前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

文字の大きさ
上 下
71 / 109
3章

70話:妖精の城

しおりを挟む
 クリミナルの家に集結し、突撃の準備をしていた。

 「ロードリオン様……ご無事で何よりです」
 「初代様……」
 「二人共心配をかけたね~無事で何よりだよ」

 ファーディナンドとクリミナルはロードリオンと再会できたのが嬉しいのか感激しているようだ。初代妖精王であり始祖というだけであって二人の見せる眼差しも神を見るような感じだ。

 「後は城に行くだけだが、面倒な事態と言っていたよな?あれはどういうことだ?」
 「ああ、ブルーピーターという男はずっと王になることを望んでいた男だったし、僕が眠れば反逆してもおかしくなかったのさ、あれはそれなりに能力はあるからね」
 「君が眠った理由の一つがそれなんだね~」 
 「ああ、ランスロットやアファームドと連絡を取るのと、光大樹の輝きを増す為とそれの三つが主な理由さ」
 「先生やガルカドール卿と話していたのか……それは後で聞くとして面倒な事態とは?」
 「パンドラだよ……」

 ロードリオンは重い口調で言う。

 「パンドラ?」

 俺と立花と九兵衛さん以外はみな知らないといった感じで口をポカンとしている。だがそれを知る俺達にとってその名前は聞きたくないワードだ。

 「周平……」
 「ああ、まさかこの世界にも出現したのか……」
 「周平さんそれはなんだい?」

 実が聞いてくる、百年前この世界に存在していなかっただけに、騎士団内でもこれを知るのは二十柱メンバーを除けばレダさんぐらいしか知らないだろうからな。

 「ーパンドラズファクター災厄の因子よ、私達同様二十柱の1角だけど適合者の選定に王ルシファーがかかわることのできない二柱のうちの一つ……」
 「ファクターを得た者はパンドラの力の一部を使うことができるのさ、ただ……」
 「ただ?」
 「使用者は大抵が力に溺れて自身も見失い欲に身をまかせ暴走する。因子は切り離すことができない上、そうなったら消滅させる以外に方法はない……」

 俺は昔エクリプスに来る前にそれを見たことがある。パンドラズファクターが王となった国は大抵が消滅への道を辿る。それ故に災厄の因子なのだ。

 「パンドラは傾向として支配欲の強い者に出る傾向がある。他の柱と違い力に適合するだけでは駄目で、まず因子という仮の段階から無作為に与えられるからね~」
 「それを防ぐことはできないのがネックな所なんだよ昔から」

 ロードリオンは苦虫を嚙み潰したように言う。これには二十柱を統治する王ルシファーも頭が重くなる話だ。過去にファクター関連の事で何度も問題が起きているからだ。

 「その呪いのような因子を防ぐためにはどうすればいいのですか?」
 「きっと周平達ならいつも見たいに余裕で切り抜けてくれるんだよね?

 ダリウスが聞く。バニラにいたっては期待の眼差しでこちらを見てくる。今回はその期待には沿えないかもだが。

 「因子の段階でその呪いとも呼べる試練を乗り越え、完全に使いこなせば俺達同様二十柱の一角になり因子がばらまかれることはなくなる」
 「ただ因子をばらまかれた者は、そういう支配欲の強いのが多くて、それを乗り越えられないのよ」

 立花の言うように過去にいたファクターはほぼ誰も乗り越えられなかった。適合し柱となった者は千年以上前に一人いたきりだという。

 「それで現王はどうするのですかリオン様?そんな危険な因子を持ち反逆をした者を野放しにはできないでしょう」
 「因子を抑えられないようなら致し方無い、消滅させる予定だよ」

 リオンは淡々と言う。だが力と欲に飲み込まれ、戻って来れなくなった者はそうするしかないのが現状だ。

 「わかりました」
 「それで城への突入は正面突破でいいのか?」
 「問題ないよ、二十柱四人なら向こうも為す術はないだろうからね、ただパンドラは注意が必要だけどね」
 「ですね、では俺や九十九ちゃんはサポートに回ります」
 「総長や妖精王様に周平さんや立花さんなら余裕で鎮圧できますよね?」
 「いつもよりは面倒だけどな」

