前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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4章

83話:サラフィナとの夕食

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 「遅い!」

 扉を開けると目の前でサラフィナは俺を待ち構えていたが、とてもご機嫌斜めな様子だ。少し遊びすぎたかな。

 「ああ、すまん」
 「すまんじゃないわ。私言ったわよね?」
 「ああ、今日は勇者と言うよりも、先に城内を散策してマップを頭に入れていたんだよ。必要事項だろ?」
 「いい訳は結構よ」
 
 とまぁいい訳を軽く一蹴される。この後迷宮いかないとだし今日は早く寝るよう促すか。

 「すまんな、明日からはちゃんとお相手いたしますよ姫様」
 「当たり前ですわ。まぁ今日はあなたの言い分に正当性があるようだし、確かに城内をうろうろしていたのはこの塔の上から見ていましたから大目に見ますわ」

 なんとか機嫌を直してくれそうだな。あまり機嫌を損なわせてお役御免になるとそれはそれで面倒だからな。

 「とりあえずご飯にしましょうか」
 「ああ、それでどこで食べるんだ?」
 「ここに運んできますわ、奥の部屋が食事をする部屋になっていますの」

 サラフィナに案内され、奥の部屋に行くとメイドが数人いる。席に座った数分後に食事が運ばれてきた。

 「飯は親と食わんのか?」
 「ええ、お父様もお母様も弟も私とは距離があるようで」

 こんな感じでは無理もないか。

 「なるほど。それでここにいるメイド達は?」
 「このメイド達は私の専属ですの」
 「そうか」

 俺とサラフィナは二人で飯を食べる。久しぶりに城の料理を食べたがどうも味が微妙だな。物自体は高級食材を使っているようだし勿体ない……俊樹さんがいればな……

 「それで今日はあなたとどういう話をしようか考えていましたの」
 「ほう?」
 「あなたもご存知至る所で使われている魔法ですが、何故人類一個人では第七位階魔法までしか唱えられないのかということについて議論しようかと思っていましたの」

 いきなりハイレベルな話が来たな。俺には関係ないがな。

 「姫様の意見は?」
 「私の意見は八位階以降の魔法を人が唱えようとすると、大きな負担がかかるのではないかと考えています。特に魔力源とされる心臓部、もしくはイメージし発動するために使用する脳に大きな負担があるから、人が唱えようとすると体が防衛反応を働くのではないかと」

 悪くない考察だ。この姫さんはやはり頭はいいようだ。

 「六十五点だな」
 「なっ……」
 「まぁ悪くないよ、答えを知りたいか?」

 するとサラフィナは一瞬目を点にする。まさか知っているとは思わなかったのだろう。

 「ぜ、是非聞かせてほしいですわ!」
 「ええ、どうしようかな~」

 ここであえてじらすと、サラフィナはさらにムキになる。

 「誰にも言いませんから早く教えなさいな!」
 「はいはい、まぁあれだ。お前さんは心臓か脳かどっちかっていう考察をしたが両方だと結論していれば七十五点だったな」
 「ななんと!じゃあ私の考察は的外れではなかったと言う事ですね」
 「ああ、ちなみにそれを誰かに話したことは?」
 「父上に話したら、八位階魔法以降は人が単独で使うことを許されていないから唱えられない。いわば魔法であって魔法ではないと言われましたわね」

 それは話す相手が間違っているわ。せめて魔導士団の人間に話せばまた違った答えをくれたかもしれないのにな。

 「第八位階以降では使う魔力の質が違うんだよ。だから人の身であっては第八位階を発動できないのさ。魔力の質ってのは人の域を超えると変わる。まぁ人の身であっても発動できなくはないけどな」

 厳密にこの質の変化のボーダーラインはステータス十万越えが最低限の目安だが、極めている職種だったりで個人差がでる。騎士団メンバーで言うと精霊憑きの九十九や隔世遺伝で固有スキルを持つ実は十万行かずとも魔力の質は変化していたし、エミリアやレイチェルのように魔導士レベルの高いものは十万行く前で魔力の質を変えていた。だが直樹はその段階に行けたのは平均ステータスが全て十万を超えた時だったらしいからな。

 「魔力の質が違うのに発動ができるのですか?」
 「理論上はな。魔力の質が人のままで発動すると、心臓が停止するレベルで魔力を持ってかれるんだよ。つまり八位階以降の魔法を人の身のまま使うと魔力源を無理やりいじる形になって発動……当然死だ」
 「なるほど」
 「そんな危険なことをできなくする為にあるのがここ」

 俺は手で自身の頭を指さす。

 「脳ね」
 「そう、脳が魔力源を無理やり弄ることを止めている。無理やり脳を操って発動しようとしても魔力源がいじられ始めた段階で、脳をオーバーヒートさせて処理落ちさせて意識を失う安全機構が確立されているんだ」
 「そうなんですね~知らなかったですわ」

 サラフィナは俺の話は聞いてとても興味津々でわくわくしている様子だ。目も輝いているし、さっき初めて挨拶を交わした時の不愛想な顔は何処へいったという感じだ。

 「まぁ後発動するにも無詠唱じゃなければかなり長い呪文になるから無理やり操って発動させるのもほぼ無理だから、戦争とかで生贄呪文特攻なんてのもできない」

 憑依して無理やり発動させるような事をすれば出来なくはないけど現実的ではないからな。二十柱クラスでなければそれもほぼ不可能だ。

 「どんなものかいつか見てみたいですわね」
 「まぁ見せてやってもいいが、ここで発動すると塔が下手すると崩れるからな~それと俺は基本無詠唱だから長い呪文唱えるのが面倒でな。特に第十位階なんて詠唱ありで唱えたら面倒だ」
 「えっ?」

 俺のその発言にびっくりしたのか目が点になる。

 「あなた八位階以降の魔法が使えるんですの?」
 「まぁな、あんまし大っぴらにはせんでくれ。ギルドに帰らないといけなくなるからな」
 「それは大丈夫ですけど、あなたは本当に人間かしら?」

 一応今もきっと人の部類にはいる、というかもとは人だだわ。

 「ああ、一応な……というか人でもある一定のラインを超えて限界突破すれば魔力の質が自動的に変わって唱えられるようになる。第八位階以降は体全体を動力源として発動するような感じなんだが、それが第九、第十となるそれがまた少し変わるのさ」
 「ということはあなたはその質を変えた超人クラスということになるのかしら?」
 「まぁそうなるな」

 人が唱えられないという世の中のその決まりようなものは、それまでほぼ全ての人類の大半が長い間その十万を超えていないことを証明しているようなものである。

 「フフッ、冒険者ギルドの中でも総長に近しい男だと聞いていたけどさすがね」
 「それはどうも、今度人がいないとこで見せるよ」
 「是非お願いしますわ」

 サラフィナを上機嫌にして飯を終えた後は塔の一番上に登り夜空を見てから城を出た。
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