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4章

100話:タウィーの街

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 ファラリス連邦の首都ファラモンドに向けて向かっているのは立花、九兵衛、リエンダの三人だ。
 コートマーシャルの街にてリエンダを奴隷から解放し冒険者にしてから数日、馬車で旅をしていた。

 「九ちゃんあ~ん」

 馬車の中で食事をするといつもこんな感じだ、ギャラントプルームに戻った時のザルカヴァの顔が目に浮かぶ。

 「はぁ~」

 いい加減うんざりしている、早いとこ任務を終わらせて周平の元へ行きたいと立花は考えていた。

 「結局首都ファラモンドの立ち入り許可はおりませんでしたね」
 「残念だね……暴れた勇者の国外逃亡を確認できたみたいだけどインフィニティシールドの解除に時間がかかるみたいだからね~」

 連邦としてはインフィニティシールドを自由に解除できないからなんてかっこ悪いことを言えないものだから体裁を保つために許可を出さないのだ。

 「想定内だし問題ないわ。しかし獣人族に対しての扱いはどうにかならないのかしらね……」

 途中で通った街ではもっとひどい扱いの受けている地域もあった、

 「そうだね……今は耐えるしかないのが悔しい……」

 九兵衛さんも苦虫を嚙み潰したよう表情だ。

 奴隷とはいえ獣人族に対しての街中で暴行したり首輪つけて犬みたいに連れたりとそれらを見て破壊衝動に駆られてしまった。それを我慢してスルーしなくてはいけない事に対しても苛立ちを隠せない。

 「あなたよくあそこまで一人で来れたわね、ゲスな貴族に捕まる可能性もあったんじゃないかしら?」
 「他人の奴隷に手をだせば重い処罰になります。奴隷を持つものはそれなりに財力があったり社会的地位が高いですから……」

 ヴィエナは険しい表情だ、主人によってこうも差異があるわけだが、他の奴隷のことを考えると自分の主人がいい人であったことを素直にそのことを喜べないようだ。

 「首都まではあとどれぐらいかしら?」
 「この後タウィーという街につくからそこから一日あれば行けるはずだよ~」

 タウィーには冒険者ギルドがあり九兵衛さんはそこに顔をだす予定と聞いている。

 「どうやって首都ファラモンドに入るかね……」
 「立花ちゃんならインフィニティシールドを破るのは造作もないよね?」
 「バレないように一部だけ破壊して潜入するのは少し骨が折れるかもしれないわ……」

 現在の警備状況がどうなっているかで難易度が変わってくる。

 「まぁ最悪入るとこ見られても顔さえ見られなければ問題ないよ~」

 九兵衛さんは楽観的だが、侵入者に正面突破されるという事例が表にでればさらに警戒を強められて勇者達の遠征に遅れが出てしまう。
 ファラモンドでの迷宮攻略もあるしなるべく手薄になってくれていた方が都合がいいのだ。

 「手はいくつか考えているから大丈夫よ」

 ◇

 夕方ごろタウィーに到着した。冒険者ギルドのある街だからなのか今まで通った街の中では一番活気があるように思えた。

 「さて宿だけどここのギルドマスターが手配してくれてるから安心していいよ~」

 そういうところは冒険者ギルドの総長といった感じで流石ね。

 「はいはいー私九ちゃんと同じ部屋がいいで~す」

 リエンダは顔を赤くして言う。

 「フフッ、私は構わないわ」

 リエンダの恋路は応援してやるべきだろう。ギャラントプルームに戻ったらザルカヴァもいるし独占してイチャつくことはできない。ここまで九兵衛さんにラブなのも珍しいしここは素直に背中を押してあげるのがいいだろう。

 「姉さんありがとう~」

 ちなみに私はあの日から姉さんと言われている。人懐っこい性格なのか私にもすぐになついてくれた。

 「フフッ、九兵衛さんはどうするの?」
 「俺の肩を枕にして欲しいとこなんだけどね……」

 九兵衛さんはばつが悪そうな表情だ。

 「問題ありな感じかしら?」
 「九ちゃん?」
 「ここの総長は女でさ……何というか俺のことよく知ってるんだよね~ははっ……」

 九兵衛さんの顔が暗い……

 「まさか九ちゃんその人に手を出してるんじゃ?」
 「有り得るわね……」

 リエンダと二人で懐疑的な目で見る。やはりダメ男っぷりは健在か。

 「そういうことは一切ないって!彼女は真面目な上に恋愛面は疎くてね……しかも考え方がプラトニック」

 ああ……九兵衛さんの苦手なタイプか。

 「なるほど。つまりその人の手前男女一緒はNGな感じね」
 「そういうことだね。三人って言ってあるけど彼女はきっと一人一部屋でとっているだろうし」

 それを聞いたヴィエナは落胆する、昨日も同じベッドで寝ていたしすっかり押しかけ妻状態なのだ。

 「とりあえずギルドに行きましょうか」

 タウィーの街に入ってすぐギルドに向かった。


 ◇


 「よっ、久しぶりだね~アエロリット」
 「お久しぶりです総長」

 ギルドに入ると私達三人は丁重に迎えられ、アエロリットと言われた女は丁寧に頭を下げる。金髪ポニーテールのいかにもお嬢様といった感じだが、凛としたその姿は力強さを感じここのギルドマスターだと言われても納得できる。

