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婚約破棄と自分
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私は不幸だ……なんでそんな不幸かと思うとまず一つ、一度死んだ時の前世の記憶があるからだ。
私の名はアンナ・ヴィルヘルム、子爵家の令嬢だ。
亜麻色の長い髪にパッチリとした目、ピンク色の唇……私は自分でも美しい方だと自負している。
そんな私は前世でも貴族の令嬢でそれなりにモテていたが、同級生で最強の魔導士と呼ばれた人を怒らせた。
原因の詳細は省くがその魔導士はそれがきっかけで世界を滅ぼした、私はその原因を作ったことのバツとして直接的かつむごい死にかたをした。
それだけならまだしもその記憶や痛みや来世に引き継ぐという呪いをかけられ転生した。
しばしば見る悪夢はその男に殺された時の夢だ、私はその件については悪いことをしたというのを心の底から実感していない。
なぜならそれをしたことで起こった悲劇もそれによって男が世界を滅ぼすなどとは夢にも思わなかったからだ。
そしてもう一つの不幸……
「そ、そんなことがあっていいのですか!?」
私は唖然とした、今私は婚約していた伯爵家の一人息子との婚約が破棄になったのを知らされたのだ。
最初に会ったのは七年前、私が十一歳の時だ。
美形で将来を約束されたような人で、私自身若い時から苦い記憶と戦ってきただけに凄く嬉しかった。
何度も会いキスもしたし将来を約束した、仲は良好だったと思うだけにその理由が信じられなかった。
「ああ……今先方から連絡がきたんだ……」
父のカール・ヴィルヘルムが申し訳なさそうな声で言う。
「私はジムと愛し合ってました!将来も約束していましたしこれは何かの間違いじゃないのですか!」
「ざ、残念ながら本当なんだ……ジム君はシャンデリア伯爵の令嬢と子供を作ってしまったみたいなんだ……」
ジムは一体何を……この私というのがいながら別の女に手を出していたというの……
「これはジム君から届いた手紙だ……」
「貸して!」
中を見るとジムの字で書かれた物だった。
内容は要約するとこうだ、君のことは好いていたけど君と出会う前からずっと恋焦がれていた者がいてそっちの方も器用に進めてて子供作ったと……なるべく私を傷つけないようにか変に配慮されたその文は私を余計に苛立たせた。
「ふざけないで!この……このっ!」
手紙をくしゃくしゃにして破り捨てる。
ジムは言うならばたた二股野郎……私の純情を弄んだクズ……キスまでして今度を君を奪いにいくなんてそれっぽい発言までしていただけに私の怒りは収まらず今なお体の中で燃え続けている。
前世でも酷い死に方して今もこの有様……一体私はどれだけバツを受ければいい……
「抑えてアンナ……気持ちは凄くわかるわ……」
母のメロームが私を必死に宥める、こんな惨めな思いをした娘を見たくはなかっただろう。
私も悲しい……昨日までは幸せ一杯の私とそれを祝福する父と母がいた、だが今は惨めな私とそれを慰める父と母に転換したのだ。
「もうすぐ卒業だし、しばらく学校を休んでもいいわ……今はあなたが自身を保つことが大事だから……」
「そ、そうだ……わしもいい相手を探すから……」
ジム以上の相手はそう簡単にみつからない……うちは子爵家だけに身分の高い家の相手を見繕うのは中々に難しい。
ああ絶望だ……学校では魔法が低レベルな今の世の中に合わせて周りに合わせていてとても退屈な日々を送っていた。
楽しみはジムと何かしらのやり取りをすることだった、だがそのやり取りをすることはない、するつもりがないというのが正しい……とにかくそういう心情だった。
◇
次の日になるとすっかりジムへの未練は消えていた、いつも見る悪夢がその悲しみさえも消すぐらいの苦しみだったからだ、こういう形で約に立つとはなんとも皮肉だ……
ただ自身の想いを踏みにじった怒りと悲しみは残っていた。
「おはようございます」
「お、おはよう」
「おはようアンナ」
心配そうな父と母が精いっぱいの笑顔を向けてくれたのがただ痛い、だがもう踏ん切りはついた。
「そんな顔をしなくても大丈夫ですわ、学校も行きますわ~」
「大丈夫なのか?」
「ええ、いつまでもクヨクヨしてはいけませんわ」
まだ完全に立ち直ったわけではないけどいつまでも二人に心配をかけるわけにはいかない。
食事を済ませ馬車に乗る、ジムにはお幸せにって言っておけばいい。
家から馬車で十分圏内のところにあるルナール養成学校に通っている、魔法科と騎士科に分かれ私は魔法科だ、魔法成績は真ん中ぐらいを装っている。
私のいた前世と同じ世界かも疑問なぐらいに魔法のレベルが下がっているわけだがあまり強いとこを見せるのは得策ではない……結婚に響くからだ。
貴族の間では女性は女性らしくというので自身より強い女性とは婚約を結ぶ男性はあまりいないからだ。
「頑張れ私……捨てる神あれば拾う神ありよ……」
前世で私を殺したあの男が私にいった言葉だ……あの男の言葉ということがなければ好きな言葉ランキングトップ五に入るだろう。
校内に入るとまず気になったのは私への視線だった……貴族たちは噂好きの下賤な生き物、私の婚約破棄のことも知っているのだろう。
笑いたきゃ好きなだけ笑えばいい……私はそんなことじゃ決して折れない。
「おはようございますわ~」
教室に入ると私を見てクスクス笑う声が聞こえてきた、それを無視して席に座るとクラスメイトのマーレが話しかけてくる。
「おはようアンナ、取られた気分はどうかしら?」
「噂が早いのね、なにか用かしら?」
「あなたが今どういう心境なのか聞きたくて~」
うるさい虫だこと……虫は無視いするのが安定ね。
「別に普通ですわ、つまらない返答でごめんなさいね~」
確かに昨日は悔しくて死にたいぐらいだった、でも一夜明けると未練はさっぱり消えていた。
