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3章
54話:実の実力
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素材を換金してギルドを出た。
今後はこの街を拠点に動くのも悪くないと思う。何しろこの街に攻めてくる奴などいないからだ。
「さて次の妖精の国では初代妖精王ロードリオンと九十九ちゃんと再会し、妖精の国にあるオンラクの迷宮を攻略して力の回収だね。おそらくあそこの迷宮には立花ちゃんの力の一部である白皇結晶が眠っていたはず」
「詳しいな」
「まぁね、ファラモンドにあるレガリアの迷宮には狂魔結晶がオルメタの迷宮には両方が封印されているってランスロットの奴が言っていたよ~」
「なるほど、先生のお膳立てが予めあるわけだ」
百年前騎士団が散り散りになることを黒姫は予測していたのだろう。現存する二十柱のほとんどが、現在この世界に来ることはできない為、予めその前に力の在りかを見つけだし各迷宮に移したと考えられる。それこそが黒姫やランスロット先生のお膳立てと言える。そもそも九〇〇層にいたマスターゴーレムはこの世界の技術での作成は不可能だし、あの感じからして作成したのは二十柱の一人である図書館だ。
出発は数日後ということになり、それまでは街の観光をすることにした。
「とりあえず今日は二人仲良くデートしてくれ。俺部屋で待機してるあの二人を連れて観光するから」
「すまないな」
「ありがとね」
「それじゃあ俺は行くよ」
実は一人行こうとすると突然呼び止められた。
「そこのお前達!」
俺達を呼び止めたのは転生してからお初となる獣人族の女性だった。短い金髪で整った顔とケモ耳につい目がいき、見蕩れてしまう。あれは獣人族の中の三つの分類の一つである狼人族だ。ただ可愛いだけでなく、その引き締まった体つきには力強さを感じる。
「なんか用か?」
「総長を連れて行くのはお前達か?」
女はどこかご立腹な様子だ。
「そうだがあんたは?」
「私は総長専属の万能秘書であるザルカヴァ・ストイコビッチよ。総長を連れて行くなんて絶対許さない!」
「俺達は九兵衛さんからその申し出を受けているんだが……」
俺は首を傾げて言う。こいつ九兵衛さんのファンか?
「そんなのはわかってる……でも昔の仲間だからって私を差し置いていくなんて私は許せないわ!」
どうやら九兵衛さんに惚れているのか俺達が連れていくのが気に入らないらしい。
ステータスはこんな感じだ。
ザルカヴァ・ストイコビッチ
レベル:202
種族:獣人族
職業:戦士
攻撃:28088
防御:22022
魔法攻撃:20008
魔法防御:22022
素早さ:28088
魔力:20008
異能:トライデントホーン(A)
称号:死槍鬼
「ザルちゃんやめなさい~」
イネーブルが追いかけてきた。
「ぐっ……止めるなイネーブル……私は……」
イネーブルがザルカヴァに飛びつき抑える。
「すいませんね、悪い子じゃないんですけど総長にホの字なもので」
「ああ、見てればなんとなくわかるよ」
九兵衛さんに惚れるとか……物好きも世の中にはいるんだな。まぁ変態なとこがなければしっかり者の出来る人だがな。
「ううっ……私を差し置いていくなど……」
「ザルちゃん諦めなさ~い」
そんなやりとりをしている中、実は口を開きザルカヴァを挑発する。
「だったら俺と勝負して勝ったら連れてくってことにしたらどうだ?」
「実、いきなり何言いだすんだよ」
「この人納得させるなら、それが一番早いんじゃないかな。俺に負けるようなら、迷宮攻略では足を引っ張るということになるし」
「まぁ案としては悪くないわ。そこのあなたもそれでいいかしら?」
「わかったわ……その細い人倒したら私も付いていく……それでいいかしら?」
「ふふっ、成立ね」
決闘のできる場所へと移動する。冒険者ギルド総本山の裏庭だ。ルールはどっちかが負けを認めるまでで、重傷を負うような事態になったら即ドクターストップといった感じだ。
二人は武器を構える。
「しかしザルのやつもしょうがないな~」
