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4章
92話:雪の迷い
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クラス会議の直後、雪と美里はクラスメイトとどういう風に別れるかを考えていた。周平との道を行く為にはどこかで別れなければいけないので、そこをどうするかで悩んでいた。
「う~ん……」
「思いつかないわね……イライラしてきたからちょっとジョギングしてくるね」
「ハハッ、了解~」
美里が部屋から出て行ったので雪も散歩をしに外に出た。
「ここも見慣れた風景になったな~」
城をでて見慣れた街を歩く。最近では街の人も勇者に対して挨拶してくれるようになっていた。
「こんな平和な所で過ごしていて戦いなんかできるのだろうか……」
戦争となれば人を殺めなくてはいけない可能性……果たしてそんなことがみんなにできるのだろうか……そんな事が頭によぎる。
「私もこの世界にいる間はその覚悟は決めないといけないのかな……」
王都の外れの方にある眺めのいい丘は私のお気にいりの場所に行く。雪はこの場所で周平、陣、美里の四人でのんびりしたいと来る度に思っていた。
「そんな日は果たしていつ来るのか……」
少し憂鬱になる。この先のことを考えたらやはり不安だからだろう……
「随分と暗い表情だな」
「わ、私ですか?」
丘で座っている私に突然話しかけて来たのは見知らぬ男だった。雪は咄嗟に黒い髪に金のメッシュがかかっているその風貌を見て、ヴィジュアル系バンドの人を思い浮かべる。
「迷っているな……不安と焦り、そして恐怖か」
「わかるんですか?」
男は雪の目を見て私の心を見透かしたように言う。
「目を見ればだいたいのことはわかるさ。お前さんは噂に聞く召喚された勇者の一人か?」
「はい、この後の魔大陸遠征があるんですが私に戦争に参加する度胸はないので……」
「そうだな、お前からは血の匂いもしない。戦争は人を殺さなければ勝てない……今のお前には無理だろう」
雪はこの男の発言から人を殺めたことがあるのだと察した。好奇心から勇者カードを使い、相手のステータスを覗き見ようとする。
?????
種族:???(?????)
レベルあ9□
職業:あ◇●▼て■
攻撃:じ*?@□
防御:け*●▼?
魔法攻撃:@*!れ◆
魔法防御:ふ●●◇△
素早さ:●く@◇△
魔力:□あ@▼◆
固有スキル:?????
異能:?????
称号:あ*@□●
これはいったい……
ロックされぼかしが入っているのか名前も知ることが出来ない。そのせいか、つい同様してしまう。
「覗き見はあまり関心しないぞ」
雪は見抜かれていた。
「ごめんなさい。あなたを見て只者じゃないって思ったからつい……」
「まぁわからなくもないさ。俺はロックをかけているからな」
男はドヤ顔で言う。
「それはあなたの能力ですか?」
「いいや、これは俺のスキルの加護の一端にすぎん。お前ぐらいの能力では見ることはかなわん」
雪はそう言われ少し落ち込んだ表情を見せる。それなりに腕を磨いてきただけに自信を覚えてきてたからだ。
「フフッ、あなたに少し興味がでました。私は月島雪、あなたは?」
「私はそうだな……シン・アークトライアル・ゲイクルセイダーとでも言っておこうか」
「随分と長い名前ですね。シンさんと呼ばせてください」
「ああ、私は雪と呼ぶことにするよ」
この人なら自分の知らないことを教えてくれるかもしれないと考えた雪はシンに質問する。
「人を初めて殺した時の感覚というのはどういう感じでしたか?」
「人を初めて殺した時か……凄い昔であまり覚えていないが……」
凄い昔なんて聞いてそれは何年前の話で、実年齢がいくつかにも興味がでる。
「思い出した、私は昔猛吹雪の中で大勢の追跡を逃れるために逃げていた。それで一人、俺にしつこく食い下がる奴がいたから殺した。俺も必死でその時どんな感情抱いていたかまでは覚えていないがな」
シンがその時のことを懐かしそうに語る。長い年月を生き、何人も殺めた事があるような人は記憶にすら残らなくなる。だがそれは雪にはわかりえない事だった。
「そうだったんですね……」
「私は自らを守る為に初めて人を殺したし、最愛の人を守る為に大都市一つ氷付けにしたりしたが、それは自分がそうしたいと願った」
確固たる信念があれば迷いは生じない。真の強者が身に着けている嗜みともいえるだろう。
「凄い、愛の力ですね」
「当然さ。大事なのを天秤にかけ、より重い物を守る。その為ならなりふり構っていられないものさ」
「そうですね。私戦争のない平和な世界から来たので」
毎日がのどかで平和に過ごした世界……雪はそれを頭の中で浮かべていた。
「平和な世界か……まぁいい、まず一度考えて自分は何の為に戦うのか考え行動するんだ。ただ従うだけでは身を滅ぼすぞ」
「はい、今一度考えようと思います」
「ああ、それがいいさ。さて長話が過ぎたな俺はそろそろ行くよ。また機会があったら会おう」
シンは立ち上がり丘を後にした。
「今日はわざわざありがとうございます。また話を聞いてください」
「ああ、しばらく王都にいるから見かけたら話しかけてくれ」
シンと別れた後しばらくして、雪も丘を後にし考え事をしながら歩いていた。
「何の為に戦うか……」
雪は帰還する気はない。今となってはそれには色々理由があるが、元の一番の理由は家庭にあった。雪にとって戻らず美里と周平と一緒にいるというのが理想であった。