あれだけ入れ込んでいただけに悔しかったはずだがそこは自分でも不思議だ。
「つよ~い、だけど伯爵家に捨てられたあなたは大きな後ろ盾も失ったしその強がりもどこまで続くのかしら~」
嫌味たらしいマーレの声を聞き心底うざかった、だが今は耐えた……こいつに今何か言ったところでなんにもならない。
ただ惨めに見えるだけなのだから……
午前中の授業を終え昼に入ると別のクラスからあの男がやってきた、しかも相手を連れてきてだ。
「やぁアンナ……」
気まずそうな顔でこちらを見る、とてもとても申し訳なさそうにするその姿はより私を苛立たせた。
そんな顔するなら早く私に自白してほしかったものだ。
「どうしましたの?せっかくのイケメンが台無しよ」
「アンナ、君に一つ伝えたくて……」
どうせ謝りたいなんて話だろうけど別に謝ってもらわなくてもいい、正直もうどうでもいいのだから。
「僕は……」
金髪の美男子が頭を下げようとしたその瞬間だった……
「私が悪いんです!」
茶髪のカールがかかった長い髪、おしとやかな美女で有名なメリダ・シャンデリラだ。
騎士科のジムとは普段の授業では一緒にならない、ただ同じ魔法科でも騎士科と教室が近いクラスのメリダは幼馴染ということで二人が話しているところをしばしば見かけていたが気にしなかったことが災いしたとでも言うのだろうか……
「君は悪くない……僕が……」
二人してそんなことしないでほしいものだ、表情を作って平静を保つのもけっこう苦労するのだから。
「私の前で仲がいいのを見せつけたいのはわかりましたけど喧嘩を売っているのかしら?」
「い、いえそんなつもりは……すみません……」
気弱そうなこの感じが守ってあげたくなるようだ、正直私には何がいいのかわからない。
「本当に申し訳ありませんでした……私が全て悪いんです……」
頭を深々と下げる、確かに少しお腹がふっくらしたような感じ……果たしてどれぐらいなのか見定めるとしよう。
それによって行為に及んだ日がある程度特定できる。
「そうね……それよりもあなたのお腹見せて頂戴、どれぐらい育ったのか見てみたいわ」
「はい」
まだ多少の膨らみしかないメリダのお腹だが実際に触れてみる。
これで中で死んでいたりしたら可哀そうだし触れると同時に腕に魔力を込め密かに超音波を当てる。
これはそれなりに難易度の高い魔法技術であるが前世と比べて魔法技術が衰退したこの世界でこんな風に応用ができるものは少ない。
「どれどれ……」
だが触れた時に違和感を感じた、転生後にこの技術を使って過去に妊婦のお腹を触らしてもらったことがあるからだ。
中に赤ん坊がいれば手に違和感が残るはずだが全くない……これよりも小さなお腹で試したことがあるだけに明らかにおかしい。
「どうしました?」
「い、いや、すくすくと育っているなと思いましてよ」
お腹から手を放す、一体どういうこと?
確か前世でお腹は大きくなるけど子供は一向に生まれないといった症状を聞いたことがあるけど……まさかあれか!
想像妊娠……前世で私が卒業した魔法学校でそれを判別する魔法技術とその原因と治療について研究をしていたのがいた。
その研究によれば原因は過度なストレスだったはず……
「あなたのこれからは全力でサポートするわ……それが私に出来るせめてもの償いだから……」
そんなものはいらないわ、反吐がでる。
というかあなたのそれの方がかえって心配よ、自分の心配しなさい。
ただこの泥棒猫が執念で作り出した虚妄の宝は私とジムを完全に引き裂き自身の鎖で繋いだのだ。
そんな彼女に対して抱くのは悔しさよりもあっぱれだった。
「ええありがとう……ジムももっと堂々とするといいわ!彼女を幸せにしてあげなさい!」
「ありがとう……本当にすまなかった。二人を幸せにすることを誓うよ!」
残念ながら子は生まれない以前に存在すらしていない……せいぜい彼女の虚妄に振り回されるといいわ、私は決してそれを教えないけど彼女をそうさせたのもあなたなのだから責任しっかり果たしなさい。
そして私は路線をかえて生きていくことに決めたのだ。
◇
午後は魔法の座学だ、大体頭に入っているのでやる必要はないが見せつけてやらないと気が済まないのだ。
「先生、その魔法式はもっとより効率のいいものがありますわ」
「えっ……」
「基礎系の魔法は本来無詠唱で放つ物、こんな稚拙な魔法を詠唱して放つなど非効率もいいとこですわ」
「だがそんな高等技術は上級魔法使いでないと無理な芸当だよ、少なくともこの過程で習得できるものじゃ……」
第三位階魔法に詠唱など前世のクラスメイトに笑われてしまうわ、そこまでにこの世の中の魔法技術は低い。
「こうやって……」
魔法式を頭の中で一瞬で作り上げ具現化する。
「エアーショット!」
窓の外に向かって魔法を放つとみな目を点にしてそれを見ていた。
「出来ないのはレベルが低いだけですわね、魔法を学んでいる者としてこれぐらい当然ですわ」
ジムとの婚約が破棄になったしもう周りに気を遣う必要なない、自分よりも身分の高い家の令嬢で魔法に優れていると自称する人たちを煽てるのもいい加減うんざりしていた。
あの程度の腕で学校でもトップの腕で、王国魔法師団でも期待されているなんてがっかりもいいとこだ。
私はこういう貴族のしがらみの中で生きることはもうしない、やるなら前世からの夢であるあれに……私の第二の人生はここから始まるのだから。
◇
「何ですって!」
「とにかくどいてくださらないかしら?」
私は今、目の前で絡まれていた、絡んできたのは王家の血を引くマリオネス公爵家の令嬢で来年王国魔法師団主席入隊になるプリム・マリオネスだ。
最近私が前世の魔法知識をひけらかして授業を荒らすものだから気に入らないのだろう、あんまりにもうるさいから雑魚はおだまりなんて言ってしまった。
プリムは顔を真っ赤にして怒り狂い取り巻きを集めて私を囲い始めたのだ。
「烏合の衆を集めても変わりません事よ、怪我したくなければ離れなさい!」
