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1巻
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剣士がもう少し早く気付いていれば、アリーは賢者にいい影響を与えてくれたかもしれない。だが今回のような別れ方では、たとえアリーが生きていたとしても、もう二度と相まみえることはないだろう。本当に残念だ。だがまた出会えたならば、それは運命かもしれない。
なんて珍しく考え事をしながら狩りをしていた剣士は、仕留めかけた魔物を二匹ほど取り逃がしてしまう。三度目の正直で、ようやく獲物をゲット。
獲物はもちろん、夕食の丸焼きとなった。そして剣士が狩りをしている間に、賢者は飲料にできる水源を確保していた。
一方リーダーと魔法使いは……すでに寝ていた。
「どうせお前らは、後から腹が空いたとわめいて起き出すんだ! それなら今食っておけ!」
考えすぎて頭が痛い剣士に八つ当たりされ、蹴り転がされる二人。そうしてホワイトハットのメンバーは、なんとか夕食を済ませ就寝した。
ウォーン!! ウガーァ!!
暗闇の中、魔物の咆哮がこだまする。
「チッ。また魔物が出たぞ! これではおちおち寝てもいられない。ダンジョンへ来たとき、この辺では魔物なんて出なかったよな? いったいどうしたんだ?」
すでに何度も魔物の襲来で起こされ、機嫌の悪いリーダー。
「まったくリーダーはいちいち騒がしいですね。出るものは仕方がありません。ですが確かに多いですね。ダンジョンに潜っていたひと月の間に、異常発生でもしたのでしょうか?」
「お前らはアホか! そんなわけあるか! それもアリーが何かしてくれていたんじゃないのか? よく考えてみろ。アリーが来てから、夜は見張りなしでグッスリだった。それが異常なんだ。むしろ寝られない今が普通なんだよ!」
「もう! うるさいな! 夜中に騒ぐな! 起こすな! お肌が荒れちゃうじゃない! しかも剣士は、アリーアリーってうるさいな!」
魔物がすでに倒された後、ようやく起き出してきた魔法使いがわめき出す。
「まったく脳筋が、何生意気言っているのよ。アリーの肩を持つの? 剣士だって追放を止めなかったじゃない」
「確かにな! だが俺はいれば楽だが、いなくても構わんと言ったんだ。食事は食えれば問題ない。守らなければならん人間は必要ないとな! だがよく考えてみろ。アリーは俺たちに守られていたか? 俺は守った覚えはないぞ。お前たちはどうなんだ?」
「「「…………」」」
「しかも肉は現地調達していたみたいじゃないか。料理になっていたから気付かなかったが、俺がさっき夕食用に狩ったような獣や魔物の肉が大半だった。茸や果実もそうだな。それはまあいい。とにかく眠れないならこのまま進むぞ。テントはしまうからな! 不眠不休で歩けば、半分の日数で町に着く。どうせ飯もないし構わないだろ!」
剣士がテントをたたみ出す。賢者も慌てて焚き火の始末をする。リーダーと魔法使いは、剣士の突然の反論と行動に呆然としていた。
それから町へ到着するまで、魔物と対峙しながら不眠不休の行軍が始まった。
剣士はかなり苛立っていた。メンバーのことはもちろんだが、己の不甲斐なさにも憤っていた。
かなり後方でブツブツと文句を言い合いながら歩く、リーダーと魔法使い。剣士の斜め後ろを、眉間にシワを寄せながら歩く賢者。
時折姿を見せる魔物は、剣士と賢者が倒している。剣士の怒りと呆れは、すでにピークに達していた。そこへ普段滅多に声を荒らげない賢者の怒声がこだまする。
「剣士! 考え事は後にしてください! 前方から二匹来ますよ! 反省だけなら猿でもできます! 後方の二人のことは無視しなさい!」
「お前も同じことを考えてたんじゃないのか?」
「…………すみません。後でもう少し考えさせてもらいます。ですが、とりあえず今は魔物です!」
前方から来る二匹を難なく倒す二人。剣士は賢者の様子にいくぶんかホッとしながらも、やはり後方の二人のことが頭から離れなかった。
(まったくあいつらとは長い付き合いだが、ここまで甘ちゃんだとは思わなかった。冒険者の基本をすっかり忘れていやがる)
夜営のとき交代で見張りをするのは当たり前。それが嫌なら、高価だが魔除け香を購入すればいい。食料は荷物にならぬように、最低限の干し肉や黒パンを各自で常備する。
長期の場合は乾燥させた米や野菜、ドライフルーツやナッツなども持参するが、後は現地調達になる。また飲料水は荷物になるため、最低日数分を準備し、道中では優先的に水場を確保するのが鉄則だ。
(俺はアリーに謝罪せねばならないな。脳筋と言われても仕方がない。剣を持ち戦うことしか考えていなかった。戦いにかまけ、他のことは全て人に任せっきりにしていた。料理人がいるのだからと、戦闘の邪魔になる食料も持たなかった。そのツケが全てアリーに回ったのだろう。しかも俺はそれが当然だと受け止めていた。契約金を支払い、守ってやっているのだからとな)
そもそも料理人というのは、ポーターと同等な職種のはず。守られていたとしても、通常ならダンジョンの最深部になんて到達できやしない。連れてくること自体が非常識なのだ。
(いったいアリーは、一人で何役こなしていたんだ? いや、どうやって身を守り、我々についてきていたんだ?)
遅れはとったことがない。しかもメンバーの誰も守っていた様子はない。恥ずかしい話だが、もちろん剣士もだ。
(たった一人で留守番をさせられたり、メンバーと離れて行動していたときはどうしていた? なぜアリーはここまで我慢していた? 声を上げてくれれば、俺だって少しは考えたかもしれないのに。……まあこれは言い訳だな。後悔先に立たずだ)
確かにアリーが仕事の条件にしているという、往路の道案内はした形だ。しかしそれも屁理屈だろう。ホワイトハットは守るべきアリーを、ダンジョンの最深部に置き去りにしたのだ。普通の料理人ならば、死ねと宣告されたようなもの。
たとえアリーが一人で何役もこなせて、自分の身を自分で守れていたとしても、契約時にそれがわかろうはずもない。少なくともリーダーは普通の料理人だと思って契約したはずだった。
なのになぜ、ダンジョンの最奥にまで連れ込み置き去りにした? リーダーは全てを知っていて置き去りにしたのか? もしそうじゃないならば……
(これはSランク昇格どころじゃないかもな。ギルドでは全てを正直に話そう。そして、なるべく早く捜索隊を出してもらおう。きっとアリーならば生き残っているはずだ。いや、これは浅はかな俺の、罪から逃れたいがための願望なのかもしれない。本当にすまん。アリー、どうか死なないでいてくれ)
賢者もなんだか思案顔だったが、ようやく大事なことに気付いたようで安心した。剣士のことを常に脳筋だとおとしめてくる賢者。彼に脳筋と言われる剣士でさえ気付いたのだから、賢い賢者様ならば気付いて当然だろう。
しかし本当にクッキー様々だ。腹にはたまるし、力もみなぎる感じがする。腹が空いているから感じるだけかもしれないが、思えば賢者は最初からそう言っていた。早々に食い尽くした他の二人の動きも、クッキーを分けてやると途端に機敏になる。
(しかしこの二人はいい加減にウザいな。いつまでアリーの文句を言っているんだ? アリーのクッキーがなければ、お前たちは何も食べられなかったんだぞ?)
