115 / 209
第十章
第115話 じょうほうこうかん
しおりを挟む
「はぁ、はぁ、ふぅ… やっと追いつきましたよ。何かあったんですか…?」
つばめが走り去って行った睦美ら3人を補足したのは職員室の前であった。
睦美らはアンドレに用事があって職員室へ訪れたのだが、職員会議中という事で締め出しを食らっていた所だったのだ。
「あら、つばめじゃない? アンタこそ部活サボって何してんのよ?」
もちろんつばめは意図的にサボった訳では無い。つばめが部室に顔を出した時には既に部室は無人だったのだ。
その状況をして「学外に出ていった睦美らをヒント無しで探せ」というミッションは、つばめには受け入れ難い物であった感は否めないだろう。
「え? あの… その…」
つばめとしては上記の様に言い返してやりたいところなのだが、睦美相手に下手に言い訳したら余計に拗らせる事が分かっているので、言葉を選びつつ何とか反論しようと頭を動かしていたのだ。
「睦美さま、私たちが勝手に出て行っちゃったんだからつばめちゃんを責めたら可哀想ですよぉ?」
「そうですね。代わりに芹沢さんには色々と情報提供をお願いしましょう」
久子と野々村が揃って睦美を諌める。
「…そうね。アンドレはまだ時間が掛かりそうだし、一度部室に戻るわよ」
つばめを(無理矢理)加えた一行は、再びマジボラ部室へと移動して行った。会議が終わり次第アンドレも合流するだろう。
☆
「え? 大豪院くんについてですか? そりゃまた何で…?」
部室でつばめを囲んで大豪院談義が始まる。女子4人で集まって男子の話をしているのだが、恋バナめいたトキメキや明るさは微塵も見いだせないでいた。
睦美らは先程の路地裏で見かけた大豪院の立ち回り(?)をつばめに聞かせる。
つばめもつばめで、登校時に遭遇した話を睦美らに聞かせる。
睦美らの見てきた話も大概であったが、つばめのそれは睦美らの予想を大きく上回っており、大豪院に対する警戒感をより強くさせた。
「え? じゃああの暴走車ってたまたまじゃなくて今日の転校生をずっと狙ってたって事?」
「はい恐らく… 彼が何者に何故狙われているのか? とか、なぜわたしが関わらないといけないのか? とかはさっぱり分かりませんけど…」
「さっきのチンピラが関係しているかどうかは分かりませんが、大豪院氏が恒常的に何者かに狙われているのは確かみたいですね…」
野々村の言葉に全員が頭を抱える。冷静に考えれば現段階でマジボラが大豪院にそこまで入れこむ必要は無いのだが、睦美らの感じた違和感とつばめの感じている危機感とが相俟って、半ば義務感の様な感覚をこの場の全員が共有していた。
そこで睦美が何かを思い出した様に手を打つ。
「あ、そうだ。デカイのは一旦置いといて。つばめ、アンタ今度の土曜日は空けときなさいよ? 例のシン悪川興業が動き出すってネタを仕入れたんだから」
急な話に驚いたのはつばめである。土曜日は沖田の練習試合があるのだ。既に差し入れる弁当の飾り付けを考えていた状態で、睦美のこの話は死刑宣告に等しい。
「え? 土曜日はちょっと用事が… て言うか何で敵の動きが事前に分かるんですか…?」
今度は逆に睦美が動揺する。蘭経由の情報である、とつばめに知られるのはいささか都合が悪い。
「え、えーと… それはその、アレよ。前回戦った時にあの丸っこいのに盗聴器を仕掛けたのよ!」
「…? でも前回戦ったのは蘭ちゃんで、先輩たちは後から来ましたよね…?」
首を傾げるつばめ。ここは果敢に「異議あり!」と攻め込んで睦美の矛盾を崩していくターンであろう。
今まで睦美によって散々酷い目に遭ってきたのだ。つばめの逆襲の時は今をおいて他には無……。
「♤✮✻✾𓀏」
睦美の呟きと共につばめの動きが止まる。完全に時間が止まった様に身動き一つ、瞬き一つすらせずに停止している。
睦美の『固定化』の魔法だ。
「…ヤバイわね。どうしようヒザ子?」
自らの軽率な失言を悔いて久子に救援を求める睦美。
「うーん… 千代美ちゃんが『何かそういうスパイ装置を作った』的な設定で良いんじゃないですかぁ?」
「そんな雑な設定で良いんですか?! それに私はガジェットを作るようなキャラじゃないですよ…?」
久子の思いつきにツッコミを入れる野々村。睦美の場当たり主義は昔からなので、久子も要領を得ておりアドリブも効くようになっている。
「雑でも何でも今を誤魔化せれば良いのよ。つばめバカだからどうせ明日には忘れてるわ。とりあえずあと10秒くらいは魔法が保つから、その間にシナリオを考えて…」
睦美の口は驚愕の表情と共にそこで止まった。
「…流石にわたしだって黙ってませんよ? あと今日はそれとは別に言いたい事があって来たんですからね!」
睦美の予想を遥かに超えた早い時間で、つばめが『固定』の魔法から復活したのだ。
つばめが走り去って行った睦美ら3人を補足したのは職員室の前であった。
睦美らはアンドレに用事があって職員室へ訪れたのだが、職員会議中という事で締め出しを食らっていた所だったのだ。
「あら、つばめじゃない? アンタこそ部活サボって何してんのよ?」
もちろんつばめは意図的にサボった訳では無い。つばめが部室に顔を出した時には既に部室は無人だったのだ。
その状況をして「学外に出ていった睦美らをヒント無しで探せ」というミッションは、つばめには受け入れ難い物であった感は否めないだろう。
「え? あの… その…」
つばめとしては上記の様に言い返してやりたいところなのだが、睦美相手に下手に言い訳したら余計に拗らせる事が分かっているので、言葉を選びつつ何とか反論しようと頭を動かしていたのだ。
