53 / 53
❪エピローグ❫
▪大神殿での結婚式。【END】
しおりを挟む私がこの世界に戻ってきてから、約一ヶ月が過ぎた。今日はとうとうカインと私の結婚式だ。私は朝から全身エステを行われ、コルセットでウエストをギュウギュウと締められ、真っ白なウェディングドレスに着替えさせられられていた。しかし苦しい……
「こんなにキツいコルセットを締める必要はあるの? 」
「花嫁さまは皆さん締められるのです! しかし王妃さまには、純白が良くお似合いですね。黒髪黒目が良く映えます。本当にお美しいですよ」
そんなに誉められても……
「ですから! ここをもう少し締めますね。するとさらに美しくなりますよ。さあ! 息をしっかり吐いてくださいませ」
……誉めて下げるのね……
「ほらバッチリ! 寄せて上げればこの通り。常にこの状態を保てば、理想のボディになれますよ」
……たしかに胸がある……しかもはみ出しそうなくらいにある……
脇肉を寄せたの?凄いテクだわ。でも常にコルセットは無理よー。
この世界の貴族のウェディングドレスは、くらいが高いほどトレーンを長くし豪華にする。私のドレスもまるで、円を描くように広がり引きずる形だ。これって歩くとき踏まないかしら?
着付けを終えアクセサリーを装着し、これまた豪華な総レースのベールを頭に乗せられ、顔を隠された。
「さあこれで出来上がりです。あら? 待ちきれなくて花婿さまが扉の外でお待ちの様ですね。どうぞお入りくださいな」
ガチャリと扉の開く音がして、正装をしたカインが入ってくる。私を見てる? 似合わないのかしら?
「マリア……凄く綺麗だ……本当に結婚出きるんだな。私のもとに来てくれて感謝する。マリアがもとの世界で諦めたことを、忘れられるくらいに愛するよ……」
「ありがとう。でも私はもとの世界でも、名にも諦めてはいないよ。だってリリアもレオンも幸せだもの。互いに忘れないから大丈夫。私もカインが大好き。私をカインのお嫁さんにしてくれてありがとう」
「マリアー! 」
「花婿さまストーップ! せっかくの着付けをぐちゃぐちゃになさるおつもりですか? 頬にキスも駄目です! お化粧が崩れます。イチャイチャは式が終了するまでお待ちくださいませ。国民一同、可愛いお子さまの誕生を楽しみにしておりますよ」
もう! カインのバカ!
カインに腕をとられ、エスコートされながら礼拝堂へ向かう。豪華絢爛な列席者の中、二人でバージンロードを進む。大神官さまの采配で、挙式は滞りなく行われた。
ラストにカインが私のベールをあげ、唇に軽く誓いのキスを落とす。すると突如私の右手が淡く光だした。
「女神さまから貰った指輪が光ってる? 」
指輪から光の帯が延びてゆく。祭壇上の白い女神像の横に、ニつの影が揺らめきだした。
「まさかリリア? レオン? 」
二つの影が段々とリリアとレオンの姿を形どってゆく。うっすらと透けてはいるけど、あれは間違いなく二人だ!二人は何事かと周囲を見渡している。最初にリリアと目があった。
「お姉ちゃん? その姿ってもしかして結婚式なの? まだ戻って十日くらいしか……あ……三倍なんだっけ。結婚おめでとう。たぶん女神さまが見せてくれたんだと思うよ」
リリア……まさかリリアに見て貰えるなんて……思わず涙が溢れそうになる。
「マリア。結婚おめでとう。幸せそうで俺も嬉しいよ。今日は新居に併設した教会に来ていたんだ。祈っていたらいきなりクロスが光だして焦ったよ。女神さまも粋な計らいをしてくれたな」
レオン……だからその姿なのね。牧師姿も似合っているわよ。
「マリア……私を紹介してくれないのか? 」
あ……カイン……
「二人に見て貰えて嬉しい。ペアリングもありがとう。でも無理したんじゃないの? 気を遣わせてごめんね。それでね? こちらが花婿さまなの。カイン……カインドルです。公爵になる予定だったのに、戻って来たら王さまになってたの。信じられないけど私が王妃なのよ。でも頑張る! この世界と人々のためにもね」
「お姉ちゃんが王妃さま……頑張ってとしか言えないね。でも大丈夫だよ。お姉ちゃんはしっかりものだもの。カインドルさん。私の大事なお姉ちゃんを、末長くよろしくお願いいたします」
「マリアが王妃……まあ大丈夫だろ。大好きな人の側にいれば百人力だしな。悪者だって倒せちゃうんだよな。マリアはもう、俺に守られなきゃならないほど弱くはない。少々無鉄砲な奴ですが、カインドルさん、マリアをよろしくお願いいたします」
駄目だ……涙腺が崩壊しちゃったよ。涙が止まらないよ……溢れる涙を拭いつつ、私は二人にカインを紹介する。
「カイン。妹のリリアと旦那さまのレオンよ。女神さまの計らいみたい。直接は会えないけどよろしくね」
「ああ。リリアさんにレオンさん。マリアをこちらの世界に送り出してくれてありがとう。私は突如王になった。私には至らぬ部分を支えてくれる、王妃としてのマリアが必要だ。もちろん個人としてもマリアを愛している。必ず幸せにする。だから心配しないで欲しい。それから素晴らしいペアリングをありがとう。こちらからなにも返せないのが残念だ……」
