ちぐはぐ

稀人

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一章 私立八意学園

エピローグ

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「そんなこともあったねー。いやー、蓮あの時はごめんね」


「あれは絵里でも絶対許さないからね!」


「私も怖かったんだよー!あんなに怖いなんて思わなかったんだって!」


時刻はお昼すぎ、私は絵里と二人で午後のティータイムと称して喫茶店に来ていた。


「それにしても、大きくなったねー。今何ヶ月?」


「8ヶ月目だよ、絵里ももうすぐこれくらいになるんじゃない?」


お互い大きくなったお腹を指しながら語り合う。

あの予約からもう6年が経った。私は大学へ行き、類君は父親の知り合いが経営してるという会社へ入り一足先に社会人になった。


中澤くんは大学を卒業し社会人一年生になると同時に絵里にプロポーズしこの度めでたくゴールインと相成った。


私と類君は私の卒業を待ち結婚して同居を始め一年で子供を授かった。

そう考えると中澤くんと絵里は少し早足気味だと思うが、まあ絵里ならなんとかするだろう。

「いやぁ、それにしても懐かしいねえ。よくよく考えたら若いっていうか、青春だね」


「青春ねえ。あの頃に戻りたいとは思わないけどなー」


今が幸せなら、別にあの頃に戻らなくてもいいんだ。そうやって年を取ってもずっと今が一番幸せだっていい続けられるような家庭を築いていくのが今の私の目標だった。


「まあそれは同意かなー。あ、そうそう私子供が育ったらやることが出来たから、よかったら蓮も類君と二人で手伝ってよ」


「やることー?また良からぬこと考えてー。もうお母さんになるんだから落ち着きなさいよ」


「良からぬことって…いやまあ確かに信用はないかもしれないけどさぁ!」

「じゃあなにするのよ?なにやるかわからなきゃうんとは言えないよ?」

「ん、探偵事務所」

「へ?」

「探偵だってばー。眠りのエリーとか?」


「眠って解決するわけないでしょ。でも、探偵事務所って本気?」


「これはお宅の旦那様が言ったことだよん。『絵里さんなら探偵事務所開いたら儲かりそうですよね』って。そしたらうちのも行けるとか言い出してさー。というわけで手伝ってねん」


いや、確かに絵里なら行けそうだけど…探偵事務所ってなにか資格とか…いや、絵里なら大丈夫か。なんとかするんだろうし。


「子供がちゃんと育ったらね」

「ん、言質とったからちゃんとお願いねー」

この数年後、絵里は本当に中澤探偵事務所を作り度々私と類君も手伝わされることになる。


結局今でも私はみんなに振り回されたりからかわれたりと変わらない関係のまま過ごしている。

きっとこれからも変わらないだろうけど、きっとこれからも幸せなままなんだろう。だって日に日に変わってく世界の中で変わらないものだってあるはずなんだから。


明日もきっと幸せな良い日になると思っている。これからも思っていく。
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