「地球に帰ってもあの家じゃね……」
家にまた帰るのは雪にとっては苦痛でしかなった。それを知るのは一部の者だけに限られる。
「う~ん……」
「思いつかないわね……イライラしてきたからちょっとジョギングしてくるね」
「ハハッ、了解~」
美里が部屋から出て行ったので雪も散歩をしに外に出た。
「ここも見慣れた風景になったな~」
城をでて見慣れた街を歩く。最近では街の人も勇者に対して挨拶してくれるようになっていた。
「こんな平和な所で過ごしていて戦いなんかできるのだろうか……」
戦争となれば人を殺めなくてはいけない可能性……果たしてそんなことがみんなにできるのだろうか……そんな事が頭によぎる。
「私もこの世界にいる間はその覚悟は決めないといけないのかな……」
王都の外れの方にある眺めのいい丘は私のお気にいりの場所に行く。雪はこの場所で周平、陣、美里の四人でのんびりしたいと来る度に思っていた。
「そんな日は果たしていつ来るのか……」
少し憂鬱になる。この先のことを考えたらやはり不安だからだろう……
「随分と暗い表情だな」
「わ、私ですか?」
丘で座っている私に突然話しかけて来たのは見知らぬ男だった。雪は咄嗟に黒い髪に金のメッシュがかかっているその風貌を見て、ヴィジュアル系バンドの人を思い浮かべる。
「迷っているな……不安と焦り、そして恐怖か」
「わかるんですか?」
男は雪の目を見て私の心を見透かしたように言う。
「目を見ればだいたいのことはわかるさ。お前さんは噂に聞く召喚された勇者の一人か?」
「はい、この後の魔大陸遠征があるんですが私に戦争に参加する度胸はないので……」
「そうだな、お前からは血の匂いもしない。戦争は人を殺さなければ勝てない……今のお前には無理だろう」
雪はこの男の発言から人を殺めたことがあるのだと察した。好奇心から勇者カードを使い、相手のステータスを覗き見ようとする。
?????
種族:???(?????)
レベルあ9□
職業:あ◇●▼て■
攻撃:じ*?@□
防御:け*●▼?
魔法攻撃:@*!れ◆
魔法防御:ふ●●◇△
素早さ:●く@◇△
魔力:□あ@▼◆
固有スキル:?????
異能:?????
称号:あ*@□●
これはいったい……
ロックされぼかしが入っているのか名前も知ることが出来ない。そのせいか、つい同様してしまう。
「覗き見はあまり関心しないぞ」
雪は見抜かれていた。
「ごめんなさい。あなたを見て只者じゃないって思ったからつい……」
「まぁわからなくもないさ。俺はロックをかけているからな」
男はドヤ顔で言う。
「それはあなたの能力ですか?」
「いいや、これは俺のスキルの加護の一端にすぎん。お前ぐらいの能力では見ることはかなわん」
雪はそう言われ少し落ち込んだ表情を見せる。それなりに腕を磨いてきただけに自信を覚えてきてたからだ。
「フフッ、あなたに少し興味がでました。私は月島雪、あなたは?」
「私はそうだな……シン・アークトライアル・ゲイクルセイダーとでも言っておこうか」
「随分と長い名前ですね。シンさんと呼ばせてください」
「ああ、私は雪と呼ぶことにするよ」
この人なら自分の知らないことを教えてくれるかもしれないと考えた雪はシンに質問する。
「人を初めて殺した時の感覚というのはどういう感じでしたか?」
「人を初めて殺した時か……凄い昔であまり覚えていないが……」
凄い昔なんて聞いてそれは何年前の話で、実年齢がいくつかにも興味がでる。
「思い出した、私は昔猛吹雪の中で大勢の追跡を逃れるために逃げていた。それで一人、俺にしつこく食い下がる奴がいたから殺した。俺も必死でその時どんな感情抱いていたかまでは覚えていないがな」
シンがその時のことを懐かしそうに語る。長い年月を生き、何人も殺めた事があるような人は記憶にすら残らなくなる。だがそれは雪にはわかりえない事だった。
「そうだったんですね……」
「私は自らを守る為に初めて人を殺したし、最愛の人を守る為に大都市一つ氷付けにしたりしたが、それは自分がそうしたいと願った」
確固たる信念があれば迷いは生じない。真の強者が身に着けている嗜みともいえるだろう。
「凄い、愛の力ですね」
「当然さ。大事なのを天秤にかけ、より重い物を守る。その為ならなりふり構っていられないものさ」
「そうですね。私戦争のない平和な世界から来たので」
毎日がのどかで平和に過ごした世界……雪はそれを頭の中で浮かべていた。
「平和な世界か……まぁいい、まず一度考えて自分は何の為に戦うのか考え行動するんだ。ただ従うだけでは身を滅ぼすぞ」
「はい、今一度考えようと思います」
「ああ、それがいいさ。さて長話が過ぎたな俺はそろそろ行くよ。また機会があったら会おう」
シンは立ち上がり丘を後にした。
「今日はわざわざありがとうございます。また話を聞いてください」
「ああ、しばらく王都にいるから見かけたら話しかけてくれ」
シンと別れた後しばらくして、雪も丘を後にし考え事をしながら歩いていた。
「何の為に戦うか……」
雪は帰還する気はない。今となってはそれには色々理由があるが、元の一番の理由は家庭にあった。雪にとって戻らず美里と周平と一緒にいるというのが理想であった。
「地球に帰ってもあの家じゃね……」
家にまた帰るのは雪にとっては苦痛でしかなった。それを知るのは一部の者だけに限られる。
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