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第六章
第69話 まどまい
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朝、瓢箪岳高校の校門前。お馴染みレンガ色の制服を着た2人の女生徒が立っていた。とうの昔に始業のチャイムは鳴らされており、生徒であれば遅刻は確定である。
「うぉぉっ! 先輩めっちゃ可愛いいじゃないっすか! 萌え萌えですよ萌え萌え!」
ガングロ茶髪に露出が増える様に色々と短く改造された制服を着た少女が、同じく規定通りの高校の制服を着た、背中まであるロングヘアで身長140cmを少し越える位の小柄な少女を囃したてる。
先輩と呼ばれた少女は羞恥に顔を赤らめつつも、強靭な自制心によってわざと険しい顔を作って見せた。
「全く… 何が悲しくてこの歳で女子高生の振りしなきゃなんないのよ…? アンタは良いわよ角倉。まだ20歳だから全然違和感無いけど、私はそろそろ結婚を考えないといけない歳なのにこんなコスプレなんて…」
わなわなと震えながら頭を抱える小柄な少女。そんな彼女にギャル少女が慰めるかのようにポンと肩に手を置く。
「でもムトー先輩が『署内で一番ロリロリしてるから適任だ』って、長谷川警部が言ってたっスよ?」
「あんのクソ親父、いつかぶん殴ってやろうかしら…」
奇妙な会話を繰り広げる2人の少女。いや実は2人とも少女ではない。
昨今頻発する怪人と魔法少女による擾乱事件の捜査の一環として、ここ瓢箪岳高校に潜入捜査官として赴任してきた婦人警官なのである。
ギャル少女の方は角倉 円巡査、20歳。警察学校卒業後、警邏課の新人として街の治安維持に貢献してきた(?)。
警察よりもむしろ補導される側に近い外見と頭の中身を持ち、今回の捜査にも、事件解決よりも潜入捜査官に選ばれた事に興奮しまくっている様にも見受けられる。
一方のロリ少女は武藤 舞子巡査長、27歳。小柄な体で顔つきも幼く、一見中学生の様にも見えるロリバ… もとい若々しい女性である。
こう見えて捜査四課(暴力団対策)の刑事であり、とても外見からは予想出来ない程の肝っ玉と腕っぷしを誇る女傑でもある。
今回の潜入捜査において、その外見的にはとても若々しい2人の女性に白羽の矢が立ったのは、そう不思議な事でも無かったと言えるだろう。
一応彼女達の事は学校内において校長、教頭、各学年主任、保健教諭のみに通知、一般教師及び生徒達には秘匿とされ、事情を聞いた者も固い箝口令を敷かれる事となった。
「…それにしてもこの広い学校で何の手掛かりもなく『魔法少女を探せ』とか、本部も頭がおかしいとしか思えな… って角倉?」
横を歩いていたはずの相棒がいつの間にか消えている。慌てて周りを探す武藤。角倉は後方で一般女子生徒と付け爪について談笑していた。
「でしょぉ? やっぱここのお店のぉ…」
武藤に後ろから襟首を掴まれて引きずられる角倉。武藤の真意を察して談笑中の女子生徒らに引きずられながらも「じゃあねぇ~」と別れの挨拶をする。
「ちょっとアンタ真面目にやってよ。そんなんじゃいつまで経っても元の仕事に戻れないわよ?!」
「えー? 私はずっとJKやってても良いかも。先輩も一緒に青春しましょうよぉ~」
まるで緊張感の無い相棒に再度頭を抱える武藤。組んでから30分と経っていないが、既にコンビ解消したくてたまらなくなっていた。
「でもホラ、あーし達は秘密の捜査で来ているんだから、ムトー先輩もそんな刑事オーラ全開のムッツリ顔じゃすぐ正体バレちゃいますよぉ?」
「む…」
角倉の言い分にも理はある。あまり警察としても潜入捜査をしました、などと報告できる風潮では無いのだ。こっそり穏便に済ませられればそれに越した事は無いのである。
