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第2章・婚約破棄は新たなる珍事を招く。
排他的な国の進む道。
しおりを挟む豪華な王城ときらびやかな大神殿を、私達は背にして歩く。城下町までは一本道。流石に使用人にまで、外出に対しての規制はかからなかった。まあ私達が居ればその分滞在費がかかるからね。私とリーダーには婚約者は居ないし仲良し設定。だから余計に怪しまれなかった。これで婚約者が居たりすると、お相手の身分でも面倒になったりするの。
逆にお相手が居ないのならと、虫がわく場合もある。政治的に取り込んだりね。しかし残念ながらリーダーは、夜這いの人々から人気が無かった。長男が既に跡目を継いでる設定だからね。やはり嫡男以外は、人気がダウンするそうだ。
リーダー頑張れ!
こんな国は死んでも嫌だわ!と片手チョップされた。最近全く遠慮が無くなったわよね。
しかし幾ら使用人にでも、この城下町を見せても何とも思わないのかしら?
これはもはや衰退するしかない。誰が見ても明らかだろう。排他的すぎる。街が全く機能していない。市場や出店すら無い。馬車の中から見てはいたけど、これ程酷いとは思わなかったわ。城から城下町に来て直ぐにも感じる違和感。人々が生活している筈なのに、生活している気配を感じない。
例えば今の時刻はもうすぐ昼食時。それだというのに、どこの家からも煮炊きの匂いがしない。火を使用している気配すらない。市場らしき広場には、露店さえ出ていない。通常の店舗は全て閉まっている。お昼を食べに来たのだが、これでは食べ物を入手すら出来ないだろう。
人々が生活する際の話し声や生活音。家族団らんの話し声や、子供達の遊び回る声。それらが無いと言う事は、やはり殆どの人々が生活していないのだろう。人々は飢えに苦しみ、魔の森に入り込んで行くと言う。この国は他国へ通じる道が少ない。しかも通じる道は頑丈に警備されている。魔の森への侵入は、ほぼ自殺の様な物だ。時折道ばたに子供達がしゃがみこんでる。元気に駆け回る元気も無いのだろう。
この国はもう駄目ね。このままでは先が見えない。だからこその政略結婚。我が国から援助を得る為、隣国の筆頭公爵家への姫君のお輿入れ。しかしそれまでも、王家の都合で蔑ろにしようとしている。目先の欲につられてね。
自国以外のものを受け入れられない。全てを拒みしりぞける。排他的な国に未来は無い。せめて自国内でだけでも経済が回っていれば…。
しかしこの城下町にを見たら一目了然だわ。王家は自国民の事等考えてはいない。生命線たる食の流通が滞っている。庶民はどの様に糧を得ているのだろう。誰が見てもそう感じるレベル。
人は生まれる場所を選べない。それは身分も国も同じ事。己達だけではどうにも出来ぬ壁が有る。だからこそその壁を打ち破る。または壁を作らない。それらを成し遂げる事が出来る人間が必要なのだ。
それが領主や貴族達。そして王族なの。その頂点たる王がキチンと政を行えない。横暴な貴族を抑えられない。それならば王政をしく必要はない。国民を蔑ろにして行う政をする王族。そんな駄目な君主は滅びるべきなのよ。
「エリー。さっさとイベントやらに行こう。食いっぱぐれるぞ。グレイシー様とはあちらで合流だろ?」
「そうね。確かに食いっぱぐれたら困るわ。流石に夜会では、お腹一杯には出来ないでしょうし。ドレイク様は正式に魔法大国から来てるから、食事はお城で戴いてる。ブライアンは晩餐会からだから関係ないけどね!」
「心が狭いな。食い気に走るなよ。弟さんだって頑張ってるだろ?エリーはウサギをしこたま食べろ。回収しといてラッキーだったな。」
本当よ!リーダーに変な顔されながらも、マジックバック飛ばして良かったわよ。ウサギはでかいから一時とはいえ、城下町の人達もお腹一杯にしてあげられる。ただ唯一の心配は、庶民がどの位洗脳されてるのかよね。魔物肉を受け付けられるのか?それだけが気がかりなのよ。死ぬかもしれない飢餓状態なら、選り好みしてる場合ではない。でも神の教えと言うのは根強い。信じる人間の心を解すのはかなり難しいわ。それともまだそこまでは行かないのかしら?否。これだけ街がすたれてる。人の気配がない何て変。イベント先に食物を貰いに行ってるとしても少なすぎる。
魔の森に入り亡くなったのだろうか?他国に逃げられたのなら良いが、あの警備では無理だろう。
魔物は己達が人間に補食されたくないから、己らを補食する人間を敵と認定して襲う。つまり食べなければ襲われない。だから我が国には魔物が入らない。しかし1度でも魔物肉を食すと穢れ、己の身も魔物に堕ちる。魔物の血肉の臭いは生涯消えない。魔物を食した人間は、死ぬまで魔物に狙われるのだ。これが自称聖国の教義だからね。
魔物には理性は無いよ?獲物の選り好み何てしない。でも自国の神の教義を信じてたって構わない。その神がキチンと、人間として生きる権利を与えてくれるならばね。
我が国は魔物を食べない。だから食べる国とは交流しない。この主張を通し鎖国を続けたいなら、自給自足するしかない。しかし塩分を多分に含んだ土地では、食物は育ちにくい。魔の森を資源と見ないのであれば仕方がない。それならは塩を作ったり、鉱石を発掘したりして貿易するべき。それすら放棄し、外貨はどこで得るのか?まあ外貨を得ても食物を得る事が出来ないので、やはりこの国には先はない。城下町がこれなら、他の町や村はどうなってるのだろうか?