どこから現れたのか九兵衛さんが俺達の後ろに姿を現す。
「誰かさんがちゃんと言ってくれればこんなことにはなってないんですがね」
立花は嫌味ったらしく言う。
「まぁそう言わないでよ立花ちゃん。でも迷宮の深層にもぐるなら最低実ぐらいないと連れてはいけないからね」
迷宮の最下層じゃステータス十万超えがざらに出てくる。二十柱を除けば最高クラスの戦闘能力を持つ実でさえギリギリである以上、ザルカヴァを連れていくことは難しいのだ。今回はバニラとネズ子の同行も少し考えているぐらいだ。
互いに武器を持ち構える。実は日本刀をザルカヴァは槍だ。
「ではいきますよ……」
戦いの開始のゴングがきられるとザルカヴァは同時に武器を構えなおし襲ってくる。
「さて、遊んでやるか~」
実は虎徹零式を手に取り構える。
「はぁぁぁぁ!」
ザルカヴァの槍の猛追を鞘の抜いていないまま捌く。ザルカヴァも相当の実力者ではあるが、実の刀の鞘を抜かすには実力が足らないのだ。
「なかなかだな」
実は槍を捌きつつも鞘の収まったままザルカヴァを狙い突く。
「くっ……」
「でも俺達と行くには足らないね!」
実が猛追を始めるとザルカヴァは防戦一方となる。ザルカヴァが後ろに大きく下がった所で実はコントラクトスキルを発動した。これは特殊な魔法を用いたもので、純粋に一定以上の力のあるものが行使することで自身よりも下のものにスキルを与えるというものだ。契約の成立には神魔法の使用が必須なので二十柱を除けば、最低でもレダさんぐらいの力がないと行使することはできない。
「賤ケ岳七本槍!」
実の周りに七本の槍が出現しザルカヴァに向かって飛んでいく。ザルカヴァはなんとか避けたが大きな隙が生まれた。実の戦国統一絵巻は、俺達の世界での戦国時代の戦いをモチーフにしたもので複数技が存在する。
「神速居合抜き!」
実は鞘を抜きザルカヴァがとらえきれない速さで間合いに入り首元で寸止めした。
「チェックメイトだ……」
「嘘……」
ザルカヴァはその場から崩れ落ちた。
「勝者実!」
「腕は衰えてないようね」
「久しぶりに拝見したが安心の腕前だ」
「これで諦めがついたかな。君も強いがまだまだ上には上がいるからね。今回の敗北を糧にこれからも……」
「ううっ……総長そんな私のことが嫌いですか?」
ザルカヴァは顔を真っ赤にして今にも泣く寸前だ。
「そ、そんなことあるわけないだろ~」
「だったらなんで私を連れて行ってくれないんですか?」
「それは危険だからだよ。実ですら倒せない魔物がでてくる迷宮に行くからね~」
「でもあいつの遥か上を行く総長や、そこの二人がいれば私を守りながらいけますよね?」
「いい加減我儘を言うのは……」
九兵衛さんの言葉が悪かったのだろうかザルカヴァはその場で泣きわめく。
「うわぁぁぁぁぁん。総長の馬鹿~ぐすん……なんでそんなこと言うんですか~」
ザルカヴァは泣き出し九兵衛は慰めるようにフォローに入る。
「ごめんごめん、そんな泣かないでおくれ~」
「どうしても我慢できないことがあったら自分に言いなさいって言ったくせに~」
「それは確かに言ったけどね……ほら今回は本当危ないからね……」
「ぐすん……昔何があっても守るからなんて言ったのに~」
「それも確かに言ったけどね……それとこれとは話がだね……」
「総長の嘘つき!うわぁぁぁん」
「落ち着きなさい~」
ザルカヴァは泣き止むどころかさらに大きな声で泣く。一生懸命なだめている九兵衛さんの額からは冷汗が止まらないのか、だらだらと流れている。九兵衛さんの優しさと駄目男っぷりが見事に合わさった結果とも言える。女には基本甘々なんだよねこの人。
「俺達はとりあえず出かけるが後はちゃんと収集つけておけよ」
「まったく九兵衛さんは相変わらず女性には優しいね~」
「君たち?まさか見捨てないよね?」
今俺達を見る九兵衛さんの瞳は、本当に二十柱と疑いたくなるぐらいの弱々しい瞳だ。そんなすがるような九兵衛さんを助けてあげたいとこだが横で立花が俺を睨んでいる。
すまない……自分で対処してくれ……
「周平、俺を見捨てるとか嘘だよね……」
「周平は私とデートなので九兵衛さんは自分で対処してくださいね。」
「そ、そんな……」
