上 下
52 / 89
【冒険者編。離島のダンジョン】

▲離島へ行こう5.5日目。

しおりを挟む
 
 何だかライドがブツブツ煩いんですけど。まあ良いや。後ろを見ると、レインとラスが先に進めと促して来る。ではほっといて先に進みましょう。

 〈リョウ!待って下さい!私はライドです!〉

 ??そんなの解ってるわよ。まさかまた入れ替わってる訳じゃないんでしょ?うん。間違いなくライドだよ。全くもぅ…。

 《そんなの解ってるわよ?ライド以外の何者でも無いじゃない。まさか入れ替わって試してるわけでも有るまいし。》

 〈いえ。私はライドとして名乗ってませんよね?〉

 《シスルの国で踊った時に挨拶したわよ。あれが本物のライドなんでしょ?ならそれで良いじゃ無い。この世界に来て1番初めに名乗り有ったのがライドよ。あの時はルードだったけどね。私はルードでもライドでも構わない。どちらで名乗りあっても、貴方の名は知ってるし本体は変わらないでしょ?》

 〈しかし…。〉

 《面倒臭いわね。なら改めて名乗るわ。私はリョウよ。宜しくね。そんなに気になるなら、早々にルートと並んでみてよ。帰りに砦に寄るわよ。まだ砦に居るのかしら?》

 〈居ないかもしれ無いし…。〉

 《もういい加減にして!うだうだしつこい!細かい事を気にするな!ほら進むわよ!》

 〈〈〈〈尻に敷かれる未来が…。〉〉〉〉

 全くもう!女々しいのよ!ん?またゴブリン?ドサッ。今度はオークね。ブスッ。またオーク?あっ3匹来る。後ろの1匹は土壁で転ばして手前をブスッ。次のはウィンドカッターでサクッと。転んでもがいてるのを背中からブサリ。はい終了ーっと。やだ!直ぐにまたゴブリンが来る。通路にはコイツらしか居ない訳?ドスッ。ブスッ。また来るよ…。おおっと!火の玉飛んできたよ!魔法を使うゴブリンとオーク?では私はシールドね。全面に薄い膜の結界を張る。横からウィンドカッター!あっ!かすったけど避けられた。しかもオークが傷治してるよ!シールド解除!ダブルサンダー!倒れた隙にブスッ。ドスッ。ん?まだ起きるのしつこいな。では水と雷で、ウォーターサンダートルネード!立ち上りかけた2匹を雷と水の竜巻が襲う。2匹は散り散りに砕け散った。

 〈雷で分解?風で切り刻んだのか?消滅するから良いがグロいな。おいライド!貴様女々しいぞ!リョウが逞しくなりすぎるから気を付けろ!ますます色気が無くなるわ!〉

 《ラス?丸聞こえなのよ?私を貶めてるの?》

 〈ほら!もう草原が見えてますよ。広々とした所に出れば気持ちも安らぎますよ。魔物の巣窟ですけど。〉

 レインに追い立てられる様に、私たちは草原エリアに突入した。

 *****

 草原を吹き抜ける爽やかな風が頬を撫でる。って!ダンジョンの中に草原?しかも風まで吹いてキリンやゾウが!あの動物のまるで居ない草原より本物らしいわ。でも動物が異形ですけど…。

 〈ここを直線に突っ切るのが1番の近道です。リョウの戦闘はかなり上達しました。個別戦闘は通路だけで充分でしょう。この草原は面倒なので、1発ドカンとお願いします。〉

 《何時も通りで良いの?ドロップ品が草で探しにくく無い?》

 〈そうですね。リョウの考えで作戦を断てて見て下さい。私と聖獣達は下がってます。〉

 ふーん。作戦も自分で考えろと。まず邪魔なのはこの草よね。燃やしちゃおうかしら?でもねぇ。風が在るから換気は平気だろうけど暑そうね。草は最後にウィンドカッターで行こうかしら。良し決めた!
 
