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2章

40話:番人と戦い(二度目)

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 アルマンゾールに帰還すると毎度死にかけているバニラを目にする。まだ二日目だがいずれ慣れてくると信じたい。

 「あら周平遅かったわね。魔神モードのオーラをかすかに感じた時は、さすがに少し驚いたけど強敵でもいたのかしら?」

 さすがに魔神化したのは波動を検知されるからわかるか。

 「ああ、ザ・ディサピアランスを喰らってつい魔神化したんだ。」

 その言葉を聞いた立花は顔色を変える。普段冷静な立花もそれを聞いて冷静にはいられなかったのだろう。竜王ジェラード・コード・ハイペリオンは色んな意味で俺達の記憶に鮮明に残るぐらいインパクトがあったのだ。

 「ジェラードさんでもいたのかしら?」
 「いやそういうわけではないよ」

 何があったかを立花に話す。さすがに力が不完全じゃあれには勝てない…まぁジェラードさん自体味方側ではあるがな。

 「なるほど、私の神細剣ローズメイデンもあるってことね……よく見つけたわ」
 「九兵衛さんが行けといった訳がわかったよ」

 俺達がロストした武器の回収をしてくれということだったのだろう。他の武器を見た感じ、あの武器はロストするとあそこに行くようになっている。

 「そうね。私も明日そこに取りに行くわ。簡易転移装置は作ってあるかしら?」
 「ああ、それは入り口前に作ってあるから大丈夫」
 「助かるわ。ただジェラードさんのあれを喰らわないといけないのは癪ね…私はあなたより再生速度は遅いし……」

 再生速度に関しては、魔神は二十柱じゃトップクラスである。そんな自分でも不完全なため消滅の力を受けて再生に少し時間がかかった。立花が喰らえば、俺以上に再生に時間を有するだろう。二十柱にはそれぞれ固有能力があり、竜王は再生不可の消滅の力だ。魔神は再生力も高いが、固有能力は戒律という解呪不可の呪いのようなものでカースギフトを与えるものだ。大賢者の叡智はすべてを見抜く知性と魔力を得るものだ。一つ言えるのはどれもそれぞれ違う意味でチートであるということだ。

 「出来るだけ防御魔法を展開して軽減するしかないかな……あれは反射無理だし相殺しきれないだろうから防御重視でいくしかない」
 「そうね……」
 「ところでバニラはどうだ?」
 「フフッ、ちゃんと生きているから大丈夫よ~」

 確かに生きてはいるが……いったい何回殺しかけたのか……

 「バニラのセンスはなかなかよ。だから思わずつい鍛えすぎちゃったの」

 立花の奴笑いながら言ってやがる……相変わらずのSっぷりは健在だ。騎士団メンバーの何人かを鍛えた時も追い込んで恐怖を植え付けていたな。

 「それで一月でどれぐらいものにできそうか?」
 「おそらく第五位階まではだいたい習得、六と七も数種類なら詰め込めるわ」
 「いい感じだな~良かったなバニラ」

 バニラは俺を見て、泣きそうな顔で睨みつけるが言葉ではない。俺はお前を信じているぞ。お前ならやれる…自分を信じるんだ。

 「さすが立花だ、この調子で頼む。俺はこの山脈の探索を引き続き行う」
 「わかったわ」

 バニラに何をされたのか聞くと、ただ川を何度も見たというので同情を覚えたのは言うまでもない。さて今日の夜ご飯は十割そばと手打ちうどんだ。あらかじめ作ってくれるように頼んでいた。それらを食べた俺と立花はまたも感動を覚えた。

 「昔長野のほうで食べた十割そばを思い出してさ……」
 「私も秋田で食べた有名なうどんを思い出したわ」
 「二人とも意外とマニアックなものを食べたがるんでびっくりだよ」

