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2章

32話:尋問

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 「熱いか?」
 「ひっ…熱い……助けて……」

 今キャロネロの手は、数百度の熱で大火傷をした状態だ。全く嘘つきは泥棒の始まりだな。認めない限りはどんどん痛めつけてやればいいだけの話だ。

 「お前はこいつらの仲間か?」
 「ひっ……そ、そうだ。俺は盗賊団の一員だ……」

 簡単に自白したな。数百度の熱に耐えることはできなかったようだ。

 「そうか~やっと自白したな。それでお前の盗賊団での地位は?」
 「五、六番手……上の中では身なりが一番綺麗だから俺がこうして囮をやっている……」
 「てことはこうして何度も弱い奴を食い物にしていたんだな?」
 「そうだ……俺達は盗賊だからな……」
 「不快だわ……私達まで弱者に見られるなんて」

 締め付けているツルももっとキツく締め上げる。ツルには棘があり、強く締め付けると同時に体に食い込み、肉を裂く。

 「ギャァァァ!」
 「私達ってそんなに弱く見えたのかしら~」

 多分立花やバニラみたいな美少女に目が眩んだんじゃないかな。あの二十人ならカゲロウ一人でもどうにかなるレベルだったし。

 「し、知らなかったんだ……あんた達がそんなに強いなんて思わなかった。知ってたら……ギャァァァァ!」

 立花さん容赦ないっす。これたぶん相当痛いっす。

 「力を見余ったせいでこの有様だな~お前のせいで部下たちは五体満足じゃなくなったぞ?」
 「へっ、お前等の方がよっぽど悪人ずらしているぜ……こんなこと普通は思いつか……ギャァァァ!」

 ちょっとムカついたので砂の王デザートロードの異能で右の上腕ごと斬り落とし、立花の回復魔法で腕の出血のみを止める。

 「お前勘違いしてるぞ?」
 「へっ?」
 「俺達は今ここでお前を殺しても悪にはならない。そもそも正義と悪ってなんだ?」

 悲しい事に世の中は強い奴が正義なんだ。権利は強者が有し、その強者の力の及ぶ範囲は、その強者の掟となる。この盗賊団も盗賊団の中ではボスや上位陣が絶対的でそいつらが掟を作る。

 「正義と悪なんざ強い奴が決めるんだ。強者は道徳を蹂躙し、弱者は道徳に愛撫される。そしてお前達のような半端者はその道徳の被害者となる。弱者でいることも出来ず、強者にもなれず弱者を食い物にするお前達に、正義も悪も語る資格はない!」

 達磨落としのように両足首を切断すると悲鳴を上げ、すぐに出血を止める・

 「悪魔め……傲慢とはまさにこの事……」
 「傲慢とはまさに誉め言葉だな。お前の罪は無礼を働いたこと……無礼とは強者の真似をした弱者の態度だ!」
 「フフッ、周平ったら私が貸してあげた偉人の名言集しっかり読んでくれたのね~」

 ご機嫌な様子でこちらに来る。そりゃあなたが問題とか出して、読んでないでわからないって言うとそりゃもう一緒に読み書きまでさせられましたからね。忘れるわけないでしょう。

 「あんだけ読まされて忘れるわけがないだろ?」
 「フフッ、そうだったわね~」

 今度は立花がキャロネロの前に来るとツルをまたキツく縛り悲鳴を上げさせる。

 「腕元に戻してほしいかしら?」

 クスクスと笑いながら問いかける。

 「あなたが盗賊団のアジトまで連れて行けば戻してあげてもいいわ。勿論五体満足でいさせてわげるし」
 「ふっ……そこまで落ちてはいない……こいつらもそうだが仲間を売るような真似は……ぐっ!」

 熱線砲をあそこにヒットさせる。それは勘弁してやってくれ。

 「大再生ザ・リバース!」

 キャロネロの腕がくっつき体の傷もなくなる。Sランクの異能で自身や相手の体や破損された建物なんかを再生できる。唯一の欠点は慢性的な内科的治療に対しては有効ではないというぐらいだ。