二人の姿が段々と薄れてゆく。女神像が強く発光し、天井からたくさんの花びらが舞い落ちてきた。
パリンッ。右の指の女神さまから貰った指輪が弾けとんだ。代わりにだろうか?気付くと中指に違うリングがはまっている。カインにも同じリングがはまっていた。カインと私のリングから光の帯が延び、薄れゆくリリアとレオンの右手に向かう。右手を見て驚いた顔をするリリアとレオン。二人が右手を揃えて、こちらに見えるようにかざした。
「同じリング……」
「そうだな。なら私たちも……」
カインと右手を揃えて指輪が見えるようにかざす。四つのリングは世界を隔て、光の帯で繋がった。
『祈りなさい。さすれば世界を隔てていても、互いの思いは届くでしょう。結婚おめでとう。私とマリアの世界の神々からの気持ちよ……』
女神さまの声が天から聞こえてくる。やがてなにも聞こえなくなり、リリアとレオンの姿も消えてしまった。
リリア……レオン……本当にありがとう。女神さまもありがとうございます。涙の止まらない私を気遣ってか、いつの間にか参列者は帰路についていた。私ってばお礼の挨拶もしていないじゃない。
この世界の結婚式では、披露宴という概念がない。挙式をし正式な夫婦になると、一週間ほどの蜜月が与えられ、二人だけの時間を過ごす。これがハネムーンみたいな感じよね。二人がキチンと結ばれたのちの最初の夜会で、結婚が正式に成されたことが発表される。
「マリア? そろそろ大丈夫か? 大丈夫なら温泉に飛ぶぞ。私もようやく休めるよ。まあマリアは休めないかもしれないな」
嫌です!休ませていただきます!
「涙は引っ込んだよ。でもこのドレスは着替えなくちゃ行けないよね? 」
「私が脱がせてやろう! 」
ちょっとやだ! 礼拝堂でいきなりなにをする気なの?いーやー!止めてーって……
「なにを勘違いしているんだ。まさか私だって礼拝堂では襲わないわ! ほら出来上がりだ」
トレーンやドレープ部分は取り外しができたのね。さらにはペチコートを外したら、ワンピースに早変わり。生地がドレス用だから豪華なワンピースだけど、新婚だと思えば大丈夫ね。
「でも……できればコルセットも外したいんだけど……」
「一刻の時間も惜しいんだ。それにコルセットは一人では外せないだろ? だから温泉で外してやる。そのまま入れるしな。二人きりの温泉宿だ。仕事をがむしゃらにこなして、ようやくもぎ取った十日間だぞ。世継ぎも皆に期待されている。こういうのをハネムーンベビーと言うんだろ? さあすぐに行くぞ! 」
……覚悟は決めたけど……なんだかやる気満々なのが嫌だ……
なんて考えている内に、ヒョイと横抱きにされ温泉宿へ。もちろん温泉にゆっくり浸かることもできずじまい。
十日間食事以外は、お布団から出して貰えませんでした。カインのバカー! 回復魔法が必要なくらいするな! 私の体力が持ちませんよ……
十日間の蜜月ののち、私たちは王と王妃として奮闘した。私は王妃稼業の他に、錬金術師としても活躍した。魔法などのチートは女神さまの計らいによりそのまま使えたため、私は己の足も使い、できることは進んで行った。王妃がそこまですることはないと、処罰された宰相の様な考えの頭の固い貴族もかなりいた。しかし私はそうは思わない。カインも賛成してくれたので、女性の社会進出のためにもと、己が見本をみせたかった。
ハネムーンベビーは残念ながら授からなかったけど、翌年には長男を出産。生涯で十人のも子宝に恵まれた。この世界では寿命が長く、体の老いも遅く緩やかだ。我が子と孫が同時に誕生したりと、我ながら痛いと感じてしまったわよ。これもみなカインがしつこいからよ!
私がいなくてもこの世界は回っていったのだろう。でも私が加わったことにより、少しでもこの世界が良くなったなら嬉しい。
リリアとレオン夫婦も二男一女に恵まれ、幸せな日々を送っている。女神さまと神々からのリングのおかげで、リリアとレオン夫妻とは、教会で祈ると夢の中で出会うことができる。触れあうことは出来ないけど、お互いに話をすることができるの。子供たちも一緒に祈ると、夢の中に一緒に行けるのよ。本当に不思議よね。
リリア、リオン、いつまでも幸せでいてね。
カイン。私を受け入れてくれてありがとう。そして私を受け入れてくれた、この世界にありがとうを伝えたい。
女神さま。そして神龍さまに神龍姫さま。私はこの世界にこれて良かったです。この世界をいつまでも見守っていてくださいね。私も皆さまのご期待に添えるように、最後まで頑張るつもりです。
王妃なんて荷が重いけど……
カインがいてくれる。助けてくれる人たちもたくさんいる。私は皆の期待に答えたい。
最後まで走り続けるよ。
カインの隣で……人生を終えるまで……
*******
0
お気に入りに追加
34
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる