71 / 209
第六章
第71話 けいこく
しおりを挟む
不二子に手招きされて保健室にやって来た睦美と久子。
「どうでも良いけどアンタもずいぶんババ臭いアクションする様になったわね。何あの手招き」
睦美が開口一番で『オバサン臭い手招き』と、不二子のモノマネをしながら挑発する。
「ムカつく。せっかく人が良いネタを教えて上げようとしてんのに、何その態度?」
「そうやって仲良しの2人を見ていると、昔みたいでほんわかしますねぇ」
「「仲良くないわよ!」」
睦美の悪態、キレる不二子、宥める(?)久子の、お約束の挨拶コンボが決まってようやく本題に入る事になる。
「…本当は口止めされてたんだけど、あんた達だけならまだしも芹沢さん達も関係してきそうだから、とりあえず釘だけでも刺しておこうかな? って思ってね」
「?」
「???」
不二子の用事は何らかの警告らしい。
「実は今学校に警察の人が来てるのよ。それも潜入捜査って形で。さっき壁新聞見ていた2人が居たでしょ? あれがそうみたい」
「へぇ、アイツ中学生かと思ったら警官なの? どうりで悪い目つきしてたはずだわ…」
睦美の呟きに『お前が言うな』と心でツッコむ不二子。
「昨日のサソリ騒動を始め、最近変な事件がよく起こってるでしょ? アンドレ先生に聞いたけど、その変な事件全てにマジボラが関わっているらしいじゃない。警察としても黙って見ている訳にもいかなくなったみたいよ? ねぇ、あんた達私の知らない所で何やってんの?」
「別にアタシ達は平常運転よ。ただ最近『シン悪川興業』とかいう奴らが暴れている現場にやたら出くわすから、エナジー集めにボランティアしているだけ。別に悪い事をしている訳じゃないから、警察に来られても特に何とも思わないわね」
「あとサービスで怪人退治もしてますねぇ」
久子の言葉に身を乗り出す不二子。
「ねぇその『怪人』てのがよく分かんないんだけど? コスプレとかじゃなくて本当の怪人なの? 噂の魔王軍てやつなの? マジボラで対処出来るの? 芹沢さんや新しく入った子達を危険に晒してないでしょうね?」
「いっぺんに聞かないでよ。危険に晒すどころか、昨日その怪人を撃退したのは噂の新人よ。アタシらも到着が遅れて見れたのは最後のシーンだけだったけど、とんでもないパワーの持ち主だったわ」
睦美の説明に目と口を丸くする不二子。とても現実の話とは思えない。
「その新人って例の『増田さん』でしょ? 交通事故にあったっていう…」
「その割には部室に来た時にはピンピンしてたけどねぇ。まぁ『何か』カラクリがあるのは間違いないだろうね…」
睦美が何かを企む様な不遜な顔で微笑む。
不二子も一度咳払いをして居住まいを正す。
「何にしても学内で警察が動いているうちは、派手な事は控えて欲しいのよ。壁新聞は私も見たけど、『怪我人の治療、怪人の撃退』は一見英雄的行為だけど、見方を変えれば『無免許の医療行為、暴力事件』となって犯罪行為を問われる事にもなりかねないわ。それに『高校15年生』がいる事が世間にバレたら、そっちの方が話題になるんじゃないの?」
「…うっさいわ」
不二子の挑発に一言だけ言い返す睦美。
「とにかく芹沢さん達には『特に』厳しく言っておいて。魔法を使いこなせる様になり始めた今ぐらいが一番『派手にやりたい』時期だから余計に心配なのよ…」
話は終わりと認識した睦美は不二子に背を向ける。部屋を去り際に、
「分かったよ。アタシもあの新人には確かめたい事があるからさ…」
とだけ告げて扉を閉めた。
昼休み。
校庭脇のベンチに座りながら、約束通りにランチタイムとなったつばめと蘭。
周りに人が居るとマジボラの話題を出しにくいので、この場所とあいなった次第である。
「でも昨日の蘭ちゃん本当カッコ良かったよねぇ。範囲攻撃で凍らせたり、片手で敵のマスコットキャラを持ち上げたり… わたしもああいう活躍してみたい!」
「あ… あはは…」
興奮して熱の上がるつばめに対して、本来見られたくないシーンてんこ盛りだった蘭は冷や汗ダラダラでもあった。
特にウタマロんを持ち上げた所はだ。蘭の魔法能力は『凍結』であって、中身の凛を含めて重さ100kgを超えるウタマロんを片手で持ち上げるゴリラパワーではない。
「あ、あれは持ち上げた様に見えるけど、ちゃんとあいつの下に氷の土台を作って載せてるだけだから…」
もちろん大嘘である。つばめが蘭の戦いを最後のフロントスープレックスまで見ていたならば、蘭のパワーが魔法による紛い物では無いと思い至るかも知れないが、蘭にとって幸いな事に、生憎つばめはつばめで怪我人の相手が忙しく『凍結』の術を使ったあたりまでしか見れていなかったのだ。
「そうなんだぁ? とにかくめちゃめちゃカッコ良かったから感動しちゃってさぁ」
疑う事を知らないつばめのバカ… 素直さが心に痛い蘭としては何とか話題を逸らしたい所でもある。
話題を変えるにしても半端な話題では、すぐに元の道に戻ってしまうだろう。ここでガッツリ進路変更を決める鉄板のネタとして蘭が思いついたのが、
「そ、そう言えば最近気になる男の子を見つけたんだよね…」
恋バナであった。
