【完】真実をお届け♪※彷徨うインベントリ※~ミラクルマスターは、真実を伝えたい~

桜 鴬

文字の大きさ
9 / 29
【さん・Ⅲ】

乙女ゲーム・ヒロインが!転生者編②

しおりを挟む

 
 スイーツの乗ったままの取り皿を、第五王子様がテーブルに置きます。続けて私がホークを受け取り、お皿の上に乗せました。テクテクと騒ぎの方向へと近づいてゆきます。
 「もーなんなのキモいな。妄想癖でも有るわけ?しかも激安大売り出しの愛なんていらないから!しかもフローラを呼びすて?お前は何様のつもりなの?折角フローラとラブラブしてたのに、苺の甘々が台無しだよ!しかし兄さんも趣味が悪いな。僕はこんな女を姉だなんて思えないし慕えないから! 」
 …………王子様?そのお言葉遣いは?先程までの可愛らしい弟は何処へ?
 『留学して三年も会ってなかったよね?さすがにもう弟じゃないよね?可愛い僕は卒業したよ。フッ……』
 ンギャー!!フッてした!耳に息を吹き込んだ!しかも耳たぶ舐めたー!!可愛らしい弟が!スイーツ大好き少年が!第二王子みたいになってるー!いやぁー……ピュアな弟を返してぇ…………
 「ドンマイだ」
 「あなたは唯一マトモね」
 「そうかな?確かに影は薄いと言われてるけど、結構ダークホースかもしれないよ。お城は暗闇が多いから、背後には気を付けてね。安心はしないで欲しいな」
 第四王子も怖いことを宣った!
 第一王子は腹黒。第二王子はチャラい。第三王子はお調子者。第四王子は真面目……じゃないの?第五王子は弟分を卒業したのね……
 恐るべし王子五兄弟!触らぬ神に祟りなし。なのに!仕事してるとそうは行かないのが困りものなのよ……。
 「王子様方はなぜフローラを庇うのです!彼女は悪役令嬢なのです。断罪されなくてはなりません。私こそがこの世界のヒロインなのですから! 」

 始まりましたね……私はヒロイン!これが今回の最大の問題なのです。自称ヒロインさんには、なんと別の世界で暮らした記憶があるそうです。いわゆる転生ですね。我が国の神殿での教えにも、輪廻転生の概念はございます。死した者は魂を白く浄められ、やがて新しい命へと生まれ変わるのです。記憶は無に還り新たなる人生を与えられると言われています。
 それに……
 前世の記憶がなんだというのでしょう。記憶の中でこの世界はゲームだったと。ゲームとは遊びとのこと。決められたお話の中で、ヒロインが未来を選択して幸せになる物語。己はそのヒロインに生まれ変わった。だからゲームのようにヒロインである己は幸せになり、悪役令嬢である私は断罪され不幸にならなければならない。
 そのために私は、ヒロインを虐めぬかなくてはならない。つまりヒロインである己は、悪役令嬢であるフローラに虐げられている。そう言うことらしいです。
 はい。頭がいかれちゃってますね。まあ眉唾ですけど前世うんねんについては信じるとします。しかしたとえ世界がそのゲームとやらに酷似していたとしても、己が生きてくる間に何かが違うとは感じなかったのでしょうか?学園では確かに苛めがあったそうです。しかし私は学園にいません。なぜ私が犯人だと思えるのでしょう。階段から突き落とされたのも、暴漢に襲われたのも、すべてが自作自演とのこと。つまりこの時点ですでに、前世とやらのゲームの世界とは違うのです。なのになぜ現実を見据えることが出来なかったのでしょう?すべては前世のゲームの世界だと、思い込んでしまったからなのでしょうか?

 このお花畑さんがなぜ、学園にいるはずのない私の名を出したのか?なぜ捨てたはずの私のファーストネームを知っていたのか?きっとその謎はその前世に遊んでいたという、乙女ゲームの中にあるのでしょう。
 もしかしたらそのゲームとやらは、未来への分岐点だったのかもしれませんね。だってヒロインさんは、沢山の攻略者からヒーローを選択できるんですよね?つまりお相手を選べる数だけ、未来のエンディングは変わるのです。ならばそのゲームにはない未来があっても、まったくおかしくはないのでは?それに気づけなかった。いえ、気づこうともしなかった……

 【ヒロインはゲームでは発見されていない、未来への分岐点を進んでしまいました。それは私がキングスのまま、悪役令嬢になる未来ではなかった。ただそれだけ……】

しかしまったく私たちには関係ないことです。この世界はあなたが遊んだゲームではありません。私、いえ、私たちは皆生きています。それぞれに意思があるのです。ヒロインの言いなりになどなりません!
 
 私はフローラ・キングスではないのです!ただのフローラなのですから!