私が前世で出た魔法学校は能力こそ全て!魔術学校のくせして中等部から六年間最上位に居続けた奴らが近しい奴も鍛えたせいで魔術も体術も一流でなければ上には昇りつめることが出来ない学校だっただけに私は体術も学んだ。
最後の年は序列十位まだった、ちなみに年代が違えば主席になれたと校長に言われてからは入った年を呪ったほどだ、まぁ無理もない……序列一位に君臨した二人は世界を滅ぼすほどに強かったのだから。
「このっ……」
「エアロバースト!」
第五位位階魔法だ、第十まであり人類では七が限界とされているというのが前世で習ったことだが果たしてそれがこの世界でも常識なのかは疑問だ。
「うわぁぁぁ!」
私を囲んだ烏合の衆は吹き飛ばされそのまま尻もちをついた、唯一プリムだけは咄嗟にバリアを貼ったので尻もちはつかずに堪えた。
「あら、咄嗟にシールドなんてやりますわね~」
「あ、あんたは一体……」
そんなプリムを見てニヤッと微笑み腹にけりを入れる。
「ゴホッ……」
そのまま崩れ落ちたプリムを上から見下ろすように私は言った。
「雑魚がまだ何か用ですの?」
わざと顔をにやりとさせな見下しより相手を馬鹿にするような目を見せる、今までさんざん私にしてきたことをこういう形でやり返されるのはさぞかし悔しいだろう。
でもそれでも彼女は私に何も言えない、何故なら彼女は私と絶対的な力の差を知ってしまった。
彼女はこの中ではマシなレベルだ、それだけに絶対届かないであろうその差を今垣間見たはずだ。
「ば、化け物め……」
「あなたが弱すぎるだけですわ……それとその誉め言葉はおやめなさい!」
化け物……それは誉め言葉だ、だがそれを私ごときは呼ばれていいはずがない。
「本当の化け物に失礼よ……」
かつて私を殺したあの悪魔やその隣にいた善人もどきと前世での校長……本当の化け物はああいうのを指すのだから。
◇
「アンナ!」
元婚約者のジムが私の元に来た。
「どうしましたの?そんなに慌てまして?」
息をハァハァ言わせている、走ってきたのだろう。
「最近どうしたんだい?人が変わったようになっちゃって……」
「変わる?私は前からああでしたわよ」
「違う!前はもっと周りに気を遣っておしとやかで……何より上の人にそんなことをするようなことは……」
それはあなたが私にくれた愛情に応えるためにやっていたこと、あなたが私を手放した以上それをする必要はない。
「それはあなたの良き妻になる為にやっていたこと……私自分より弱い同性に媚を売るのは嫌いですの……」
「そんなことは前には……嫌味言われても別になんともないって……」
「それはあなたがいたからですわ、あなたが放したことで私はあなたの妻になる努力を辞めた……ただそれだけですわ」
考えてみればジムの為に回りに気を遣って作っていた自分というのはとても窮屈だった、だがそれを窮屈と思わせなかったのがジムという許嫁だったのだ。
「魔法についても僕に隠していたんだね……」
「あなたも彼女とのこと隠していたでしょう?女性は隠し事を着飾って美しさを磨き上げるのよ」
本来妻となったら話そうとしていたなんて思っていたけど今更言っても意味のないこと。
「そうかい……メリダは僕に自分のことを包み隠さず話してくれたけど君は違うんだね……」
「ええ……それと彼女だって隠し事ぐらいあると思うけど?」
「メリダはそんなことはしない!僕にべったりで何だって相談してくれた……子供のことだって……」
子供?あんな妄想妊娠に振り回されて全く哀れな……
「虚妄の宝……」
「えっ……」
「もしメリダとのことで何かあった時あなたは試されるわ」
彼女のあれは彼の願望か彼女の執念か……それはまだわからないけど結末が楽しみに仕方ない。
あなたが彼女の狂気に気付いた時あなたがそれをどう受け止めるか……私はそれを遠くから眺めさせてもらうわ。
「私を振ったんだから幸せにしてあげなさい!」
嘘を嫌う彼が彼女の虚妄を嘘と感じ取った時彼は果たしてどう思うのかしらね。
私より彼女を選んだことによる後悔を少しでも感じ取る瞬間……それは必ず来る。
「でもこれだけは言っておくわ……私はこないだまであなたを心の底から愛していたわ」
「アンナ……」
「だから今まで私に楽しい時間をくれてありがとう……」
もう過ぎた話だ……私に残った虚無もいずれは何かが入り埋めつくされるのだから。
◇
私の学校内での扱いはたちまち変わっていった、誰も私に悪態をつくものはいなくなったが次第に人は離れていった。
この世界のこの歳では有り得ないレベルの魔法を見せたことで畏怖の対象となった私につけられたのは氷魔姫アイスクイーン、騎士科主席のジムも向こうの土俵で倒すと女傑なんて渾名ももらった。
私が魔法師団入りを決めていた将来有望株をことごとく倒し見下すようになったのを見た私のクラスメイトがつけた。
結構自分では気に入っている、あれから私に好き好んで近づいてくるのはいないけど一人もそんなに悪くはない。
悪夢を見る時は相変わらず辛いがまぁ慣れっこだ。
「何とか考え直してくれないだろうか……」
校長室に呼ばれた私だが何故呼ばれたかと言うと魔法師団主席入団を断ったからだ、あれから現役師団の人が何人か来て手合わせをしたが全員軽く倒した。
将来の有望株、いや王国の希望として来てほしいなんて言われたわけだけど正直窮屈でつまらないと感じたのだ。
「王子が縁談をだなんて話もでているのじゃよ……これは君や君の家にとっての大きなチャンスかと……」
すでに父や母や弟には私の道を話してあるしその了承も得ている。
家族が私の意志を尊重してくれた以上これは絶対に曲げる気はない。
「結構ですわ、それよりも叶えたい願いがありますの」
前世の魔法学校にいた化け物三人に関しては各国の王が直々に頭を下げるような存在だっただけに能力的な強さを持たない権威だけの者との縁談など受ける気はない。
仮に王妃になったって私の得たい物は得れない。
「ウウッ……せめて卒業後もここで講師はやってほしい」
まさか校長が私にこうして頭を深々と下げる日がくるとは……
