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1章

19話:テンプレ?

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 シルキーサリヴァンとのやり取りを終え、お金もたんまり入った二人はVIPルームをでて、ギルドと繋がっている一階の食堂で食事をとっていた。

 「九兵衛さんは、俺や立花見たく死なずにあの戦争を乗り切ったんだな」
 「そうね、あなたは割と早かったからね……」

 立花は少し悲しそうな表情を浮かべた。
 俺自身どのタイミングでどうやって死んだのか覚えてないが立花は覚えているのだろう。

 「なぁ俺は誰にどうやってやられたんだ?」

 再会してからずっと聞かないでいたからそろそろ聞いておくべきだろう。

 「わからないの……」
 「えっ?」
 「あなたを探しに行って見つけた時、あなたは既に息絶えていたわ……」

 うん、どうゆうことだ?
 そもそも魔神の特性として、ほかの二十柱に比べて高い再生力を持っている。そう簡単にやられるものなのか……

 「ただやられたわけではないことだけはわかったけど……」
 「どうゆことだ?」
 「どうも転生魔法を使った形跡があったの。私達二十柱が死ぬと体ごと消滅するのにあなたの遺体は残っていたからね」
 「転生か……なんでそんなことを……」
 「わからないわ……ただあなたの体からは戦闘痕があったから、戦闘の末に使用したという判断よ」

 つまり俺は何者かかと戦っていて死にそうになったから、転生魔法を使用したということか。
 まぁ納得っちゃ納得だが立花はまったく納得してないな。

 「たぶん勝てない敵がでてきてやられそうになったから使用したんじゃないかな?」
 「でも自己封印という逃げ手があったし、それを使えばあなたは死を免れられたわ」

 自己封印とは二十柱が命を失うほどのダメージを負った時に使う奥の手で、体を消滅させる代わりに封印状態にする事ができる。当然復活までの長い期間がかかる。

 「でも封印しちゃったら復活するのが面倒なんじゃないか?」
 「私達騎士団一三人のうち力を完全にしていた二十柱が三人、不完全者は私とあなたをいれて三人いたわ。だから自己封印なんて普通に解けたし転生よりも遥かに効率がよかったの」

 ああ、そういえば九兵衛さん以外にもいたな。初代妖精王に魔剣聖と超越者……あいつらにも早く会いたいな。それ考えると、そいつらがいるにもかかわらずなんで転生なんかしたんだ?

 自分のことなのにまったくわからん。

 「それだとたしかに解せんな……」
 「でしょ!だから早く記憶を取り戻して真相を教えてね」
 「ああ、俺もそれは凄い気になる」

 それはとても気になるし自分のことなのだが、実感が湧かないせいかどうも他人事のように感じてしまう。その時の記憶については、完全に欠落していてるせいか聞いてもまったくピンとこない……そんな自分がもどかしかった。

 「そういえば立花はなんで転生したんだ?」
 「あなたと離れるのが嫌だからよ」
 「えっ……」

 ちょいと待ってくださいな。
 というかそもそもなんで転生後も小さい頃からずっと一緒だったんだ?
 今までぜんぜん違和感なかったけどここに来て違和感が……

 「なぁ俺達小さい頃からずっと一緒だったけどそれはもしかすると……」
 「あなたの次の転生先をあなたの遺体から解析し、私の創生魔法と王の書をフル活用して、場所と年代まで特定していたからに決まっているでしょう!」

 立花は自信満々に言う。考えてみればそんな偶然は有り得ないからな……そもそも偶然や運命ってのは、あらかじめ作られた必然なのかもしれないな。力のある神様みたいな奴がそれを作る感じ。二十柱自体この宇宙じゃ神に近い存在だし、王や黒姫の能力や立花の魔法はそんな偶然を作ることができるのだろう。

 「まさか追ってきたとは……」
 「迷惑だったかしら?」

 立花は少し不服な顔をする。

 「いや、全然。むしろ追ってきてくれてありがとう。愛してるよ」
 「ふふっ、だったら追ってきた甲斐があったわ。あなたが私を差し置いて先に嫁を見つけたら、世界を滅ぼしたくなっちゃうでしょ~」
 「そ、そうだな……相変わらずで俺はとても嬉しいよ」
 「ありがとう~」

 この人今怖いこと笑いながらシレっと言ってるよ。そういえば昔よく風俗街に行くと、立花に尋問されていたな。女はどんな容姿でどういう会話をしたかとか包み隠さず答えさせられていた。
 立花は俺に対して、風俗は行ってもいいけど内容をすべて話すことと、本番行為をしないというのが条件だった。風俗行くときはコソコソ行っていたが全てバレて尋問だ。昔本番まで行きそうになった時、その時はこのままいっちゃえなんて思ったが、あいつはずっと見ていたからな……皮肉にもあの時のことはしっかり鮮明に思い出している。