時折ため息と共に言葉として漏れてしまう。そんな剣士の心の叫びも、はるか後方の二人には、まったく届くことがなかった。
ホワイトハットのメンバーはボロ雑巾のようになりながらも、なんとか町に到着した。深夜だがギルドにはまだ明かりが灯っている。ひと足先にギルドを覗いてきた剣士が、残りの三人にそれを伝えて再び歩き出した。
「もう。何を焦っているのよ。急がなくてもギルドは逃げないわよ。ダンジョン制覇の報告と、Sランク昇格の打診でしょ? それなら明日の朝、ギルドが開いてからでいいじゃないの」
魔法使いの話に、リーダーも声高に同意した。
「そうだぞ。こんな夜中に行っても誰もいやしない。どうせ報告するなら、たくさんの冒険者がいる時間帯の方が目立つ。俺たちの活躍を見せつけないとな! 華々しくいくぞ! そのためには身ぎれいにしなければ。疲れたから風呂にも入りたいし、飯も食べたい。着替えもしなくちゃな!」
魔法使いはいつものことだが、リーダーもハイテンションでウザい。いつもの寡黙さはどこに消えたのか? というくらいに喋りまくっている。
「お前らうるさい! そういうことじゃない。勝手に風呂にでも飯にでも行きやがれ!」
剣士がいい加減にしろ! とばかりに活を入れた。
「男のヒスはイヤねー」
「だなー。おーこわー」
「待ってください剣士。私も行きます……」
町へと戻る道すがら、ほぼ無言だった賢者。先に歩き出した剣士と共に、明かりの灯るギルドへ向かう。リーダーと魔法使いは、パーティーの拠点に向かったようだ。
「俺はアリーを捜索しに行くぞ。賢者はどうするんだ?」
「もちろん私も行きますよ。ダンジョンを制覇した私たちならば、どの階層にでも飛べますからね。なんならすぐにでも行きますか?」
「確かに一刻でも早い方がいいな。しかし他の二人が、何かをやらかしそうで恐ろしい。ここはひとまずギルドに報告してからの方が良さそうだ」
「やはりそうすべきでしょうか?」
二人は顔を見合わせた。
「おいおい。勝手なことをせずに、キチンと報告してくれよ。お二人さん。ずいぶんボロボロだが、お早いご帰還だったな。詳細はギルドで聞くからついてこい。従わないなら連行するぞ」
暗闇の中から声がして驚き、振り向く二人。するとそこには腕を組み、壁にもたれかかって睨みをきかせたギルマスがいた。
「二人だけか? まあその方が都合がいい。残りの二人には、詐欺と殺人未遂の嫌疑がかかっている。未遂だ。この意味がわかるか? ……安心しろ。アリーは無事だ。それともお前らも、アリーに死んでほしかったのか? 頼むからお前たちには、ギルドで洗いざらい話してほしい」
アリーが無事? まさか自分たちより先に戻っているなんてありえない。
あまりの驚きに硬直する二人。しかしアリーならばと、なぜか納得してしまうのだった。
ギルマスに先導され、重い足取りでギルドへ向かう。しかし剣士は、明らかにホッとしていた。賢者は相変わらずの思案顔だ。
やがて二人はギルドに到着した。ギルマスが、まだ明かりの漏れる扉を開く。ギルド内は夜中にもかかわらず、なぜかたくさんの人でごった返していた。二人を見る視線が痛い。そこへ奥から女性の声が聞こえてくる。
「お二人ともお疲れ様でした。ずいぶんとお早いお戻りでしたね。私よりは遅かったですけど」
人垣が割れて現れた人物。その顔を見て固まる剣士と賢者。ギルマスから無事だと聞いたが、実物を見て驚愕してしまう。
安心し、崩れ落ちるようにその場にへたり込む剣士。賢者は感極まったように駆け出し、その女性に飛びついた。
「アリー! 本物ですか? 本当に無事で!? しかしなぜ先に戻っているのです?」
突然現れたアリーにしっかりと抱きつき、体全体を撫でながら生存を確かめている賢者。だが、それはさすがにまずいだろう。案の定アリーに突き飛ばされ、周囲の人たちに小突き回されていた。
アリーが生きていてくれて良かった。今の二人の頭の中には、それしかなかった。
剣士と賢者は、ともかく頭を下げまくり謝罪した。すでに深夜であるにもかかわらず、アリーの無事を確認しに来た人たち。本当にたくさんの人たちが、ごった返す中での公開謝罪だ。
しかし恥も外聞も知ったことではない。それだけの罪を、剣士と賢者は犯したのだ。当然、集まった人たちにも吊るし上げられた。二人は知らなかったが、アリーはこの町の人気者だ。自業自得ではあるものの、剣士と賢者は散々な夜を過ごすことになるのだった。
その夜のギルドでは、真実を暴くための緊急会議が行われた。もちろん、アリーと剣士と賢者も参加した。ギルドの明かりは、明け方まで消えることがなかった。
その頃、リーダーと魔法使いの二人はどんちゃん騒ぎ。拠点には料理がたくさん用意されていた。もちろんダンジョンへの出発前に、アリーが料理を作り置きしていくはずもない。
しかし浮かれきった二人は、そんなことにも気付けない。すでにまともな思考を放棄していた。空きっ腹にワインを呷りまくり、料理を食べまくる。早々に酔いつぶれた二人はそのまま眠りこけ、アリーの書き置きにも気付くことはなかった。
早朝のホワイトハットの拠点に、ギルドから緊急呼び出しの連絡が入った。昨晩は調子に乗りすぎて、すっかり酔いつぶれていたリーダーと魔法使い。慌てて起き上がろうとしたが、まだ酔いが回っているのか上手く起き上がることができない。
鈍く痛む頭を押さえながら、互いに早くしろと罵倒し合う二人。朝の爽やかさなど、微塵も感じさせない。しかしそんな場合ではないと、朝食を食べる間も惜しんで走り出す。
指定の時間にかなり遅れて到着した部屋には、すでにギルマスと剣士に賢者がいた。他にも見知らぬ二人の男性が、ソファーに腰を下ろして談笑している。
「お前らは確か、まだ未成年だったよな? 二日酔いで遅刻か? ずいぶんいいご身分だな」
「それは……体調が……」
リーダーが慌てて弁解を始めるが、横から魔法使いが口を挟む。
「何よ! 早朝からいきなり呼び出す方が悪いんじゃない! 私たちだって疲れて……むぐっ」
「頼むから今は黙っていてくれ」
こめかみを押さえながら、リーダーが魔法使いの口を塞いだ。さすがにリーダーは、現状を理解しているようだ。
「はあ……。まあいい。二人ともさっさと座れ。ギルドからの緊急呼び出しを何よりも優先するのは、Aランク以上のパーティーの義務なのだがなぁ……」
ギルマスが呆れながらも、呼び出した理由を簡潔にまとめて話す。
その内容に驚く、リーダーと魔法使い。
