13番目の神様

きついマン

文字の大きさ
上 下
33 / 69
二期 二章

コロシアム 上

しおりを挟む
「ここでおとなしくしておけ!!」

 ガシャーンと大きな音が響き渡る。この音の発生源は俺が入れられた牢屋の扉である。
 
「うえぇ、地面きったねぇ…。うわ、トイレとかないじゃん…。もしかしてあのバケツか…?」

 なぜ俺がこんな最悪な所に入れられているかというと、数時間前に遡ることになる。


ー牢屋ぶち込まれ5時間前、コロシアムー

「選手登録には、一度試合をしてもらいます。」

「わかった、それじゃそれでお願いするよ。」

 俺達はコロシアムに選手登録する為、選手受付へと来ていた。
 
 コロシアムの中はとても賑わっていて、屋台が室内だが立ち並んでいる。その賑やかさはレイムブルグを彷彿とさせる。

 受付の女性によると、選手登録するには経歴は不問だが、"実際の"強さを図るために一度試合して頂いているらしい。

 実際の、というのはステータス以外の部分も見ているということだろう。知能や技術力、場数はステータスプレートには出ないからな。

 その為、ステータスプレートの提出は言われなかった。

「試合はどういう感じで行われるんですかぁ?」

「試合はコロシアムメインステージでは無く、選手控え室の近くにある闘技場で行われます。一応数人のお客様はいらっしゃいますが、あまり気にしなくて結構です。」

「なるほどですぅ、緊張しますねぇ…」

 顔に手を当てながら恥ずかしがるセリス。可愛さに通りすがるおっさん達が見とれている。俺も見とれちゃう。

「相手はどんな感じなの?」

 昨日の見る影もないほど顔色が良くなったアリサが受付嬢に尋ねた。こちらもおっさんの目線を集めている。

「貴方達の相手をするのは専属の騎士です。強さは申し分ないですよ。全力で戦って大丈夫です。その時の闘いぶりで選定されます。」

「わかったわ。」

 なるほど、そういうシステムか。強い相手を目の前にしてどこまでいけるか見るといったところだろう。

「僕の相手もそいつなの…?」

 サンが絶望の顔をしている。大丈夫か?