かと言って相棒の様にヘラヘラと高校生ごっこをしながら、遊んでいる訳にも行かない。
「とにかくあーしらは『同級生』って触れ込みで潜入してるんだから、もっとフレンドリーに行きましょうよ。あーしの事は『まどか』って呼んでくれていいッス。あーしもムトー先輩の事は『まいこ』って…」
そこまで言って武藤からの視線に殺意を感じてまどかは口を閉じる。
「あ、えーと… 『ムトー』って呼ぶッス…」
「呼び方なんてどうでも良いけど、遊びに来たんじゃない事だけは覚えておいて」
「了解ッス、まいこ」
「…あ?」
「あ、怒ってる? 今『呼び方なんてどうでも良いけど』って言ったじゃないスかぁ? アレは嘘だったんスか…?」
「めんどくさ… んじゃあ良いわよ『まいこ』で。私、家族以外から下の名前で呼ばれるの慣れてないのよ…」
「そしたら今日からあーしらは『まどか』と『まいこ』のマドマイコンビッスね!」
『なにマドマイって。言いづら…』
それ以上は敢えて突っ込まなかった武藤だった。
とりあえず学内を当て所なく彷徨う2人。やはり捜査の基本は足である。
そんな2人に天の配財か、早速大きな手掛かりを掴む事になる。
玄関内の下駄箱、その脇に作られた各種掲示物を展示するスペースがある。そこの一角、新聞部発行の壁新聞『ヒョータンタイムズ』に武藤はとても興味深い一文を発見したのだ。
『大量発生したサソリから学校を救った魔法少女たち。実はこの学校の生徒だった?!』
※作者注
作中「婦人警官」と言う言葉が出てきますが、現在は公式に「女性警察官」で統一されており「婦人警官」はほとんど死語となっております。
しかしながら僕が「女性警察官」と言う響きが好きではないので、作中では敢えて「婦人警官」で統一しますので悪しからず。
また、全国の警察では採用にあたって身長や体重の『下限』が定められています。
作中の武藤の体格ですとまず間違いなく採用されないのですが、そこはフィクションと割り切ってお楽しみ頂ければ幸いです。
「うぉぉっ! 先輩めっちゃ可愛いいじゃないっすか! 萌え萌えですよ萌え萌え!」
ガングロ茶髪に露出が増える様に色々と短く改造された制服を着た少女が、同じく規定通りの高校の制服を着た、背中まであるロングヘアで身長140cmを少し越える位の小柄な少女を囃したてる。
先輩と呼ばれた少女は羞恥に顔を赤らめつつも、強靭な自制心によってわざと険しい顔を作って見せた。
「全く… 何が悲しくてこの歳で女子高生の振りしなきゃなんないのよ…? アンタは良いわよ角倉。まだ20歳だから全然違和感無いけど、私はそろそろ結婚を考えないといけない歳なのにこんなコスプレなんて…」
わなわなと震えながら頭を抱える小柄な少女。そんな彼女にギャル少女が慰めるかのようにポンと肩に手を置く。
「でもムトー先輩が『署内で一番ロリロリしてるから適任だ』って、長谷川警部が言ってたっスよ?」
「あんのクソ親父、いつかぶん殴ってやろうかしら…」
奇妙な会話を繰り広げる2人の少女。いや実は2人とも少女ではない。
昨今頻発する怪人と魔法少女による擾乱事件の捜査の一環として、ここ瓢箪岳高校に潜入捜査官として赴任してきた婦人警官なのである。
ギャル少女の方は角倉 円巡査、20歳。警察学校卒業後、警邏課の新人として街の治安維持に貢献してきた(?)。
警察よりもむしろ補導される側に近い外見と頭の中身を持ち、今回の捜査にも、事件解決よりも潜入捜査官に選ばれた事に興奮しまくっている様にも見受けられる。
一方のロリ少女は武藤 舞子巡査長、27歳。小柄な体で顔つきも幼く、一見中学生の様にも見えるロリバ… もとい若々しい女性である。