「初めての緊急呼び出しだから、魔物の氾濫でも起きたのかと焦ったよ。これは一大事だと思い、慌てて来たんだ。それなのに昇格試験を受けろって、なぜ急にそんな話になるんだよ!」
「そうよ。まだダンジョン制覇のお祝いすらしていないじゃない」
二人の発言に、室内にいる面々は呆れ顔だ。
「まあまあお二人さん。まずはダンジョン制覇おめでとう。詳しくは他の二人から、すでに報告が上がっている。しかし最深部でアリー君と別れたのは減点だな。たとえ本人が了承したとしても、無理やりにでも連れて帰るべきだった」
アリーの名が出たことに、一瞬ギクリとしたリーダーと魔法使い。だが更なる追及がないことで、他の二人が上手く話をしたのだろうと安心してしまったようだ。
「こちらのお二人はギルド総本部の試験官だ。ホワイトハットがSランクに手が届きそうだと聞き、ちょうど隣町に来ていた彼らに頼んで、こちらにも寄ってもらったんだ」
なんでわざわざ? と、不思議がるリーダーと魔法使いを見ながら、更にギルマスは続ける。
「ギルドの総本部で昇格試験を受けるなら、次は半年後になる。あちらへ行くにもひと月はかかるぞ。それなのにお前たちは、わざわざ寄ってくださった方々をお帰しするのか?」
昇格試験のことは知っていたが、年に数回しかないことや、試験会場のギルド総本部まで約ひと月かかることは、リーダーと魔法使いはもちろん剣士と賢者も知らなかった。
「そっ、それは大変失礼いたしました! わざわざホワイトハットのためにお立ち寄りいただき、本当にありがとうございます。試験の方を、ぜひともよろしくお願いいたします」
リーダーが慌てて頭を下げる。それに続いて他のメンバーも頭を下げた。
「では昇格試験の説明をする。しっかり聞いて、本日中に準備をしてほしい。試験は明日からになるそうだ」
そう言ってギルマスが話し出す。
ホワイトハットは、国からの緊急強制依頼を受けたことがない。だが本来はAランク以上のパーティーに義務付けられたもので、大きな災害や魔物の氾濫などへの対処がそれに該当する。そういった有事に国が招集をかけた場合、高ランク冒険者パーティーはボランティアとして率先して参加する義務を持つのだ。
最近はそうした招集がなかった。しかし増えすぎた魔物を間引くボランティアなどは、随時募集している。そのような機会を利用し、パーティーの名を上げても良いのだ。特にSランクの認定は国が行うものなので、国家への貢献度が審査に大きく加味される。
「国への貢献が認められているパーティーならば、魔の森でSランク級魔物を探して討伐すれば合格だ。ただしお前たちは緊急強制依頼を受けていない。この点を考慮し、ダンジョンでのボス討伐に人命救助をプラスするそうだ」
試験会場は、ホワイトハットが制覇したばかりのダンジョン。そこでのボス討伐にプラスして、置き去りにされたアリーの救助が試験課題となる。
アリーが一人で脱出を試みているならば、まだまだ出口までは遠いはず。ただしいくらかは進んでいることを想定し、ホワイトハットは十階層から出発することになった。もちろんアリーはとっくに生還しているのだから、実は完璧な出来レースなのだが……
「こちらの試験官の方々は、現役のSランク冒険者だ。お二人が君たちの後方をついて歩く。ダンジョン内での野営などは、君たちとは別に行う。もちろん緊急時以外は手を出すこともない。だから試験官の方たちのことは気にせずに、ありのままの君たちを審査してもらってくれ」
ギルマスは話し切ったとばかりに、テーブルの上のハーブティーをすすって息を吐き出した。
「アリーは死んでいるんじゃないのか? それでも探すのか?」
「なぜ死んでいると思うんだ? リーダー、いやホワイトハットは、アリーが自力で戻れると思ったから置き去りにしたんだよな? 死ぬとわかっていて置き去りにしたのなら殺人と同じだ。犯罪者に昇格試験を受ける資格はない。それどころか、冒険者ギルドからも追放となり、二度と冒険者にはなれない。良くて鉱山送りだな」
絶句するリーダーに代わって魔法使いが叫ぶ。
「そんな! 殺人なんて酷い! だってアリーが自分で、往路の道案内はよろしくと言ったのよ。なら復路の道案内はいらないってことじゃない!」
「今その話はするな! 水掛け論にしかならん! ……とにかく以上だ。十階層から出発し、アリーを捜索しながら最下層へ。すでに再生しているであろうダンジョンボスを倒せば試験は終了だ」
魔法使いを見るギルマスの表情は冷ややかだ。本来ならば、Sランク昇格試験の受験資格を得るだけでも大変な名誉なのだが、この場にそのような雰囲気はまったくない。
「アリーが見つからなかったらどうするんだ?」
そう口にしたリーダーをギルマスは一瞥し、吐き捨てるように言った。
「リーダーはそんなにアリーを殺したいのか? 行方不明者の捜索と救助は、冒険者の義務だろうが! たとえ彼女が死んでいたとしても、遺品くらいは探してこい! 試験のためだけじゃない! 一年しか帯同しなかったとはいえ、元メンバーだろうが!」
うなだれて肩を落とし、小さくなるリーダー。ギルマスは更に続ける。
「しかもアリーとリーダーは、親戚だというじゃないか! 私はアリーは天涯孤独だと聞いていたがな。例の家を仲介した商業ギルドが、どちらにもまったく連絡がつかないと言って探していたぞ。リーダーが支払った分を、どちらの名義にするか確認したいとな。これについては私がアリーの名義にさせてもらった。リーダーが支払った分は、アリーへの専属契約料だったはずだからな」
「…………」
「しかしそうなると、アリーが死亡したら遺産相続が発生する。もしリーダーが相続するなら、尚更証拠となる遺品が必要ではないのか? 死亡が確認できなければ、五年は待機する決まりだ」
さすがにこの話には、魔法使いも驚いた顔をしている。もちろん剣士も賢者もだ。この反応を見るに、詐欺はリーダーの独断らしいとギルマスは考えた。
「ともかく以上だ。準備を怠るなよ。まあクリアしたばかりの場所だからな。気を抜かなければ大丈夫だろう。明日の早朝にギルドから馬車を出す。では解散だ」
ギルマスと二人の試験官が退出した。残されたのは、ホワイトハットのメンバー四人のみとなる。
「おい! リーダー! いつまで呆けているんだ! 俺たちは拠点に戻る。さすがに腹も空いたし風呂にも入りたい。明日の準備は個々で構わないよな?」
ボケっとしたまま座り込んでいるリーダーに、剣士が活を入れる。それにハッと驚き、リーダーが立ち上がった。