 そこで俺は少し心配になったので、受付嬢に聞いた。

「あ~…俺も結構強いけど…大丈夫?」

「はい大丈夫です。絶対。」

 そう言って彼女はやはりステータスプレートを見なかった。

 ここまでの自信。もしやS級レベルなのかもしれないな。俺も全力で行くか。

「じゃあ4人、試合をセッティングしてくれ。」



ー牢屋ぶち込まれ3時間前 試合開始ー

 試合を申し込んで一時間ほどして、試合が始まった。
 その一時間でおそらく宣伝が行われ、思った以上の人数が見に来ている。

  …まあ、美少女2人が戦うとなれば見にくるなそりゃ。

「試合開始!」

 最初の試合はサンからだ。

「でやぁっ!!」

 サンはもともと盗賊スキル持ちである為、スピードが速い。開始早々一気に相手へと間合いを詰め、左から手に持ったナイフで首を狙った。

「うおっ!早いな!」

 相手の騎士はそう言いながら、首に伸びて来たナイフを盾で弾いた。
 騎士は盾と剣というオーソドックスな装備をしている。

 キャインと、金属の弾く音が響く。

「まだまだ!!」

 サンはスピードを利用した手数で勝負を仕掛ける。右、左、上、下、サンは飛び回り、走り回り、ナイフを振る。

 だが騎士はその全てを少しの動きと盾だけでかわしていく。

「くっそ!当たんねえ!」

 サンがイラつきを見せた瞬間、騎士が動いた。

「合格だ!君はその年でなかなか強い!」

 そう騎士は言い、盾でサンをバッシュした。

 サンはバッシュを受けた反動で吹っ飛び、空中で一回転して着地した。

「ちぇ!一発も当たんないでやんの。」

「試合終了!!」

 審判が告げ、会場内が一層湧いた。

「ガキー!いい動きだったぞー!」

「いいスピードだー!」

 歓声が飛ぶ中、サンが恥ずかしそうに帰ってきた。

「お疲れ様、よく頑張ったな!」

「一発も当たんなかったよ…。みんなも頑張ってね!」

「私合格するか心配になってきましたぁ…」

「大丈夫だよ、セリス姉ちゃんなら!」

 帰ってきたサンと交代で試合場に上がったのはセリスだ。おそらく魔法系で戦うのだと思うのだが…。セリスの戦闘を見るのはなにせ始めてだからな…。

 セリスは騎士と向き合って試合場に立った。
 
 美少女が試合場に上がり沸き立つ会場。

 審判が手を上にあげ、一気に振り下ろす。

「試合開始!!」

 二人とも出方を伺っているようで、すぐには動かない。

 二人の間で静寂が流れる。会場の喧騒はセリスの耳には届いてなかった。
 強くなって、三人の役に立ちたい。世界を救いたい。そう考えると、目の前に集中できた。

「お嬢ちゃん、いくぜ。」

 先に動いたのは騎士だった。騎士はその場で剣を振り下ろした。目にも留まらぬ速さで振り下ろされた剣からは凄まじい風が吹く。

「私も、いきます!」

 セリスが手を前に出すと、見えない壁があるように風が遮られる。魔力の壁だろうか。

「はっ!」

 セリスはいつのまにか身体強化をかけていたようで、霞むようなスピードで騎士の後ろに回った。

 え?まさかの肉弾戦!? 

「まじ!?」

 騎士も想像していなかったようで反応に遅れる。その隙をセリスは見逃さなかった。

「せやぁ!」

 セリスは手をかざした。かざした手から無数の光の矢が放たれ、騎士を襲う。

 着弾と同時に会場内が一層騒がしくなった。

「があ…結構痛いな。」

 騎士はいつのまにか盾を構えており、ダメージはあまり通っていなさそうだった。

「最大の奇襲でもそのダメージなんて、めちゃくちゃですね…」

「君も合格だが、少し、先が見たいな。」

 騎士はその瞬間、消えた。

 正確には俺以外は見えなかった。が正しいだろう。
 身体強化をしたセリスを大きく上回る速さでセリスに近づいた騎士は、盾を思い切り前に突き出した。

 セリスはギリギリで騎士を確認し、盾を魔法で防御したが、防御ごと吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされたセリスは壁に激突する寸前に体制を立て直し、壁を蹴って着地した。