一応世話になった学び舎だし魔法力の底上げはいずれ世界の危機に直面する可能性もあるわね……
「了解しましたわ、不定期で良ければやりますわ」
「おおっ、ありがとう、感謝するよ」
「ええ、卒業まであともう少し……この学び舎には思入れがありますのでよろしくお願いします」
なんだかんだで中等部から六年過ごした思い出が詰まった場所……今がどうあれ楽しかったという思い出はなくなることはない。
その思い出は消えることのない本物だ。
「何の話をしていたのですか?」
校長室からでるとプリム率いる魔法師団内定組が待ち構えていた、私が説得されて魔法師団に入ることを恐れているのだろう。
「魔法師団入団と王子との縁談の話を断っただけですわ」
それを聞いたプリムはホッとしたような顔を見せる、あれから私の存在もあり自分達の思い通りに学校生活を送れなくなった。
というのもこいつらは下級生いびりをよくやっていたが校長から中等部の下級生への特別講義を開くよう頼まれた私は下級生の面倒を見ていた。
そのせいか中等部の生徒は教師やプリム達のレベルの低さを痛感して私を崇拝するようになり、私も教えた責任としてプリムへいびりをしたら制裁を課すと釘を打ったのだ。
王家の血を引き私を除けばナンバーワンの魔導士なんて言われ絶大な権力を持っていたプリムは権威をふるえなくなっていた。
プリムは王家の血を引いてはいるが私は国王にも認められた存在だ、この数か月のプリムはまさに虚栄の姫だったと言えるだろう。
「話はそれだけですか?私はもういきますわ」
こういう烏合の衆はどうしても好きになれない、私は本物を知っている……絶対的な強さと全てを包み込むあの強さを。
「あなたが馬鹿で助かった、感謝しますわ」
自分の地位が保たれたことで少し安心したのか急に強気になる、だからこの女とは仲良くなれない、プライドが高くてねちっこい独裁者気取りの雑魚……それが私のこの女に対する評価だ。
「フフッ、せいぜい烏合の衆でガキ大将をしているといいわ、あなたみたいな偽物にも虚栄の権利はありますし」
「なんだと!」
「あら、何か文句でもありますの?文句があるなら今相手になりますわよ?」
戦闘の意志を見せると全員が一歩後ろに下がる、これだから余計にイライラする。
「戦う気もない癖に言うだけ言うのはみっともないと思うのだけどどうでしょう?」
「そ、それは」
一歩一歩と近づき歩み寄るとそのまま恐れるように崩れ落ちる。
「哀れね……もう少し相手を選ぶべき、そうは思いませんこと?」
「ヒッ、そんな目で私を見ないで……私はお前よりも将来を約束された……」
「それはそれぞれの価値観が違いますわ、それはいずれ嫌でもわかりますわ」
そもそも土俵が違うしどちらが上などと決められない、私は最強を目指す、こんな王国にこだわる理由もない。
「ではご機嫌用~」
その場を去る、弱い者虐めは趣味ではないが仕返しはきっちりやっておきたかった、五年半以上の月日で受けた嫌がらせを返すには少ない時間ではあるものの私の気はなかなかに晴れた。
「あと一週間か……」
一週間後この魔法学校を卒業する、どうせまたすぐに顔を出すことにはなりそうだけど。
「アンナさん!」
声をかけて来たのは中等部三年のカリムだ、マジェスティ男爵家の次男で私が教えた生徒の一人だ。
「あらカリムどうしましたの?」
「さっきの見ちゃいまして~」
「ああ、見苦しいとこ見せましたわね」
正直ああいうのはみっともないからあまりやりたくなが相手がプリムだけについやってしまった、誰に見られてるともわからないし反省しないとだ。
「いえ、凄くかっこよかったです!アンナさんは憧れなので」
この子は教えた子のなかでも特に私に懐いている、教えた子でもやっぱり一歩引いている子が大半だがこの子は違う。
「フフッ、恥ずかしいですわよ~」
「そんなことはないです……あいつらいつもデカい顔していびってて……ああいうみっともない連中から僕達を救ってくれたアンナさんのお陰で今の僕はありますから」
数少ない話し相手の中にはこうやって懐いてくれる可愛い後輩もいる、今の私の癒しだ。
カリムは私の教えをより忠実に受けて学んでいるし後から個人的に質問がくるから伸びが一番早い。
「ありがとう、みんなあなたみたいに来てくれると嬉しいんだけどやっぱり私ってそんなに怖いかしら?」
「そうですね……僕はそういう風には感じませんでしたけど……あっでも実はみんなアンナさんと話したいって方ばかりですよ」
「あら、私の印象よりも本音は違うってことかしら?」
「そうですね、僕としては今のこの状況は色んな意味で美味しいんですけどね~」
顔を少し赤らめて照れながら言う、全く子の子は……
「そういうのは十年早いですわ、魔術も体技もまだまだなんだしそんなこと考えている暇があるならもっと精進しなさい!」
頭をクシャクシャしながら言う、まぁ悪い気はしないのは事実だ。
可愛いし純粋に私に懐いた可愛い後輩であることには変わりない。
「ヘヘッ、でも卒業したらこうやって話せなくなる教えを受けれなくなるおは大変残念です……」
あからさまに落ち込んだ表情を見せる。
「ああそれなんだけど校長先生に頼まれてますわ、だから卒業後も不定期で講師をやるからみっちり鍛えますわ」
「えっ、本当ですか?」
「本当の本当ですわ~」
するとカリムはガッツポーズをしながら動き回る。
「よかった~これからも会えるんですね~」
「ええそうよ」
ここまで私のことで本気で喜んでくれるのは他にいただろうか……不思議な子だ。
「これからもよろしくお願いします」
「こちらこそですわ~」
「あと気になったことがあるんですけど一ついいですか?」
「ええ何かしら?」
カリムが神妙な顔つきでこちらを見つめる。
「そのですわって言うのみなさん使っているのは重々承知なんですけどアンナさんのは凄い違和感がありまして……本当はそんな言葉遣いをしていなかったのではと……」
