元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

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23話:ギルドへ

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 「行きましょう!」

 シーラが先導し向かう先は冒険者ギルドだ。そこでジン達と会う事になっている。

 「カコさんはネイツ公爵に何かされたりとか?」
 「特にないわ。まぁ旦那がそれだけ苦労しているのはわかっているんだけどね……」

 カコは苦々しそうに語る。息子や自分を養う為、妻に子育てを優先してほしいというゲンダイの強い意向から、彼女は専業主婦をしていた。ネイツ公爵の元で働く事で得る賃金は、冒険者をやるよりも安全でそれなりに貰えるのがゲンダイが仕えている理由だ。だが最近のゲンダイを見ていて妻としては心配が絶えなかった。

 「前は冒険者だったんですよね?」
 「ええ、旦那とはそこで会ってね。あの頃は危険なんか顧みずでやってたけど、この子が生まれるってなって辞めたの」
 「なるほど。子供を育てていかないとですもんね~」

 リオはそういいながら自分の将来を想像していた。想像があまりつかないながらもジンがでてくるのは他のミーナもシーラも同様だろあう。

 「あなた達も早くいい相手を見つけなさい。旦那と子供を育てるというのも、大変だけど毎日が新鮮で楽しいわよ」
 「はい!」

 ミーナは顔を赤くしながら言う。当然ジンが頭によぎったのだろう。

 「待て!」

 ギルドに向かう途中後ろから声をかけられる。振り向くとそこには警備兵のような恰好をしたのが数人こちらに向かってくる。

 「ネイツ公爵の私兵よ……」

 カコが言う。それを聞いた三人は警戒態勢に入りつつ声掛けに応じる。

 「何ですか?」
 「お前達怪しいな。そんな大人数でどこへ行く」
 「冒険者ギルドだけど何か?」

 シーラは動じる事なく毅然とした態度を見せる。

 「ほう、では一体何の用で行くのだ?」
 「私達三人は冒険者よ!」
 「それで私は元冒険者。旦那の元に弁当を届けにいくだけよ」

 シーラに続きカコも毅然とした態度を見せる。すると兵士も返しに困ったのか黙り込む。

 「それじゃあ私達行くから」
 「ま、待て!何で子供を連れて行く?」
 「旦那の仕事振りを見に行きたいって聞かなくてね~」

 カコはクスクスと笑いながら答える。ここで苛立ちを見せず余裕な表情で答える様は年数と経験がいきたのだろう。

 「それじゃあ弁当渡しそびれるといけないので行きますわね~」

 兵士は無視しそのまま行く。だがこの兵士達は二人の監視の任があるので遠く離れた位置から三人を尾行してくる。

 「やはりついてきますね……」
 「私とこの子の監視でも任されているのかしら?」

 カコは首を傾げる。シーラ達はまだ事情を話せてなかった事を思い出し、カコに事情を話す。

 「なるほどね……」
 「はい、それでもしカコさんが来てくれないと危険が及ぶかもと思ったんです」
 「旦那は無事なの?」
 「はい、ジンさんがついているのでそれは大丈夫かと」

 三人が話したのは、ゲンダイがネイツ公爵の命令で自分達の暗殺を複数の人間に依頼しているが、今それをやめようと寝返っており、それがバレると二人が危険だという事。もしここでカコがついてくることを渋ったのなら、来ない場合はゲンダイの命がないという体にしろというジンのもう一つの策が実行されただろう。

 「へぇ~そのジンって人はとても強いのね」
 「強いなんてものじゃないですよ~」
 「化け物じみてますけど仲間想いの良い人なんです」
 「きっと旦那さんがお仕え先が変わるかと」

 それを聞いたカコは女の勘が働いたのだろう。こんな質問を三人に向けた。

 「ハハン、それがあなた達三人の想い人だったり……」

 それを聞いた三人はみな一瞬ドキッとさせられる。ニーナはそれだけでも顔が赤くなる。

 「そ、それは……」

 ミーナがタジタジし始めたのでカコはクスクスと笑う。

 「図星ね……複数で一人の男を追っているのね~その子はこんな美少女達に想われてさぞ幸せね~」
 「わ、私はそういうつもりじゃ……」

 シーラも否定しかけるが顔は赤い。なるべくジンの前では平静を装ってそういう態度を見せていなかったシーラだが本心はミーナ同様好意を寄せている。

 「あらじゃあジンにそういっておこうかしらねぇ~」

 リオがニヤリとする。

 「あんたそれしたら怒るわよ?」
 「なら隠す事ないんじゃなくて?ここにはジンはいないし」
 「だ、だって恥ずかしいでしょ」
 「フフッ、シーラは恥ずかしがり屋だもんね~」

 ミーナもクスクスと笑いないがら言う。

 「もう……ミーナまで……」
 「でもシーラちゃんこんなライバル多いんだし恥ずかしがったら駄目よ」
 「カコさんまで……」

 シーラ自身他の誰もいない状況ならもっと早く行動しているだろう。だがミーナのようにそういう気持ちを全面に出す事に恥ずかしさを覚えていた彼女にとってミーナみたくという訳にはいかなかった。

 「まぁこの三人がどういう行動するにしても未来はどうせ変わらないだろうけどね~」

 リオは昨日の一件でジンを独り占めする事に関しては諦めを覚えていた。そしてこの世界は一夫多妻制の世の中だけに、ジンのような強い者はいずれは大きな地位につくと考えていた。そうすれば自然と女も増えるだろう……それならば四人でジンを囲えばいいだろうという考えにシフトしていたのだ。

 「それはどういう事です?」
 「フフッ、内緒」
 「ねぇジン君って子は三人から見たらどういう人なの?」
 「運命の人です!」

 ミーナは迷わず言う。加入前から戦いぶりを見て憧れを抱いていおり、仲間となりその人柄を見た彼女は好意を抱くのには時間がかからなかった。

 「ミーナちゃんは即答ね~二人は?」
 「そうですね……私は自分を捧げるに値する人かな」
 「私は……救世主ですね……」

 シーラはここで顔を真っ赤にしてパンクする。

 「いいじゃない。こんな美女達から好意を受けるような子か……しっかり顔を拝まないとね」
 「ただ見ただけだと伝わらないかもですけどね~」

 話しながらギルドに向かううちに、ついてくる兵隊をどうしようかとずっと考えていた。ジン達と会う時まで尾行されては面倒だからだ。

 「どうするのシーラは?流石に途中で剥がさないと面倒よ」
 「そうね……相手が二人だし一度裏路地に入って倒しましょうかしら?」
 「それがいいかも!ただ危ないかな……」
 「そこは日が昇ってる時はそうでもないから、奥に進まなきゃ問題ないわ」

 早速裏路地に入り、曲がり角を曲がった時点で魔法の準備を始める。

 「来たら魔法をぶつければいいわね。あいつらあんまり強くなさそうだし」
 「ええ……」

 シーラとミーナが準備をする。角に来て曲がろうとしたその瞬間、魔法を発動する。

 「土の衝撃来たれ、マッドブラスト!」
 「水の弾丸炸裂せよ、アクアバルカン!」

 それぞれ第四位階の魔法を放ち、尾行して来た兵士達に直撃するとその場で倒れた。

 「ふぅ~上手くいったわね」
 「そうね、なら縄で縛ってとんずらしましょうか」

 カコは持ってきたロープで二人を縛し始める。

 「手際がいいですね~」
 「これでも手先は器用な方だからね~戦闘よりもこういう補助の方が得意だったし」

 縄で縛り終え、そのままギルドへと向かった。




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