あの坂を越えて ～転生したけどフラグは全てへし折ります～

8話負けられない戦いがそこにある

ゲーマーを名乗るだけあり優希は強かった。最初は目に見えて手加減されていたがかなり上達していることがわかると全力を出してきた。

「めっちゃ練習したんだね？想像の倍くらい強くなってるよおにいちゃん！」

中身違うからな。とはいえ、負けるつもりはないが本当に手強い。こちらの行動を先読みしたかのような高度なブロッキングや昇竜タイミング、まるで某動画の画面端ぃ！実況をされていたプレイヤーと戦っているような気になる。やったことないけど。

「いつまでも負け続けると思うなよ、今日は俺が勝つからな！」

「にひひー、お兄ちゃんには負けないよー！」

もはや、フラグだなんだとか全て蹴っ飛ばしてただ負けたくないという気持ちで戦っていた。ゲーマーにはな！負けちゃ行けない時があるんだ！

そして、ここだ！自キャラのチャイナ娘の超必殺をガードされていないタイミングを見計らって発動する。

このタイミングは例のプレイヤー以外じゃ受け切れまい！

「馬鹿な！？」

まるでフラグを自分で立てて回収したかのように、超必殺の中段中段下段上段下段中段キックを小気味よい音を立ててブロックしていかれる。

「これいっぱい練習したんだっ！お返しだよ！」

隙が出来てしまったボディに超必殺を繰り出されてしまう。

「くっ！」

やれるか、俺に！いや。やるしかねえ！

やられたことをやり返すように連続ブロックをしていく。だがパターンを把握し切れておらず最後の2発を浴びてしまう。だが、耐えた！まだ生きている！

「すごいよお兄ちゃん！どんだけ練習したの！？でも負けないんだからね！」

試合時間は残り15秒、互いに体力は残り2割ほど。一瞬のミスをした方が負けだ。短いはずの時間が研ぎ澄まされ、1秒間がすごく長く感じる。睨み合いが続き、残り6秒となった時ほぼ同時に動いた。

互いに接近し飛び上がるが、俺は長年の経験でわかってしまった。このままでは負ける。キャラのリーチが違うのだ。残りは3秒。ブロッキングを入れ一発当てればこちらの勝利だ。空中でタイミングを見誤らないよう慎重に…今だ！

ガッ！っといい音がしてブロッキングを成功させて下段蹴りを入れる。

もう一発！！！！

時間は残り0秒を指し示したがなんとか間に合ったらしく、体力を削りきっての勝利を掴むことができた。

「負けちゃった…負けちゃった…」

やばい！夢中になりすぎて練習でどうにかなるレベルじゃないレベルアップがバレてしまう！

「…ねえお兄ちゃん」

「な、なんだ？」

やばいやばいやばいやばいやばい！！

「すっごいよ！！どんだけ練習したの！？最後のブロッキングとか感動しちゃった！もう一回！エッチなことでもなんでも言うこと聞くからもう一回やろ！」

どうやら、バレなかったらしい。だが、エッチなことでもか……くっ、見た目美少女の誘惑に負けそうになる…だが、それ以上に俺は…。

「じゃあ後でお願いは決めようか、もう一度勝負だ！次も負けないからな！」

それ以上に俺は童貞をこじらしてでも。それでも、ゲーマーなんだ。

『かっこよくまとめてるけど、所詮ゲームだろ』

お前には分からねえんだよ！