それを聞いた時何かがドキッとした、そう私は前世でこの~ですわという言葉は使ってなかった、だがこっちに転生して貴族たちはみな多用しているから使うようにしていたのだ。
なんだかんだでこの学校に入る前から使い始めていたが自分の中でも違和感を拭えなかった、この子はそれに気づいたのだ。
「フフッ、あなたは本当に面白いわ、これ使ってて何か違う、本当は自分じゃない気がしてたの」
「じゃあやっぱり……」
「婚約が破棄になったあの時から自分を出していこうと思ってこの数か月そうしてきたけど自分じゃないものを他の誰かに気付かされるとは思わなかったわ……」
戦闘センスも中々に加えてこの洞察力か……この子ならもしかしたら……
「あなたに会うのは今後ここに来る楽しみにしていいかしら?」
「えっ……ええええ~」
カリムの顔が赤くなり悶えながら体を動かす。
「そ、それって……」
「う~んそれはどうかしら?私って王子からの婚約がきてるし~」
「受けたんですか?そうですよね……王子に比べたら僕なんて……」
「断ったわよ」
「えっ、断ったんですか?」
「ええそうよ」
「僕としては凄く嬉しいですけど流石に勿体なかったのでは?」
まぁそれが普通の反応ね、王子けっこうイケメンだし。
「私がその申し出を喜ぶように見えるかしら?」
するとカリムは少し考えてから口を開く。
「そうですね……僕がアンナさんの講義を受けこうして話していて思うにアンナさんは身分や名誉を欲していない、自分をわかってくれてかつ隣や背中を任せられる人を探しているのかなって……ジムさんのことはそれを抑えてもいいぐらいにそれこそ本当に愛していたから解放してなかったのかなと」
それを聞いた私は心臓が高鳴るぐらいにドキッとしてしまう、この子の洞察力は凄い、だけどそれ以上にこの子は私のことをとてもよく見てくれている。
「フフツ、待ってるわ」
それ以上の言葉はいらなかった、もう彼の答えはもう決まっているのだから。
「ぼ、僕が隣に立てたらそ、その僕のこと貰ってくれますか?」
馬鹿、今そんなこと言われたら……でも今はまだ早い……私も目指すものがある。
「そ、そこは貰っていいですかでしょ!」
「す、すいません……」
「まぁでもいいわよ、その為に来てあげるから強くなりなさいよ」
「は、はい……頑張ります!や、やった~」
「それじゃ私はいくから……それじゃあね」
もしかしたらジムとの婚約破棄は私にとって良かったのかもしれない、あの後悪役令嬢として数か月暴れたその先に待っていたのはこの子だ。
あのままジムと結ばれても幸せになったとは思う、だけど振られたことで違う世界と可能性が見えたのだ。
卒業後の進路はこれだ、魔法師団じゃ単独行動が出来ないがあれは違う、好きに冒険し危険な場所にも行ける。
「冒険者ギルドで私は最強を目指す!」
前世で私が苦戦したような魔物がいるかは知らないけどきっと世界のどこかにはいるはずだ。
あの時のあの言葉……
「我は今お前を許せぬ……だがもしお前が自分を見つけられてそれを共有できる者を見つけられたのなら我はそれを許し再びお前の前に現れて呪いを解こう……それが我とお前の約束だ」
あの言葉が嘘でなければこのままいけばいずれあの男に会えるはず、前の世界とこの世界が同じなのかも何年後なのかもわからないけどあの男は必ず現れるはずだ。
「やってやるわ……」
転生して十八歳になった少女は一つの決意を決めたのだ。
私の名はアンナ・ヴィルヘルム、子爵家の令嬢だ。
亜麻色の長い髪にパッチリとした目、ピンク色の唇……私は自分でも美しい方だと自負している。
そんな私は前世でも貴族の令嬢でそれなりにモテていたが、同級生で最強の魔導士と呼ばれた人を怒らせた。
原因の詳細は省くがその魔導士はそれがきっかけで世界を滅ぼした、私はその原因を作ったことのバツとして直接的かつむごい死にかたをした。
それだけならまだしもその記憶や痛みや来世に引き継ぐという呪いをかけられ転生した。
しばしば見る悪夢はその男に殺された時の夢だ、私はその件については悪いことをしたというのを心の底から実感していない。
なぜならそれをしたことで起こった悲劇もそれによって男が世界を滅ぼすなどとは夢にも思わなかったからだ。
そしてもう一つの不幸……
「そ、そんなことがあっていいのですか!?」
私は唖然とした、今私は婚約していた伯爵家の一人息子との婚約が破棄になったのを知らされたのだ。
最初に会ったのは七年前、私が十一歳の時だ。
美形で将来を約束されたような人で、私自身若い時から苦い記憶と戦ってきただけに凄く嬉しかった。
何度も会いキスもしたし将来を約束した、仲は良好だったと思うだけにその理由が信じられなかった。
「ああ……今先方から連絡がきたんだ……」
父のカール・ヴィルヘルムが申し訳なさそうな声で言う。
「私はジムと愛し合ってました!将来も約束していましたしこれは何かの間違いじゃないのですか!」
「ざ、残念ながら本当なんだ……ジム君はシャンデリア伯爵の令嬢と子供を作ってしまったみたいなんだ……」
ジムは一体何を……この私というのがいながら別の女に手を出していたというの……
「これはジム君から届いた手紙だ……」
「貸して!」
中を見るとジムの字で書かれた物だった。
内容は要約するとこうだ、君のことは好いていたけど君と出会う前からずっと恋焦がれていた者がいてそっちの方も器用に進めてて子供作ったと……なるべく私を傷つけないようにか変に配慮されたその文は私を余計に苛立たせた。
「ふざけないで!この……このっ!」
手紙をくしゃくしゃにして破り捨てる。
ジムは言うならばたた二股野郎……私の純情を弄んだクズ……キスまでして今度を君を奪いにいくなんてそれっぽい発言までしていただけに私の怒りは収まらず今なお体の中で燃え続けている。
前世でも酷い死に方して今もこの有様……一体私はどれだけバツを受ければいい……
「抑えてアンナ……気持ちは凄くわかるわ……」
母のメロームが私を必死に宥める、こんな惨めな思いをした娘を見たくはなかっただろう。