「ああ。今回の戦利品のマジックバッグがある。さすがに無限収納タイプの希少品ではなかったが、あれを個々に持ち、各自の荷物を入れればいいだろう。メインは食料と水だな。往復は馬車だというし、十階層からなら二週間分もあれば足りるだろう」
「私、もう料理しないわよ?」
「スープくらいなら俺も作れる。ただし文句はなしだ。いざとなれば食える魔物を狩ればいいが、狩れない場合もある。当たり前だが、最低限の食料は用意しろよ。確か水場も数ヶ所あったよな。他に必要なのはポーション類だ。後はそうだな。魔除け香はいるか?」
「今回はダンジョンの中だけだから大丈夫だろう」
剣士の問いかけに、しばし考えてからリーダーが返答した。それに賢者が続く。
「そうですか? ならば持ち物は水場までの飲料水と、主食となる食料がメインでいいですね。……そろそろ非常食のクッキーが切れそうなのです。でもさすがに欲しいとは言えませんよね」
「賢者、何か言ったか?」
リーダーが賢者のボヤキに聞き返すが、返事はない。
「初心に戻ろう。俺たちは贅沢しすぎた。アリーに頼りすぎたんだ」
「頼ってなんかいないわよ! 仕事なんだから料理するのは当たり前でしょう? アリーが他にも何かしていたかもなんて言うけど、全てが憶測じゃない! アリーがいなくても、ホワイトハットはAランクよ。それにもうすぐSランクになるのよ!」
ヒステリックにわめく魔法使い。それを宥めるリーダー。しらける残りの二人。
「雰囲気が悪くなるだろ。少しは落ち着けよ。クリアしたばかりのダンジョンだし、ボスだって楽勝だった。食事さえ我慢すれば大丈夫だろう。なんならSランクに昇格したら、またポーター兼料理人を雇えばいい」
「そうね! さすがはリーダー! 大好きー!!」
「いちゃついているところを悪いが、俺らはもう行くぞ。あと、料理人は二度と雇えないと思うぞ。料理人は上位スキルだ。俺みたいな冒険者が夜営で丸焼きやスープを作るくらいで身に付く、通常スキルの調理とはまったくわけが違うんだからな」
料理と調理ってどう違うの? と、互いに顔を見合わせるリーダーと魔法使い。
「さすがに通常スキルと上位スキルの違いくらいはわかるよな? アリーは希少な上位スキルの料理人持ち。しかもMAXだ。まあ俺も、料理と調理を同一視していた口だけどな」
驚きに固まるリーダー。魔法使いは慌ててギルドカードを取り出し、そこに記載された自分のスキルを確認している。カードはダンジョンクリアの功績により、先ほど更新されたばかりだった。
「わ、私のは調理スキルだ」
「え? 本当だな。しかも初期レベルのままじゃないか」
「マジかよ。丸焼きしかできない俺より低いぞ!」
「なぞそこに驚くのです。私は調理スキルがついていること自体に驚きましたよ」
「みんなうるさい! 覗くなバカたれ! 特に賢者は地獄に落ちろ! デリカシーのない男はモテないんだからね!」
「ほう? 私にはデリカシーがないのですか? 自分ではデリカシーの塊だと思っているのですが。しかしモテないのなら助かります。デリカシーなど捨て去りましょう。これから魔法使いには、私の女性に対する本音で対応することにします。リーダーにもビシバシいきましょうか? 私は無能な人間は大嫌いなのです。これでも仲間だからと、かなり抑えているのですよ」
「それはやめろ!」
なぜ本音で対応してはいけないのですか? と清々しい笑顔で話す賢者。その笑顔を見てビクビクしている剣士は、きっと笑顔の裏側を知っているのだろう。
「賢者よ頼む。仲間内で、暗黒微笑の悪魔神官降臨は遠慮してくれ。俺の胃に穴が空いてしまいそうだ。もちろん微笑みの貴公子様もご遠慮願いたいぞ。あれは正直気持ちが悪すぎる」
「なんですかそれは! 剣士こそ失礼ですよ!」
どうやら賢者はものすごい二つ名持ちのようだった。
翌日早朝のギルド前。まだ薄暗い中、ホワイトハットの四人と試験官の二人が揃う。今回は試験官の二人が、交代で馬車の馭者をする。ギルマスに見送られて馬車は出発した。
出発早々に寝てしまう魔法使い。リーダーもつられて寝てしまっている。そんな二人を見て、ため息をつく剣士と賢者。これから起きることを知っているだけに気分が重いようだ。
時折馬車の速度がゆるむ。窓から覗くと、試験官の一人が馬車から飛び降りていた。どうやら馬車の進行を妨げる魔物を、馬車を止めずに退治しているようだ。
それが断続的に行われる。本来ならばこれが当然なのだと、窓から覗きながら反省をする剣士と賢者。だが寝ている二人は、まったく気付いていなかった。それほど自然に行われていたのだ。その手際にも感心しきりの剣士と賢者だった。
* * * * *
ダンジョンに到着すると、すぐに試験が始まりました。ここからは私、アリーの実況でお送りします。彼らはダンジョン入り口脇の転移陣から、十階層まで移動します。試験官の二人も、もちろん共に転移しました。
試験官の二人はなぜ共に転移できたのでしょう。それは二人がすでにこのダンジョンをクリア済みだからなのですが、そのことにリーダーと魔法使いは気付けませんでした。
「ではこれより、ホワイトハットのSランク昇格試験を行います。生死にかかわると判断した場合を除き、我々は一切手を出しません。つまり我々に手を出された時点で失格と考えてください。またリタイアはいつでも可能です。この救難信号を鳴らしてもらえば、すぐに救助に入ります」
「了解。まあ必要ないけど受け取るわ。さあ行くわよ!」
「「「おー!!」」」
「では開始します」
試験官二人は、常にホワイトハットを視認できる範囲内で行動しています。時折姿が見えなくなりますが、気付くと必ずそばにいるのです。絶妙なさじ加減ですね。感心してしまいます。
近寄る魔物を容赦なく斬り捨て、討伐証明部位を採取し魔石を抉り取ります。更に素材になる部分をはぎ取り処理をしていました。さすがは現役Sランク冒険者ですね。その手際は、素晴らしいの一言に尽きます。
なんて珍しく考え事をしながら狩りをしていた剣士は、仕留めかけた魔物を二匹ほど取り逃がしてしまう。三度目の正直で、ようやく獲物をゲット。
獲物はもちろん、夕食の丸焼きとなった。そして剣士が狩りをしている間に、賢者は飲料にできる水源を確保していた。
一方リーダーと魔法使いは……すでに寝ていた。
「どうせお前らは、後から腹が空いたとわめいて起き出すんだ! それなら今食っておけ!」
考えすぎて頭が痛い剣士に八つ当たりされ、蹴り転がされる二人。そうしてホワイトハットのメンバーは、なんとか夕食を済ませ就寝した。
ウォーン!! ウガーァ!!
