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1章

13話:帰還

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 「戻ったか……」
 
 転移装置を通って移動したその先は迷宮の入り口だ、どうやら転移装置は入り口に戻る物らしい。
 しばらくぶりのお日様を拝むことができ感動してしまい帰ってきたと改めて実感させられる。

 さて……まずは月島に……

 「周平君!」

 入口を出ようとすると待っていたのか月島がこちらに来る。

 「月島か~いやすまんな帰るのが少し遅くなっ……」

 そのままこちらに近づき抱き着く。

 む、胸の感触が……

 「バカ!ずっと帰ってこないで……どれだけ心配したか……」

 月島の目に涙が溢れる。

 そうか……俺をずっと待っててくれたんだな……
 いつも俺のこと心配してくれて……全く俺も罪な男だ。

 「ハハッ、マジごめんな~」
 「何度も心配かけて!もし帰ってこなかったら……わたひいっじょう後悔するところだったんだから……」
 「ああ、でも約束は守ったぜ」

 あん時もこんな感じで泣いてくれたんだよな……立花もだがこの子も守るべき存在だったな。
 しかしそんなに泣かんでも……
 
 「雪~嶋田君達が……ってし、周平君!?」
 「よっ、帰還したぜ~」

 驚きを隠せない様子、まぁ当然と言えば当然か。
 すると杉原はこっちに近づき俺の頬に一発ビンタをする、パァンという音が大きく響いた。
 怒っているのか無言でこちらを見ること数秒、静かに口を開いた。

 「なんか言うことない?」

 真剣な眼差しでこちらを見つめる。

 「ごめん、心配かけた……」

 本当にすみません。

 「うん……私だってすっごく心配したんだからね!」

 今度は杉原が俺に抱き着く。

 おおっ、月島よりもデカい胸が……っていかんいかん。

 「杉原!?」
 「雪だけずるいんだから!私も周平君に抱き着くの!」

 二人は俺の事それぐらい良く想ってくれていてそれでいて……あいつがいなくなってからの支えは二人と陣だったな。

 「つーか曜日の感覚ないんだがあれからどれぐらいだ?」
 「呆れた……一月半……それが周平君が迷宮にいた時間よ!」
 「そうだよ、あれから迷宮攻略して周平君探したんだから~なのに全然見つからないから~」

 そんな時間が経っていたのか……そんなつもりはなかったんだがまぁあれだけの層を攻略してたら無理もないか。

 「それで何してたの?」
 「まぁ色々な~」

 色々あり過ぎだし話せないこともあるな……でも誤魔化すと怒りそうだし……

 「その色々詳しく話しなさい!」
 「そうだよ~美里ちゃんと私ねすっごく心配したんだよ!」
 「あ、すみません……」

 んなこと言っても……迷宮が深すぎるのが悪い、そうに違いない。

 「お前等にしか話せないこともある、というか俺城に戻るべきか?」
 「「どうして?」」

 まぁそうなるよな~
 その理由も話しづらい……

 「俺は勇者じゃないからかな」
 「何それ?色々事情がありそうだけど先生や尾形君がいるでしょ?」
 「そうそう、そこら辺には顔を見せないと~」

 あ、そういやそうだな……あいつらに顔を見せるのはとてつもなく面倒だがまぁいいか。

 「そうだな……それ忘れてたわ~」

 
 ◇


 「戻ったよ!」
 
 城門を通り城へと帰還した、迷宮攻略に向けての作戦会議があるらしいな。
 
 「月島を連れてきてくれたかい?」
 「ええ、この通り」
 「ごめんね遅くなっちゃって~」

 月島が謝る。

 俺はなんと陰から見ている。
 聞くと俺はもう死んだ事になっているらしい。

 「また迷宮の前にいたのかい?」
 「うん……」
 「あいつはたぶん戻ってこないだろうさ……あんな所から落ちて生きて帰れるわけが……」

 橋本が苦々し気に言う。

 落ちて帰れるわけがって帰って来れちゃったんだな~

 「月島、あいつはもういないんだ……いい加減あそこに行くのは……」

 あんなこと言って内心では月島に纏わりついているのがいなくなったと内心喚起してんだろ?
 そんなお前に悲しいニュースを伝えよう。

 「それが生きてるんだなこれが~」
 「えっ……」

 建物の陰から華麗に登場~

 「よっ、元気か?」
 「し、神山なのか!?」
 「ああ、今帰ったぞ」
 「さっき帰ってきた周平君とばったり会ったんだ~」
 「ねっ、みんな私の言った通りだったでしょ!」