私も悲しい……昨日までは幸せ一杯の私とそれを祝福する父と母がいた、だが今は惨めな私とそれを慰める父と母に転換したのだ。
「もうすぐ卒業だし、しばらく学校を休んでもいいわ……今はあなたが自身を保つことが大事だから……」
「そ、そうだ……わしもいい相手を探すから……」
ジム以上の相手はそう簡単にみつからない……うちは子爵家だけに身分の高い家の相手を見繕うのは中々に難しい。
ああ絶望だ……学校では魔法が低レベルな今の世の中に合わせて周りに合わせていてとても退屈な日々を送っていた。
楽しみはジムと何かしらのやり取りをすることだった、だがそのやり取りをすることはない、するつもりがないというのが正しい……とにかくそういう心情だった。
◇
次の日になるとすっかりジムへの未練は消えていた、いつも見る悪夢がその悲しみさえも消すぐらいの苦しみだったからだ、こういう形で約に立つとはなんとも皮肉だ……
ただ自身の想いを踏みにじった怒りと悲しみは残っていた。
「おはようございます」
「お、おはよう」
「おはようアンナ」
心配そうな父と母が精いっぱいの笑顔を向けてくれたのがただ痛い、だがもう踏ん切りはついた。
「そんな顔をしなくても大丈夫ですわ、学校も行きますわ~」
「大丈夫なのか?」
「ええ、いつまでもクヨクヨしてはいけませんわ」
まだ完全に立ち直ったわけではないけどいつまでも二人に心配をかけるわけにはいかない。
食事を済ませ馬車に乗る、ジムにはお幸せにって言っておけばいい。
家から馬車で十分圏内のところにあるルナール養成学校に通っている、魔法科と騎士科に分かれ私は魔法科だ、魔法成績は真ん中ぐらいを装っている。
私のいた前世と同じ世界かも疑問なぐらいに魔法のレベルが下がっているわけだがあまり強いとこを見せるのは得策ではない……結婚に響くからだ。
貴族の間では女性は女性らしくというので自身より強い女性とは婚約を結ぶ男性はあまりいないからだ。
「頑張れ私……捨てる神あれば拾う神ありよ……」
前世で私を殺したあの男が私にいった言葉だ……あの男の言葉ということがなければ好きな言葉ランキングトップ五に入るだろう。
校内に入るとまず気になったのは私への視線だった……貴族たちは噂好きの下賤な生き物、私の婚約破棄のことも知っているのだろう。
笑いたきゃ好きなだけ笑えばいい……私はそんなことじゃ決して折れない。
「おはようございますわ~」
教室に入ると私を見てクスクス笑う声が聞こえてきた、それを無視して席に座るとクラスメイトのマーレが話しかけてくる。
「おはようアンナ、取られた気分はどうかしら?」
「噂が早いのね、なにか用かしら?」
「あなたが今どういう心境なのか聞きたくて~」
うるさい虫だこと……虫は無視いするのが安定ね。
「別に普通ですわ、つまらない返答でごめんなさいね~」
確かに昨日は悔しくて死にたいぐらいだった、でも一夜明けると未練はさっぱり消えていた。
あれだけ入れ込んでいただけに悔しかったはずだがそこは自分でも不思議だ。
「つよ~い、だけど伯爵家に捨てられたあなたは大きな後ろ盾も失ったしその強がりもどこまで続くのかしら~」
嫌味たらしいマーレの声を聞き心底うざかった、だが今は耐えた……こいつに今何か言ったところでなんにもならない。
ただ惨めに見えるだけなのだから……
午前中の授業を終え昼に入ると別のクラスからあの男がやってきた、しかも相手を連れてきてだ。
「やぁアンナ……」
気まずそうな顔でこちらを見る、とてもとても申し訳なさそうにするその姿はより私を苛立たせた。
そんな顔するなら早く私に自白してほしかったものだ。
「どうしましたの?せっかくのイケメンが台無しよ」
「アンナ、君に一つ伝えたくて……」
どうせ謝りたいなんて話だろうけど別に謝ってもらわなくてもいい、正直もうどうでもいいのだから。
「僕は……」
金髪の美男子が頭を下げようとしたその瞬間だった……
「私が悪いんです!」
茶髪のカールがかかった長い髪、おしとやかな美女で有名なメリダ・シャンデリラだ。
騎士科のジムとは普段の授業では一緒にならない、ただ同じ魔法科でも騎士科と教室が近いクラスのメリダは幼馴染ということで二人が話しているところをしばしば見かけていたが気にしなかったことが災いしたとでも言うのだろうか……
「君は悪くない……僕が……」
二人してそんなことしないでほしいものだ、表情を作って平静を保つのもけっこう苦労するのだから。
「私の前で仲がいいのを見せつけたいのはわかりましたけど喧嘩を売っているのかしら?」
「い、いえそんなつもりは……すみません……」
気弱そうなこの感じが守ってあげたくなるようだ、正直私には何がいいのかわからない。
「本当に申し訳ありませんでした……私が全て悪いんです……」
頭を深々と下げる、確かに少しお腹がふっくらしたような感じ……果たしてどれぐらいなのか見定めるとしよう。
それによって行為に及んだ日がある程度特定できる。
「そうね……それよりもあなたのお腹見せて頂戴、どれぐらい育ったのか見てみたいわ」
「はい」
まだ多少の膨らみしかないメリダのお腹だが実際に触れてみる。
これで中で死んでいたりしたら可哀そうだし触れると同時に腕に魔力を込め密かに超音波を当てる。
これはそれなりに難易度の高い魔法技術であるが前世と比べて魔法技術が衰退したこの世界でこんな風に応用ができるものは少ない。
「どれどれ……」
だが触れた時に違和感を感じた、転生後にこの技術を使って過去に妊婦のお腹を触らしてもらったことがあるからだ。
中に赤ん坊がいれば手に違和感が残るはずだが全くない……これよりも小さなお腹で試したことがあるだけに明らかにおかしい。
「どうしました?」
「い、いや、すくすくと育っているなと思いましてよ」
お腹から手を放す、一体どういうこと?
確か前世でお腹は大きくなるけど子供は一向に生まれないといった症状を聞いたことがあるけど……まさかあれか!