あ!魔物を神として崇めてる国も有るんだよ。でも人に害を為す魔物とはキチンと区別している。同系列の魔物は食べない地域とかも有るそうだけど、一切食べない国は無い。家畜になる動物が少ないから仕方ないんだよ。
まあウダウダ考えても仕方がない。取り敢えず匂いで釣ろう。更には私達が美味しそうに食べれば、我慢できずに釣れるだろう。
「ねえ?私の色彩変化大丈夫よね?魔法大国でも気付かれなかったんだしこの国のヘッポコ達は心配して無いけど、ローズマリーとユリウスが未知数よ。」
「大丈夫だろ?グレイシー様の太鼓判付きだ。あ!そうだ。ローズマリーが嬉々としてヒロイン様を演じてるそうだぞ。大神官も既に攻略済みだ。今晩の夜会にはローズマリーも出席する。その夜会に魔法大国から、グレイシー様とドレイク様が出席すると知り確信したらしい。」
「何を確信したの?」
「己が後半もヒロインだと言う事だ。『やはり私がヒロインだから、攻略者があちらから来てくれるのよ!私の魅力にかかればいちころなのよ!』と騒いでたらしい。魅力って、本人達と会ってもいないだろうに…。」
グレイシー様は会ってるわよね?あの婚約破棄騒ぎのパーティーで一緒だっただけだったかしら?んんん。やはり対面してる。あのバカが公然の秘密とか言いながら、グレイシー様の出自をばらしたじゃない!それにハニートラップで…。
「グレイシー様は既に、婚約破棄騒ぎのパーティーで会ってるわよ。それにハニート…「それは言わなくていい!」…。」
「全く…。そうなのか?俺はそのパーティーに出席してないからな。しかしお前は女の癖にハニートラップとか言うな!一応初恋だと言うお前に気を使って黙ってたのに…。」
・・・・・。
女の癖にって、リーダーってば普段私を女として扱ってる?それに私の淡い初恋を、サクッと真っ二つ斬ったのは己達だろうが!
「そこに気を使うならエドワードからのキスを、私にバレない様にして欲しかったわよ。餡子見ると思い出すから、暫らく悔しくて寝れなかったわよ。」
「少しは気にしたのか?恥ずかしがるなんて随分な進歩じゃないか。」
ち・が・う・わ!!
