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3章

64話:見せしめ

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 昼食を取り終えると早速出発の準備にかかる。ここで問題だが案内が必要だな……王都ヒムヤーへ向かうにあたって、道を案内できる人材がほしい。途中九兵衛さんが世話になったという集落にも寄りたいので、俺達だけでは時間がかかってしまう。

 「誰か王都まで俺達を案内してくれる奴はいるか?」

 大声でそれを言うと周りがざわつく。

 「俺達はこれから王都に行き、友であるロードリオンを起こしに行く。その為の案内をできる人材を探している」

 この中で果たして立候補に応じるのがいるかどうか……ただ俺達も今は時間が惜しい……誰か立候補してくれれば良いが……

 「僕が行きます!」

 ざわつく中、声を上げたのはダリウスだった。

 「僕はまだまだ幼いけど、道案内ぐらいなら出来ますよ。何しろ王都には長老様と何回か行っていますからね」
 「これダリウス!お前にはまだ……」
 「僕もやられっぱなしは嫌だからね。それにこの人達の道案内をするんだしあの事も話したらどうです?」

 ダリウスの言葉にロモンドの表情は暗くなる。

 「何か問題があるのか?」
 「実は……」

 この集落はそもそもエイムウェルという名前で、初代妖精王でもあるロードリオンから存在を認められた集落の一つらしい。だがロードリオンが罪人としてあげられた時、封印を解いて話を聞くか、解かないかで聞かないかで意見が分かれた。ここは前者を選び初代妖精王の無罪を信じた。その結果ここよりでかい集落からの嫌がらせを受けるようになったという。妖精エルフ同士が他の集落の中で暴れたりするのは禁忌とされているので、さすがに集落の中まで入って嫌がらせ行為をされることはないが、外にでると色々ちょっかいを受けるため単独で出るのを極力控えているらしい。

 「それでその嫌がらせをする奴を返り討ちにしようとしてけど逆にやられて負傷したんです」
 「それでさっき怪我をしていたんだな」
 「はい……」

 ダリウスやこの集落の現状をずっと苦々しく思っていたのだろう。

 「その集落はここから近いのか?」
 「少し離れていますが王都に向かう途中にありますな、名前はリヴァーリッジ……」

 長老であるロモンドはその名前を言う時嫌悪感を表にする。

 「途中にあるのか。まあそこを寄るかどうかは考えておくよ」
 「これは我々の私情故あまり巻き込みたくない……それにあなたがたが初代様を復活させてくれれば全て解決ですし」
 「極論はそうなんだがな……」

 そんな話を聞いたら助けてあげたくなるのが心情だ。この村は俺達に友好的だしこのまま恩を売り付けるのも悪くない。

 「その話は一旦おいておくか。そういえば九兵衛さんの寄りたいとこ聞いといたほうがいいんじゃないか?」

 王都の今の現状をもっと詳しく知りたいし複数の集落の接触は重要だろう。

 「そうだったね~ロモンドさんはシルバーチャームという集落はご存知ですかね?」
 「シルバーチャームはかなり有名ですぞ。しかもそこはただの集落ではなく街というくくりじゃ」
 「俺はそこの長老であるファーディナンドとは知り合いでね。そこへの案内もできるかい?」
 「なんとあの方と知り合いでしたか。ワシもあの人には世話になりましてのう~あそこへの案内でしたら……」
 「もちろん行ったことがありますので案内は大丈夫ですよ」

 ダリウスが話に入ってきて自信ありげに言う。

 「これ調子に……まったくお主は……」

 ロモンドはため息をつく。

 「よかろう……主を案内役に任命する……」
 「いえーい」
 「お主には他の集落にも色々連れて行っているし道案内には問題ないと判断した。責任ある仕事故しっかり頼むぞい」
 「うん、そこは任せてください」

 どうやら案内役は決まりだな。少し不安だが道案内さえできれば問題はない。戦闘面での不安はないからな。

 ダリウスを連れて集落を後にした。そこから数時間ダリウスの案内の下で森を歩き続けた。

 「それでお前達に嫌がらせする集落はいつ頃つく?」
 「そこに行くんだとしたらあともう少しですかね~一応シルバーチャームを寄る前の段階で寄ることができますし」
 「フフッ、それで私達の後ろに貼りついているのね~」

 立花の言う通り一時間前ぐらいから追ってきている感じがあり、どんどん近づいている。

 「おびき寄せてシメますかな」
 「それがいいわね」
 「立花、全員の姿を消してくれ」
 「わかったわ」

 立花の魔法と認識阻害の異能で全員の姿を消す。後は気配が消えて気になった相手が来たら倒せばいい。二人だし余裕のはずだ。

 「来たら捕らえるぞ!」

 案の定、気配が消えたのは不思議に思ったのか二つの気配はこちらに近づいてくる。

 「フフッ、かかったな」

 二人の妖精が着た瞬間を狙い俺と立花で捕らえる。向こうも姿の見えぬ存在に不意に襲われ何が起きているのかわかってなさそうだな。

 「すごいです……」
 「ハハッ、流石周平と立花ね」
 「ご主人様方流石でチュ」

 捕らえた妖精は二人共若い。

 「く、くそ……離せ!」
 「つけられているのを気づかれないと思ったのかしら?」
 「くっ……」
 「ダリウスこいつらの顔を見たことがあるか?」
 「はい、リヴァーリッジの妖精です」

 一人は金髪にもう一人は黒髪だ。まぁビンゴやな、さて尋問だ。

 「貴様らこんなことをしてすむと思うなよ……」
 「ふっ、お前達こそ俺達を敵に回してただで済むと思うのか?」
 「そうね……とりあえず村まで案内してもらおうかしら?」