想像妊娠……前世で私が卒業した魔法学校でそれを判別する魔法技術とその原因と治療について研究をしていたのがいた。
その研究によれば原因は過度なストレスだったはず……
「あなたのこれからは全力でサポートするわ……それが私に出来るせめてもの償いだから……」
そんなものはいらないわ、反吐がでる。
というかあなたのそれの方がかえって心配よ、自分の心配しなさい。
ただこの泥棒猫が執念で作り出した虚妄の宝は私とジムを完全に引き裂き自身の鎖で繋いだのだ。
そんな彼女に対して抱くのは悔しさよりもあっぱれだった。
「ええありがとう……ジムももっと堂々とするといいわ!彼女を幸せにしてあげなさい!」
「ありがとう……本当にすまなかった。二人を幸せにすることを誓うよ!」
残念ながら子は生まれない以前に存在すらしていない……せいぜい彼女の虚妄に振り回されるといいわ、私は決してそれを教えないけど彼女をそうさせたのもあなたなのだから責任しっかり果たしなさい。
そして私は路線をかえて生きていくことに決めたのだ。
◇
午後は魔法の座学だ、大体頭に入っているのでやる必要はないが見せつけてやらないと気が済まないのだ。
「先生、その魔法式はもっとより効率のいいものがありますわ」
「えっ……」
「基礎系の魔法は本来無詠唱で放つ物、こんな稚拙な魔法を詠唱して放つなど非効率もいいとこですわ」
「だがそんな高等技術は上級魔法使いでないと無理な芸当だよ、少なくともこの過程で習得できるものじゃ……」
第三位階魔法に詠唱など前世のクラスメイトに笑われてしまうわ、そこまでにこの世の中の魔法技術は低い。
「こうやって……」
魔法式を頭の中で一瞬で作り上げ具現化する。
「エアーショット!」
窓の外に向かって魔法を放つとみな目を点にしてそれを見ていた。
「出来ないのはレベルが低いだけですわね、魔法を学んでいる者としてこれぐらい当然ですわ」
ジムとの婚約が破棄になったしもう周りに気を遣う必要なない、自分よりも身分の高い家の令嬢で魔法に優れていると自称する人たちを煽てるのもいい加減うんざりしていた。
あの程度の腕で学校でもトップの腕で、王国魔法師団でも期待されているなんてがっかりもいいとこだ。
私はこういう貴族のしがらみの中で生きることはもうしない、やるなら前世からの夢であるあれに……私の第二の人生はここから始まるのだから。
◇
「何ですって!」
「とにかくどいてくださらないかしら?」
私は今、目の前で絡まれていた、絡んできたのは王家の血を引くマリオネス公爵家の令嬢で来年王国魔法師団主席入隊になるプリム・マリオネスだ。
最近私が前世の魔法知識をひけらかして授業を荒らすものだから気に入らないのだろう、あんまりにもうるさいから雑魚はおだまりなんて言ってしまった。
プリムは顔を真っ赤にして怒り狂い取り巻きを集めて私を囲い始めたのだ。
「烏合の衆を集めても変わりません事よ、怪我したくなければ離れなさい!」
私が前世で出た魔法学校は能力こそ全て!魔術学校のくせして中等部から六年間最上位に居続けた奴らが近しい奴も鍛えたせいで魔術も体術も一流でなければ上には昇りつめることが出来ない学校だっただけに私は体術も学んだ。
最後の年は序列十位まだった、ちなみに年代が違えば主席になれたと校長に言われてからは入った年を呪ったほどだ、まぁ無理もない……序列一位に君臨した二人は世界を滅ぼすほどに強かったのだから。
「このっ……」
「エアロバースト!」
第五位位階魔法だ、第十まであり人類では七が限界とされているというのが前世で習ったことだが果たしてそれがこの世界でも常識なのかは疑問だ。
「うわぁぁぁ!」
私を囲んだ烏合の衆は吹き飛ばされそのまま尻もちをついた、唯一プリムだけは咄嗟にバリアを貼ったので尻もちはつかずに堪えた。
「あら、咄嗟にシールドなんてやりますわね~」
「あ、あんたは一体……」
そんなプリムを見てニヤッと微笑み腹にけりを入れる。
「ゴホッ……」
そのまま崩れ落ちたプリムを上から見下ろすように私は言った。
「雑魚がまだ何か用ですの?」
わざと顔をにやりとさせな見下しより相手を馬鹿にするような目を見せる、今までさんざん私にしてきたことをこういう形でやり返されるのはさぞかし悔しいだろう。
でもそれでも彼女は私に何も言えない、何故なら彼女は私と絶対的な力の差を知ってしまった。
彼女はこの中ではマシなレベルだ、それだけに絶対届かないであろうその差を今垣間見たはずだ。
「ば、化け物め……」
「あなたが弱すぎるだけですわ……それとその誉め言葉はおやめなさい!」
化け物……それは誉め言葉だ、だがそれを私ごときは呼ばれていいはずがない。
「本当の化け物に失礼よ……」
かつて私を殺したあの悪魔やその隣にいた善人もどきと前世での校長……本当の化け物はああいうのを指すのだから。
◇
「アンナ!」
元婚約者のジムが私の元に来た。
「どうしましたの?そんなに慌てまして?」
息をハァハァ言わせている、走ってきたのだろう。
「最近どうしたんだい?人が変わったようになっちゃって……」
「変わる?私は前からああでしたわよ」
「違う!前はもっと周りに気を遣っておしとやかで……何より上の人にそんなことをするようなことは……」
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「アンナ……」
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◇
私の学校内での扱いはたちまち変わっていった、誰も私に悪態をつくものはいなくなったが次第に人は離れていった。
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私が魔法師団入りを決めていた将来有望株をことごとく倒し見下すようになったのを見た私のクラスメイトがつけた。
結構自分では気に入っている、あれから私に好き好んで近づいてくるのはいないけど一人もそんなに悪くはない。
悪夢を見る時は相変わらず辛いがまぁ慣れっこだ。
「何とか考え直してくれないだろうか……」
校長室に呼ばれた私だが何故呼ばれたかと言うと魔法師団主席入団を断ったからだ、あれから現役師団の人が何人か来て手合わせをしたが全員軽く倒した。
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「王子が縁談をだなんて話もでているのじゃよ……これは君や君の家にとっての大きなチャンスかと……」
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「結構ですわ、それよりも叶えたい願いがありますの」
前世の魔法学校にいた化け物三人に関しては各国の王が直々に頭を下げるような存在だっただけに能力的な強さを持たない権威だけの者との縁談など受ける気はない。
仮に王妃になったって私の得たい物は得れない。
「ウウッ……せめて卒業後もここで講師はやってほしい」
まさか校長が私にこうして頭を深々と下げる日がくるとは……
一応世話になった学び舎だし魔法力の底上げはいずれ世界の危機に直面する可能性もあるわね……
