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怒れる少女、謝るおっさん

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 シロナに唐辛子をぶちまけられて半刻。ようやく視界が見えてきた。まだ痛むが。
 なにも顔目掛けて投げなくてもいいじゃないかと思うが、流石にこれは俺が悪いな。言っちゃダメな類の冗談だった。反省。

 ほら、シロナさんったら顔も合わせてくれないんですよ?

 …これはなんとかご機嫌を取らないといけないな。

「シロナ、悪かったよ。冗談にしても言いすぎた」

「………」

 おっと完全無視か。これは手強そうだな。

「ほら、仲直りしてリゴでも一緒に食べようぜ?」

 シロナがピクリと反応を示す。だが返事はない。

「悪かったって、そろそろ許してくれないか…俺も反省したから」

 少し離れたところに後ろを向いてシロナがいるため顔は見えない。それと、最近抱っこしたり肩車したり手を繋いだりと基本的にずっと近くにいたためこの少し離れてるのが妙に寂しい。

 うーむ、なにかいい方法はないか。しばらくそう考えているとシロナから声をかけて来てくれた。意地悪そうな顔で。

「……さん、お昼ご飯、食べる?」

「シ、シロナ?お昼ご飯の前に言った言葉もう一度聞いてもいいかな?ちょっとお父さん聞き間違えちゃったかもしれないんだが」

 シロナは意地悪そうな顔を強めてニヤニヤと俺を見る。そして決定的な一言を言った。

「どうしたの?おじさん・・・・、ご飯、食べないの?」

 おじさん?おじさん……、え?お父さんじゃなく?まさか、シロナに見限られた?

「ほら、早く食べよーよおじさん・・・・。早く次の街行かないと、シロナのこと、里親に出せないよ?」

「シロナ!俺が悪かった!だからお父さんを捨てないでくれーー!!」

 体が痛いことすら忘れシロナに飛び付いて、我ながら情けないが泣きついた。
俺はなんて酷いことをシロナに言ってしまったんだ。シロナから言われてこれなら俺から言われたシロナにはどれだけ苦しい一言だったんだ、ああ、少し前の俺を殴りたい。

「反省した?」

「ああ!」

「もう、言わない?」

「口が裂けても、拷問されたって言うもんか!」

「シロナのこと好き?」

「愛してる!!!だから捨てないでくれー!」

 そこには、少しご満悦な表情の少女と、情けなく縋り付くおっさんがいた。
側から見たらロリコンのおっさんが女の子に求愛してるように見えるだろう。もしわかっててもさぞ愉快だろう。
 だが俺は必死なんだ。シロナに捨てられたらと気が気じゃない。

「ずっと一緒?」

「死ぬまで離さん!」

「よしよし、いい子だねお父さん、ギュってしてもいいよ?」

「ありがとうシロナ、ありがとう!」

 …そこにはすっかり娘に手玉に取られる哀れな父親の姿があった。
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