前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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2章

37話:隠し洞窟

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 夕方まで進んだところで簡易転移陣を作成して結界を貼りアルマンゾールに帰還した。帰還すると立花達も帰っており、予定していたマツタケご飯とマツタケのお吸い物、土瓶蒸しをごちそうになった。高級食材食べるために白金貨を2枚ほど渡しておいたので毎日の料理が楽しみでしょうがない。

 だがバニラはグロッキー状態で死にかけていた。

 「よっ、大丈夫か?」
 「死ぬ……助けて……」

 すがる様に助けを求めるそんなバニラの表情を見て、いたたまれない気持ちになったが、ここは心を鬼にしないとだ。そもそも立花からもう逃げられないしな。

 「耐えろ!そして生きろ!」
 「おにぃぃぃ!」
 「大丈夫よ、これで一月経つ頃にはあなたは強くなるわ~」

 立花がバニラの肩に腕をかけるとバニラは顔を青ざめる。

 「あんまり虐めるなよ……」
 「虐めるなんてとんでもないわ~私は愛のある指導を虐めだなんてとんでもない!ねっバニラ?」
 「は、はい。虐めじゃないです……」

 あっ、これは……もう抵抗することを諦めた目だ。一日でこうなるとは……頑張れ。

 
 ◇


 「んじゃ立花、また探索してくるわ」
 「了解」
 「バニラお前は死なない。大丈夫だ!」
 「ううっ……周平のばかぁぁぁ」

 すまんな……俺はお前を助けない。でもそれが助けになるはずだ。立花達と別れ俺は山脈の中へと移動した。昨日転移陣を貼ったのは景色が一望できる高台のような場所だ。ちなみにこの山脈を超えるとギャラントプルームに辿り着く。九兵衛さんはアルマンゾールに来た後の帰りは、ここを超えてギャラントプルームに戻るらしい。

 「さて行くか」
 「おう、それで今日はどうするんだ?」

 昨日の探索の時点で気になる場所があった。暗くなりそうだったので引き上げたが、ただならぬ力を感じる所があったのだ。場所はこの山脈の中心部……そこをせめてみよう。

 「気になる場所があってさ。そこに行こうと思う」
 「オーケー」

 力の感じる方向へと進んでいくと途中魔物の群れに囲まれた。今度はシルバーウルフの群れだ。

 「シルバーウルフの群れか……やはり奥に進めば進むほど強いのが出て来るな」
 「今回は俺にやらせてくれ」

 昨日の戦闘はカゲロウ一人に任せっきりだったからな。たまには俺も戦いたい。

 「雑魚はどいてろよ」

 宝物庫シャッカンマーから武器を具現化させ、ウルフの群れにむかって落とす。ウルフたちは瞬く間に倒れる。

 「相変わらず凄い異能だ……」
 「ハハッ、大したことはないよ」

 この山脈を超える最低ラインがレベル百越え四人らしいから、ソロで超えるには戦闘能力だけで見ればだいたい百五十レベルぐらいだ。冒険者で言うとこの金ランク程度だ。バニラは一月でどれぐらいまで行くかだな。

 魔物が現れては屠り力の感じる方向へ向かっていく。ここの魔物は一番弱いのでだいたい迷宮七五層のボスぐらいってとこか。当然強いほうの魔物のレベルは三桁いっているだろうからなかなかレベルが高い。

 「カゲロウ大丈夫か?」
 「ああ……別に倒せない程ではないからな。ただお前の力に圧巻されているだけだ」
 「ハハッ、俺の力はこんもんじゃねぇぞ~」

 大きな力の感じる場所まで近づいた。周りは岩壁ばかりの山道だが、特に何かあるわけでもない。

 「う~ん、ここら辺から感じるんだが……」
 「何もないし違うんじゃないか?」

 そんなはずはない。周りを見渡し、力の流れを感じてささいな違和感を見つけるんだ。精神を集中し力の流れを感じ取った。実際の目ではなく心の眼で感じ取る……昔二十柱の一角である図書館(ザ・マスター)に教わったあれを思い出すんだ。力が漏れ出るわずかな場所を感知する……そこが答えだ!

 「見えた!」

 一件普通の岩壁のようになっているここだ。ここから漏れ出ている。触れて魔力を注ぎ込むと壁は共鳴する。

 「俺の力をぶつけてやれば……」

 自身の気の波動を壁にぶつけたことで壁は入り口に変わった。

 「隠し扉か……こんなところにあるとは……」

 九兵衛さんが行けと言ったのはここに間違いないはずだ。さて中に何があるかだな。

 「よし進むか」

 そう思ったさなか、ひと際毛並みの違う大きなウルフがシルバーウルフを引き連れてやってくる。

 「周平……」
 「全く邪魔を……」

 ひと際デカいウルフ。こいつは今までのとは違うな。

 カイザーウルフ
レベル120
種族:獣種
攻撃:12000
防御:10000
魔法攻撃:10000
魔法防御:10000
素早さ:16000
魔力:12000
固有スキル:仲間呼び、狼脚斬、怪音波

