【完】俺魔王倒した勇者様。なのに母さん最強説。

厚くて甘美な美味しいアレ。

商業ギルドとの話し合いで、土地の契約と箱ものの施行の段取りを付けた。しかし先ずは上下水道を何とかしなければならない。そして土地を整備しなくては、箱ものを建てる事も出来やしない。

てな訳で、先ずはワイバーンの魔石をゲットに来ました。馬車の中で母さんは大騒ぎ。兎に角はしゃぐ。何かが馬車に並走して走っているとはしゃぎ、空に何か飛んでるとはしゃぐ。

「祐太郎！あれ！あれよ！あの草の影から何かの角が見えるの！かなり大きいみたいだけど、動物が居るのかしら？母さん。モフモフなら嬉しいわ。」

ドアを全開にし、頭を出して指を指す。

確かにモフモフだが、どちらも魔物じゃ！モフる前にガブリだわ！馬車から頭を出すな！手を出すな！子供じゃ無いんだから、こんな注意をさせるなよ！ほら早く閉めろ！喰われるぞ！

もう何とかしてくれ。

俺は子守りじゃないぞ。

しかし母さんは凄かった。

母さん無双だった。

ワイバーンが空を飛ぶのを見て、マンモスは居ないの？骨付き魔物肉は何処の部位？だとか騒ぎながらも、出てくる魔物を次々に葬り去る。初の討伐に調子に乗りまくった母さん。飛竜の谷と言われる渓谷を根城としていた、ワイバーンを次々と駆逐してしまう。お陰さまで、飛竜の谷の通行が可能になってしまった。谷の奥には飛竜の滝と呼ばれる見事な滝が有る。その辺りは珍しく貴重な植物の楽園だ。また採取が可能となり、我が国と隣国は喜んだ。

実はこの渓谷を抜けるのが、隣国への最短ルートだった。しかし飛竜の棲みかとなり、長年放棄されていた。頭上を飛び回るワイバーンは、旅をする者には危険極まりない。何故なら突如上空から襲われても逃げる術がない。更には追いかける手段もない。

俺も落とすだけで精一杯だよ。勿論一撃で落とすだけでも凄いんだからね。普通は落とせないんだよ？俺は勇者様何だよ？それより強い聖女様…。

おかげで母さんは、隣国でも有名人になってしまった。討伐されまくった飛竜の魔石は、中級や下級貴族の水道設備に使われた。工事費のみだと知ると、貴族達は喜んで資金を出しあった。母さんは貴族に恩を売り付けた。

また商業施設への上水パイプを増やし、城下町へも水道を流した。但し流石に、個々の家にまで回すには予算が足りなかった。その為公共の公園や広場に噴水や水場を設け、綺麗な水を誰にでも使用できる様にした。

しかし戦闘狂の聖女様何て誰得よ。俺は嫌だよ。母さんは戦闘するな！折角山の様にお見合いの話も来ているのに、素敵な再婚も出来なくなりそうだ。本当に最初はバカみたいに、恋愛的にモテモテだったのに…。

見た目は可愛らしいからな！中身還暦だけど。

最近は違う意味でモテてる。害虫ばかりで俺の胃が痛む。あ。母さんは心配ないんだよ。ヤられる前に殺り返せるからね。心配なのは相手ね。冒険者ギルドで母さんに言いがかりつけて絡んできたゴロツキを、纏めて一時的に男性として再起不能にしちゃったのよ。それが広まっちゃって、女性にはモテモテ。しかし男性には…。恋愛対象からはすっかり外されてるよ。

それなのに！母さんっつてば！

「テンプレごちー。異世界ギルドの新人イジメ来たー！ねえ祐太郎？私ってばまだギルドに登録に来るの早い？お嬢ちゃん呼びだけと若く見えるのかしら？あ！やっぱり若く見られてるのね。登録は15才からだから、お嬢ちゃんは出てけって。やだー。祐太郎より年下になっちゃうーん。」