 ザルカヴァも俺達なら余裕だろと言わんばかりだが、パンドラはただ倒すだけでは駄目なのだ。殺さないで済ます場合、その本人に因子を抑えてもらう必要があるが、そもそも抑えられるなら暴走しないし、無理やり押さえつければほぼみな廃人だ。今回の消滅させる場合も、殺すとその因子は他に移るからそれを他に移らないよう抑える必要があるので、どちらも二十柱の力が必須だ。

 「それで配置はどうする?」
 「俺とリオンが後衛を護衛しつつ残りは前を攻めてくれればいいかな~」
 「了解」
 「そうだね、僕と九兵衛は力が不完全な訳でもないからね~後ろでのんびりいくさ」


 ◇


 クリミナル宅をでて城へ向かった。

 「ふむ、厳重な守りだ……」 
 「ふふっ、無意味なことを」

 城は見るからに厳重な守りで固められていた。まぁそんなものは関係ないんだがな。

 「いくぞ開け宝物庫シャッカンマー

 無数の武器を空中に具現化させ城門に向かって落とした。

 「な、なんだ……」
 「剣が上から……」

 奇襲によって城門の兵たちは混乱する。

 「後は門ね……グランドクロス!」

 立花は門を破壊するために唱えた魔法はデカい十字架から光を放つ第八位階魔法だ。

 「あんな丈夫な門が一発……」
 「さすがですね……」
 「よっしゃー!いきま~す」

 ザルカヴァは我先へと先に門を抜け中庭に突入すると兵が待ち構えている。

 「随分多いな~」
 「それだけ向こうも必死ってことですよ実君」
 「だな~斬空閃!」
 「いでよ牛頭馬頭!」

 二人もザルカヴァに続く。門を破壊して入ったからか、待ち構えていた兵が不意をつかれ、陣形が崩れる。

 「すっかり遅れちまったな~」
 「私達も行きましょう」
 「覚悟!」

 その瞬間兵隊の一人が立花に向かってきたが、それをあっさり避け、相手の後頭部を蹴り飛ばす。

 「少し運動しようかしら」
 「魔法ばかりだと体が鈍るからな、それにリオンと九兵衛さんが包囲してるし、ブルーピーターはもうこの城からは出られないから多少時間かかっても問題ないだろうし」
 「そうね」

 中庭に入った俺達は、瞬く間に兵隊たちを殲滅していった。城に俺達を止められるような戦力がいるはずもなく玉座を目指していった。しかし向こうも雑兵だけでなく強い戦力が待ち構えていた。

 「少しは骨のありそうなのがでてきたな」
 「私は妖精王国王様直属親衛隊副隊長ハビタット・スパニッシュムーン」
 「同じく親衛隊副隊長プライズド・マーケトリー」

 ご丁寧に自己紹介ありがとうと言いたいところだが、ここで実と九十九が前にでて構える。

 「周平さんと立花さんは玉座に、雑魚どもは俺達が片づけておくよ」
 「おう、頼んだぜ実」

 ここは素直に甘えておく事にしよう。

 「周平聞こえるかい?」
 「その声はロードリオンか、どうした?」

 リオンは念話で俺に語り掛けて来る。

 「僕は城の包囲を完全にしてから玉座に行くから先に行っててほしい」
 「了解よ」
 「リオンが先行っててだとさ」
 「わかったわ」

 周平と立花は先に進むと、実&九十九の二対二の戦闘態勢となった。

 「さて、遊んでもらおうか、俺は境界騎士団ザ・ボーダーの一人にして元初代勇者天竜院実だ」
 「同じく境界騎士団の一人にして元初代勇者御子神九十九」
 「フッ、行きましょうかプライズド」
 「了解」