「了解しましたわ、不定期で良ければやりますわ」
「おおっ、ありがとう、感謝するよ」
「ええ、卒業まであともう少し……この学び舎には思入れがありますのでよろしくお願いします」
なんだかんだで中等部から六年過ごした思い出が詰まった場所……今がどうあれ楽しかったという思い出はなくなることはない。
その思い出は消えることのない本物だ。
「何の話をしていたのですか?」
校長室からでるとプリム率いる魔法師団内定組が待ち構えていた、私が説得されて魔法師団に入ることを恐れているのだろう。
「魔法師団入団と王子との縁談の話を断っただけですわ」
それを聞いたプリムはホッとしたような顔を見せる、あれから私の存在もあり自分達の思い通りに学校生活を送れなくなった。
というのもこいつらは下級生いびりをよくやっていたが校長から中等部の下級生への特別講義を開くよう頼まれた私は下級生の面倒を見ていた。
そのせいか中等部の生徒は教師やプリム達のレベルの低さを痛感して私を崇拝するようになり、私も教えた責任としてプリムへいびりをしたら制裁を課すと釘を打ったのだ。
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「フフッ、せいぜい烏合の衆でガキ大将をしているといいわ、あなたみたいな偽物にも虚栄の権利はありますし」
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「ヒッ、そんな目で私を見ないで……私はお前よりも将来を約束された……」
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「ではご機嫌用~」
その場を去る、弱い者虐めは趣味ではないが仕返しはきっちりやっておきたかった、五年半以上の月日で受けた嫌がらせを返すには少ない時間ではあるものの私の気はなかなかに晴れた。
「あと一週間か……」
一週間後この魔法学校を卒業する、どうせまたすぐに顔を出すことにはなりそうだけど。
「アンナさん!」
声をかけて来たのは中等部三年のカリムだ、マジェスティ男爵家の次男で私が教えた生徒の一人だ。
「あらカリムどうしましたの?」
「さっきの見ちゃいまして~」
「ああ、見苦しいとこ見せましたわね」
正直ああいうのはみっともないからあまりやりたくなが相手がプリムだけについやってしまった、誰に見られてるともわからないし反省しないとだ。
「いえ、凄くかっこよかったです!アンナさんは憧れなので」
この子は教えた子のなかでも特に私に懐いている、教えた子でもやっぱり一歩引いている子が大半だがこの子は違う。
「フフッ、恥ずかしいですわよ~」
「そんなことはないです……あいつらいつもデカい顔していびってて……ああいうみっともない連中から僕達を救ってくれたアンナさんのお陰で今の僕はありますから」
数少ない話し相手の中にはこうやって懐いてくれる可愛い後輩もいる、今の私の癒しだ。
カリムは私の教えをより忠実に受けて学んでいるし後から個人的に質問がくるから伸びが一番早い。
「ありがとう、みんなあなたみたいに来てくれると嬉しいんだけどやっぱり私ってそんなに怖いかしら?」
「そうですね……僕はそういう風には感じませんでしたけど……あっでも実はみんなアンナさんと話したいって方ばかりですよ」
「あら、私の印象よりも本音は違うってことかしら?」
「そうですね、僕としては今のこの状況は色んな意味で美味しいんですけどね~」
顔を少し赤らめて照れながら言う、全く子の子は……
「そういうのは十年早いですわ、魔術も体技もまだまだなんだしそんなこと考えている暇があるならもっと精進しなさい!」
頭をクシャクシャしながら言う、まぁ悪い気はしないのは事実だ。
可愛いし純粋に私に懐いた可愛い後輩であることには変わりない。
「ヘヘッ、でも卒業したらこうやって話せなくなる教えを受けれなくなるおは大変残念です……」
あからさまに落ち込んだ表情を見せる。
「ああそれなんだけど校長先生に頼まれてますわ、だから卒業後も不定期で講師をやるからみっちり鍛えますわ」
「えっ、本当ですか?」
「本当の本当ですわ~」
するとカリムはガッツポーズをしながら動き回る。
「よかった~これからも会えるんですね~」
「ええそうよ」
ここまで私のことで本気で喜んでくれるのは他にいただろうか……不思議な子だ。
「これからもよろしくお願いします」
「こちらこそですわ~」
「あと気になったことがあるんですけど一ついいですか?」
「ええ何かしら?」
カリムが神妙な顔つきでこちらを見つめる。
「そのですわって言うのみなさん使っているのは重々承知なんですけどアンナさんのは凄い違和感がありまして……本当はそんな言葉遣いをしていなかったのではと……」
それを聞いた時何かがドキッとした、そう私は前世でこの~ですわという言葉は使ってなかった、だがこっちに転生して貴族たちはみな多用しているから使うようにしていたのだ。
なんだかんだでこの学校に入る前から使い始めていたが自分の中でも違和感を拭えなかった、この子はそれに気づいたのだ。
「フフッ、あなたは本当に面白いわ、これ使ってて何か違う、本当は自分じゃない気がしてたの」
「じゃあやっぱり……」
「婚約が破棄になったあの時から自分を出していこうと思ってこの数か月そうしてきたけど自分じゃないものを他の誰かに気付かされるとは思わなかったわ……」
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「あなたに会うのは今後ここに来る楽しみにしていいかしら?」
「えっ……ええええ~」
カリムの顔が赤くなり悶えながら体を動かす。
「そ、それって……」
「う~んそれはどうかしら?私って王子からの婚約がきてるし~」
「受けたんですか?そうですよね……王子に比べたら僕なんて……」
「断ったわよ」
「えっ、断ったんですか?」
「ええそうよ」
「僕としては凄く嬉しいですけど流石に勿体なかったのでは?」
まぁそれが普通の反応ね、王子けっこうイケメンだし。
「私がその申し出を喜ぶように見えるかしら?」
するとカリムは少し考えてから口を開く。
「そうですね……僕がアンナさんの講義を受けこうして話していて思うにアンナさんは身分や名誉を欲していない、自分をわかってくれてかつ隣や背中を任せられる人を探しているのかなって……ジムさんのことはそれを抑えてもいいぐらいにそれこそ本当に愛していたから解放してなかったのかなと」
それを聞いた私は心臓が高鳴るぐらいにドキッとしてしまう、この子の洞察力は凄い、だけどそれ以上にこの子は私のことをとてもよく見てくれている。
「フフツ、待ってるわ」
それ以上の言葉はいらなかった、もう彼の答えはもう決まっているのだから。
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「は、はい……頑張ります!や、やった~」
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