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第十章
第125話 すけっと
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「へぇ、そうなんだ? 千代美ちゃん凄いねぇ、見直したよ!」
時は放課後。野々村から大豪院の勧誘(?)に成功した、との電話連絡を受けて歓喜する久子。
どうやら大豪院自身が南瓢箪岳駅近くに用事があるらしく、昼頃までならという条件で約束を取り付けたそうだ。
「まっっったく期待してなかったけど結構使えるわね、あのノッポ」
言葉は悪いが睦美も野々村に対しての評価点を上げたらしい。
「あとはマジボラの人集めですねぇ。つばめちゃんは無理として、蘭ちゃんの方には出来たらウタマロんをモールに派遣してもらえる様に言っておきますね。…後は綿子ちゃんと(御影)薫ちゃんに声を掛けないと…」
久子はそう言って携帯電話を再三操作する。後になって蘭からは「やってみます」と返事があったが、綿子と御影は呼び出しに反応が無かった。
「多分2人とも部活の最中だから出られないんでしょうねぇ」
久子の呟きを受けて睦美が『仕方ない』といった感じで重い腰を上げる。
「…じゃあ直接乗り込むわよ」
『どこへ』とは言うまでもない。女子レスリング同好会と女子バスケットボール部である。
スタスタと部室を後にした睦美を久子は楽しそうに追い掛けて行った。
⭐
「お?! ついに女子レスリング同好会に入部する気になったの土方久子?」
リングの上で綿子とスパーリングをしていた部長の炉縁 智子が嬉しそうに出迎える。
智子は以前、久子を勧誘しようと執拗にモーションを掛けていた事があるのだ。
「ううん、違うの。また綿子ちゃんを貸してもらいに来たんだよ」
久子もまた一方的な要求をあっけらかんと行う。それを聞いた智子は露骨に嫌そうな顔を返した。
「いやいや、あたしらも明後日に試合を控えてるから無理。そっちに綿子を貸し出して、万が一怪我でもされたら堪んないからね」
と取り付く島も無い。綿子本人も『ゴメンネ』という意味なのか、両手を合わせ申し訳無さそうな顔を睦美らに向ける。
「じゃあ前回みたいにヒザ子とアンタが勝負しようか? あの汀とか言う女は今居ないんだろ? 思いっきりやると良いよ」
睦美が智子を煽る様に口上を切る。これで智子に火が点けばしめたもの、前回の戦いでは本気の智子に対して久子はまだ余力を残していた。今回もドサクサ紛れで綿子をレンタルしようと画策したのだが、
「あのね、話聞いてた? うちら明後日が試合なのよ。だから今日明日で無茶な事はしたくないの、お分かりる?」
智子も冷静かつ、変な日本語のおまけ付きで返答してきた。前回の暴走を汀に叱責され、少し慎重な態度を心掛ける様になったらしい。
しかし、そこまで言って智子は顎を指を当てて「ふむ…」と考え始めた。
「でもそうね… 土方久子、貴女が日曜日にうちの試合の助っ人で来てくれるなら考えても良いわ。試合と言っても実質あたしらの『能力者バトル』だから、まだ綿子をソロで戦わせるのは心配だったのよ」
この言葉は智子の後ろに控えていた綿子をも驚かせた。「ちょっと先輩…」と抗議の声を上げようとしたが、智子の手に遮られてしまった。
「土方の強さはアンタも知ってるでしょう? アンタの振動技が強力なのは分かってるけど、逆に何度も使えるモンじゃないって事も知ってるからね…?」
綿子は保有魔力こそ高いものの滑舌の悪さから呪文の連続詠唱がネックとなり、戦力として確実性に欠けたポジションに置かれていた。
綿子自身のフィジカルも一般の女子高生より高いものではあったが、智子ら能力者とがっぷり四つで戦える程では無い。
もし魔力を使い切ってしまった場合、フラフラの状態では試合に勝てる訳が無いのは自明の理だ。
「だから今回は最終戦のタッグマッチであたしと組んで戦おう。タッグならアンタを… ううん、『お互い』をフォロー出来るしね!」
一見思慮の足りないイメージのある智子だが、ちゃんと今の綿子を見据えた上で判断して物を言っている。反論しようとした綿子であったが、理屈の面では完璧にやり込められてしまっており、言葉らしい言葉を出す事も出来なかった。
結果、不満ながらも「分かりました…」と答える綿子。
「分かってると思うけど、あくまで助っ人なんだから出しゃばって余計な事しちゃダメだからね? 怪我なんて尚更だからね?」
「…ハイ」
と、女子レスリング同好会の方は話が付いた模様である。
マジボラ側は久子が睦美に『どうします?』という視線を送り、睦美が指でOKマークを作る事であっさりと承認された。これで交渉成立である。
次のターゲットである御影を求めて、女子バスケットボール部へと向かう睦美と久子は、道中で多数の女子生徒を侍らせて談笑をしている御影を発見した。
部活の練習時間は既に始まっているのだが、御影は女の子らとの関係構築の方が重要らしい。
「ちょうど良かったわ。御影、アンタ明日ちょっと付き合いなさい」
慇懃無礼に御影に近づき、内容も言わずに要件だけを述べる睦美。
御影の取り巻きの女子生徒らは『何この人?』という非難じみた目で睦美を見るが、睦美は下々の視線などに頓着したりはしない。
「あーっと、先輩方ごめんなさい… 明日はこの娘達とデートの約束があってですね…」
先程の綿子同様に、手を合わせ申し訳無さそうな顔をする御影に睦美は一言、
「そしたらデートとやらをしてても良いけど、南瓢箪岳駅近くのショッピングモールに来なさい。良いわね?」
