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3話:旅立ち

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  次の日の早朝、打ち合わせ通り早速早く宿を出る。出るなら目立たない方がいいからだ。

 「それでここから何処に?」
 「そうだね。一度南方に下ろうか。あいつはいずれ北へ戻るはずだ。だから南に向かえば会う事はないはずだ」

 飲みながら帰還命令が出されたら面倒だなんて大きな声で騒いでいたのを聞いていたからな。

 「わかったわ」

 早朝にでている馬車に早速乗り南方の街へと向かった。

 「どこまで同行してくれるつもり?」
 「俺の指定した場所に行くのも嫌だと思うし、そっちの指定が好ましいかな。だけど近すぎる街はNGで」
 「なら……ダルシャーン王国領コウジャの街でいいかしら?」
 「ああ、問題ないよ」

 あそこまで行って暫くこっちに戻って来なければ大丈夫だろう。夜で少し薄暗かったし、あいつ酔っていたからな。二週間もすれば忘れるはずだ。

 「そういえば昨日聞いてなかったけど仲間はいないのかい?」

 するとリーファの表情は暗い。昔何かあったのだろうか。

 「今はいないわ……」
 「そうか……あてはあるのか?」

 リーファは答えない。孤独の美少女ってのも何とも美しく映るものだ。NWにはそれでいて凛としてて強い人が何人もいたな。世話になった方は何人もいるし元気にしているといいがな。

 「まぁあてのない旅も悪くはないよ」
 「別にあてがないわけじゃ……ただ探しているよ……」
 「男かい?」
 「残念だけどそっちは疎いの。でも憧れた人は何人もいたわ」
 「初恋かい?」
 「フッ、そんなところね。そういうあなたはずっと一人?」

 少し笑みが零れたな。やはり可愛い子は笑った方がより可愛い。

 「三年前から一人で放浪の旅をしているんだ。それまでは仲間がいたけどね」

 仲間というより先生や先輩という方が適切だろうな。あの人達から俺は色々教わった。そして真の化け物というのを知った。懐かしい話だ。俺がそもそもあそかにいた事自体おかしな話だからな。

 「その仲間とは?」
 「三年間誰も会ってないよ。たまに思い出すとまた会ってみたいななんて思うけどね」
 
 伝説の五十人……大半がこの世界から去った今、次会うのは当分先だろう。一応死ねば向こうに行けるけどそんな気はさらさらない。初めからこの世界に未練がなきゃ俺もあの人達にすぐについていったからな。ちなみに死後の世界というわけではない。

 「そう……また会えるといいわね」
 「いつかは会えるさ。でも今回リーファと一緒にいるのは凄く新鮮だよ。こうして誰かと話して旅するのは久しぶりでさ」
 「そうなんだ。ならせめてものお礼になったかしら?」
 「そうだね。別に俺は謝礼なんか請求しないけどこうして話してくれたのを謝礼として受け取っておくよ」

 それから話せる範囲でお互いの話をした。お互いに隠してるのは見え見えだけどそれを前提としてだ。気付くと昼も過ぎておりお腹の音が鳴る。

 「そういえばお腹減ったわね……」

 リーファもお腹を空かしたらしくお腹の音が鳴る。

 「それじゃあ外のこの殺風景な荒野を移動するのを見ながら昼食かな」
 「あっ、私買い忘れて……」

 俺はアイテム袋からパン二種類と飲み物を渡す。NW時代に渡された超優れモノで個人使用&内部の時間停止と容量を特大という最高峰の物だ。

 「どうぞ」
 「でも……」

 リーファはお金を払おうとする。勿論取る気はない。

 「俺の奢りでいいさ」
 「それじゃあいくら何でも……」
 「あんまりお金も使えんだろう?」
 「いや……」

 何か躊躇しているな。毒でも入っているとでも思っているのだろうか。

 「安心して、毒なんざ入ってないしさ」
 「いやそういう事じゃなくて……この謝礼をいつ返せるかが……」

 身なりと言い言動と言いお上品な貴族の令嬢と言った所だ。だがこの発言からして没落したのだろうか。

 「んじゃこれ食べながら暇つぶしにでも付き合ってよ。俺一人だけ食べて食べさせないとか最低じゃん」
 
 それを聞いたリーファは頭を下げて俺からパンと食べ物を受け取った。

 「お、美味しい!」
 「なら良かったよ」
 「これはどこで?」

 NW時代にさんざん料理作るの手伝わされたからな。パンに色んな具をのせて焼くのは覚えたのだ。

 「俺が自分で焼いたんだ」
 「自分で?」
 「ああ、結構いい出来でしょ?」
 「ええ……とても美味しいわ」
 「一緒にいるまでは飯代はだすよ。無理やり付き合わせているのもあるからね」
 「それは流石に……」
 
 見たところただの箱入り娘というだけではない。それなりに鍛えている感じだが命を懸けた戦いに慣れているタイプでもなさそうだ。冒険者ギルドでも進めるか。

 「気にしなくてもいいよ。これでもパン売ったりしてそれなりの貯蓄はあるんだ」

 改めてNW時代に得た遺産は偉大である。金使いが荒いわけでもないし一応収支はプラスになるように生活していたからな。

 「今あなたを護衛にするお金があれば雇ったかもしれないわね」
 「ハハッ、宛のない旅だし、よきゃ付き合うよ。久しぶりにこうして喋るのも楽しくてね」
 「あなたという人間は良くわからないわ」
 「彷徨ってる感じだからかもね」

 この三年ただ自分という何かを追い求める旅だったからな。あの時あいつと色々なければ今頃また違う未来があったに違いない。

 「私も今心細いし仲間と合流するまでは一緒にどうかしら……」

 少し言いにくそうだに言う。だがそれも悪くない……大して強くはないがちょっとした護衛ぐらいは出来るだろう。

 「まぁあいつが完全に来ない事を確認したいし付き合おうか」

 こうして数年ぶりにの孤独の旅は思わぬところで終わりを告げたんだ。
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