 その時のあいつらの表情、驚愕してるのが大半だが苦々しい顔するのがいたりそれを残念がる顔するのもいるな。
 尾形や菱田なんかは嬉しそうな顔しているな。

 おい菱田、お前はもっと残念がれよ。

 「まぁ取り合えず先生んとこ行ってくるからそれじゃあな」
 「待てよ、迷宮攻略の会議を今からするんだ、それに参加を?」

 迷宮攻略?
 さっきソロ攻略終えて帰還したとこなんだが……

 「もうそれやらないから俺いいわ~」

 とまぁスルーしてお城に向かうと今度は先生のお説教を受けてから泣かれてしまい苦労したのだった。
 だがタピットさんやその他の騎士団員や兵士達には帰還を凄く喜ばれ、涙を流してくれたので素直に嬉しかったので同時に罪悪感も少し感じたのだった。


 ◇


 「さて……」
 
 タピットさんに俺達を召喚した魔術師をいないか尋ねたところ城にいるとのことなので声をかけた。

 「君は確か勇者の?」
 「どうも、神山周平です、あなたが俺達を召喚したんですか?」

 コンタクトをとったのは王国魔法師団の一人でダーレー教教徒でもあるジュダだ。
 風貌からしてそこそこのベテランって感じのおっさんだ。

 「まぁ私だけじゃないがね~君達を召喚するのは何年もかけたからね~」

 その召喚の裏話については昔の一件で知ってるだけに反吐がでる。
 だが今はそんなこと問題ではない。

 「なるほど、テストとかってしなかったんですか?」
 「ああやったよ、そっちの世界とこっちの世界をちょっとした大きさの穴ぐらいで試したよ」
 「それは何回もやったんですか?」
 「ああ、そういえば一年ちょっと前には何故か穴を広げ過ぎてしまってね~」
 「するとどうなるんですか?」
 「最悪そっちの世界の人がこっちに来る恐れがある、まぁもしいたら王都で右往左往してるだろうけどそんな人はこっちに来なかったから大丈夫だと思うけどね~」

 やはりか、立花はその穴でこっちに来たんだ、それが故意的かどうかわからないが時期的には一致する。
 そして今思うと不自然だったことが多々あった、それを踏まえ立花はおそらくあっちにいた時から記憶と力を保有していたと仮定でき、あいつはこの王都に多少の期間はいたはずだ。

 あんだけ美人でアイドル顔負けでスタイルも抜群の女だ、しかも黒髪ロングとくればこの世界では珍しく見た奴は絶対覚えているはずだ。
 その目撃情報がいつまでされていたかでどの程度進んだかなんかもわかるはずだ。

 早速今日から聞き込みだな。

 「なるほど、召喚はそう何度も出来るものではないのですか?」
 「ああ、たくさんの魔力量が必要だからね~そうそうに用意できるものではないんだ」

 この国が前と変わらずこの召喚をやっているなら俺はあいつの代わりにこの国を灰にしないといけないかもな。

 「そうなんですね~ありがとうございます」

 
 ◇


 城を出ようとすると嶋田達に引き止められる。
 俺が城に言っている間に作戦会議を終えたらしい。

 「神山どこにいくんだ?」
 「少し散歩だよ」
 「散歩って……こっちは今作戦会議で大変なんだ、君もクラスメイトとして参加すべきじゃないのか?」
 「俺はもういいよ、外してやってくれ~」

 今はお前に構っている暇なんざないんだよ。

 「その言い方はなんだ!ふざけている場合ではないんだぞ!」

 面倒くさそうに言うと気分を害したのか怒り始める、まぁ正義マンだからな。

 「ふざけてないな、一月半も脱出するのに色々やってたんだし少し休ませてくれって話だよ、俺ずっと一人であそこで戦ってたんだぞ!」

 普通に楽しかったけどな。
 さも大変でしたというのも醸し出してみる。

 「そ、そういえば……まぁいい、だが俺達の使命を忘れるなよ!」
 「はいよ」

 使命?
 俺はクラスで行動する気もないし魔王を倒して元の世界に帰還というのも考えていないがな。
 使命があるとすればあいつらを殲滅し尽くすことだ。

 街に出て立花の情報収集を始めた。
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