暗闇の中、魔物の咆哮がこだまする。
「チッ。また魔物が出たぞ! これではおちおち寝てもいられない。ダンジョンへ来たとき、この辺では魔物なんて出なかったよな? いったいどうしたんだ?」
すでに何度も魔物の襲来で起こされ、機嫌の悪いリーダー。
「まったくリーダーはいちいち騒がしいですね。出るものは仕方がありません。ですが確かに多いですね。ダンジョンに潜っていたひと月の間に、異常発生でもしたのでしょうか?」
「お前らはアホか! そんなわけあるか! それもアリーが何かしてくれていたんじゃないのか? よく考えてみろ。アリーが来てから、夜は見張りなしでグッスリだった。それが異常なんだ。むしろ寝られない今が普通なんだよ!」
「もう! うるさいな! 夜中に騒ぐな! 起こすな! お肌が荒れちゃうじゃない! しかも剣士は、アリーアリーってうるさいな!」
魔物がすでに倒された後、ようやく起き出してきた魔法使いがわめき出す。
「まったく脳筋が、何生意気言っているのよ。アリーの肩を持つの? 剣士だって追放を止めなかったじゃない」
「確かにな! だが俺はいれば楽だが、いなくても構わんと言ったんだ。食事は食えれば問題ない。守らなければならん人間は必要ないとな! だがよく考えてみろ。アリーは俺たちに守られていたか? 俺は守った覚えはないぞ。お前たちはどうなんだ?」
「「「…………」」」
「しかも肉は現地調達していたみたいじゃないか。料理になっていたから気付かなかったが、俺がさっき夕食用に狩ったような獣や魔物の肉が大半だった。茸や果実もそうだな。それはまあいい。とにかく眠れないならこのまま進むぞ。テントはしまうからな! 不眠不休で歩けば、半分の日数で町に着く。どうせ飯もないし構わないだろ!」
剣士がテントをたたみ出す。賢者も慌てて焚き火の始末をする。リーダーと魔法使いは、剣士の突然の反論と行動に呆然としていた。
それから町へ到着するまで、魔物と対峙しながら不眠不休の行軍が始まった。
剣士はかなり苛立っていた。メンバーのことはもちろんだが、己の不甲斐なさにも憤っていた。
かなり後方でブツブツと文句を言い合いながら歩く、リーダーと魔法使い。剣士の斜め後ろを、眉間にシワを寄せながら歩く賢者。
時折姿を見せる魔物は、剣士と賢者が倒している。剣士の怒りと呆れは、すでにピークに達していた。そこへ普段滅多に声を荒らげない賢者の怒声がこだまする。
「剣士! 考え事は後にしてください! 前方から二匹来ますよ! 反省だけなら猿でもできます! 後方の二人のことは無視しなさい!」
「お前も同じことを考えてたんじゃないのか?」
「…………すみません。後でもう少し考えさせてもらいます。ですが、とりあえず今は魔物です!」
前方から来る二匹を難なく倒す二人。剣士は賢者の様子にいくぶんかホッとしながらも、やはり後方の二人のことが頭から離れなかった。
(まったくあいつらとは長い付き合いだが、ここまで甘ちゃんだとは思わなかった。冒険者の基本をすっかり忘れていやがる)
夜営のとき交代で見張りをするのは当たり前。それが嫌なら、高価だが魔除け香を購入すればいい。食料は荷物にならぬように、最低限の干し肉や黒パンを各自で常備する。
長期の場合は乾燥させた米や野菜、ドライフルーツやナッツなども持参するが、後は現地調達になる。また飲料水は荷物になるため、最低日数分を準備し、道中では優先的に水場を確保するのが鉄則だ。
(俺はアリーに謝罪せねばならないな。脳筋と言われても仕方がない。剣を持ち戦うことしか考えていなかった。戦いにかまけ、他のことは全て人に任せっきりにしていた。料理人がいるのだからと、戦闘の邪魔になる食料も持たなかった。そのツケが全てアリーに回ったのだろう。しかも俺はそれが当然だと受け止めていた。契約金を支払い、守ってやっているのだからとな)
そもそも料理人というのは、ポーターと同等な職種のはず。守られていたとしても、通常ならダンジョンの最深部になんて到達できやしない。連れてくること自体が非常識なのだ。
(いったいアリーは、一人で何役こなしていたんだ? いや、どうやって身を守り、我々についてきていたんだ?)
遅れはとったことがない。しかもメンバーの誰も守っていた様子はない。恥ずかしい話だが、もちろん剣士もだ。
(たった一人で留守番をさせられたり、メンバーと離れて行動していたときはどうしていた? なぜアリーはここまで我慢していた? 声を上げてくれれば、俺だって少しは考えたかもしれないのに。……まあこれは言い訳だな。後悔先に立たずだ)
確かにアリーが仕事の条件にしているという、往路の道案内はした形だ。しかしそれも屁理屈だろう。ホワイトハットは守るべきアリーを、ダンジョンの最深部に置き去りにしたのだ。普通の料理人ならば、死ねと宣告されたようなもの。
たとえアリーが一人で何役もこなせて、自分の身を自分で守れていたとしても、契約時にそれがわかろうはずもない。少なくともリーダーは普通の料理人だと思って契約したはずだった。
なのになぜ、ダンジョンの最奥にまで連れ込み置き去りにした? リーダーは全てを知っていて置き去りにしたのか? もしそうじゃないならば……
(これはSランク昇格どころじゃないかもな。ギルドでは全てを正直に話そう。そして、なるべく早く捜索隊を出してもらおう。きっとアリーならば生き残っているはずだ。いや、これは浅はかな俺の、罪から逃れたいがための願望なのかもしれない。本当にすまん。アリー、どうか死なないでいてくれ)
賢者もなんだか思案顔だったが、ようやく大事なことに気付いたようで安心した。剣士のことを常に脳筋だとおとしめてくる賢者。彼に脳筋と言われる剣士でさえ気付いたのだから、賢い賢者様ならば気付いて当然だろう。
しかし本当にクッキー様々だ。腹にはたまるし、力もみなぎる感じがする。腹が空いているから感じるだけかもしれないが、思えば賢者は最初からそう言っていた。早々に食い尽くした他の二人の動きも、クッキーを分けてやると途端に機敏になる。
(しかしこの二人はいい加減にウザいな。いつまでアリーの文句を言っているんだ? アリーのクッキーがなければ、お前たちは何も食べられなかったんだぞ?)
