前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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3章

59話:その頃クラスメイト達は

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 一度ファーガス王国に戻り迷宮へと向かい、分身体の記憶の更新を済ませる。そこでエミリアと再会していた事がわかり、どこを拠点にしているかを把握した。

 「どうやらエミリアと再会していたみたいだ」
 「エミリアと?」
 「三〇〇層攻略を終えた直後に現れて、勇者達に恐怖を与えたらしいな」

 すると立花が不思議そうな顔を見せる。

 「勇者達がエミリアに何かしたのかしら?」
 「それがナシュワン絡みの話らしい」

 立花にエミリアから聞いた騎士団長との約束を話した。

 「なるほどね……」
 「まぁ可哀そうな話だがな」
 「タピットは勇者達には話したのかしら?」
 「ああ雪と美里は話されたって言ってたから少なくとも上位陣は把握しているな」

 しかもあの二人に助けるよう頼まれているな。勿論手はあるが、まだ手は出せないからな。その間にエミリアが殺しに来ないように交渉する必要はあるな。

 「遠征の延期については何か聞いたかしら?」
 「ああ、やはり一月ぐらいは遅れるだろうって話は出てるみたいだな」

 これなら予定通り妖精の国に遠征しても問題なさそうだな。

 
 ◇


 「毎日訓練ってのも飽きるね」
 「そういうな浩二。逆にこの間に力をつけるチャンスとでも考えようぜ」
 「ハハッ、勿論そのつもりだよ」

 王国側が当初考えた育成プログラムは大方終えた勇者達。今は各自の得意分野を伸ばす為のフリー訓練と模擬戦を行っていた。いつ遠征がスタートするかわからないが、遠征に備えて体を怠けさせる訳にはいかないからだ。むしろエミリアに恐怖を与えられてからは、みなもっと強くなろうと意識する者が大半だ。

 「そう言えば神山はどうしているのだろうな」
 「急にどうした?」

 嶋田はずっと消えた周平の行方が気になっていた。一体何処で何をしているのか……実は雪や美里とも連絡を取っていて、消えた尾形も何か関係あるんじゃないかと考えていた。雪が好きな彼だけに、それぐらいの周平の存在が脅威に思えていた。

 「あいつのことはもう忘れろ。仮に今後どこかで再会したにしても、あいつが俺達と足並み揃えて協力するとも思えないからな」
 「それはわかってるさ……でも俺はあいつが……」
 「危ない!」

 その掛け声と共に魔弾が飛んでくるので、二人は咄嗟に避ける。するとそれを飛ばしてきた二人が嶋田達の元にきて謝る。

 「ごめ~ん」
 「ごめんね」

 謝ってきたのはクラスメイトの田島亜紀と河内洋子だ。田島は茶髪のギャルっぽい感じで地球にいた時もクラスで目立っていた。河内は周平や立花と同じ中学出身でツインテールの女の子だ。

 「俺達は大丈夫だよ」
 「二人とも模擬戦か?」
 「そそっ、洋子と話してたら、試しにやろっかって話になってさ」
 「なるほどな。浩二お前も神山の心配なんざするぐらいなら俺と模擬戦でもするか?」

 周平の名前を聞いたその瞬間、田島は不快な顔を見せ、河内も複雑な表情を見せる。

 「ふん……神山の心配なんか無用だよ……ねっ洋子?」
 「う、うん。あの人の心配とかしたとこでだよね」
 「どういう事だい?」

 嶋田はそれを不思議に思ったのか二人に聞く。

 「あいつは昔洋子に酷い事してるんだよ!」
 「亜紀ちゃんその話はもういいから」
 「そうなのか?」
 「あいつは中学時代、幼馴染の言いなりになって洋子に酷い事をしたんだ……あんな奴迷宮でくたばれば良かったのに!」

 田島のその言葉で嶋田はクラス会議で美里が言った、嵌めようとした奴がいたという発言を思い出す。

 「亜紀ちゃんそれはいいから……」
 「洋子は少し優しすぎるんだよ……あれだってまだ謝ってもらってないんでしょ?」
 「まぁそうだけど……」
 「何かされたのかい?」

 気になったのか、嶋田は二人に聞く。

 「中学の時ね……あいつと洋子はクラスメイトで普通に話す間柄だったんだけど、あいつの幼馴染が……」
 「亜紀ちゃん!」

 続けようとした田島に対し大きな声を出して止める。

 「でも洋子……」
 「それはもういいから……あんな奴の話をしても不快なだけだから……」

 河内はそのままその場から去る。今河内の表情はどこか暗く、トラウマでも思い出したかの様だった。

 「流石に本人の目の前であれは不味かったんじゃないか?」

 木幡が怪訝な顔を見せる。

 「ごめんごめん……つい感情的になっちゃった」
 「それで中学時代神山が何かしたのか?」
 「ああ……あの子があれだからそれは本人の許可を得ないとかな……まぁ神山が全然助けてくれなかったって話だよ。それであの子が可哀そうな目にあったからそれでね」

 田島はそのまま河内の元に戻っていく。この後嶋田と木幡は当然気になり、雪と美里にこの話をしたのだった。
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