 立花が言う。

 「誰が……貴様等なんぞに……」
 「そうだ、私達は貴様等なんぞに屈しない!」

 まったく……馬鹿な奴らだ。

 「立花鎖で強く縛ってくれ、別にこいつらに聞く必要などない。こいつらの集落はダリウスに案内してもらえばいいだけだ」
 「了解、この二人は?」

 「集落まで引っ張ろうか」
 「なら俺が片方引っ張るよ~」

 九兵衛さんが陽気な声で言う。当然だが引っ張るというのは言葉のままの意味だ。

 「ま、待て引っ張るとは……」
 「文字通り鎖で縛ったお前等を引っ張るだけだよ。聞き分けのない奴を歩かせるほど俺は優しくないぞ」
 「ま、待てそれはいくらん何でも……」
 「そ、そうだ……我らにも尊厳が……」
 「ふっ、知らんな」

 二人を押し倒し鎖を持ち準備をした。地面をこするし、至る所をぶつけるだろうが、死にはしないだろうからまぁいい。昔ピザの有名な国で、戦争の首謀者の死体が街中引っ張られるというようなことがあったな。あれはさすがにどうかと思ったが、こいつらはあれみたいに偉くはないし問題ない。

 「ま、待ってくれ……」

 二人は顔を青くする、さて少しは吐いてくれるかな。

 「お前らの名前は?何で俺達をつけた?」
 「そ、それは……」

 二人の口が止まる。ふむ、聞き分けのない。

 「あ、いいよ、別に答えなくても。引っ張るだけだし」
 「お、俺はリベロ、そいつはノノアルコだ……」
 「そもそもリベロと俺はそこにいるエイムウェルの奴に嫌がらせの為に襲撃をした」
 「そうだ、そしたらお前らがそいつを助け、集落に入ったので出るまで待っていたんだ」
 「なるほど、それで私達をつけていたわけね」
 「そうだ……」

 さてこいつらをどうするか……とりあえず嫌がらせをしないように見せしめが必要かな。俺達は鎖で縛った二人を歩かせリヴァーリッジの集落へ行った。

 「なんだお前達は?それにリベロにノノアルコ?」
 「長老を呼べ、さもなければこいつの命はないぞ!」
 「ふふっ、周平さんのこの後の展開読めたよ」

 実がクスクスと笑いながらこちらを見る。

 「長い付き合いだからな~」

 一応ロードリオンの国だし、ここでの虐殺行為は後に禍根が残る。つまりこの集落を従わせるには立花さんの出番というわけだ。

 「な、なんだ貴様らは?」

 複数の取り巻きを連れてでてきたのは長老というにはほど遠いが、そこそこ年はいっている髭を生やした金髪の妖精エルフがでてきた。そもそも妖精は長命なのでこのおじさんエルフでも齢三桁はいっているはずだ。

 「あれが長老?随分と若そうだね~」
 「ハハッ、九兵衛さん自体かなりの年寄りだからそれに比べたら若いだろうね」
 「ちょっとみのるん、あんまし私の総長をおじいちゃん扱いしないで~」
 「ごめんごめん」
 「お、おじいちゃん……」

 九兵衛さんはその言葉に少しショックを受けているようだ。まぁ齢四桁だから普通に爺だな。

 「ほら九兵衛さん気にしない気にしない」
 「おじいちゃん……」

 よほどショックだったのか固まってしまったか……あのおじいちゃんはほっといてささっと終わらせるか~

 「さてお前さんがここの長かな?」
 「いかにもだ!うちの者二人にそんなことをしてただで済むと思うなよ!」

 まったく……状況が読めていないな。

 「立花!」
 「エミリウスの宴」

 長らしき人物の横にいる取り巻きを全員石化させた。

 「なっ……」

 長含む周りで見ていた妖精は何が起きたのかわからないと言った感じだ。

 「いまいち状況が読めてないようだが、ただで済むと思うなだぁ?」
 「ひっ……」
 「まずは貴様等へ聞く。なぜエイムウェルを狙う?」
 「あそこはブルーピーター様に従わない反逆者の集落だ。狙って当然だ」
 「ではそれを指示したのは?」
 「き、貴様らにそれを言う必要などない」

 立花はそれを聞くとさらに何人かを石化する。

 「いまいち状況がわからんようだな?石のまま砕けば死だぞ!」
 「こ、国王様の勅命だ……ロードリオンに従う集落をすべて従わせろとのことだ……」 
 「なるほどな、それで貴様の名前は?」
 「エズードだ」
 「そうか、ではエズードこれより貴様の集落へ罰を下す」
 「罰だと?」
 「ここの大半の妖精は今から石化だ。」

 立花はエズードとさっき捕らえた二人と近くで見ている一部を除くすべての妖精エルフを石化させた。

 「これを周りに告げれば全員砕く!」
 「そんな……これでは……」
 「時期ロードリオンをよみがえらせ今の王は失脚する。それまでここの集落はこのままだしそれまでに貴様らがここの集落からでれば全員石になった奴は戻らないと思え!」
 「馬鹿な……そんなことやれるものなら……」
 「やるよ~それでリオンからのキツイ罰も楽しみにしておくんだね~」

 さっきまで戦闘不能になっていたおじいちゃんがいつの間にか復活していた。

 「なぜリオンにそんなことをしたかは知らないけどさ~」

 いつも温厚な九兵衛さんだが今回の件はとても腹を立てていた。ともに大昔の神争を戦い抜いた友がそんな仕打ちをうけているのが許せないのだろう。何しろロードリオンは妖精族始祖だ、一介の妖精ごときがそんな真似をしていい訳がないのだ。

 「友に手を出してただで済むわけないだろ……」

 俺も含めてその場にいたものはみな戦慄しザルカヴァも今の九兵衛を見て恐怖心を感じていた。

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