時折ため息と共に言葉として漏れてしまう。そんな剣士の心の叫びも、はるか後方の二人には、まったく届くことがなかった。
ホワイトハットのメンバーはボロ雑巾のようになりながらも、なんとか町に到着した。深夜だがギルドにはまだ明かりが灯っている。ひと足先にギルドを覗いてきた剣士が、残りの三人にそれを伝えて再び歩き出した。
「もう。何を焦っているのよ。急がなくてもギルドは逃げないわよ。ダンジョン制覇の報告と、Sランク昇格の打診でしょ? それなら明日の朝、ギルドが開いてからでいいじゃないの」
魔法使いの話に、リーダーも声高に同意した。
「そうだぞ。こんな夜中に行っても誰もいやしない。どうせ報告するなら、たくさんの冒険者がいる時間帯の方が目立つ。俺たちの活躍を見せつけないとな! 華々しくいくぞ! そのためには身ぎれいにしなければ。疲れたから風呂にも入りたいし、飯も食べたい。着替えもしなくちゃな!」
魔法使いはいつものことだが、リーダーもハイテンションでウザい。いつもの寡黙さはどこに消えたのか? というくらいに喋りまくっている。
「お前らうるさい! そういうことじゃない。勝手に風呂にでも飯にでも行きやがれ!」
剣士がいい加減にしろ! とばかりに活を入れた。
「男のヒスはイヤねー」
「だなー。おーこわー」
「待ってください剣士。私も行きます……」
町へと戻る道すがら、ほぼ無言だった賢者。先に歩き出した剣士と共に、明かりの灯るギルドへ向かう。リーダーと魔法使いは、パーティーの拠点に向かったようだ。
「俺はアリーを捜索しに行くぞ。賢者はどうするんだ?」
「もちろん私も行きますよ。ダンジョンを制覇した私たちならば、どの階層にでも飛べますからね。なんならすぐにでも行きますか?」
「確かに一刻でも早い方がいいな。しかし他の二人が、何かをやらかしそうで恐ろしい。ここはひとまずギルドに報告してからの方が良さそうだ」
「やはりそうすべきでしょうか?」
二人は顔を見合わせた。
「おいおい。勝手なことをせずに、キチンと報告してくれよ。お二人さん。ずいぶんボロボロだが、お早いご帰還だったな。詳細はギルドで聞くからついてこい。従わないなら連行するぞ」
暗闇の中から声がして驚き、振り向く二人。するとそこには腕を組み、壁にもたれかかって睨みをきかせたギルマスがいた。
「二人だけか? まあその方が都合がいい。残りの二人には、詐欺と殺人未遂の嫌疑がかかっている。未遂だ。この意味がわかるか? ……安心しろ。アリーは無事だ。それともお前らも、アリーに死んでほしかったのか? 頼むからお前たちには、ギルドで洗いざらい話してほしい」
アリーが無事? まさか自分たちより先に戻っているなんてありえない。
あまりの驚きに硬直する二人。しかしアリーならばと、なぜか納得してしまうのだった。
ギルマスに先導され、重い足取りでギルドへ向かう。しかし剣士は、明らかにホッとしていた。賢者は相変わらずの思案顔だ。
やがて二人はギルドに到着した。ギルマスが、まだ明かりの漏れる扉を開く。ギルド内は夜中にもかかわらず、なぜかたくさんの人でごった返していた。二人を見る視線が痛い。そこへ奥から女性の声が聞こえてくる。
「お二人ともお疲れ様でした。ずいぶんとお早いお戻りでしたね。私よりは遅かったですけど」
人垣が割れて現れた人物。その顔を見て固まる剣士と賢者。ギルマスから無事だと聞いたが、実物を見て驚愕してしまう。
安心し、崩れ落ちるようにその場にへたり込む剣士。賢者は感極まったように駆け出し、その女性に飛びついた。
「アリー! 本物ですか? 本当に無事で!? しかしなぜ先に戻っているのです?」
突然現れたアリーにしっかりと抱きつき、体全体を撫でながら生存を確かめている賢者。だが、それはさすがにまずいだろう。案の定アリーに突き飛ばされ、周囲の人たちに小突き回されていた。
アリーが生きていてくれて良かった。今の二人の頭の中には、それしかなかった。
剣士と賢者は、ともかく頭を下げまくり謝罪した。すでに深夜であるにもかかわらず、アリーの無事を確認しに来た人たち。本当にたくさんの人たちが、ごった返す中での公開謝罪だ。
しかし恥も外聞も知ったことではない。それだけの罪を、剣士と賢者は犯したのだ。当然、集まった人たちにも吊るし上げられた。二人は知らなかったが、アリーはこの町の人気者だ。自業自得ではあるものの、剣士と賢者は散々な夜を過ごすことになるのだった。
その夜のギルドでは、真実を暴くための緊急会議が行われた。もちろん、アリーと剣士と賢者も参加した。ギルドの明かりは、明け方まで消えることがなかった。
その頃、リーダーと魔法使いの二人はどんちゃん騒ぎ。拠点には料理がたくさん用意されていた。もちろんダンジョンへの出発前に、アリーが料理を作り置きしていくはずもない。
しかし浮かれきった二人は、そんなことにも気付けない。すでにまともな思考を放棄していた。空きっ腹にワインを呷りまくり、料理を食べまくる。早々に酔いつぶれた二人はそのまま眠りこけ、アリーの書き置きにも気付くことはなかった。
早朝のホワイトハットの拠点に、ギルドから緊急呼び出しの連絡が入った。昨晩は調子に乗りすぎて、すっかり酔いつぶれていたリーダーと魔法使い。慌てて起き上がろうとしたが、まだ酔いが回っているのか上手く起き上がることができない。
鈍く痛む頭を押さえながら、互いに早くしろと罵倒し合う二人。朝の爽やかさなど、微塵も感じさせない。しかしそんな場合ではないと、朝食を食べる間も惜しんで走り出す。
指定の時間にかなり遅れて到着した部屋には、すでにギルマスと剣士に賢者がいた。他にも見知らぬ二人の男性が、ソファーに腰を下ろして談笑している。
「お前らは確か、まだ未成年だったよな? 二日酔いで遅刻か? ずいぶんいいご身分だな」
「それは……体調が……」
リーダーが慌てて弁解を始めるが、横から魔法使いが口を挟む。
「何よ! 早朝からいきなり呼び出す方が悪いんじゃない! 私たちだって疲れて……むぐっ」
「頼むから今は黙っていてくれ」
こめかみを押さえながら、リーダーが魔法使いの口を塞いだ。さすがにリーダーは、現状を理解しているようだ。
「はあ……。まあいい。二人ともさっさと座れ。ギルドからの緊急呼び出しを何よりも優先するのは、Aランク以上のパーティーの義務なのだがなぁ……」