「リーダー絞めるわよ!私は恥ずかしがって何か無いわよ!マリエンヌの和菓子が美味しいから悔しかったの!和菓子には餡子なの!食べたいのに!!食べるとどら焼き味思い出すのよ!ポーション要らなかったわ!」
・・・・・。
「皇太子様のチューでは無く、ポーションが余計だったと?」
全くああ言えばこう言う!チューも余計よ!だけどそれは…。
「私が気絶してたから、ポーションを飲み込めなかったんでしょ?緊急事態だし、救命の為の人工呼吸だと理解出来るわよ。私だってそれ位解る。だから感謝はすれども怒らないわ。何なら緊急事態何だしポーション無しで、グレイシー様の人工呼吸だったら怒らなかったわよ?」
・・・・・。
「哀れ皇太子様…。全ては強請られ追加したどら焼き味でぶち壊しなのか…。しかし男として据え膳の気持ちも理解出来る…。しかし報われんよな!」
「それ!前にも言ってたけど、私が何を強請ったのよ?」
「魔力を強請ったんだよ!首に腕をまわして抱き付き、お願いもっと頂戴ってな!吐息吐きながらのどアップだぞ!しなだれかかる好きな女の唇が目前にあるんだ。どう考えても煽られるわ!無意識とは言えお前はオニだ!グレイシー様がある程度で止めた。だから責めるなよ。あれは流石に皇太子様が哀れだったわ!」
・・・・・。
マジ?マジですか?私ってば…。
「だけどな。意識が無くてそれだけ気持ち良いんだ。エリーは皇太子様から与えられた魔力が美味しかった。そして心地よかった。だから無意識にねだった。これの意味が解るか?俺はグレイシー様に聞いたぞ。」
・・・・・。
解ってるわよ。魔力の相性が最高なのよね。体液交換により互いの魔力が混じり会う。その効果は凄まじい。互いの能力や体力をも底上げする。そして偶然が必然か、必ず2人は異性だ。だからこそでは無いが、総じて魔力の相性が良い者どうしは伴侶となる。所謂番と言われるヤツ。しかし殆ど伝説になっていて、もう何年も番は現れていない。
見分け方としては、互いの体液交換が美味しく感じる。そして酔いそうな位心地よい。魔力譲渡の拒絶反応や後遺症が一切無い。そして相手の魔力が、良い香りとして感じる。香り?もしかして匂いー!!?
・・・・・。
・・・・・??
・・・・・!!!
「もしかしなくても、エドワードが私の匂いに拘るのは番だからなの?でも私には匂わないわよ?キスもポーションの味しかしなかったわよ?」
「それは皇太子様が、魔力を全て解放してないからだ。王家の決まりで20才で全解放だそうだ。ポーションはあの時最後の、追加のどら焼き味1本だけだ。最初のはサッパリ柑橘系だったんだろ?それが多分番の味だよ。」
「何故最後にどら焼き味を足したの?」
「本当はポーション等使用するつもりは無かった。だがお前が更に魔力をねだるから、皇太子様はポーションを与えたんだ。番の魔力には媚薬的な意味合いが有る。余りに過剰摂取すると自制できなくなる。だから皇太子様は体液では無く、ポーションを与えたんだよ。エリーはあの場で、もっと痴態を晒したかったのか?」
・・・・・。
「皇太子様に感謝しろよ。後余りエリーに近寄らなかったのもそのせいだ。エリーからは香りが解らなくても、皇太子様にはビンビン来る。もう堪らんらしい。公式の場でダンスを踊る日何かは、前日に滝に打たれて精神統一する位だそうだ。好きだから襲いたくない。耐えに耐えてるそうだ。まあ変態チックな趣味がプラスされなきゃ、紳士で立派な皇太子様何だ。少しは見直したか?」
・・・・・。
見直しはしたけど、やはり変態チックな趣味は別物なのね。合わさって更に変態になると。しかし魔力を全解放せずにこの状態。全解放したら…。
ゾクリ。そら恐ろしいわ…。
「解った見直した。でも余計に怖くなった。魔力を全解放したらどうなるのよ!私怖いわ。ガクブル。」
・・・・・。
「皇太子様の魔力全解放=エリザベート様との挙式だ。そのまま初夜だから、気にせず痴態を晒してくれ。互いに全解放で酩酊状態。番同士は最高の相性らしいからな。積年の思いが成就するんだ。一月もすりゃ、皇太子様も落ち着くさ。世継ぎも授かり一石二鳥だな!エリーおめでとう!否。エリザベート様、おめでとうございます。」
ゴインっ!
「いててて…。酷いなエリー。あくまでも理想論だよ。無理強いはしません。俺が無理強い何て出来る訳無いじゃん。まあ皇太子様の権力には勝てんけど、エリーを売ったりはしない。エリーには恩があるからな!ほらいい加減に行くぞ!」
「はい。はーぃ。信じますよ。」
「はいは一回だろ!」
コレって、毎回のパターンになりつつ有るな。
*****
「ヤダー。あっち行け!ドレスに触らないで!汚れちゃうじゃない。」
「ほら貰ったらさっさと向こうへ行け!ローズマリーはお客様だ!下民が触って良いお人では無い!」
「・・・・・。」
「「そうです!」」
「お兄様方。ならば何故お客様を連れて来られたのです。しかもその様な格好で。ここは配給所です。皆様食事を貰いに来ているのです。邪魔をなさるなら、城へお戻り下さい!」
うわー。到着早々何だか騒いでるよ。ローズマリーが中心だね。触らぬ神に祟りなしよ。必要の無い所では近寄らない。クワバラクワバラ。
ではこちらで用意をしましょうか?
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