 「こっちは俺の友達の奥さんで夫婦ともに俺と同等のランクを与えている」
 「話は聞いております。なんでも総長と同等の力を持った古くからの友人がギルドに入ったとか」
 「神明・フォルモサ・立花よ、よろしくね」

 手を前に出すと彼女は私の手を握り握手を交わす。

 「アエロリット・ベンブラッシュです、この街のギルドマスターをやっていますので以後お見知りおきを」

 なかなかに力強い手をしている、魔力量も高そうだし魔法剣士か何かだろう。

 「それでこっちはリエンダ・エンペリー、こっちの話はギルドマスター室がいいかな」
 「わかりました」

 九兵衛さんがそう言うとアエロリットは察したのか私達をギルドマスター室に案内した。ソファーに腰掛けると九兵衛さんはリエンダの話をし、これまでの経緯を説明した。

 「なるほど……そんなことがあったのですね」
 「ああ、それで無理やり冒険者にしたのさ」
 「事情は把握しました。九兵衛さんが不在の時に彼女の所有権を主張する者が現れたとしても冒険者としての身分を盾に守るのでご安心を」

 アエロリットは微笑みながら言う。

 「ああ、よろしく頼む。今はいいけど今後彼女が一人でこの国に戻ってきた時とかにそういう面倒に巻き込まれる可能性が無きにしも非ずだからね」
 「ええ、奴隷制度も早くなんとかしたいとこですね……」

 アエロリットは険しい表情だ。奴隷制度は反対のようだ。

 「ああ、いずれ何とかするよ。それと今日泊まる部屋はどうなっている?」
 「ちゃんと三つ部屋をとっていますよ」
 「そうか……ご苦労様だね~」

 内心で少し残念がっているに違いない。事前に聞いた通りの人物だというのは間違いないわね。

 「部屋は今すぐ案内します、それとあなた……」

 アエロリットは怪訝そうな顔を見せる。

 「事情が事情だし疑うわけじゃないけどギルドに入る為に総長に色目を使うような真似はしていないわよね?」
 「へぇっ?そんなことは決してないですよ」

 リエンダは少し心辺りがあるのか冷汗がでる。まぁ色目は使っているがギルドに入る為に使っているわけではないわね。

 「昔総長は反ギルドの女に色目を使われてギルドの内部を探られそうになったことがあるのよね~連邦内には多いし……」

 アエロリットは不安気な表情で言う。

 「九兵衛さん?」 
 「いや~昔ギルド内でそういうことをしようとした不届き者がいてね~ハハッ」

 九兵衛さんは顔が笑っているものの冷汗をかいていて口を濁している。

 「アエロリットさん?」
 「ごほんっ、総長が独断でいれた綺麗な美女がいたのですが、実はダーレー教団の回し者で総長はその者を自身の近しいとこに置いたら、ここをかぎ回されるは命を狙われるはと散々な目にあったのです!それも二人いれたから二回もビックリ」

 アエロリットは淡々と顔色を変えずに言う。もちろん九兵衛さんを睨み付けながらだ。

 「いや~そんなこともあったね~」

 ヘラヘラ笑いながら誤魔化しているが、冷汗をかいているのは見ればわかった……

 「なるほど……九兵衛さんらしいわね……あなたが無事でよかったわ」
 「まったくです。それでこちらとしてもそんなことが二度とないようにと、ここいらを拠点とする新しい女性冒険者に関しては特に注意しているんです」

 エロ親父には困ったものである。ただよりによって教団の手の者が入り込んだというのは他にもスパイがいる可能性も考えないといけないだろう。

 「事情は理解したわ。でもリエンダはその点は大丈夫よ」

 状況から見てあれは偶然の成り行きでの出来事だ。それに獣人族の奴隷が教団の回し者という可能性はまずないだろう。

 「私も今回は大丈夫だとは思ってますが前のことがあるのでつい……」
 「そうそう今回は大丈夫だ。安心しなさい」

 九兵衛さんにそんなことを言われても説得力に欠けるだけね……

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