俺は後ろを振り向くことなくその場を後にした。実も同様にその場を離れたのだった。
今後はこの街を拠点に動くのも悪くないと思う。何しろこの街に攻めてくる奴などいないからだ。
「さて次の妖精の国では初代妖精王ロードリオンと九十九ちゃんと再会し、妖精の国にあるオンラクの迷宮を攻略して力の回収だね。おそらくあそこの迷宮には立花ちゃんの力の一部である白皇結晶が眠っていたはず」
「詳しいな」
「まぁね、ファラモンドにあるレガリアの迷宮には狂魔結晶がオルメタの迷宮には両方が封印されているってランスロットの奴が言っていたよ~」
「なるほど、先生のお膳立てが予めあるわけだ」
百年前騎士団が散り散りになることを黒姫は予測していたのだろう。現存する二十柱のほとんどが、現在この世界に来ることはできない為、予めその前に力の在りかを見つけだし各迷宮に移したと考えられる。それこそが黒姫やランスロット先生のお膳立てと言える。そもそも九〇〇層にいたマスターゴーレムはこの世界の技術での作成は不可能だし、あの感じからして作成したのは二十柱の一人である図書館だ。
出発は数日後ということになり、それまでは街の観光をすることにした。
「とりあえず今日は二人仲良くデートしてくれ。俺部屋で待機してるあの二人を連れて観光するから」
「すまないな」
「ありがとね」
「それじゃあ俺は行くよ」
実は一人行こうとすると突然呼び止められた。
「そこのお前達!」
俺達を呼び止めたのは転生してからお初となる獣人族の女性だった。短い金髪で整った顔とケモ耳につい目がいき、見蕩れてしまう。あれは獣人族の中の三つの分類の一つである狼人族だ。ただ可愛いだけでなく、その引き締まった体つきには力強さを感じる。
「なんか用か?」
「総長を連れて行くのはお前達か?」
女はどこかご立腹な様子だ。
「そうだがあんたは?」
「私は総長専属の万能秘書であるザルカヴァ・ストイコビッチよ。総長を連れて行くなんて絶対許さない!」
「俺達は九兵衛さんからその申し出を受けているんだが……」
俺は首を傾げて言う。こいつ九兵衛さんのファンか?
「そんなのはわかってる……でも昔の仲間だからって私を差し置いていくなんて私は許せないわ!」
どうやら九兵衛さんに惚れているのか俺達が連れていくのが気に入らないらしい。
ステータスはこんな感じだ。
ザルカヴァ・ストイコビッチ
レベル:202
種族:獣人族
職業:戦士
攻撃:28088
防御:22022
魔法攻撃:20008
魔法防御:22022
素早さ:28088
魔力:20008
異能:トライデントホーン(A)
称号:死槍鬼
「ザルちゃんやめなさい~」
イネーブルが追いかけてきた。
「ぐっ……止めるなイネーブル……私は……」
イネーブルがザルカヴァに飛びつき抑える。
「すいませんね、悪い子じゃないんですけど総長にホの字なもので」
「ああ、見てればなんとなくわかるよ」
九兵衛さんに惚れるとか……物好きも世の中にはいるんだな。まぁ変態なとこがなければしっかり者の出来る人だがな。
「ううっ……私を差し置いていくなど……」
「ザルちゃん諦めなさ~い」
そんなやりとりをしている中、実は口を開きザルカヴァを挑発する。
「だったら俺と勝負して勝ったら連れてくってことにしたらどうだ?」
「実、いきなり何言いだすんだよ」
「この人納得させるなら、それが一番早いんじゃないかな。俺に負けるようなら、迷宮攻略では足を引っ張るということになるし」
「まぁ案としては悪くないわ。そこのあなたもそれでいいかしら?」
「わかったわ……その細い人倒したら私も付いていく……それでいいかしら?」
「ふふっ、成立ね」
決闘のできる場所へと移動する。冒険者ギルド総本山の裏庭だ。ルールはどっちかが負けを認めるまでで、重傷を負うような事態になったら即ドクターストップといった感じだ。
二人は武器を構える。
「しかしザルのやつもしょうがないな~」
どこから現れたのか九兵衛さんが俺達の後ろに姿を現す。
「誰かさんがちゃんと言ってくれればこんなことにはなってないんですがね」
立花は嫌味ったらしく言う。
「まぁそう言わないでよ立花ちゃん。でも迷宮の深層にもぐるなら最低実ぐらいないと連れてはいけないからね」