「睦美さま、私たちが勝手に出て行っちゃったんだからつばめちゃんを責めたら可哀想ですよぉ?」
「そうですね。代わりに芹沢さんには色々と情報提供をお願いしましょう」
久子と野々村が揃って睦美を諌める。
「…そうね。アンドレはまだ時間が掛かりそうだし、一度部室に戻るわよ」
つばめを(無理矢理)加えた一行は、再びマジボラ部室へと移動して行った。会議が終わり次第アンドレも合流するだろう。
☆
「え? 大豪院くんについてですか? そりゃまた何で…?」
部室でつばめを囲んで大豪院談義が始まる。女子4人で集まって男子の話をしているのだが、恋バナめいたトキメキや明るさは微塵も見いだせないでいた。
睦美らは先程の路地裏で見かけた大豪院の立ち回り(?)をつばめに聞かせる。
つばめもつばめで、登校時に遭遇した話を睦美らに聞かせる。
睦美らの見てきた話も大概であったが、つばめのそれは睦美らの予想を大きく上回っており、大豪院に対する警戒感をより強くさせた。
「え? じゃああの暴走車ってたまたまじゃなくて今日の転校生をずっと狙ってたって事?」
「はい恐らく… 彼が何者に何故狙われているのか? とか、なぜわたしが関わらないといけないのか? とかはさっぱり分かりませんけど…」
「さっきのチンピラが関係しているかどうかは分かりませんが、大豪院氏が恒常的に何者かに狙われているのは確かみたいですね…」
野々村の言葉に全員が頭を抱える。冷静に考えれば現段階でマジボラが大豪院にそこまで入れこむ必要は無いのだが、睦美らの感じた違和感とつばめの感じている危機感とが相俟って、半ば義務感の様な感覚をこの場の全員が共有していた。
そこで睦美が何かを思い出した様に手を打つ。
「あ、そうだ。デカイのは一旦置いといて。つばめ、アンタ今度の土曜日は空けときなさいよ? 例のシン悪川興業が動き出すってネタを仕入れたんだから」
急な話に驚いたのはつばめである。土曜日は沖田の練習試合があるのだ。既に差し入れる弁当の飾り付けを考えていた状態で、睦美のこの話は死刑宣告に等しい。
「え? 土曜日はちょっと用事が… て言うか何で敵の動きが事前に分かるんですか…?」
今度は逆に睦美が動揺する。蘭経由の情報である、とつばめに知られるのはいささか都合が悪い。
「え、えーと… それはその、アレよ。前回戦った時にあの丸っこいのに盗聴器を仕掛けたのよ!」
「…? でも前回戦ったのは蘭ちゃんで、先輩たちは後から来ましたよね…?」
首を傾げるつばめ。ここは果敢に「異議あり!」と攻め込んで睦美の矛盾を崩していくターンであろう。
今まで睦美によって散々酷い目に遭ってきたのだ。つばめの逆襲の時は今をおいて他には無……。
「♤✮✻✾𓀏」
睦美の呟きと共につばめの動きが止まる。完全に時間が止まった様に身動き一つ、瞬き一つすらせずに停止している。
睦美の『固定化』の魔法だ。
「…ヤバイわね。どうしようヒザ子?」
自らの軽率な失言を悔いて久子に救援を求める睦美。
「うーん… 千代美ちゃんが『何かそういうスパイ装置を作った』的な設定で良いんじゃないですかぁ?」
「そんな雑な設定で良いんですか?! それに私はガジェットを作るようなキャラじゃないですよ…?」
久子の思いつきにツッコミを入れる野々村。睦美の場当たり主義は昔からなので、久子も要領を得ておりアドリブも効くようになっている。
「雑でも何でも今を誤魔化せれば良いのよ。つばめバカだからどうせ明日には忘れてるわ。とりあえずあと10秒くらいは魔法が保つから、その間にシナリオを考えて…」
睦美の口は驚愕の表情と共にそこで止まった。
「…流石にわたしだって黙ってませんよ? あと今日はそれとは別に言いたい事があって来たんですからね!」
睦美の予想を遥かに超えた早い時間で、つばめが『固定』の魔法から復活したのだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした
鈴木竜一
ファンタジー
健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。
しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。
魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ!
【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】
※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる
月風レイ
ファンタジー
あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。
周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。
そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。
それは突如現れた一枚の手紙だった。
その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。
どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。
突如、異世界の大草原に召喚される。
元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる