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14 採取旅行(※)

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採取場所はここから近くの山奥、とは言っても、それでもそれなりの距離はある。高低差もある。
結局往復に2日、採取に1日の、2泊3日の行程となった。


採取場は、余所者なら入り込まないような山奥深くの入り組んだ場所、しかも地下にあり、辿り着くまでがかなり大変だった。

途中では巨大な猪タイプの魔物が何度か現れたけど、カペロは余裕で討伐してくれた。
なるべく毛皮に傷をつけない方がギルドで高く引き取ってくれるとかで、剣を持ってるクセに切るのではなく、持ち手側で脳天を殴って討伐する彼の力技には驚かされたけど。
いっそのこと、武器を剣からハンマーに持ち変えるべきでは??


そんなこんなの途中での苦労が吹き飛ぶほど、辿り着いた先にあった採取場は想像を絶する美しさだった。

小さなコミュニティが3つは余裕で入りそうなほどの広さの洞窟の奥一面が、どこもかしこも巨大な鉱石の石柱だらけだったのだ。
地下のはずなのに、小さな入り口から差し込む光を鉱石が乱反射させていて、結構明るい。
初めは息を呑んで、ただただその美しさに目をみはっていた私も、一旦落ち着くと今度は鉱石採取に夢中になった。

鉱石も、ただ大きければ良いと言うものではなく、魔力付与や携帯に適した大まかなサイズや形というものがある。それを見分けて採取していく。

「いくらマジックバッグがあるとは言え、欲張り過ぎちゃダメだぞ?」

とカペロから釘を刺されて、とにかく自分に相性の良さそうな石を数より質重視で厳選したけれど、それでももうしばらくは採取には来なくても良さそうなぐらいの量を、マジックバッグに詰め込んだ。

でもここなら、また是非! 何度でも来たいのだけれど。
綺麗過ぎて、眺めてるだけで一日過ごせそう。
でも来てしまったら、絶対採取せずにはいられないんだろうけど。

それほどにここは、魅力的な場所だった。


ただ、魔法付与士にとっては魅力的な場所でも、単なる冒険者にとっては、魔法が付与されていない鉱石は“石ころより綺麗だけど、ギルドに提出してもちょっとのポイントにしかならないつまらない石“でしかない。
だからこそ、こんな採取場所が酷く荒らされることもなく在り続けることが出来ているのかもしれない。


食事はカペロが討伐した魔物の肉と、私が道中で採取した山菜を調理して食べた。
魔物肉を剣で豪快に捌いていく姿を見て、カペロがハンマーではなく剣を持ってる理由はコレか、と納得した。
肉は焼くだけ、味付けは塩だけ、と極めてワイルドな料理だったけれど、とにかく一日中動いて空腹を極めていたので、どれも美味しく感じられて、作った分はふたりでぺろりと完食してしまった。

そして夜は2晩とも、カペロがマジックバッグにしまっていた、簡易宿泊テントに一緒に泊まらせてもらった。
私も持ってはいるけれど、私のものがアウトドア用の普通の簡易テントだとすれば、カペロのは宿の一室ぐらいの広さと設備があった。羨ましい。


・・・そしてそこでカペロから、改めて“この大陸での“ベッドでのアレコレを習ったのだ。

ヴィーオのやり方とはやはり違い、カペロによると“ここでのセックスは私が幼い頃に見た通り“とのことだった。
ただし、カペロはそんなにガツガツとはしてなくて、優しく優しく抱いてくれた。

“魔力の混じり合い“も大花火大会とはならず・・・、だけど手持ち花火を楽しむような、じんわりと温かくて穏やかなものだった。

母さんが、私の初めての相手として強く強くカペロを推していた理由が分かったような気がした。



3日目の朝、カペロのもとに伝書が届いた。
カペロと同年代の女性からで、“そろそろ発情期が来そうだからパートナーになってほしい“と言う内容だった。
カペロにひっきりなしに発情期の相手依頼が来るのも頷けるよな、と、カペロとの穏やかな夜を思い出しながら私は思った。


そんなこんなで、山を降りたカペロは真っ直ぐ家に戻ることになったけど、私は気分転換に今まで行ったことのない街に行ってみたくなって、街道まで降りてきたところでカペロと別れることにした。

「今度アリーシャの発情期が来たら、絶対俺が相手するからな! 伝書で教えてくれよ! 絶対だぞ!」

そんな赤面ものの言葉を大声で叫びつつ、大きく手を振りながら、カペロは故郷に向かう道の先へと去って行った。


そして私は、反対側の方向へと歩き始める。
森の中を抜ける爽やかな風に、潮の香りが混じっていた。

とりあえず海沿いにある街を目指そう。
大雑把にだけど、私の目的地が決まった。

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