 《行けー!氷の槍ー!砕け!アイシクル スピア!氷の飛礫よ吹き飛べー。魔物を固めて!》

 天井から氷の飛礫と槍が降り注ぐ。大きな魔物が氷の槍に刺されバタバタと倒れて行く。小さな魔物は氷の飛礫に触れ、次々に凍りつく。

 《風の刃よ。草を凪ぎ払え。ウィンドカッター!》

 小さな風の渦がクルクルと回転しながら、草原の草を凪ぎ払って行く。大きめの風の渦も作り、次々に放つ。ん?今回は余分な中二臭い暗唱が無かったわね。神様が省略してくれたのかしら?単に範囲が狭いだけかしら?何て考えてる内に草原は禿げた広野になった。広野に散らばるドロップ品を風で一纏めにする。あれ?地面に青と赤い点滅が有るわよ?

 散らばったドロップ品を拾いながら、点滅に向かう。赤い点滅は多分…。地面に向かい長剣を突き刺す。地面を突き破り、巨大なミミズが飛び出して来た。ウィンドカッターで切断。地面に落ちる前に消滅した。うっ、巨大ミミズ気持ち悪い…。

 《ねえ。巨大ミミズ気持ち悪いわ。赤い点滅は無視しちゃ駄目?》

 〈巨大ミミズのドロップ品は、煎じると精力減退剤になります。レアは男性機能復活剤です。リョウは集められた方が良いのでは?〉

 はい!ミミズさんバシバシ出て来い!レアは要らん。ノーマルカモン!良し行っちゃうよー!

 《雷ビリビリ放電ー!地面を伝いミミズちゃんをやっつけて!お水もかけちゃうよ!地面柔らかいわよー。沢山出ておいでー!空中ではウィンドカッターがクルクルと待機中。》

 おー出る出るまるで蛇の舞を見ている様だ。気持ち悪いから悪いけど少し離れて高みの見物。巨大ミミズちゃんが、のたうち回りながら地面からわらわら出てくる。ウィンドカッターで切断され、次々と消えて行く。うー。はよ終われ…。

 終わった…。広野には宝箱が沢山転がってた。青い点滅が宝箱だったのね。ミミズさん達のおかげで発掘されたみたい。ラッキーね。宝箱もポイポイとインベントリに突っ込む。ミミズさんの戦利品は…。

 レアが3分の1も有る…。この世界の男性でレアが必要な人って居るの?これ捨ててこうかしら?

 〈リョウのインベントリは無限でしょ?どうして選り好みしてるの?はいこれもね。〉

 《モノク有難う。でもレアはこの世界の男性には、正直要らなくないかしら?》

 〈こう言う世界だから必要なんだ。若い頃無茶しすぎで渇れるのが速すぎる傾向が有るからな。そいつはダンジョン特産だ。人助けだと思い全て拾え。〉

 はーい。無茶しすぎが悪いんだよ。まあ勿体無いから拾いますか。ちょっと!サボって無いでライドも拾いなさいよ!どちらもよ!

 *****
 
 全てを拾い集め、すっかり開けた広野を突っ切る。 目前にいきなりの岩場と扉が出現した。
 
 一階層のボスは、ウィンドウルフ。風使いの大狼だ。手下は多分魔法を使うオークが2体だろうとの事。手下は手下はランダムなので、ミミズの時も有る。兎も角手下を先に倒す。ラスボス以外は私1人で大丈夫だから楽に行け!と、1人で扉の奥に押し込まれた。

 〈我らは端で見とる。頑張れ!〉

 《端ってそんなとこ?ちゃんと見えるの?危なくなったら助けてよね!》

 〈勿論です。でもリョウなら大丈夫ですよ。〉

 レインありがとー!頑張るよー!

