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3章

55話:雑貨屋と掘り出し物

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 困ってる九兵衛さんを見捨てて、ギルドを後にした俺と立花は街を散策することにした。

 ギャラントプルームは色々な交易品などが集まる街であることから、各大陸の特産品なども手に入ることができる。魔大陸と貿易しているのはこの街ぐらいだろう。他にもファーガス王国では見ることができなかった、獣人族や妖精族等の種族を見ることができた。

 「この世界の種族は人間だけじゃないんだな」
 「何を今更言っているの」

 本当にその通りである。まぁそうなんだが、転生後この世界に来て、亜人を見るのはこの街が初めてなのだ。

 「いや、今まで見なかったから余計にな」

 ファーガス王国はともかく、ファラリス連邦では妖精と人間以外を奴隷にしているらしくそれ以外の種族が街を堂々と歩くのが難しいらしい。もしファラリス連邦の人間がこの光景を見たら違和感ありありで、自身が見る光景そのものを疑ってしまうに違いない。

 「この街は色んな種族が共存していて素晴らしい街ね」
 「九兵衛さんの作った街だからな。奴隷制度ありのファラリス連邦は見習うべきだな」

 人間は他の種族を恐れているのだ。その現れとしてファラリス連邦は他の種族を奴隷にしたりしているのだ。九兵衛さんは他の種族を恐れたりはしていない。そもそも俺達騎士団他種族共存を謳って世界と戦ったからな。偽神共の完全なる排除こそ出来なかったが大人しくさせることが出来た。その成果がこの街に現れていると言ってもいいし、だからこそギャラントプルームは他種族共存の街になったんだと思う。

 「あそこもいずれ滅ぼそうかしら?」
 「立花さんストップ」

 流石に気が早いな。まぁ奴隷制度なんてのは俺も嫌いだからなるべくなくそうって考えだがな。特に特定の種族を奴隷にするような行為は許しがたい事だ。

 「あの国はいずれ戦うわ。どうせ潰すなら国の体制変えるぐらい徹底的にやらないと」

 まぁ立花の言う通りだし、やるなら徹底的にか……というかロードリオンや九兵衛さんは獣人族なんかが奴隷にされている現状をなんとも思わないのか?

 それとも時がきたら動くのか?どっちにしろ再集結したら方針を話し合うべきだな。

 「まぁそうだな。ロードリオンもその現状を目の当たりにしたら、動くに違いないさ」

 おそらく彼が動かないのも、俺達を待っているのだとふんでいる。

 「そうね、本当はジェラードさんなんかがいてくれたら私たちが手を出すことなく滅んでいるんだろうけどあの人は今ここには来れないから……」
 「ははっ、それは間違いないな~」

 ジェラードさんがきたら間違いなく消し飛ぶに違いない。あの人は奴隷制度そのものに対して過敏に反応するからな。昔竜王として自分の竜人族のいる世界で、竜人族が奴隷にされていた国を片っ端から滅ぼした。その世界はジェラードさんを恐れて、見事奴隷のいない国の出来上がりだ。そもそも奴隷制度イコール悪という偏った考えの持ち主だからな。

 「ねぇ周平雑貨屋いかない?」
 「いいけどなんか欲しい物でもあるのか?」
 「こういう街では掘り出し物があるかもしれないじゃない?王の書で物を見ればそれが何かわかるし」
 「なるほど、レア回収業者になりますかね。久しぶりにやるか」

 当たりをゲットできれば儲けものだ。昔はよく立花とデートがてらやっていたし、それで見つけたレアな武器もたくさんあるしな。

 「ふふっ、決まりね。早速怪しそうな雑貨屋を片っ端から回りましょうか」

 何件か回り最後に行きついた街の裏にある雑貨屋に着いた。人の気配が少ない裏通りにひっそりと存在しているような、そんな感じのお店だ。

 「ここは臭いわね」
 「臭うか?」
 「ええ、入りましょう」

 どうやら立花の直感で、ここには何かレアなものがあるらしい。昔からレーダーでもついているのかと言わんばかりに勘が鋭かったからな。

 中に入るといかにも怪しげなおじいちゃんが店主である物もすごく怪しげだ。

 「いらっしゃいませ~こんなお店によく辿り着きましたな~」
 「ええ、ここは目当ての物がある気がしたの」
 「それはそれは。ただここに置いてあるものはガラクタばかりで、使い道のわからないような物ばかりでしてね」
 「私や彼は物の価値を見抜けるわ。今まできた客と同列にしないでちょうだい」

 俺はともかく立花は王の書があるからな。

 俺達は片っ端から見て回った。まぁ本当にガラクタっぽいのが多く掘り出し物見つけるのは苦労しそうだ。

 「うん、これは?」

 俺は錆びついた槍に目が行ったので手に取ってみた。

 「それは伝説の四戦姫フォースヴァルキリーが使っていた槍との噂ですが、錆付いてますし果たして本当かどうか……」

 戦姫?はてどいつだ。見た所外見は錆ついててボロボロだが力を感じるな。

 「立花、こいつにマースクの導きをかけてみてくれ?」

 俺は立花に槍を渡しそれを受け取ると創生魔法マースクの嘆きを発動した。これはありとあらゆる認識阻害系の魔法をかき消す魔法だ。もしこれが戦姫の槍なら真なる姿を見せるはず。

