへと潜入した。首都の中は殺伐としていて軍人がうろついており一般人の活気もない。厳戒態勢と言ったところだろう。

 「立ちゃんどこに行くつもり?」
 「まずは迷宮の手前まで行くわ。その前に裏の通りに行って一般人に変装しましょう」

 裏通りに行き一般人へと変装する。流石に里菜が単独で動いていたり日本人の容姿をしていると不審がられてしまうからだ。

 「これで迷宮の前まで行ったら任務完了よ」
 「うん」

 人混みの中に紛れ込み迷宮の前へと向かった。


 ◇


 魔大陸に一人向かったロードリオンは魔大陸中央に位置する炭鉱都市ファピノでレダ・スパイラル達との再会を果たしていた。

 「やっと見つけたよ」
 「これはこれはリオン殿じゃありませんか。久しぶりですね」

 レダはリオンが来た事で態度を軟化させるが後ろの二人の顔の表情は険しい。

 「神代もアレキサンドラも久しぶりだね。随分と機嫌が悪そうだけど何かあったのかな?」
 「最近魔王軍抜けてからちょっとしたちょっかいがあってピリピリしているの。今魔大陸を一度離れようとしている所だから変に騒ぎを起こさないよう二人を抑えているせいよ」
 「それは大変だね、任務ご苦労様。二人も久しぶりだね」

 リオンが笑顔を見せるとレダ同様二人も無理やり笑い顔を作って会釈をする。

 「それで一体何の用ですか?」
 「フッ、それは具もんじゃないのか?連れ戻しに来たんだ、戦いの準備だ」
 「なるほど……でもまだ私はあの時のことをシュウから聞いていない。シュウはもう記憶を完全に取り戻したのかしら?」

 レダはあの時の事にずっと固執していた。それだけ彼女は仲間を大切に想っている証であり仲間を犠牲にした勝利など望んでいないからだ。

 「そのことだけど僕はあの時の事をアファームドの奴から眠っている間に聞いたよ」

 それを聞いたレダは表情を変え怪訝な顔になる。

 「それは信用できるのかしら?」
 「ああ、信用していいよ」

 レダはそれを聞くと何かを悟ったのだろう、納得したのか頷く。

 「わかったわ……」
 「レダさん!」
 「姉さん!」

 レイチェルと椿が声を荒げる。

 「シュウが自分から仲間を見殺しにする訳がないのはあなた達もわかっているはずよ!特に椿は付き合いが長いしよりわかっているはず」

 椿とレイチェルは口を紡ぐ。

 「ただ私は本人からその口を聞きたいわ。だから今は言わないでほしい」
 「ああ、了解したよ。それじゃあ合流してくれるのかい?」

 レダはコクンと頷く。

 「神代もアレクサンドラもそれで大丈夫かい?」

 二人も頷く、複雑な表情をしているもののレダには従うと言った感じの様子だ。

 「真相は三人共を聞けば納得のできる内容だよ。だから心配しないでほしい」
 「大丈夫よリオン殿、私達はシュウに理由を聞きたかっただけで敵意はないわ。シュウは今も昔も大事な仲間だもの」
 「私も同じよ。付き合い長いし」
 「私はただ納得のいく理由を本人の口から説明してくれればそれでいいです。大事な仲間ですから……」

 レダは微笑む。リオンは騎士団の絆は健在だというのを垣間見る事ができたのか安堵する。

 「よかった……ところでシンと直樹は?」
 「直樹は一人でギャランとプルームへ向かったと思うわ。シンはファーガスに向かったわ」
 「ふむ、ならもう回収するのは三人で大丈夫そうだね」

 僕の任務は達成、これで騎士団の再集結と戦争に向けての準備は整いそうだ。

 「それじゃあ早速ギャラントプルームに戻ろうか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

処理中です...