 折角だしより日本っぽい食べ物をチョイスしていこうと思う。今までで食べた事のないやつもまだまだあるからな。

 「見かけによらずおっさん臭いチョイスだ……」

 これでも生きた年数だけで言えば、カゲロウと同じぐらいだからな。

 「グルメと呼ぶんだな」
 「フフッ、そうね~」

 美弥さんが笑いながら言う。しかしなんでこの街だけこういう日本っぽくしてるのかも疑問だ。

 「こういう街は他にもあるんですか?」
 「いや、俺と美弥の異能を考慮して九兵衛さんがこういう風にしてくれたんだ」
 「レダさんっていう方と直樹さんって方がこの街を変えるのに色々やってくれたの」

 二人とも騎士団のメンバーじゃないですか。レダさんは四大戦姫フォースヴァルキリーの一角で二十柱や偽神を除けば世界最強クラスの一人で、直樹は初代勇者の一人で天才と言われた男だ。温泉だったり水田だったりをどうやって確立したのか疑問だったが、あの二人が魔改造したなら納得だ。

 「懐かしい名前だ……」
 「レダさんはともかく直樹が生きてるならみんなしっかり生存してそうね」
 「だな~」

 大半が年を取らない系の人材で構成されていたからな。

 
 ◇


 一週間ほど経った頃に立花は剣の回収へと向かった。すぐ行かなかったのはこのバニラの訓練をキリの良い所までやりたかったからとのことだ。今日一日はカゲロウの監督なので泣いて喜ぶバニラの面を拝んだところであそこに向かった。


 「ハァァァ!」

 俺は立花の戦闘を観戦していた。色々と対策を立てて臨むように言っていたのでいい感じに戦いが進んでいた。

 「流石大賢者の力だな。大賢者の叡智は神破魔軸空間の影響を受けない。創生魔法なら使い放題ってわけだ」
 「そうね。二十柱の中では私が一番相性が悪いようね」
 「向こうも可哀そうだなこりゃ……」

 立花は創生魔法エレノアの光というので身体能力の強化及び耐性をつける。これにより呪術をはねのける守りをつけているためワンサイドゲームだ。神破魔軸空間は自身も魔法を使う事ができなくなる。加えて物理攻撃が得意ではないエルダーリッチでは立花にダメージを与えるのは不可能に近かった。

 「話にならないわね」

 立花は直接攻撃でダークロナルドを追い詰める。無言で応戦するダークロナルドがかわいそうになってくるぐらいだ。立花はザ・ディサピアランスが来るのをわかっているから最初から本気なわけだ。

 「ここら辺でしめましょうか、破槍アイシングラス!」

 空間に生み出される古代文字の刻まれた大槍はダークロナルドの体を貫く。物理無効のダークロナルドにダメージを与えらえることができるのは創生魔法による攻撃だから。


 「これで終わりね!」

 そして俺の時と似たようなコメントを残しザ・ディサピアランスが発動する。立花はあらかじめ賢者モードへと体を変化させて受ける態勢だ。賢者モードになると瞳が金色になり強力なオート魔方陣が体を守るように自身の周りに配置される。

 「ダイオメドの盾!」

 立花は身体強化に盾まではり備える。さてどうなるか…俺の時も最初から分かっていればもっとダメージを軽減できたのは間違いない。

 「うっ……」

 それは一瞬の出来事だった。やはり竜王の消滅の力であるザ・ディサピアランスは伊達ではない。立花は両腕の前腕が吹き飛び、その場で崩れ落ちる。

 完全じゃない状態の賢者モードではやはり駄目だったか…

 「はぁはぁ………ジェラードさんのやつと同等の威力ってのが気に入らないわね…オーヴィルの癒し……」

 吹き飛んだ腕の再生を始める。しかし再生速度も高速というわけにはいかずすぐにとはいかなかった。

 「大丈夫か?」
 「ええ……分かっていたけどこのあの技は辛いわね……」
 「ああ。この転移装置の先に置いてあるはずだ」

 腕の回復を終え、立花は転移装置に触れて移動。数分後に剣を手に戻ってきた。

 「そろそろ王国に一旦戻りましょうか?」
 「いきなりだな?確かに丁度いいタイミングではあるな」
 
 迷宮にいる分身体と記憶の共有をしないといけないからな。クラスメイト達がどこまで攻略したかも気になるところだ。

 「フフッ、決まりね~」
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