 おっとっとっと!よろめき顔を上げると、大狼と目があった。手前には一回り小さな狼2匹。めちゃ威嚇されてるんですけど。モフモフも何故か毛羽立ち怖いわ。モフモフなのに可愛くない!何て考えてる場合じゃ無いわ!いきなりウィンドカッターが飛んできた。目前にシールドを張り跳ね返す。私に向かい2匹の手下が飛び掛かって来る。シールドを楯の形にし、2匹にぶつけ跳ね返す。尻餅を付いたついでとばかりに、大狼に拘束魔法をかける。でもこれ慣れないからか、リミットが早すぎなのよね。サクッと済まさなきゃ。緑の蔦が大狼の体に巻き付く。手下との間に土壁を出現させ、隔離させる。その隙を狙うかの様に、手下が襲い掛かって来た。覆い被さる狼に雷の魔法を叩き込む。転がり崩れ落ちた2匹に剣で止めをさす。しかしまだ微かに動いて居る。不味いわ。土壁が崩れ始めた。蔦が咬みきられたわね。急がなきゃ。ウィンドカッターを手下2匹に向かい放つ。良し行っちゃうよ!頚を落として終了だ。

 大狼の体当たりでだろうか?ボロボロと崩れ始めた土壁の隙間から毛並みが見え始めた。土壁に向けサンダーボルト!勢いよく崩れる土壁。砂煙の中から現れるは此方を睨み付ける大狼。

 魔法連射行くよー!

 《蔦行けー!ビッグモフモフを絡めとれー!続けてウォータートルネード!&ビリビリ放電ー!》

 大狼がどさりと膝をついた。

 《ゴメンね。剣よ出ろ!とどめよ!安らかに眠りなさい…。最後にモフモフになったわね…。》

 一階層のボスが倒れ、宝箱が大小2つ出現した。やはりインベントリに突っ込む。

 〈〈お疲れー。ではサクッと森林エリアもクリアしましょう。二階層のボス部屋前で軽く晩ご飯ですね。フロアボスもリョウの体力なら行けるでしょう。さあ行きますよ。〉〉

 ちょっとー!少しは休ませてよ!しかも最近ライドとレインって、キャラ被って来てない?レインまでヤンデレ化したら嫌よ!

 私の心の声は響かず、またまた通路のまもの退治に進むのだった。

 *****
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫
ファンタジー
「アリーゼ=ホーリーロック。お前をカトリーナ教会の聖女の任務から破門にする。話しは以上だ。荷物をまとめてここから立ち去れこの「異端の魔女」が!」 カトリーナ教会の聖女として在籍していたアリーゼは聖女の証である「聖痕」と言う身体のどこかに刻まれている痣がなくなり、聖魔法が使えなくなってしまう。 それを同じカトリーナ教会の聖女マルセナにオイゲン大司教に密告されることで、「異端の魔女」扱いを受け教会から破門にされてしまった。そう聖魔法が使えない聖女など「いらん」と。 でもアリーゼはめげなかった。逆にそんな小さな教会の聖女ではなく、逆に世界を旅して世界の聖女になればいいのだと。そして自分を追い出したこと後悔させてやる。聖魔法?そんなの知らないのです!と。 そんなアリーゼは誰よりも「本」で培った知識が豊富だった。自分の意識の中に「世界書庫」と呼ばれる今まで読んだ本の内容を記憶する能力があり、その知識を生かし、時には人類の叡知と呼ばれる崇高な知識、熟練冒険者のようなサバイバル知識、子供が知っているような知識、そして間違った知識など……旅先の人々を助けながら冒険をしていく。そうこれは世界中の人々を助ける存在の『聖女』になるための物語。 ※追放物なので多少『ざまぁ』要素はありますが、W主人公なのでタグはありません。 ※基本はアリーゼ様のほのぼの旅がメインです。 ※追放側のマルセナsideもよろしくです。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

最強だけど世界一極悪非道な勇者が王になる

原口源太郎
ファンタジー
不良少年だったダバインが、幼いころに亡くなった父の跡を継ぎ、勇者になる。勇者として修業を重ねるうちにダバインの中に恐ろしい野望が芽生えていく。 やがて、凶悪なる王に君臨したダバインに立ち向かう人々が現れる。

処理中です...