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2章

33話:盗賊団のアジト

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 「この先だ」

 洞窟の中は一本道になっており、話によれば大きな空間がこの先に広がっているとのことだ。その広間の先が居住区だったり、財宝の置き場になっているらしい。そして今日は、洞窟のその広間にボス含む百人程のメンバーが揃っているとのことだ。今日は俺達を襲い、女を持ってくるという予定だったらしいのだが、それが二十人五体不満足の牢屋送りだと聞いたらびっくりするだろう。

 「ボス今帰りました……」

 キャロネロは力のない声で言う。駄目でしたんなて報告するからそれは嫌だろうな。でも今は俺達に拷問される方が怖いんだよな。

 「おう、遅かったな。残りの奴らはどこだ?それとそいつらはなんだ?」

 ボスの名前はアーンヒル。昔は冒険者でそこそこな腕前だったらしいが素行の悪さに仲間を騙したりでギルドから追放された。今はここいらで悪さして幅を利かせていると。

 「あんたが盗賊団のボスか。悪いが俺達を襲った二十人は全員牢屋行きにしたよ」

 その言葉にアーンヒルは身構え、全員がこっちに武器を構える。

 「てめぇ、自分が何いってるのかわかっているのか!?」

 当然キレて、今にも襲ってきそうな勢いだ。

 「ああ、それで提案だが死にたくなければため込んだ宝をこっちに渡しな。そうすれば命だけは助けてやるよ。」

 すると周りはみな笑い出す。まぁ当然の反応だ。

 「お前本気でいってるのか?お前ら数人に対してこっちは百人以上はいる。どうやって勝つってんだ?」

 喧嘩は数じゃない。キョロネロがわざわざ俺達と一緒に来て、二十人倒したと言った時点で、自分達の勝ちを疑えないとは愚かな奴だ。だがちゃんとキャロネロがボスを説得するらしいから見物だ。こいつらが大人しく降伏したら宝を回収するだけにしてやると約束したが、まぁそんな穏便に行くわけはないがな。

 「ボス!頼むからこいつらには逆らうな。こいつら二十人で囲ってやろうとしたらその二十人は一人人ずつ瞬く間にさばいて倒していったんだ!それもわざわざ両手を切断したり両足切断したりで悪夢だった………俺も何回も腕とか足をちぎられては再生させられて、案内しなきゃ体は戻さないって言われたんだ。頼むから逆らわないでくれ!」

 キャロネロの必死の懇願に対しボスはそれを一蹴する。

 「おい、何馬鹿いってやがる。それとてめぇ俺達を売ったのか?」

 ボスがキョロネロを鋭い目付きで睨みつける。これはもう激おこぷんぷん丸だな。

 「違う!こいつらがボスを説得する時間をくれるっていうから。仲間がやられるとこなんてみたくねぇよ!」
 「お前、俺を誰だと思ってやがる?俺の強さをお前はよく知ってるよな?」
 「ああ知ってるさ……だけどボスでもこの二人はヤバイんだ……レベルが違う……」

 その言葉にボスの怒りが爆発したのか顔を真っ赤にして怒鳴る。こいつは多少なりとも腕はあって、その強さに自信を持っているだけに、どこの馬の骨かもわからない奴が自分より強いなんて認めるわけにはいかないだろうからな。

 「お前後でおしおきだ!おいお前らあいつらを料理するぞ!」

 ボスの掛け声と共に全員が動き出す。さてこれで降伏の線はなくなったし予定通り殲滅のプランに入れる。これだけの人数で今までたくさん人を食い物してきたんだ。財宝もたくさんあるに違いない。

 「交渉決裂ね」
 「そうだな……んじゃ予定通りにいくか」
 「そうね、周平はボス以外は何もしなくていいわ~」
 「了解~」
 「おいおい……今度は何を見せてくれるんだ?」

 カゲロウが気になったのか聞いてくる。

 「衝撃的な強さかな」

 雑魚を命を奪う事なく、大きな音を立てず、一瞬で葬れる技で立花のこれの右に出る技はないからな。

 百人以上の荒くれ共が一気にこちらに向かって来る。この騒ぎ声が一瞬にして無くなるその瞬間をとくとご覧あれ。

 「エミリウスの呪縛!」

 これは立花が使用する創生魔法の一つだ。効果は任意の範囲内にいる、魔法耐性値の低い生物全てを石化させる魔法だ。立花は前世の戦争の時、これで敵の兵士をたくさん石にしてしきた。石にされた状態で体の一部を破壊して元に戻すと、一部がなくなった状態になる。石の状態で頭とかを破壊して死んだと判定されると、体はもう石からは戻らないといった感じだ。ただこれは魔法耐性が高い者や純粋に能力の高い者には効かないことが大半で強い者には有効ではない。