それだけ言い放つと呆気にとられる御影らに背を向け、答えも聞かずに颯爽とその場を後にした。
時は放課後。野々村から大豪院の勧誘(?)に成功した、との電話連絡を受けて歓喜する久子。
どうやら大豪院自身が南瓢箪岳駅近くに用事があるらしく、昼頃までならという条件で約束を取り付けたそうだ。
「まっっったく期待してなかったけど結構使えるわね、あのノッポ」
言葉は悪いが睦美も野々村に対しての評価点を上げたらしい。
「あとはマジボラの人集めですねぇ。つばめちゃんは無理として、蘭ちゃんの方には出来たらウタマロんをモールに派遣してもらえる様に言っておきますね。…後は綿子ちゃんと(御影)薫ちゃんに声を掛けないと…」
久子はそう言って携帯電話を再三操作する。後になって蘭からは「やってみます」と返事があったが、綿子と御影は呼び出しに反応が無かった。
「多分2人とも部活の最中だから出られないんでしょうねぇ」
久子の呟きを受けて睦美が『仕方ない』といった感じで重い腰を上げる。
「…じゃあ直接乗り込むわよ」
『どこへ』とは言うまでもない。女子レスリング同好会と女子バスケットボール部である。
スタスタと部室を後にした睦美を久子は楽しそうに追い掛けて行った。
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「お?! ついに女子レスリング同好会に入部する気になったの土方久子?」
リングの上で綿子とスパーリングをしていた部長の炉縁 智子が嬉しそうに出迎える。
智子は以前、久子を勧誘しようと執拗にモーションを掛けていた事があるのだ。
「ううん、違うの。また綿子ちゃんを貸してもらいに来たんだよ」
久子もまた一方的な要求をあっけらかんと行う。それを聞いた智子は露骨に嫌そうな顔を返した。
「いやいや、あたしらも明後日に試合を控えてるから無理。そっちに綿子を貸し出して、万が一怪我でもされたら堪んないからね」
と取り付く島も無い。綿子本人も『ゴメンネ』という意味なのか、両手を合わせ申し訳無さそうな顔を睦美らに向ける。
「じゃあ前回みたいにヒザ子とアンタが勝負しようか? あの汀とか言う女は今居ないんだろ? 思いっきりやると良いよ」
睦美が智子を煽る様に口上を切る。これで智子に火が点けばしめたもの、前回の戦いでは本気の智子に対して久子はまだ余力を残していた。今回もドサクサ紛れで綿子をレンタルしようと画策したのだが、
「あのね、話聞いてた? うちら明後日が試合なのよ。だから今日明日で無茶な事はしたくないの、お分かりる?」
智子も冷静かつ、変な日本語のおまけ付きで返答してきた。前回の暴走を汀に叱責され、少し慎重な態度を心掛ける様になったらしい。
しかし、そこまで言って智子は顎を指を当てて「ふむ…」と考え始めた。
「でもそうね… 土方久子、貴女が日曜日にうちの試合の助っ人で来てくれるなら考えても良いわ。試合と言っても実質あたしらの『能力者バトル』だから、まだ綿子をソロで戦わせるのは心配だったのよ」
この言葉は智子の後ろに控えていた綿子をも驚かせた。「ちょっと先輩…」と抗議の声を上げようとしたが、智子の手に遮られてしまった。
「土方の強さはアンタも知ってるでしょう? アンタの振動技が強力なのは分かってるけど、逆に何度も使えるモンじゃないって事も知ってるからね…?」
綿子は保有魔力こそ高いものの滑舌の悪さから呪文の連続詠唱がネックとなり、戦力として確実性に欠けたポジションに置かれていた。
綿子自身のフィジカルも一般の女子高生より高いものではあったが、智子ら能力者とがっぷり四つで戦える程では無い。
もし魔力を使い切ってしまった場合、フラフラの状態では試合に勝てる訳が無いのは自明の理だ。
「だから今回は最終戦のタッグマッチであたしと組んで戦おう。タッグならアンタを… ううん、『お互い』をフォロー出来るしね!」
一見思慮の足りないイメージのある智子だが、ちゃんと今の綿子を見据えた上で判断して物を言っている。反論しようとした綿子であったが、理屈の面では完璧にやり込められてしまっており、言葉らしい言葉を出す事も出来なかった。
結果、不満ながらも「分かりました…」と答える綿子。
「分かってると思うけど、あくまで助っ人なんだから出しゃばって余計な事しちゃダメだからね? 怪我なんて尚更だからね?」
「…ハイ」
と、女子レスリング同好会の方は話が付いた模様である。
マジボラ側は久子が睦美に『どうします?』という視線を送り、睦美が指でOKマークを作る事であっさりと承認された。これで交渉成立である。
次のターゲットである御影を求めて、女子バスケットボール部へと向かう睦美と久子は、道中で多数の女子生徒を侍らせて談笑をしている御影を発見した。
部活の練習時間は既に始まっているのだが、御影は女の子らとの関係構築の方が重要らしい。
「ちょうど良かったわ。御影、アンタ明日ちょっと付き合いなさい」
慇懃無礼に御影に近づき、内容も言わずに要件だけを述べる睦美。
御影の取り巻きの女子生徒らは『何この人?』という非難じみた目で睦美を見るが、睦美は下々の視線などに頓着したりはしない。
「あーっと、先輩方ごめんなさい… 明日はこの娘達とデートの約束があってですね…」
先程の綿子同様に、手を合わせ申し訳無さそうな顔をする御影に睦美は一言、
「そしたらデートとやらをしてても良いけど、南瓢箪岳駅近くのショッピングモールに来なさい。良いわね?」
それだけ言い放つと呆気にとられる御影らに背を向け、答えも聞かずに颯爽とその場を後にした。
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