ギルマスが呆れながらも、呼び出した理由を簡潔にまとめて話す。
その内容に驚く、リーダーと魔法使い。
「初めての緊急呼び出しだから、魔物の氾濫でも起きたのかと焦ったよ。これは一大事だと思い、慌てて来たんだ。それなのに昇格試験を受けろって、なぜ急にそんな話になるんだよ!」
「そうよ。まだダンジョン制覇のお祝いすらしていないじゃない」
二人の発言に、室内にいる面々は呆れ顔だ。
「まあまあお二人さん。まずはダンジョン制覇おめでとう。詳しくは他の二人から、すでに報告が上がっている。しかし最深部でアリー君と別れたのは減点だな。たとえ本人が了承したとしても、無理やりにでも連れて帰るべきだった」
アリーの名が出たことに、一瞬ギクリとしたリーダーと魔法使い。だが更なる追及がないことで、他の二人が上手く話をしたのだろうと安心してしまったようだ。
「こちらのお二人はギルド総本部の試験官だ。ホワイトハットがSランクに手が届きそうだと聞き、ちょうど隣町に来ていた彼らに頼んで、こちらにも寄ってもらったんだ」
なんでわざわざ? と、不思議がるリーダーと魔法使いを見ながら、更にギルマスは続ける。
「ギルドの総本部で昇格試験を受けるなら、次は半年後になる。あちらへ行くにもひと月はかかるぞ。それなのにお前たちは、わざわざ寄ってくださった方々をお帰しするのか?」
昇格試験のことは知っていたが、年に数回しかないことや、試験会場のギルド総本部まで約ひと月かかることは、リーダーと魔法使いはもちろん剣士と賢者も知らなかった。
「そっ、それは大変失礼いたしました! わざわざホワイトハットのためにお立ち寄りいただき、本当にありがとうございます。試験の方を、ぜひともよろしくお願いいたします」
リーダーが慌てて頭を下げる。それに続いて他のメンバーも頭を下げた。
「では昇格試験の説明をする。しっかり聞いて、本日中に準備をしてほしい。試験は明日からになるそうだ」
そう言ってギルマスが話し出す。
ホワイトハットは、国からの緊急強制依頼を受けたことがない。だが本来はAランク以上のパーティーに義務付けられたもので、大きな災害や魔物の氾濫などへの対処がそれに該当する。そういった有事に国が招集をかけた場合、高ランク冒険者パーティーはボランティアとして率先して参加する義務を持つのだ。
最近はそうした招集がなかった。しかし増えすぎた魔物を間引くボランティアなどは、随時募集している。そのような機会を利用し、パーティーの名を上げても良いのだ。特にSランクの認定は国が行うものなので、国家への貢献度が審査に大きく加味される。
「国への貢献が認められているパーティーならば、魔の森でSランク級魔物を探して討伐すれば合格だ。ただしお前たちは緊急強制依頼を受けていない。この点を考慮し、ダンジョンでのボス討伐に人命救助をプラスするそうだ」
試験会場は、ホワイトハットが制覇したばかりのダンジョン。そこでのボス討伐にプラスして、置き去りにされたアリーの救助が試験課題となる。
アリーが一人で脱出を試みているならば、まだまだ出口までは遠いはず。ただしいくらかは進んでいることを想定し、ホワイトハットは十階層から出発することになった。もちろんアリーはとっくに生還しているのだから、実は完璧な出来レースなのだが……
「こちらの試験官の方々は、現役のSランク冒険者だ。お二人が君たちの後方をついて歩く。ダンジョン内での野営などは、君たちとは別に行う。もちろん緊急時以外は手を出すこともない。だから試験官の方たちのことは気にせずに、ありのままの君たちを審査してもらってくれ」
ギルマスは話し切ったとばかりに、テーブルの上のハーブティーをすすって息を吐き出した。
「アリーは死んでいるんじゃないのか? それでも探すのか?」
「なぜ死んでいると思うんだ? リーダー、いやホワイトハットは、アリーが自力で戻れると思ったから置き去りにしたんだよな? 死ぬとわかっていて置き去りにしたのなら殺人と同じだ。犯罪者に昇格試験を受ける資格はない。それどころか、冒険者ギルドからも追放となり、二度と冒険者にはなれない。良くて鉱山送りだな」
絶句するリーダーに代わって魔法使いが叫ぶ。
「そんな! 殺人なんて酷い! だってアリーが自分で、往路の道案内はよろしくと言ったのよ。なら復路の道案内はいらないってことじゃない!」
「今その話はするな! 水掛け論にしかならん! ……とにかく以上だ。十階層から出発し、アリーを捜索しながら最下層へ。すでに再生しているであろうダンジョンボスを倒せば試験は終了だ」
魔法使いを見るギルマスの表情は冷ややかだ。本来ならば、Sランク昇格試験の受験資格を得るだけでも大変な名誉なのだが、この場にそのような雰囲気はまったくない。
「アリーが見つからなかったらどうするんだ?」
そう口にしたリーダーをギルマスは一瞥し、吐き捨てるように言った。
「リーダーはそんなにアリーを殺したいのか? 行方不明者の捜索と救助は、冒険者の義務だろうが! たとえ彼女が死んでいたとしても、遺品くらいは探してこい! 試験のためだけじゃない! 一年しか帯同しなかったとはいえ、元メンバーだろうが!」
うなだれて肩を落とし、小さくなるリーダー。ギルマスは更に続ける。
「しかもアリーとリーダーは、親戚だというじゃないか! 私はアリーは天涯孤独だと聞いていたがな。例の家を仲介した商業ギルドが、どちらにもまったく連絡がつかないと言って探していたぞ。リーダーが支払った分を、どちらの名義にするか確認したいとな。これについては私がアリーの名義にさせてもらった。リーダーが支払った分は、アリーへの専属契約料だったはずだからな」
「…………」
「しかしそうなると、アリーが死亡したら遺産相続が発生する。もしリーダーが相続するなら、尚更証拠となる遺品が必要ではないのか? 死亡が確認できなければ、五年は待機する決まりだ」
さすがにこの話には、魔法使いも驚いた顔をしている。もちろん剣士も賢者もだ。この反応を見るに、詐欺はリーダーの独断らしいとギルマスは考えた。
「ともかく以上だ。準備を怠るなよ。まあクリアしたばかりの場所だからな。気を抜かなければ大丈夫だろう。明日の早朝にギルドから馬車を出す。では解散だ」
ギルマスと二人の試験官が退出した。残されたのは、ホワイトハットのメンバー四人のみとなる。