マジで浮かれてるし…。おい！そこのゴロツキ共！母さんを付け上がらせるな！いくら若く見えても、俺より年下は無いだろうが！浮かれポンチ加減が、正直ウザいわ！

皆が母さんの見かけで騙されてた頃よカムバック。しかも今の評判の母さんにすり寄るのは録な奴がいない。今の素のままの母さんが好きなら俺は邪魔はしない。熨斗をつけて差し上げよう。

しかし宰相だけは論外だ！あの腹黒ジジイめ…。何だかんだ言いながら、最近ちょくちょく母さんに面会をせがむんだよ。しかも事務所にまでやって来る。何を企んでるんだ？

腹黒宰相様が何故？俺だって宰相が母さんに惚れた何て、マジに考えちゃいない。だが挙動不審なんだよ！

やはり心配だ…。

因みに自宅は、商業施設の中庭の奥に作った。これは俺が資金を出した。母さんは最後まで渋ったが、俺だって男としての意地も有る。将来の２世帯住宅を、母親に建てさせるなんてな！

商業施設側からは、自宅の存在は解らない。カモフラージュは万全だ。俺は兎に角、過ごし易く老後にも優しい設計に拘った。。全てのスペースを広くとり段差を無くす。中抜きで自然光も取り込んだ。勿論ガーデニングも出来る中庭つき。拘りのキッチンで使用するハーブ類を、腰を曲げずに立ったまま育てられるスペースも作った。

長生きしてくれよ。母さん。

因みに食事処の隣に、立派な事務所を設置している。一応、寝起きも出来る仕様だ。応対は通常はこちらで行う。住居はスローライフする為の場所。仕事は別ね。まあここでスローライフが無理だったら、その内に別荘でも建てよう。

さあ。説明はこの辺で終了。母さんが食事処の仕込みをしてる筈。今日の試食は、宿泊者用の朝食プレート２種と朝食代わりのお弁当２種。宿泊の食事は食事処でのチケット制。朝食と夕食が付けられる。宿泊時に食事つきで予約をすると、別々に支払うより少し割引になる。勿論チケットが無くとも食べられる。チケットで朝食プレートを食べ、お弁当を現金購入も可能だ。

おー。良い匂いー。めちゃ良い香りがする。これはバジルの香りだな。バジルチキンか？味噌汁は多分豚汁だな。ならおかずは甘い卵焼きに大根おろし添えだ。だし巻きも良いけど、母さんの甘い卵焼きは旨い！

んん？

もしかして喫茶のメニューも試作してる？色々なソースの匂いに混じるこの香りは…。間違いない！

「母さん！あれ有るの？なら誕生日は過ぎたけど、分厚いの重ねて焼いてくれ！何時もの薄いパンケーキみたいじゃないの！誕生日特製の奴！バター多めの生クリーム付きね！蜂蜜はいらないから、このベリーソースかけて！」

俺はベリーソースを取り出す。

「分厚いホットケーキは、祐太郎の大好物だったもんね。何時もは節約でパンケーキだった。でもこちらでなら毎日でも分厚く焼いてあげられるわよ。バターも蜂蜜もメイプルも生クリームも、好きなだけかけて。ソースバイキングのホットケーキをどうぞ。勿論、ホットケーキの追加もOKよ。」

母さん…。

「このベリーソースは、エルフの国の希少なベリーで作った品なんだ。お礼に以前貰ったんだ。母さんもかけて食べてみてよ。美味しすぎて勿体無くて使えなかったんだ。でもこのホットケーキになら、沢山かけちゃう。」

「エルフの国！エルフ居るの？もしかしたら、ドワーフや獣人も？なら竜人や聖獣や妖精とかも居るのかしら？」

母さんの目がキラキラしてる。ファンタジー好きだったもんな。その内に行ってみよう。

「聖獣や妖精は確認されて無いけど、他は種族として存在してる。魔王討伐の際、それぞれの国に挨拶回りでお邪魔したよ。母さんが行きたいなら、その内に案内するよ。」

分厚い２枚重ねのホットケーキ。互いに頬張りながら、異世界で幸せ満喫してます。

これはこれで…。

まったり幸せだねぇ。母さん。

＊＊＊＊＊