「どうでも良いけどアンタもずいぶんババ臭いアクションする様になったわね。何あの手招き」
睦美が開口一番で『オバサン臭い手招き』と、不二子のモノマネをしながら挑発する。
「ムカつく。せっかく人が良いネタを教えて上げようとしてんのに、何その態度?」
「そうやって仲良しの2人を見ていると、昔みたいでほんわかしますねぇ」
「「仲良くないわよ!」」
睦美の悪態、キレる不二子、宥める(?)久子の、お約束の挨拶コンボが決まってようやく本題に入る事になる。
「…本当は口止めされてたんだけど、あんた達だけならまだしも芹沢さん達も関係してきそうだから、とりあえず釘だけでも刺しておこうかな? って思ってね」
「?」
「???」
不二子の用事は何らかの警告らしい。
「実は今学校に警察の人が来てるのよ。それも潜入捜査って形で。さっき壁新聞見ていた2人が居たでしょ? あれがそうみたい」
「へぇ、アイツ中学生かと思ったら警官なの? どうりで悪い目つきしてたはずだわ…」
睦美の呟きに『お前が言うな』と心でツッコむ不二子。
「昨日のサソリ騒動を始め、最近変な事件がよく起こってるでしょ? アンドレ先生に聞いたけど、その変な事件全てにマジボラが関わっているらしいじゃない。警察としても黙って見ている訳にもいかなくなったみたいよ? ねぇ、あんた達私の知らない所で何やってんの?」
「別にアタシ達は平常運転よ。ただ最近『シン悪川興業』とかいう奴らが暴れている現場にやたら出くわすから、エナジー集めにボランティアしているだけ。別に悪い事をしている訳じゃないから、警察に来られても特に何とも思わないわね」
「あとサービスで怪人退治もしてますねぇ」
久子の言葉に身を乗り出す不二子。
「ねぇその『怪人』てのがよく分かんないんだけど? コスプレとかじゃなくて本当の怪人なの? 噂の魔王軍てやつなの? マジボラで対処出来るの? 芹沢さんや新しく入った子達を危険に晒してないでしょうね?」
「いっぺんに聞かないでよ。危険に晒すどころか、昨日その怪人を撃退したのは噂の新人よ。アタシらも到着が遅れて見れたのは最後のシーンだけだったけど、とんでもないパワーの持ち主だったわ」
睦美の説明に目と口を丸くする不二子。とても現実の話とは思えない。
「その新人って例の『増田さん』でしょ? 交通事故にあったっていう…」
「その割には部室に来た時にはピンピンしてたけどねぇ。まぁ『何か』カラクリがあるのは間違いないだろうね…」
睦美が何かを企む様な不遜な顔で微笑む。
不二子も一度咳払いをして居住まいを正す。
「何にしても学内で警察が動いているうちは、派手な事は控えて欲しいのよ。壁新聞は私も見たけど、『怪我人の治療、怪人の撃退』は一見英雄的行為だけど、見方を変えれば『無免許の医療行為、暴力事件』となって犯罪行為を問われる事にもなりかねないわ。それに『高校15年生』がいる事が世間にバレたら、そっちの方が話題になるんじゃないの?」
「…うっさいわ」
不二子の挑発に一言だけ言い返す睦美。
「とにかく芹沢さん達には『特に』厳しく言っておいて。魔法を使いこなせる様になり始めた今ぐらいが一番『派手にやりたい』時期だから余計に心配なのよ…」
話は終わりと認識した睦美は不二子に背を向ける。部屋を去り際に、
「分かったよ。アタシもあの新人には確かめたい事があるからさ…」
とだけ告げて扉を閉めた。
昼休み。
校庭脇のベンチに座りながら、約束通りにランチタイムとなったつばめと蘭。
周りに人が居るとマジボラの話題を出しにくいので、この場所とあいなった次第である。
「でも昨日の蘭ちゃん本当カッコ良かったよねぇ。範囲攻撃で凍らせたり、片手で敵のマスコットキャラを持ち上げたり… わたしもああいう活躍してみたい!」
「あ… あはは…」
興奮して熱の上がるつばめに対して、本来見られたくないシーンてんこ盛りだった蘭は冷や汗ダラダラでもあった。
特にウタマロんを持ち上げた所はだ。蘭の魔法能力は『凍結』であって、中身の凛を含めて重さ100kgを超えるウタマロんを片手で持ち上げるゴリラパワーではない。
「あ、あれは持ち上げた様に見えるけど、ちゃんとあいつの下に氷の土台を作って載せてるだけだから…」
もちろん大嘘である。つばめが蘭の戦いを最後のフロントスープレックスまで見ていたならば、蘭のパワーが魔法による紛い物では無いと思い至るかも知れないが、蘭にとって幸いな事に、生憎つばめはつばめで怪我人の相手が忙しく『凍結』の術を使ったあたりまでしか見れていなかったのだ。
「そうなんだぁ? とにかくめちゃめちゃカッコ良かったから感動しちゃってさぁ」
疑う事を知らないつばめのバカ… 素直さが心に痛い蘭としては何とか話題を逸らしたい所でもある。
話題を変えるにしても半端な話題では、すぐに元の道に戻ってしまうだろう。ここでガッツリ進路変更を決める鉄板のネタとして蘭が思いついたのが、
「そ、そう言えば最近気になる男の子を見つけたんだよね…」
恋バナであった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる