前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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3章

66話:不安

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 早速兵士達を尋問し襲撃した理由を問いただした。

 妖精の国の元老院の一人であり、強い権力を持つファーディナンドを目の上のたんこぶに思っていた、現王の強硬策によってなされたものであった。話を聞くにあたって当然渋ったので、何人か石にして脅すとポロポロと喋るのだからつくづく脆いものだと感じる。立花のエミリウスの宴は、対象を石化させる極めてチートに近い魔法に見えるが、あれの解除は種がわかればさほど難しくはないし、ある一定以上の力を持つ者には有効ではないのだがな。

 「さて本題に入りましょうかのう」
 「ああ、早いとこヒムヤーに攻めてリオンの封印を解きたいのと幽閉されている九十九を奪還したいのでね」
 「九十九?ああ、リオン様と一緒にいた人間の子ですな」
 「知っているのですか?」

 実が切羽詰まった表情で言う。 

 「彼女はヒムヤーにある独房の奥じゃな、わしも何回か様子を見に行ったが生きてはおる」
 「よかった……」

 実はホッとする。

 「九十九の救出とリオンの救出に城の襲撃をどうやっていくかだな」
 「そうね、それならまず二つに分かれてそれぞれ救出してから攻める感じかしら?」
 「それがいいかもね~リオンと九十九ちゃんを救出したらみんなで城攻めれば余裕でしょ~」
 「それがいいな、封印は俺と立花がいれば大丈夫だろうし」
 「はい、二十柱クラスならあの封印を解くのも難しくはないはずです」

  後は潜入するときだな……どうやっても目立つだろうしかといって時間もかけたくはない。

 「行くときはワシも馬車に乗っていきますぞい。幸いここには小さな集落と違い客人用に馬車がありますゆえ」
「それはついているな」

 馬車に隠れていけば、バレずにいけるしじいさんが乗っていれば襲われることはないはずだ。

 「待って、ここが襲撃されたということはあなたがヒムヤーにいけば怪しまれないかしら?」

 立花が疑問に思い言う。

 「それは大丈夫ですぞい、何しろここを襲ったというのは秘密裏に行われているはずじゃから、王都へ行っても事情の知らぬものは普通に受けて入れてくれるはずじゃ」
 「王様の命令といえど重鎮であるファーディナンドを大っぴらに処刑したりはできないだろうからね~」
 「そういうことですのう、あの若造が王といえど、この街はエイムウェル同様リオン様の影響が強いのですぞ」

 無理やりロードリオンを失脚させて王になったからといって全員がはいそうですかと従うわけがないのだ。特に妖精エルフは長命で年齢三桁の者もたくさんいるだけに、そう簡単にはいかないだろう。まぁ向こうからしたら老害だな。

 「とりあえずある程度は決まったな。夜飯を食べて今日はもう寝るとしようか」
 「賛成~今日の飯は何かな~」
 「立花何系がいい?」

 ニ週間分の食事を作ってもらっているから残っている中から選出できる。

 「パスタはあるかしら?」
 「おけーパスタでいこう」

 夜は俊樹さんが作った島根県産大山鳥を使ったペペロンチーノに世界三大ハムであるパルマ産の生ハムを乗せたシーフードピザだただのペペロンチーノではなく、大山鳥を使うあたりがさすがは俊樹さんだ。夕食はみな大喜びでザルカヴァはまたも感動して涙を流したぐらいだ。


 ◇


 夕食を済ませ後は宿に泊まり、睡眠に入ったが中々眠れず、外にでて夜景を見ていた。

 「なんであんたは俺に……」

 アファームド・ガルカドール……騎士団の団長にして俺達を束ねた男。彼が自己封印に入ったあの時とその原因を作ったのは……

 「あら周平、奇遇ね」

 立花が声をかけてきた。

 「立花か、どうした?寝れないのか?」
 「ええ」

 どうやら彼女も眠れなかったようだ。そのまま俺の横に来て腕を組んで座った。いい匂いと横から見える胸が俺を緊張させる。

 「ふふっ、緊張なんかしなくていいわよ」
 「ああ」

 記憶は徐々に戻りかけているけど慣れない……

 「私の匂いはいつでもかいでもいいし胸だって堂々と見ていいわ」
 「はい……」

 相変わらずエスパーな奴だ。

 「最近記憶が戻る事に不安でな」

 自分が自分じゃなくなってくる感覚がある。ガルカドール卿の戦死の件もあるが、思い出すの事に対しての若干の躊躇はある。

 「大丈夫よ……記憶が戻ってもあなたはあなたよ、それに私は絶対にあなたを拒むことはないわ。だから安心してぶつかりなさい!」
 「立花……」

 そうだ……俺には立花がいるんだ。パートナーであり最強の支えが俺にはいる。

 「それにもしそれが怖いならそれは逃げよ!あなたはそんな事を恐れるような人だったかしら?」

 そうだな……俺がこんなんでビビるなんておかしな話か。記憶と力を取り戻す為に旅をしているんだし、それを恐れては本末転倒だ。 

 「そうだな……なんか弱腰になってたよ」
 「フフッ、元気がでてきて何よりよ」

 力を取り戻し、偽神を倒して立花や他の仲間と共に天上に戻る。それで分身体を配置して、二人とはこの世界で暮らす。それらを叶える為には記憶や力を恐れてはいけない。全て思い出してこそ本当の俺になるのだからな。

 「さてと……」

 立花はいきなり俺を押し倒した。

 「ちょっ立花!」
 「キスをするわ」

 立花は押し倒した俺の唇に自身の唇をつける。

 「チュ……チュン……」

 今度は舌を俺の口の中に入れる。

 「チュ……チュン……ハァハァ……」

 いやらしい音と気持ちのいい感触が俺を体に伝わる。

 「こっちも固くなっちゃってまったく……」
 「あ、当たり前だろ。未来の妻にこんなに迫られてるんだから」
 「記憶が戻ったら未来のなんて言わなくなるわね」

 再び舌をいれ俺の下半身を触る。最高の気分になり俺の精神は違うとこに飛びそうだ。

 こんな外で迫られたのは初めてだがヤバいな……

 欲情し耐えられなくなったのか、立花のでかい胸に手が出る。

 「アンッ!」

 立花も不意をつかれたのか大きな声をだす。

 「フフッ、どう周平私の胸は?」
 「相変わらずのいい感触だよ」

 正直に言う。普通に最高ですわ。

 「ありがとう、このまま続きをここでしたいとこだけど……」

 立花は大きな木に向かって魔法を放つ。

 「んぎゃぁ」

 その木の影からはザルカヴァと実がでてきた。

 「お。お前等!」
 「盗み見とは感心しないわね」
 「ご、ごめん立花さん、何というか二人を見てたら急に始めちゃったものでつい……」

 ザルカヴァは弁解する。

 「そそ、ザルの言う通り……何というか目が釘付けに……」
 「実、あなたは今度私と周平の前で九十九と今やったようなことをすること!」
 「そ、それは……」
 「実?」 
 「あ、はい……」

 一度渋ると立花がさらに睨みつけたので実はばっさり折れた。実からすれば立花は恐怖の対象だろうからな。仲間になった時一回メンタルバキバキにしてたし。

 「さて戻ろうか……」
 「そうね」

 俺達は部屋に戻り就寝した。

 ガルカドール卿を戦闘不能に追い込んだのはおそらくあの女が関係しているはずだ……ただそのことを隠した、かつての自分の行動にはまだ何か秘密があるのだろう。俺はそれを一度胸にしまい込み、眠りについた。
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