前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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4章

88話:成敗

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 「うん?何ふざけたこと言ってるのかな~」

 九兵衛さん、顔は笑っているが相当怒っているわね。特に美少女を泣かせるような真似をする人には容赦なかったし。

 「は、離せ……我を誰だと……」
 「知らないね~ただ君はレディーを泣かせる下種だってことは理解したよ~」

 今度は九兵衛さんがマラケートの頭を持ち机に打ち付ける。

 「一発は一発~」

 打ち付けたことで木の机は砕けマラケートは地面とキスをした。すると兵士達が取り囲もうとする。

 さて私の出番か……

 「風障壁」

 風のバリアを作り私は兵と対峙する。

 「フフッ、死にたい?」

 兵士達は全員委縮し、九兵衛さんマラケートは首を後ろから掴み持ち上げる。 

 「リエンダちゃんを愛玩具なんて何様かな~」
 「だ、黙れ貴様よくも……」

 九兵衛さんはマラケートを持ち上げたまま机に押さえつけ、酒を頭からかける。

 「なんかいったかい?」
 「ひっ……こ、こんなことをしてただで……」

 まったくイライラする奴ね。

 「それじゃあ今ここであなたを殺せばいいかしら?」

 マラケートに向かい剣を突き出す。ウザいし殺っちゃおうかしら?

 「や、やめろ……」

 マラケートはやっと恐怖に怯える顔を見せる。

 「女の敵は九ちゃんの敵だね~大丈夫かいリエンダちゃん」

 リエンダは泣きながらコクンと頷く。エロ親父がすごく生き生きしていて凄く複雑な気分だけど、今は正義の行いだしまぁいいわ。

 「さてもうここで迷惑行為をしないと約束できるかい?」
 「き、貴様わしに向かって……」

 九兵衛さんは減らず口の止まらないマラケートに対し強く威圧した。

 「死にたいのかな?俺はお前を殺してこの国から出れる自信があるけど……」

 鋭く光る九兵衛さんの眼光に恐れをなしたのかマラケートは顔が蒼白になっていく。

 「わ、わかった……店にはもう二度と来ない……だからやめてくれ……」

 マラケートは観念したのか減らず口が止まる。たしか明日領主であるこいつの家に行く予定だったわね。冒険者ギルドの総長がこんなドンパチしちゃっていいのかしら?まぁその時のこいつの驚く顔は見物か。

 「約束を違えば容赦しないから覚えておくといいよ~」

 マラケートは怯えながら兵隊を引き連れて店をでた。

 「まったく……酒場でいい迷惑だね~」
 「九ちゃん~」

 リエンダは九兵衛さんに抱きつく。

 「リエンダちゃん……よかったよかった」
 「九ちゃん、私怖かったよ……」

 九兵衛さんはヴィエナの頭を撫でる。九兵衛さんもしかしてケモミミに凄くモテるのかしら?ザルカヴァも獣人だし、惹き付ける何かがあるのかしらね……私にはわからないけど。

 「すまない、うちのウエイトレスが助かったよ」
 「女性の味方として当然さ」

 九兵衛さんは決め顔で言う。さっきまでのエロ親父が嘘のようである。

 「お前等すげぇよ~」
 「あの目障りなマラケートがあんな顔で帰っていく姿は初めてだぜ~」

 周りもテンションアゲアゲだ。ああいう領主だし、嫌われていて当然か。

 「今日は俺のおごりだ、是非好きな物を追加で頼んでくれ」

 私達はさらに飲み食いをしてパァっと騒いだ。店主に呼ばれ、カウンターに行き話を聞く。

 「少しいいかな?」
 「ええ」

 店主の名はアックアックといいこの店のオーナの息子らしい。父親が獣人族の奴隷を複数持っておりこの店に派遣しているとの事だ。

 「あなた方の素性は深く聞きませぬがあまりああいった真似はしないほうがいいかもしれませんな」
 「ご忠告感謝します。ただ私達は立ちはだかる者はすべて潰していきますので」

 それが例え国家でも私は容赦しない。もし首都レガリアにつく前に、私達に軍隊が攻めてくるようならそいつらは全て滅ぼすまでの話。

 「頼もしいですな。ただあいつはこの後あなた方を闇討ちするでしょう……今日は裏口からでてください」

 闇討ちか……上等ね。明日の謁見の時の材料に使えるかもしれないわね。

 「フフッ、お仕置きが必要ね。ここにいる獣人族のウエイトレス五人はみなあなたの父親の所有物かしら?」
 「いやあそこにいるリエンダだけは違う。彼の主人は失踪していて私が直接面倒を見ている」

 やはりか、彼女だけ隷属の輪をつけている位置が違うから、不思議に思っていたがそういうことか。

 「失踪?」
 「ある日のことだ。とある街に先に行くから当分預かってくれと言われてね。その人にはもし自分が戻ってこなかったら彼女をこの国の外に連れていって欲しいと言われたんだがね」
 「なるほど」
 
 彼女の隷属の輪と身に着けている物には違和感がある。もしかすると……

 「それで国外には?」
 「奴隷の獣人族を国外に連れ出すのは難しくてね……」
 「ですよね」

 奴隷の国外逃亡を防ぐ為の措置だろう。当然といえば当然だが気分の悪い話だ。

 「もし彼女を国外に連れて行けるとしたら連れて行ってもいいということかしら?」
 「ああ、可能なら是非ともお願いしたい」
 「わかったわ。ならリエンダを借りるわね?」
 
 明日の領主との謁見楽しみね
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