上 下
10 / 109
1章

9話:俺の能力

しおりを挟む
 遠い日の記憶……それは戦場での話だ。

 たった十三人で十万人を殲滅し最強と恐れられるようになったあの戦い。
 その戦いになぜ自分は参加したのか?
 そもそもなぜ俺はあいつらを率いて戦ったのか?
 遠い彼方に忘れ去られた記憶が力とともに蘇りかけていた。



 「随分下へと落ちたようだな……」

 目を覚めると周平はあたりを見渡した。
 百四十四層に比べるとかなり外観が異なるな。

 「何であの男の幻影が……」

 昔の記憶っぽいのを少し思い出すことができたからいいとするか……
 まだ整理がつかないがそのうち思い出してくるだろう。

 とりあえず俺を待つ何かはもっと下にあるみたいだな。
 月島や杉原や尾形や先生がちゃんと脱出できていればいいが……

 「落ちる前より体が軽いな~」

 その場で声を出すが返答が返って来るわけでもないな。
 月島や杉原に連絡を試みるも反応がないところを見るとかなり下のようだがちょっと落ちただけでそんな下まで落ちるのは少しおかしい気が……

 取り合えず進むしかないな。

 まるで今まで自分を抑えていた何かから解放されましたと言わんばかりに体が軽くどこか力がみなぎってくる感じがするのだ。
 たしか落ちる前のステータスは各ステータスが六万ずつだったな。

 さてステータスを確認しますかな~
 
 俺は自身のステータスを確認した。

 「なんじゃこれ……何かの間違いでは……」

 自身のステータスを見て驚愕のあまり目が飛んだ。
 いやそれぐらい驚きを隠せなかったのだ。

 神山周平
レベル:10?
種族:人間?
職業:魔神
攻撃:150000
防御:150000
魔法攻撃:150000
魔法防御:150000
素早さ:150000
魔力:150000
固有スキル:魔神の戒律(不完全状態)、
異能:アイスショット(C)、チャッカファイア(C)、粘着弾(B)、チャージショット(A)、天の糸(AA)、物質具現(AA)、不死鳥の橙炎フェニックスフレイム(S)、完全記憶パーフェクトメモリー(S)、砂の王デザートロード(S)宝物庫シャッカンマー(S)
称号:神殺し、煉獄の王

 また強くなっとるやないか!

 しかしこれまた物騒なスキルと称号だな、記憶が戻ったのはほんの断片に過ぎない……こないだまで見ていた夢の体験が自身の過去であることを認識したがどうやら俺は人を超えた存在らしいな。

 サ〇ヤ人にでもなったか俺……

 まだ実感が湧かず疑問だらけだが、今の自分の状況を頭の中で整理した。

 「鉄巨人の大剣が振り落とされた先生を庇ってダメージを受けたけどあのダメージが記憶を引き出したということか……だけどあの男の声があのタイミングで起きたのもおかしな話だ……俺の心情に反応したとでもいいのか?」

 当然答えてくれる相手などいないがぶつぶつ独り言を言いながら頭を整理した。

 迷宮の特性で落ちてきた穴が塞がっている。
 もう一度地上に戻る為にはボス階層にてボスを倒し転移装置で帰る感じだな。

 「まぁとりあえずこのバグともいえるスキルを使ってさくさく進むかー」

 というか一度見たものや聞いたことを忘れないのはこの異能があったからか?
 つまり俺は異世界に来る前からスキルを持っていた。
 正確にはスキルを持っていたのはその前の前世ってことになるのか。

 進んでいくとさっき苦汁を舐めた鉄巨人に出くわした。
 レベルはさっきと一緒で五体いる。

 「今のステータスが嘘じゃなければ敵じゃないはず……」

 まず粘着弾で鉄巨人一体の動きを封じた後顔に向かってチャージショットを放ってみた。
 粘着弾はクラスメイトの橋本の粘着床と似たような感じだが向こうは地面に発生させるのに対してこっちは手から放つ感じだ。
 チャージショットを自身で力を溜めて砲弾を放つという異能で、一度最大火力で放つと貯めるのには最大二十四時間、睡眠や飲食等で貯める時間を短縮できるというものだ。

 「まじか……」

 放ったチャージショットは鉄巨人の頭を軽く吹き飛ばしそのまま後ろにいる鉄巨人の腹を貫通した。
 ちなみに異能は自身で使える能力に関してはどういう仕組みか自動的に頭に入ってくるのだ。

 「う、嘘だろ……」

 あまりの力差に驚きを隠せない。
 落ちる前のステータスの時点でもこれ使えば一発だったのでは……
 すると俺は勿体ぶって惨事を大きくした戦犯に……いやいや俺は悪くないそ、悪いのは菱田達だ。

 頭の中で言い訳を考えていると残り三体の鉄巨人がこちらに対し戦闘態勢を構え一体は俺に向かって剛烈剣を放ってきた。

 「うん、遅い!」

 片手で剛烈剣を受け止めると不死鳥の能力を使ってみた。

 「橙炎撃!」

 鉄巨人は劫火につつまれ瞬く間に消滅、残り2体だ。

 今度はこれを試すか。
 少し怖いがさっきも受けて平気だったし能力も上がっているし大丈夫だろう。

 「ウッ……」

 今度は鉄巨人の剛烈剣をあえて受けた。
 直接受けたことで左腕が斬れて落ちるが、瞬時に体を再生させる。
 これは不死鳥の異能の能力で得ている再生力で体から分離された部位や放出された血液ごと元に戻すことができる。
 今は左腕で試したが首を斬られようが縦に真っ二つに斬られようが再生可能である。
 この異能を持つ時点で心臓や脳自体が弱点でなくなるらしくSランクだけあって破格の性能だ。
 再生するのに体力を少し消費するわけだが連続頻回使用しなければ影響はない。

 今度は砂の王を使用して反撃だ。
 これは砂を自由の操る異能で地形によってはさらに力を増すものだ。

 「デザートカッター!」

 鉄巨人は真っ二つになるが当然俺のように再生はしない。

 さて残り1体、どう料理するか……

 「宝物庫は魔石や素材の収納庫にもなるみたいだがそれだけではないはず」

 宝物庫という異能は自身の所有するものすべてを異空間に収納ができ自由に出し入れが可能である。
 しかも宝物庫に宝と認定された武器や防具は盗られたりしてもすぐに宝物庫内に戻すことができるという優れものだ。
 宝と認定されない物でも自身の見える範囲内なら宝物庫に再収納することも可能だ。
 さっそく戦闘に応用させ自分の周りに無数の武器を発生させ重力の魔法と併用して相手に放つ。

 これは有能だな。
 自身の所持している武器が手元から離れても戻れと念じればすぐに戻るし任意の場所から出すことができる、しかも破壊されても宝と認められた武器や防具は宝物庫に戻せば自動で修復されるという神機能……まさにチート!

 クラスメイトといる時はどうなるのか怖くて能力の使用を控えていたがこれは凄い。

 あの時使っていれば……いや誰も死んでないし結果オーライだわ。
 もし使って力がバレても面倒だし。

 テンショアゲアゲで迷宮の攻略に勤しんだ。


 ◇


 そのころとある街の酒場では女性がとある人との再会を望んでいた。

 「ふふっ、あともう少しね……長かった」

 彼女は周平達よりも早くこの世界に来ていて彼女もまた一年以上離れ離れな想い人との再会を待ち望んでいた。
 彼女と彼が再開するとき世界は動き出す。

 ちなみに周平が今いるのは三百五十層だ。
 だが今の彼ならこの最下層に辿り着きクリアすることも時間の問題だろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...