こう見えて捜査四課(暴力団対策)の刑事であり、とても外見からは予想出来ない程の肝っ玉と腕っぷしを誇る女傑でもある。
今回の潜入捜査において、その外見的にはとても若々しい2人の女性に白羽の矢が立ったのは、そう不思議な事でも無かったと言えるだろう。
一応彼女達の事は学校内において校長、教頭、各学年主任、保健教諭のみに通知、一般教師及び生徒達には秘匿とされ、事情を聞いた者も固い箝口令を敷かれる事となった。
「…それにしてもこの広い学校で何の手掛かりもなく『魔法少女を探せ』とか、本部も頭がおかしいとしか思えな… って角倉?」
横を歩いていたはずの相棒がいつの間にか消えている。慌てて周りを探す武藤。角倉は後方で一般女子生徒と付け爪について談笑していた。
「でしょぉ? やっぱここのお店のぉ…」
武藤に後ろから襟首を掴まれて引きずられる角倉。武藤の真意を察して談笑中の女子生徒らに引きずられながらも「じゃあねぇ~」と別れの挨拶をする。
「ちょっとアンタ真面目にやってよ。そんなんじゃいつまで経っても元の仕事に戻れないわよ?!」
「えー? 私はずっとJKやってても良いかも。先輩も一緒に青春しましょうよぉ~」
まるで緊張感の無い相棒に再度頭を抱える武藤。組んでから30分と経っていないが、既にコンビ解消したくてたまらなくなっていた。
「でもホラ、あーし達は秘密の捜査で来ているんだから、ムトー先輩もそんな刑事オーラ全開のムッツリ顔じゃすぐ正体バレちゃいますよぉ?」
「む…」
角倉の言い分にも理はある。あまり警察としても潜入捜査をしました、などと報告できる風潮では無いのだ。こっそり穏便に済ませられればそれに越した事は無いのである。
かと言って相棒の様にヘラヘラと高校生ごっこをしながら、遊んでいる訳にも行かない。
「とにかくあーしらは『同級生』って触れ込みで潜入してるんだから、もっとフレンドリーに行きましょうよ。あーしの事は『まどか』って呼んでくれていいッス。あーしもムトー先輩の事は『まいこ』って…」
そこまで言って武藤からの視線に殺意を感じてまどかは口を閉じる。
「あ、えーと… 『ムトー』って呼ぶッス…」
「呼び方なんてどうでも良いけど、遊びに来たんじゃない事だけは覚えておいて」
「了解ッス、まいこ」
「…あ?」
「あ、怒ってる? 今『呼び方なんてどうでも良いけど』って言ったじゃないスかぁ? アレは嘘だったんスか…?」
「めんどくさ… んじゃあ良いわよ『まいこ』で。私、家族以外から下の名前で呼ばれるの慣れてないのよ…」
「そしたら今日からあーしらは『まどか』と『まいこ』のマドマイコンビッスね!」
『なにマドマイって。言いづら…』
それ以上は敢えて突っ込まなかった武藤だった。
とりあえず学内を当て所なく彷徨う2人。やはり捜査の基本は足である。
そんな2人に天の配財か、早速大きな手掛かりを掴む事になる。
玄関内の下駄箱、その脇に作られた各種掲示物を展示するスペースがある。そこの一角、新聞部発行の壁新聞『ヒョータンタイムズ』に武藤はとても興味深い一文を発見したのだ。
『大量発生したサソリから学校を救った魔法少女たち。実はこの学校の生徒だった?!』
※作者注
作中「婦人警官」と言う言葉が出てきますが、現在は公式に「女性警察官」で統一されており「婦人警官」はほとんど死語となっております。
しかしながら僕が「女性警察官」と言う響きが好きではないので、作中では敢えて「婦人警官」で統一しますので悪しからず。
また、全国の警察では採用にあたって身長や体重の『下限』が定められています。
作中の武藤の体格ですとまず間違いなく採用されないのですが、そこはフィクションと割り切ってお楽しみ頂ければ幸いです。
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