 「えっ……」

 ボス以外全ての人間を石化して動かさなくしてやったのだ。驚かないわけがない。これにはうちのメンバーも目を点にしてその様を見ている。

 「これであとあなた一人ね~」
 「だな~ご苦労さん」

 今度は俺が前に出てそのままボスの元へ歩いて向かう、きっとその歩いてくる様は、ちょっと恐怖を感じたに違いない。そしてそれと同時にやっと力の差も感じ出してきただろう。

 「くっ……」

 ボスは剣を手にそのまま向かって来る。たくさんいたと思っていた仲間は全員石になり、今はボス一人。今こちらに向かって来るボスにとって悪夢だったに違いない。

 「ハァァァァ!」

 こちらに向かって来る剣をそのまま避け、それと同時に宝物庫シャッカンマーから聖剣カラドボルグを出し両腕を切断。

 「ギャァァァ!」

 激痛とともにあげる叫び声。流石にこの時点で自分が狩られる側だとわかったのだろうか。痛みに悶えるその表情には恐怖が芽生えてきているのがわかる。だが俺はまだ攻撃を止めない。

 「いい顔してんぜ~」

 そのまましゃがみ込み両足も切断し、倒れこもうとするのでそのまま天の糸で体を結び付け拘束する。

 「どうした?随分と貧相な腕と足だな?」
 「ぐっ……貴様……」
 「お前が降伏しないせいで全員石になって、お前は五体不満足だ。気分はどうだ?判断ミスを悔いているか?」

 俺が挑発気味な事を言うと、苦虫を嚙み潰したような顔で俺を睨む。

 「いつかお前を殺してやる……」

 ほう、まだ折れていないようだな……ならキャロネロと同じような……いやそれ以上の事をしてやろう。

 「立花!あとは任せてもいいか?」
 「ええ、流石に可哀そうだし体くっつけてあげれば?」
 「お前がそういうなら……」

 切断した体を再生させてくっつける。多分あれをやるのだろう。

 「いくわよ……ストックウェルの審判!」

 立花のこの創生魔法は、簡単に言えば魂の浄化だ。だがこれは不浄に穢れた魂を容赦なく浄化する。人間の身でそんな悪さばっかりしてた状態でこの魂の浄化を受けて、果たして人格を保てるのだろうか?人を殺して罪悪感がなかったり、快感を得ているような人間はこれをモロに受けたら耐えられない。

 「ウォォォ!」

 人型の影が光となってボスを包み込む。包み込まれた後のボスは体の毛が白くなり、廃人へとなった。もう話しかけてもまともな返塔を得ることは出来ないだろう。目が虚ろな彼には少し同情を覚えるぐらいだ。

 「浄化完了ね」

 この魔法は決して攻撃系の魔法ではなく、聖者のような人間にはむしろ力を与えるし二十柱のような存在や、強い魂を持つ者、悪意のない者には効かないのだ。それと穢れていても、魂の浄化を心の底から受け入れて者は、その者を善人へと変える。ただ穢れているような奴は大抵それを受け入れることはないがな。

 「あっけなかったな」
 「そうね。百人切り刻むのは面倒だと思ったから」
 「助かったよ。ありがとう」

 アジトにはさっきまで百人ちょいいたが、今は数人しかいなくなり静寂が訪れた。さっきまで賑わっていた洞窟は、元の静けさを取り戻したとも言えるだろう。

 「さてキャロネロ。」
 「はひっ!」
 「お前のおかげで盗賊団を倒すことができたよ」

 ちゃんとお前は五体満足で精神も破壊しないでおいてやる。これは約束だし、一応クズ相手でも約束は守らないとだ。

 「それはよかった……俺はもう大人しく暮らすからそれじゃあ……」

 そう言って退散しようとするキョロネロを当然逃がすはずはない。逃げようとしたキャロネロの腕を掴む。

 「何するんだ……俺はもう……」
 「あなた何か勘違いしてるわ。」
 「へっ!」
 「あなたも仲間でしょ?」
 「でも……俺を助けてくれるって…」
 「案内をしてくれた代わりにあなたの命や体は元のままだけど、罪は償わないとね。」
 「えっ?」

 立花は笑顔を見せながら光の縄をだしてキャロネロを拘束する。

 「あなたもギルドに引き渡すわ。当然でしょ?」
 「そんな……」

 キャロネロは落胆する、まぁ生かす以上は当然だ。

 「逃がしてくれな……」
 「さっきの魔法あなたにもやりましょうか?」

 立花は笑顔で言うとキャロネロは顔を青くする。

 「……廃人になりたくありません……」
 「フフッ、ならわかるわね」

 盗賊団のお宝はしっかり回収し、団員をギルドに転送して洞窟を後にした。
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