 *****

 第五王子様が自称ヒロインの前に歩いて行きます。ヒロインの側に立ち、まるでダンスを誘うように、優雅に手を差し出すと、ヒロインは嬉々としてその手をとりました。
 「第五王子様!わかって下さったのですね。出来れば学園でお会いしたかったです。貴方とも愛を囁きあいたかった……フローラさえいなければ……」
 ………………いませんでしたよ? 
 「うるさい! 黙って!誰か投影の魔道具を持ってきて! 」
 第二王子様が素早く魔道具をセットし、通信機の片割れのようなものを、第五王子様に手渡す。第五王子様は片手にそれをしっかりと握りしめ、その魔道具を会場の白い壁に向けた。すると白い壁に文字と数字の羅列が、横書きにズラズラと現れた。

これは……
【自称ヒロインのステータス】

 第五王子様の希少なスキルは、鑑定の上位スキルである【真眼鑑定】あらゆるものを鑑定し、人の体内の異常から犯罪歴。知りたいと思えば趣味や隠しごとや魔力値などのステータス。果ては性格やスリーサイズまでもがわかってしまう。国民に知られたら少々困りそうなスキルなの。
 会場がさざ波のようにざわめいてゆく。会場の人々の目が、一番下のスキルの欄にくぎ付けとなっている。それもその筈よね。

 【魅縛の瞳】本人の意思により常時発動中。ただし異性のみ。また貴族の嫡子とイケメンに限る。それ以外には魅了の力発動。
 (備考)魅了の力で自殺者八名。常時発動中のため、ふられても忘れられずに死を選んだ。すべて次男以降。

 魅縛の瞳は魅了より強力で、目を合わせることで発動する。何度も繰り返すことにより、意思の持たない人形にも出来る。下手したら廃人よ。
 魅了の力は目を合わせる必要はない。その人の側にいるだけでも好ましく感じてしまう……普通はその程度のスキルなの。しかし彼女は異性にモテたい!チヤホヤされたい!ヒロインの私を愛しなさい!と、無意識になんだろうけど、かなり魔力を込めてるのね。なぜ放置していたのかしら?え?魅縛のスキル持ちだと知らなかったの?怪しいから調べようとしたけれど、本人に拒否されたの?しかしスキルは五歳の時に教会で調べられるはず。なぜ今まで気づかれなかったの?あ……庶子で孤児院にいたからかしら?以前は貧しい孤児院だと、調べないと聞いたことがある。今は国民に義務付けられているけどね。
 「やはり間違いはなかったようだな。本人が拒否し、学園では調べられなかったそうだ。五歳時の検査は義務だが、以降は任意だからな。しかし第五王子が戻って来て助かった。ご苦労。では第二王子よ。さきほどフローラを見たと証言した、その腑抜け三名を正気に戻せ」
 「はい。直ちに……」
 第二王子様の希少なスキルは、【状態異常解除・無効】すべての状態異常を解除、または無効にしてしまう。毒や薬物による体への異常を正常に正す。精神的なものから、体の欠損的なものまですべて可能。このスキルが希少な訳は、【無効】が付いていることなの。毒や麻痺などは【解除のみ】で行える。またケガや病気は、ほとんどが治癒スキルか医療系の魔法が使用されている。しかし【状態異常無効】ならば……精神系の異常に身体の欠損、不治の病などもすべてを無効に……つまり元からすべてをなかったことに出来る。もちろんそう軽々しく使用できる訳ではない。代償は術者の魔力だからね。これも国民に知られたら困るスキルよね。

 私を目撃したと証言した三人の目に光がともる。焦点が合ったね。まだ洗脳まではいっていない。本当に良かった。そのまま暫し呆然と佇む三人。みかねた第二王子様が、「パン!」と大きく手を叩く。
 「「「私たちはなにを……」」」
 第二王子様が三人に説明をする。どうやら私の潔白は証明されたようね。三人は己たちが仕出かしたことの大きさに呆然とし、膝から崩れ落ちてしまう。さらには正気に戻り、王の座る上座に土下座を始めた。まあ。王の御前で偽証は不味いわよね。しかし正気で無かったのなら、恩情はあるでしょう。でも自称ヒロインは無理でしょうね。未だに状況が理解できないのか私を罵倒しながら、懲りずに王子たちに涙を流しながらすり寄っている。やがて三人は別室へと連行された。
 「さて。これでフローラの罪とやらは、まったくのデッチ上げと判明した。その頭のイカれた男爵令嬢を、地下牢へ引っ立てよ。いつまでもギャンギャンと見苦しいわ!修道院行きか身分剥奪で国外への追放。好きな方を選ぶがよい! 」
 自称ヒロインがノロノロと立ち上がる、チラリと扉の方を見ている。

 え……まさか!確かにここにいても可笑しくはないんだけど……どうして……

 自称ヒロインが料理の並ぶテーブルに近づき、ナイフらしきものをつかみ私に向かい走り出す。
 …………先に謝っておくよ!
 「ごめん! 正面から来る敵は排除する! でもこれ正当防衛だよね! 」
 さりげなく左手の指輪を口によせる。私の体を雷を纏う結界が包み込んだ。それとほぼ同時に衝撃が走る!
 「ガツンッ!! 」
自称ヒロインの手から、私に向けたナイフが結界に阻まれ吹っ飛び、白い壁に突き刺さる。
 「なんで!どうして?キングスは悪なのに! 私は間違っていない!みんなだってフローラが死ねば!! 」
 自称ヒロインは結界を叩き泣き喚いている。結界からはビリビリと、雷が放電されている。なぜ感電しないのかしら?
 …………あの手ぶくろに防御魔法が付加されてる……

 「いやー。リセットよ! 攻略は失敗よ!やり直しを要求するわ!リセットボタンはどこ?なければ電源を引き抜きなさい!だってなぜかセーブ出来なかったんだもの。 でもなぜ?なぜセーブできなかったの?この世界はゲームの世界ではないの?私はプレイヤーじゃない……もしかして本人だからリセットも出来ないの?そんなのやはり変よ! ねえ約束したじゃない!誰か私を助けてよ!愛してくれたんじゃないの?みんな嘘つき!  」
 会場には自称ヒロインの怒号がこだましていた…………

 *****
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...