 「でも転生したのは結局戦争の終盤偽神との相打ちがあったからだけどね。本当は戦争後の後始末をしてからの予定だったけど、そこは誤算だったわ」
 「そうだったのか。やはり力を完全にする必要があるってことだな」
 「そういうこと。完全にすれば親玉以外に遅れをとることはないわ~」


 ◇


 立花とギルドの食事処で話をしながら食べること小一時間。俺はとある衝動に駆られていた……この世界にきて一月ちょっとが過ぎそろそろ限界がきていた。

 「日本食食べたい……」

 ここにきてからずっとだ……この感情はチートスキルを手に入れても消えない。ある意味最大の障害だった。

 「まぁまぁ、ここの食事もけっこういけるわよ~」

 立花は順応が早いみたいだ。一年以上いるからすっかり慣れてしまったのだろうか。

 「なんというかここもだけど城の食事は薄味でさ、塩や胡椒がレアなんだな」
 「この世界だと食塩の精製もできないだろうし。今後は食事を豊かにするために、香辛料の調達が必要ね」
 「ああ、金はあるんだし早いとこ調達しよう」

 今後の課題というか早急に手を打たねばならん案件であること間違いなしだ。

 「しかしここの周りの冒険者は見ているとごついがみんな弱そうだ」
 「それは違うわ~私達が強すぎるだけよ。あのギルドマスターは結構な手練れだけど、私たちに比べたら雑魚扱いになっちゃうだけだし」

 ギルドマスターのステータスはこんな感じだった。

 シルキーサリヴァン
種族:人間族ヒューム
レベル220
職業:ダークナイト
攻撃:35000
防御:32000
魔法攻撃:25000
魔法防御:32000
素早さ:30000
魔力:28000
異能:ダークオーラ(A)
称号:ギルドマスター、ブレニムの英雄

 まぁなかなかなんだけどな。
これぐらいのステータスで白金ランクになるらしい。平均三万程度で最強冒険者クラスなわけだが、クラスメイト達もいずれはこれぐらいに到達するだろう。俺の記憶だと平均十万が人間と超人の境界線だったな

 「この後は街を適当に回ってぶらぶらするかー」
 「ええ、そうしましょう~」


 「そこの女!」

 突然後ろから声がした。
 振り返るとガタイのいい屈強な男がこちらに来る。

 「私に何か?」
 「そこにいる優男より俺と組まないか?」

 さすがは立花だ。こんなむさ苦しいとこにいたら声かけられるよな。長い黒髪に容姿端麗で巨乳だ。釘付けになる人間も多く、転生前も中学生の時もダントツだった。

 「ふふっ、お気持ちは嬉しいけど私人妻なので~」

 俺にくっつきアピールすると男の悔しがる顔をするので見ていて凄く気持ちいい。当然男は引き下がるはずもなく突っかかってくる。
 ああ……これはお決まりのテンプレパターンか……
 このままもこいつが俺に殴り掛かってきてそれを倒せば終了だ。

 「納得いかねぇ、なんでお前みたいな優男がこんなきれいな人と結婚してるんだ!」

 知るか!というか結婚してたのは前世な。まぁ今も嫁なわけだが。
 とりあえずこいつを倒すのは運命的に決まっているっぽいな。

 「知るか!お前さんみたいに乱暴だと女は寄り付かないんじゃないか?」
 「おのれ……決闘だ!女をかけて勝負しろ!」
 「嫌だ!」
 「えっ?」

 周りもその言葉で一気に静まる。

 「立花をかけるのにお前みたいな雑魚の命じゃ足らん。出直してこい!」

 まったく身の程知らずもいいとこだっての。周りはまた騒ぎ出すし……まったく鬱陶しい。

 「このクソガキがぁぁ!」

 男は大きな手で殴りかかるが、その手を指2本で止める。

 「なっ……」

 男の顔が青ざめていく。
 自分の渾身の拳が指2本で止められたので当然ともいえる。見かけだけ倒しとはまさにこれのことを言うよな。これで倒してテンプレ終了だ。

 「今度はこっちの番だな~」

 かなり加減して男の頬にストレートを食らわせると十メートルほど飛び気絶した。一瞬で勝負がついたからか、周りはそれに絶句し言葉もでなかった。

 「さてでますかね……」
 「ええ、行きましょう~」

 立花と腕を組んだままギルドを後にした。立花も満足気の表情を浮かべているしかっこいいとこ見せられただろうか。

 「さてどこいこうか?」
 「そうね……私たちって冒険者っぽい服装じゃないから目立つし、先に服屋で揃えましょう」

 俺はまだ城でもらった訓練用の服だが、立花は白いシャツの上にカーディガンを着て下は黒のスキニーパンツだ。とても戦うような服装ではない。

 「私がしっかりコーデしてあげるから安心してね~」

 服屋に向かった。
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