 「ええ、いくわよ」

 立花が発動すると槍は銀燭の美しい槍へと姿を変えたのだ。蒼と銀に輝くその槍はまさしく戦姫のものである。これを見たのはあの戦争以来か。

 「ああ、これはヒルデの奴のか……」
 「そうね……実がまたキレそうね。」
 「あいつを死に追いやろうとした奴だからな……」

 四戦姫フォースヴァルキリーの一角であるヒルデ・パーシアの物に違いない。四戦姫とはこの世界で恐れられた四人の使者を指し、うちのメンバーだったレダさんもその一人である。ただレダさんとの違いは、ヒルデは偽神側についた戦姫であったという事だ。最後どうなったかは知らないがな……

 「おい、じいさんこいつはどこで手に入れた?」
 「確かそれは……三十年ほど前でしたかな?魔大陸の中の戦争のとある跡地にて、大規模な爆発事故があったのですが、その爆発の中唯一爆発に耐えて、岩に突き刺さっていたものです。当時は凄い槍かと調査したらしいのですが、魔力を感じるだけでまともに使えず、ここに流れてきたのです。まさか噂に名高い戦姫の一人の武器とは……」

 店主はどうやら関心を隠せないようだ。レア度でいえばかなり高いし無理もないだろう。だがこいつは俺達が買わせてもらうぜ。

 「それ買ってくか?」
 「そうね、ただこれ本人じゃないと使えないみたいだけどね」

 どうやら契約武器のようで契約者以外は自由に使えないようだ。すぐに錆びついた状態に戻る。

 「これはいくらだ?」
 「それは銀貨十枚ですな」
 「そんな安くていいのか?白金貨一枚はだすぞ?」

 何しろ俺達金はたくさんあるからな。伝説級の武器だろうし白金貨一枚など安い。

 「いえ、今までそれを見てきたものは、私含めてその価値を見出せなかった。それなのにあなたがたが来てそれの正体を暴き、それを見ていたからと言って値段をあげるような真似はさすがにルール違反です」

 この爺さんは悪くない考えの持ち主だな、何よりその信念は好感が持てる。勿論あまりにぼったくるようなら力ずくに出ようと思ったがな。

 「へへっ、あんたがそう言うなら銀貨十枚で貰ってくよ」
 「ありがとうございます」

 槍を購入した後は、他の掘り出し物にも期待し、店の中を舐めまわすように見た。

 「しかしガラクタばっかだな~まぁそれなりに凄いのもあるが俺達からしたらって感じだし」
 「全部掘り出し物だったらさすがにびびるわよ」
 「だな~」

 立花の王の書の能力で鑑定すると、そこそこの魔具だったりするものが多く見られたが、解析すると大半が使用方法に一癖あるものが多く、その割に性能が期待できない物ばかりだ。

 「おい、じいさん。あんた的に臭い品を教えてくれないか」
 「う~んそうですな……何しろ二人の目が肥えすぎなんですな……こちらとしてはお二人のおかげでガラクタだと思ってたものの使い道がわかり助かっていますがね~」

 店主はそう言いながら少し考えるとこちらに来て首飾りを指した。

 「あれか?」
 「ええ、あとその下にある鍵のような物ですな」

 店主に言われた二つを取り出し解析を始めた。

 「この首飾りは強力な光の守りが付与されたものでレイルリンク王国のものね」
 「レイルリンクか」

 かつての戦いで俺達を色々な意味で翻弄させたレイルリンク王国……懐かしいな~

 そういえばあそこの女王も確か……あれあいつはどうなったんだ……俺はあいつと何か約束を……

 いきなり頭痛が走る。

 「ぐっ……」
 「周平?」
 「大丈夫だ、レイルリンクの女王を思い浮かべようとしたら少し記憶痛がでただけだ。どうやらなんかあったのかもな」

 それを聞いた立花は怪訝な顔を見せる。

 「そうね、レイルリンクの女王は……いいえ、この記憶は自身で思い出すべきかもしれない。あれを今ならどう捉えるのかそれは思い出してみないとわからないから……」

 立花は難しい顔をしながら俺に言った。それはいったいどういうことなのか……俺にはまだわからなかった。

 「一旦出ましょうか?」
 「もういいのか?」
 「ええ、ちょっとお腹減ったし疲れちゃったわ。ここにはまたくればいいことだし。お爺さんこの二つも追加ね」
 「了解しました。銀貨三十枚です」
 「ふふっ、ありがとうお爺さん。また来るわ」
 「こちらこそ今後ともよろしくお願いします」

 店を出たのはおそらく俺を気遣ってのことだろう。

 まったく立花は……できた奴だよ。

 戦姫の槍と首飾りと変な鍵のような物三つを購入したが、低予算で思わぬ買い物をできたしまぁ十分成果があったな。
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