「お見事。君は可憐でそして強かった。さらなる高みを目指すがいい。」

 騎士は拍手をしながら定位置に戻っていった。

「試合終了!!」

 またまた会場は歓声の渦に包まれる。

「ねーちゃん最高だぜ!」

「可愛い。」

「尊い。」

 ちょっとやばそうな歓声があるのが気になる。


 セリスはよろよろと戻ってきて、自らに治癒をかけた。

「あれは化け物ですぅ!アレクさん並みですぅ!」

「お疲れ様!セリスってあんな戦い方するんだな、正直驚いたよ!」

「ありがとうです、ちょっと頑張りました!」

 ニコッと笑って喜ぶセリス。

 さらに飛ぶ歓声。

「さて、私も行きますか!」

 次の試合はアリサだ。これまた歓声が上がるだろう。

「頑張れ!アリサ!」

「任せて!セリスに負けてらんないわ!」

 そう言って試合場へと歩いていった。


続く
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハコブネ ~天才達が転生した舟~

こーひーめーかー
ファンタジー
 冴えない高校生活を送っていた主人公の冴根仁兎は、とうとうイジメの標的にされてしまった。周囲から馬鹿にされ、パシリを強要される。そんな事が積み重なっていく内に、冴根はみるみる疲弊していった。そんなある日、彼のクラスに転校生の青野照隆がやって来る。彼は、女のような顔立ちの美少年であった。当然、瞬く間に人気者になった青野。彼とは対照的にイジメを受ける冴根。2人はその日の体育の授業で見学を申し出て、隣同士で体育を眺めた。そうして自然と仲良くなっていく。  そんな中で主人公にもまた転機が訪れた。幸運なことに、彼をイジメていたグループが別の標的を見つけ、冴根を解放したのである。それ以来友達も増え始め、楽しい高校生ライフを送り始めた。  ある日の放課後、厄介事を片付け家に帰ろうとし教室に寄った際に、冴根は恐ろしい光景を目の当たりにする。自身の友人達が、青野に殺されていたのだ。冴根は気が動転し、何が起こったか理解できなかった。そのまま学校にトラウマを覚え、彼は引き籠もりとなり、人生が狂っていった。  それから数年後、いまだ傷心が癒えない彼の下に、少年院から帰ってきた青野が訪ねてきた。そこから、さらに冴根の人生は崩壊していく。  その身に余る絶望を受け、とうとう死を選んだ冴根は、神の寵愛により転生を成し遂げ、『天使』に成る。そして彼は、異世界を渡り、怪物から文明を護る『ハコブネ』の乗組員へと選抜された。 辛く苦しい生前の過去や悔い、迷いを、同業者である天使たちと共に成長し、乗り越えていく異世界転移冒険ファンタジー。

異人生伝5 ~創世の時代~ ~ニートが転移したら、新しい世界を創っちゃった件~

厨二王国
ファンタジー
オムニバス形式で紡がれる最後の物語。 え? 順番通りに物語を書け? うるさい。プロットはほとんどできているんだからどこから書いたっていいじゃないか!! とりあえず、最初はダークエルフの話です

不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む

天宮暁
ファンタジー
人生なんてクソゲーだ。 それが、16年生きてきた私の結論。 でもまさか、こんな結末を迎えるなんて……。 しかし、非業の死を遂げた私をあわれんで、神様が異世界に転生させてあげようと言ってきた。 けど私、もう人生なんて結構なんですけど! ところが、異世界への転生はキャンセル不能。私はむりやりチートを持たされ、異世界に放り出されることになってしまう。 手に入れたチートは「難易度変更」。世界の難易度を強制的に変える力を使い、冒険者となった私はダンジョンに潜る。 今度こそ幸せな人生を送れるといいんだけど……。

前世が勝手に追いかけてきてたと知ったので

との
ファンタジー
この度主人公の片割れに任命された霧森花梨⋯⋯グロリア・シビュレーです! もうひとりの主人公は、口が悪くて子供に翻弄されてるゲニウス・ドールスファケレで通称ジェニ。 人違いと勘違いで殺されて強引に転生させられた可哀想な生い立ちで、ちょっと前まで『役立たず』と言われながら暮らしてました。 全てを思い出した今は、全部忘れていた時からず〜っとそばにいてくれた仲間と共に盛大なざまぁを敢行する為に日夜努力中で、何故か『爆裂護符製造機』『歩く地雷』と呼ばれています(〃ω〃) 数千年前から続く戦いに巻き込まれていたのにはビックリだけど、能天気に盛大にやらかしま〜す。 『モフモフパラダイスがあれば生きてける!』 『あ、前世の母さんのコロッケが〜』 ジェニとその家族&私⋯⋯気合十分で戦いはじめま〜す。応援よろしく♡ 『ま、待ちんちゃい! グロリアが思いついたらロクなことにならんけん』 『どうせなら校舎丸ごと爆破とかで退学が良かったのになぁ』 【間抜けな顔で笑ってるくせに⋯⋯鬼畜の女王、悪魔をペットにする異世界人、あのロキを掌で転がしフェンリルにヘソ天させる⋯⋯俺、怖すぎて漏らしそう】 『え〜、冤罪はんた〜い。ちょっと無能鴉にしてあげようかって聞いただけなのになぁ』 『ちんまいちゃんがいちばんつおいでちゅね』 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 ファンタジーに変更しました。 言葉遣いに問題ありの登場人物がちょこちょこいます。 神話の解釈や魔法・魔術その他⋯⋯疑問がでた時は『ありえない世界のお話だもんね』と優しいお心でお読みいただけると幸いです。 あちこちに『物申す!』と思われる内容がおありの方は緩〜く読み流していただくか、そっとページを閉じていただけると嬉しいです。 R15は念の為・・ タイトル時々改変_φ(・_・

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

誤訳怪訳日本の神話

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
長年飯のタネにしてきた日本史を神話の世界のあたりから、かなり手前勝手に誤訳していこうと思います。

処理中です...