「おい! リーダー! いつまで呆けているんだ! 俺たちは拠点に戻る。さすがに腹も空いたし風呂にも入りたい。明日の準備は個々で構わないよな?」
ボケっとしたまま座り込んでいるリーダーに、剣士が活を入れる。それにハッと驚き、リーダーが立ち上がった。
「ああ。今回の戦利品のマジックバッグがある。さすがに無限収納タイプの希少品ではなかったが、あれを個々に持ち、各自の荷物を入れればいいだろう。メインは食料と水だな。往復は馬車だというし、十階層からなら二週間分もあれば足りるだろう」
「私、もう料理しないわよ?」
「スープくらいなら俺も作れる。ただし文句はなしだ。いざとなれば食える魔物を狩ればいいが、狩れない場合もある。当たり前だが、最低限の食料は用意しろよ。確か水場も数ヶ所あったよな。他に必要なのはポーション類だ。後はそうだな。魔除け香はいるか?」
「今回はダンジョンの中だけだから大丈夫だろう」
剣士の問いかけに、しばし考えてからリーダーが返答した。それに賢者が続く。
「そうですか? ならば持ち物は水場までの飲料水と、主食となる食料がメインでいいですね。……そろそろ非常食のクッキーが切れそうなのです。でもさすがに欲しいとは言えませんよね」
「賢者、何か言ったか?」
リーダーが賢者のボヤキに聞き返すが、返事はない。
「初心に戻ろう。俺たちは贅沢しすぎた。アリーに頼りすぎたんだ」
「頼ってなんかいないわよ! 仕事なんだから料理するのは当たり前でしょう? アリーが他にも何かしていたかもなんて言うけど、全てが憶測じゃない! アリーがいなくても、ホワイトハットはAランクよ。それにもうすぐSランクになるのよ!」
ヒステリックにわめく魔法使い。それを宥めるリーダー。しらける残りの二人。
「雰囲気が悪くなるだろ。少しは落ち着けよ。クリアしたばかりのダンジョンだし、ボスだって楽勝だった。食事さえ我慢すれば大丈夫だろう。なんならSランクに昇格したら、またポーター兼料理人を雇えばいい」
「そうね! さすがはリーダー! 大好きー!!」
「いちゃついているところを悪いが、俺らはもう行くぞ。あと、料理人は二度と雇えないと思うぞ。料理人は上位スキルだ。俺みたいな冒険者が夜営で丸焼きやスープを作るくらいで身に付く、通常スキルの調理とはまったくわけが違うんだからな」
料理と調理ってどう違うの? と、互いに顔を見合わせるリーダーと魔法使い。
「さすがに通常スキルと上位スキルの違いくらいはわかるよな? アリーは希少な上位スキルの料理人持ち。しかもMAXだ。まあ俺も、料理と調理を同一視していた口だけどな」
驚きに固まるリーダー。魔法使いは慌ててギルドカードを取り出し、そこに記載された自分のスキルを確認している。カードはダンジョンクリアの功績により、先ほど更新されたばかりだった。
「わ、私のは調理スキルだ」
「え? 本当だな。しかも初期レベルのままじゃないか」
「マジかよ。丸焼きしかできない俺より低いぞ!」
「なぞそこに驚くのです。私は調理スキルがついていること自体に驚きましたよ」
「みんなうるさい! 覗くなバカたれ! 特に賢者は地獄に落ちろ! デリカシーのない男はモテないんだからね!」
「ほう? 私にはデリカシーがないのですか? 自分ではデリカシーの塊だと思っているのですが。しかしモテないのなら助かります。デリカシーなど捨て去りましょう。これから魔法使いには、私の女性に対する本音で対応することにします。リーダーにもビシバシいきましょうか? 私は無能な人間は大嫌いなのです。これでも仲間だからと、かなり抑えているのですよ」
「それはやめろ!」
なぜ本音で対応してはいけないのですか? と清々しい笑顔で話す賢者。その笑顔を見てビクビクしている剣士は、きっと笑顔の裏側を知っているのだろう。
「賢者よ頼む。仲間内で、暗黒微笑の悪魔神官降臨は遠慮してくれ。俺の胃に穴が空いてしまいそうだ。もちろん微笑みの貴公子様もご遠慮願いたいぞ。あれは正直気持ちが悪すぎる」
「なんですかそれは! 剣士こそ失礼ですよ!」
どうやら賢者はものすごい二つ名持ちのようだった。
翌日早朝のギルド前。まだ薄暗い中、ホワイトハットの四人と試験官の二人が揃う。今回は試験官の二人が、交代で馬車の馭者をする。ギルマスに見送られて馬車は出発した。
出発早々に寝てしまう魔法使い。リーダーもつられて寝てしまっている。そんな二人を見て、ため息をつく剣士と賢者。これから起きることを知っているだけに気分が重いようだ。
時折馬車の速度がゆるむ。窓から覗くと、試験官の一人が馬車から飛び降りていた。どうやら馬車の進行を妨げる魔物を、馬車を止めずに退治しているようだ。
それが断続的に行われる。本来ならばこれが当然なのだと、窓から覗きながら反省をする剣士と賢者。だが寝ている二人は、まったく気付いていなかった。それほど自然に行われていたのだ。その手際にも感心しきりの剣士と賢者だった。
* * * * *
ダンジョンに到着すると、すぐに試験が始まりました。ここからは私、アリーの実況でお送りします。彼らはダンジョン入り口脇の転移陣から、十階層まで移動します。試験官の二人も、もちろん共に転移しました。
試験官の二人はなぜ共に転移できたのでしょう。それは二人がすでにこのダンジョンをクリア済みだからなのですが、そのことにリーダーと魔法使いは気付けませんでした。
「ではこれより、ホワイトハットのSランク昇格試験を行います。生死にかかわると判断した場合を除き、我々は一切手を出しません。つまり我々に手を出された時点で失格と考えてください。またリタイアはいつでも可能です。この救難信号を鳴らしてもらえば、すぐに救助に入ります」
「了解。まあ必要ないけど受け取るわ。さあ行くわよ!」
「「「おー!!」」」
「では開始します」
試験官二人は、常にホワイトハットを視認できる範囲内で行動しています。時折姿が見えなくなりますが、気付くと必ずそばにいるのです。絶妙なさじ加減ですね。感心してしまいます。
近寄る魔物を容赦なく斬り捨て、討伐証明部位を採取し魔石を抉り取ります。更に素材になる部分をはぎ取り処理をしていました。さすがは現役Sランク冒険者ですね。その手際は、素晴らしいの一言に尽きます。
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