迷宮の最下層じゃステータス十万超えがざらに出てくる。二十柱を除けば最高クラスの戦闘能力を持つ実でさえギリギリである以上、ザルカヴァを連れていくことは難しいのだ。今回はバニラとネズ子の同行も少し考えているぐらいだ。
互いに武器を持ち構える。実は日本刀をザルカヴァは槍だ。
「ではいきますよ……」
戦いの開始のゴングがきられるとザルカヴァは同時に武器を構えなおし襲ってくる。
「さて、遊んでやるか~」
実は虎徹零式を手に取り構える。
「はぁぁぁぁ!」
ザルカヴァの槍の猛追を鞘の抜いていないまま捌く。ザルカヴァも相当の実力者ではあるが、実の刀の鞘を抜かすには実力が足らないのだ。
「なかなかだな」
実は槍を捌きつつも鞘の収まったままザルカヴァを狙い突く。
「くっ……」
「でも俺達と行くには足らないね!」
実が猛追を始めるとザルカヴァは防戦一方となる。ザルカヴァが後ろに大きく下がった所で実はコントラクトスキルを発動した。これは特殊な魔法を用いたもので、純粋に一定以上の力のあるものが行使することで自身よりも下のものにスキルを与えるというものだ。契約の成立には神魔法の使用が必須なので二十柱を除けば、最低でもレダさんぐらいの力がないと行使することはできない。
「賤ケ岳七本槍!」
実の周りに七本の槍が出現しザルカヴァに向かって飛んでいく。ザルカヴァはなんとか避けたが大きな隙が生まれた。実の戦国統一絵巻は、俺達の世界での戦国時代の戦いをモチーフにしたもので複数技が存在する。
「神速居合抜き!」
実は鞘を抜きザルカヴァがとらえきれない速さで間合いに入り首元で寸止めした。
「チェックメイトだ……」
「嘘……」
ザルカヴァはその場から崩れ落ちた。
「勝者実!」
「腕は衰えてないようね」
「久しぶりに拝見したが安心の腕前だ」
「これで諦めがついたかな。君も強いがまだまだ上には上がいるからね。今回の敗北を糧にこれからも……」
「ううっ……総長そんな私のことが嫌いですか?」
ザルカヴァは顔を真っ赤にして今にも泣く寸前だ。
「そ、そんなことあるわけないだろ~」
「だったらなんで私を連れて行ってくれないんですか?」
「それは危険だからだよ。実ですら倒せない魔物がでてくる迷宮に行くからね~」
「でもあいつの遥か上を行く総長や、そこの二人がいれば私を守りながらいけますよね?」
「いい加減我儘を言うのは……」
九兵衛さんの言葉が悪かったのだろうかザルカヴァはその場で泣きわめく。
「うわぁぁぁぁぁん。総長の馬鹿~ぐすん……なんでそんなこと言うんですか~」
ザルカヴァは泣き出し九兵衛は慰めるようにフォローに入る。
「ごめんごめん、そんな泣かないでおくれ~」
「どうしても我慢できないことがあったら自分に言いなさいって言ったくせに~」
「それは確かに言ったけどね……ほら今回は本当危ないからね……」
「ぐすん……昔何があっても守るからなんて言ったのに~」
「それも確かに言ったけどね……それとこれとは話がだね……」
「総長の嘘つき!うわぁぁぁん」
「落ち着きなさい~」
ザルカヴァは泣き止むどころかさらに大きな声で泣く。一生懸命なだめている九兵衛さんの額からは冷汗が止まらないのか、だらだらと流れている。九兵衛さんの優しさと駄目男っぷりが見事に合わさった結果とも言える。女には基本甘々なんだよねこの人。
「俺達はとりあえず出かけるが後はちゃんと収集つけておけよ」
「まったく九兵衛さんは相変わらず女性には優しいね~」
「君たち?まさか見捨てないよね?」
今俺達を見る九兵衛さんの瞳は、本当に二十柱と疑いたくなるぐらいの弱々しい瞳だ。そんなすがるような九兵衛さんを助けてあげたいとこだが横で立花が俺を睨んでいる。
すまない……自分で対処してくれ……
「周平、俺を見捨てるとか嘘だよね……」
「周平は私とデートなので九兵衛さんは自分で対処してくださいね。」
「そ、そんな……」
俺は後ろを振り向くことなくその場を後にした。実も同様にその場を離れたのだった。
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