 「周平腕を斬って」
 「あいよ」

 再生した直後に腕を再び切断し痛みをはしらせる。

 「あなたが吐かないならこれを繰り返して頭に徹底的に痛みを覚えさせ、今後普通に生きていくのが辛いぐらいのトラウマを植え付けるまでよ」
 「フフッ、俺達はお前の命は奪わないしちゃんと五体満足で返してやる。これは助けたよしみだ」
 「ヒッ……やめろ!」

 こういう場合は生かさず殺さず痛めつけ、ゆっくりと徐々に人間の意思を挫けさせる。昔黒姫やランスロット先生に教わった尋問術だ。すると徐々に精神が折れて、閉じている口が面白いように開く。殺せという奴は殺さず苦しめてやるのがいい。

 「わかった……案内する……だからもうやめてくれ……」

 切断と再生を繰り返して十分ってとこか……意外と持った方か。こいつの喋らないっていう固い口も、俺達にかかれば簡単に折れてしまう。痛覚をなくして下半身を少しずつ切断したのが、精神的にきたようだな。

 「まぁ最終手段は頭覗いて見れば簡単だったんだけどね~」
 「ははっ、それやったら完全に壊れちまうだろ」
 「フフッ、まずはシルキーサリヴァンとこにあの二十人送りこんでからこいつらのアジトにいきましょう~」


 ◇


 転移魔法陣を展開し、二十人をシルキーサリヴァンのいるギルドに送りつけ、早速盗賊団のアジトに向かった。

 「ほらとっとと案内しろ」
 「私達あなた程度の嘘は、目を見れば簡単に見抜くことが出来るから嘘をついたらわかっているでしょうね?」
 「は、はひぃ!」

 脅し気味で言うと犬の用にホイホイと馬車を動かしアジトへ進んでいく。

 「バニラ、尋問する時はああやって相手の心を折っていくのよ~」
 「十五の子供にそんなハードなこと教えない方がいいかと……」

 カゲロウの言う事はごもっともだ。俺達ならともかくあんなハードな壊し方は普通の人間では出来ない。

 「しかしよくあんな拷問するな……」
 「私もご主人様二人の畏怖と尊敬の念をもって一生ついていくでチュ」
 「当然よ、ねぇ周平?」
 「ああ、あれは忘れられないね~」

 昔ここの世界に来る前に二人で拷問しあってどういうのが苦痛かを確かめあった。昔はより相手の気持ちになって考えられるよう、あんな事やこんな事までしたがあれは黒歴史として残った。あんなの傍から見ればただの変態夫婦だわ。

 「何それ~聞きたい~」
 「バニラはそれは内緒だ……」
 「昔周平とね……」
 「やめんか」

 あんなもん墓場に持っていきたい超絶恥ずかしい案件だ。立花は恥ずかしくないのかあれを自慢げに話そうとするぐらいだから、何度止めたことか。

 「別にあれには高尚な理由があったし、別にそこまで隠すことではないじゃない~」
 「いや、まぁそうなんだが……恥ずかしいし、二人だけの秘密にしておこう」

 歩く変態とか真生М魔神とか凄く不名誉な称号が与えられるかもしれない。

 「そういうことならまだ秘密にしておいてあげるわ~」
 「まだじゃなくて墓場まで……」
 「いや墓場行く予定ないし」

 そういえば不老不死だったな俺達は……墓場とかほぼ無意味な言葉じゃねぇか。

 「まぁ生きてれば恥ずかしい秘密の一つや二つはある……それぐらい動じない精神力を身につけるべきかと」
 「お前の勝ちだよ……カゲロウ先生」
 「いや……そこは負けないでほしんだが……まぁこれは年数だからな」

 前世も死んだのは二十ぐらいだし、こないだまで記憶が戻ってなかっただけに俺の精神年齢は昔と大して変わっていない。その点は立花に遥かに差がついてしまったな。
 
 「ついたぞ……」

 キャロネロが力のない声で馬車を止めたのは、平原の中に隠れるように存在する洞穴だ。

 「中には何人ぐらいいるのかしら?」
 「百人ぐらいだ……複数の盗賊団を吸収して強くなったからな……」
 「それじゃあ私の出番ね~」

 鼻歌を歌う立花は真っ先に中へと入っていった。
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