 ◇


 玉座へ向かう途中城では罠が張り巡らされていた。城の作りはファーガス城同様、石を積み上げて出来ているが、木の根が絡み合い妖術が組み込まれている。そういった意味ではかなり強固な守りが張り巡らされていて、普通なら侵入しても容易にはいかないだろうが俺達レベルだと全身に結界貼っていればこんな罠はどうってことない。

 「どうやら俺の煉獄属性には大層弱いようだな」
 「火の強化版ともいえる煉獄属性の前では、この木の根自体攻撃することを躊躇するでしょうね」
 「加えてこんな結界貼ったら手も足もでないだろう」

 二人は玉座に辿り着いた。何人かのエルフと、玉座に座るいかにもという尊大な態度でこちらを見ていた。
 
 「貴様がブルーピーターか?」
 「いかにも、余がこの妖精王国九代目国王ブルーピーターだ」

 見かけは白髪白眼の普通のエルフだが、パンドラの因子があるからなのか禍々しいオーラを感じる。

 「さて、お前さんはもう終わりだが素直に降伏する気はあるか?」

 一応言葉で通じるならこのまま穏便にいけばいいが……

 「フフッ……ハッハッハッ!」

 ブルーピーターは高笑いをする。

 「何がおかしい?」
 「余が降伏する?そんなことがあるわけがないだろ、余は強大な力を手に入れたのだ……これで余は初代を……」
 「縮地……」

 まったく勘違い馬鹿はしょうがないね~身の程を教えてやるか。煉獄属性を纏い腕だけ魔神化し、ブルーピーターの顔面をおもいっきし殴り飛ばした。

 「グハッ!」 
 「ブルーピーター様!」

 親衛隊が俺に攻撃しようするが立花がそれを威圧で抑える。

 「雑魚が!随分と余裕かます割には随分痛そうだったぞ」

 だが吹き飛ばされたブルーピーターに近づいたその瞬間だった。禍々しいオーラと共に放たれた光によって俺は首を切断されたのだった。
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

【完結】少し遅れた異世界転移 〜死者蘇生された俺は災厄の魔女と共に生きていく〜

赤木さなぎ
ファンタジー
 死体で異世界転移してきた記憶喪失の主人公と、敬語系×エルフ×最強×魔女なヒロインが結婚して、不老不死になった二人が持て余した時間を活かして、異世界を旅して巡る物語です。  のんびり旅をしていたはずが、気付けば神様との戦いに巻き込まれたりします。  30万文字超えの長編ですので、少しずつゆっくりと読んで、楽しんで貰えたらと思います!  おかげさまで、HOTランキング最高2位達成! 沢山読んで頂き、ありがとうございます! ―――――― ■第一章 (63,379文字)  魔女様とのんびり森の中での生活を楽しもう!  と思っていたら、どうやら魔女様には秘密が有る様で……。  まだ名前も無い頃の二人の出会いの物語。 ■第二章 (53,612文字)  二人は森の外の世界へと飛び出して行く。  様々な出会いをした、二人の旅の記録。 ■第三章 (28,903文字)  長い旅から森へと帰って来ると、何者かによって二人の家は破壊されていた。  二人は犯人を捜す為に、動き出す。  バトル要素有り。 ■第四章 (47,744文字)  旅の中で出会った龍に託された真実の目。  それを巡って、神との戦いへと発展して行く。  バトル要素有り。 ■第五章 (68,773文字)  二人の旅の舞台は、海を越えて東の大陸へ。  謎のメッセージ、そして黒い泥の事件を追う。  第二章のテイストで進む東の大陸出の旅の記録。 ■過去編 (約9万文字)  本編へと繋がる、かつての魔女エルと勇者アルが紡ぐ、冒険の物語。  一度は魔王討伐を諦めた勇者と、突然現れた最強の魔女が、魔王を討つ為、再び旅に出るお話です。 ■第二部  エピローグ②とエピローグ③の間の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

処理中です...