 まったく次から次へと……

 「へぇ……一発で消してやるよ!」

 放つのは第九位階魔法。空間系の魔法だ。

 「ゼロディメンスィオ!」

 これは対象というか一定の空間に存在するものを圧縮し無くすという魔法だ。これを喰らったカイザーウルフは体の大部分を消失する。

 「雑魚にはこれだ!ディバインバルカン!」

 これは神々しい光の弾丸を無慈悲に一定の空間に放つ聖属性の第九位階魔法。これに被弾したシルバーウルフの群れは一瞬にして消滅した。これは広域に広がっての魔法なので使いどころは少う場面を考えなくてはいけないが、ここなら問題はない。

 「さて素材は回収っと」
 「そんな魔法は見た事がないんだが……」

 カゲロウは唖然としている。ここに来るまでは大きな魔法なんかは発動していないからな。そもそも俺は異能で何とか出来る敵には異能で対処するタイプだ。第八より上の魔法は使えば大半の敵を倒してしまう強力な物が多い。あまりに簡単に倒してもつまらないからな。

 「本来は本当に強い敵と戦う時しかここら辺の魔法は使わないんだ」
 「だろうな。魔王を余裕で倒せるなんてのもすんなり信じられる」
 「当然だ。そんなか弱き存在に俺は負けんよ」

 といっても初代魔王と言われた人だけは別だがな。

 「しかしあんだけ派手に倒すと素材も取れないから確かに勿体ないな」
 「ああ、次からは気をつけるよ」

 魔物を倒すと素材と魔石が手に入る。だが消滅するぐらいの攻撃を放つと、魔石は拾えるが素材は手に入らない。高位な魔法を使わないのもこれが理由だったりする。レアなカイザーウルフの死体はしっかり回収すべきだったので、調子乗ってあんな魔法を放ったのはミスだったな。

 気持ちを落ち着けんといけないな。つい高ぶって発動してしまった。

 「さて進むとしますか~」

 洞窟の奥へと進み力の感じる方向へと進む。敵もカイザーウルフ級の敵がうじゃうじゃいるので、カゲロウは驚きを隠せない様子だが俺の敵ではない。中はレベル二百超えが四人ぐらいが理想だろう。自重の知らない魔法を放つと素材回収に支障がでるから上手く倒し回収していく。

 「しかし中のつくりは随分と古式だな……」

 洞窟かと思いきや進んでいくと中は神殿のようなつくりになっている。誰が作ったのか非常に気になるが、神殿のつくりのくせにレベル百超えの魔物を徘徊させているのが気になるところだ。こういった歴史的な建造物を破壊するのは正直好まないがこの魔物達を徘徊させて保っている所を見ると強度はかなり高いのだろう。

 「昔の記憶だとこの作りは古代ヘロド式の建造物だ」
 「知らない様式だ……」
 「無理もないな。三千年ぐらい前だし」

 今からだいたい三千年前の建造物ということになる。たしか当時は初代魔神や初代鬼神や初代竜王がこの世界を滅ぼそうとする前の時代で、天使族がまだたくさんいたころだ。

 「しかしこの場所でダークベヒーモスとホーリードラゴン、ディアボロス計十体に囲まれるとはなんとも違和感を感じずにはいられんな…」

 囲まれるとカゲロウは流石に狼狽えたのか俺に助けを求める。

 「流石にヤバイ……何とかしてくれ」

 ホーリードラゴンがレベル一六〇、ダークベヒーモスがレベル一五〇、ディアボロスがレベル一二〇か。

 「だいたいディアボロスでステータス平均が二万二千、ダークベヒーモスで三万、ホーリードラゴンで三万二千ってとこか……よし狂剣オーガニクスと聖剣カラドボルグの双剣術でやってみるか」

 剣を両手に構える。

 「スウィンフォード双剣術皆伝……乱れ桜!」

 目に見えない速度で動きまずはホーリードラゴンを瞬殺。

 「ディアボロスにはこれだな」

 聖属性の剣を宝物庫から具現化させディアボロスに向かって落下させる。

 「さらに……」

 剣をしまい、物質具現によりマシンガンを具現化させ連射する。弾はもちろん魔力を込めた魔弾だ。ディアボロスは断末魔をあげて息絶える。

 「ベヒーモスにはこれだ……ヴァイスシュヴァルツ!」

 追跡能力のある白と黒の無数の弾丸で攻撃する第八位階魔法だ。ベヒーモスは耐えきれず息絶えた。

 「今度は素材回収できるな」
 「ヤバすぎ……というか入口で待ってればよかった……」
 「俺がいれば大丈夫だ。社会勉強だと思って見ててくれ」
 
 中はそこまで広くなく、最奥まで進むと転移装置のようなものがあった。
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