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第一章
嵐の予感
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~鈴代視点
「輝甲兵がひとりでに起動して、幽炉まで使った挙句、『異世界から攫われてきた』などと話しかけてきた」
…どう考えても正気の沙汰ではない。私は頭がおかしくなってしまったのだろうか?
子供の頃から輝甲兵の操者となるべく訓練を積んで来た。学業もオシャレも全てを投げ打って人類の為に虫を狩って来た。
ようやくトップエースの田中中尉の背中が見えてきたというのに、このまま精神病院に入れられて両親や弟にも会えなくなって……。
絶対に嫌だ……。
かと言って「何も異常はありませんでした」とも言えない。
コクピットから降りた私に長谷川大尉が近寄ってくる。
「どうだった? 何か分かったか?」
「それが…」
喉がつかえたかの様に言葉が出せない。嘘や誤魔化しを言うつもりは無い。正直に答えて輝甲兵を降ろされるのが一番怖い。
「ふむ… あった事をそのまま話せ」
大尉には見ぬかれている。私は目を閉じ心を決めた。
「はい… そのままですね…」
私は大尉に事の全てを報告した。
「…自分でも何を言ってるのか分からないのですが、全て本当の事です。まさか輝甲兵が喋るなんて…」
「ふむ…」
長谷川大尉が腕を組んで考えこむ。私の話の信憑性を彼の中で吟味しているのだろう。
仮に私が大尉の立場なら、私に休養と医者の診療にかかる事を勧める。最近オーバーワーク気味だったのは確かだから、少しリフレッシュしてこいとか何とか言うだろう。
「なぁ鈴代、お前は最近働き過ぎだし…」
やっぱりかよ。
「大尉殿も私がおかしくなったとお考えですか? 私はもう輝甲兵には乗れないのでしょうか?」
「お、落ち着け鈴代。ちょっと2人で話そう…」
そう言って大尉は私を格納庫の外へ誘う。
私は後ろの3071の方を向き直って『静かにしててよ』との意味を込めて口元に人差し指を立ててみせた。どうせ私の事を見てるんでしょ? 絶対に騒ぎを起こさないでね。
「ここなら誰も居ないな」
大尉に連れられて来たのは基地内にある訓練用のグラウンドだ。周りには誰も居ないし、盗聴器の類も無いだろう。他人に聞かれたくない話をするには良い環境かも知れない。
「実はな鈴代、『輝甲兵が喋る』ってのは割と有名な話なんだよ」
「えっ? そうなんですか? でも私は聞いた事が有りませんけど…?」
そこで大尉は言いづらそうに頭をポリポリと掻く。
「あぁ、士気に関わるんで隊長クラス以上にしか聞かされてないし、口止めもされている。何せ他人が検証出来ないから集団幻覚扱いなんだよな」
思い切り狂人扱いされる覚悟でいた私は、予想外の展開に少し驚いていた。
「そんな事が…」
「俺も過去の部下に何人か『輝甲兵の声を聞いた』って奴が居てな… まぁ輝甲兵との接続は消耗が激しいし、神経接続の際に生じるバグか、戦闘の極限状態で錯乱しているんだろうって思ってたよ。さっきまではな…」
さっきまで、と言う事は私の話は信じてもらえたのだろうか?
「だが俺が今まで話を聞いてきた輝甲兵の声ってのは無意味な呟きばかりで、今回のお前の様に明確な会話をしたって言うのは初めてだ」
「無意味な呟き、ですか…」
「ああ、『出してくれ』とか『死にたい』とか『帰らせてくれ』とか言う声が接続時に頭に聞こえてきたらしい。言葉の内容が内容だけに『士気に関わる』ってのも分かるだろ?」
…確かにそうだ。でも仮に3071の言葉が本当なら、他にも攫われて監禁(?)されている、あるいはされていた人達がたくさんいる、と言う事になる。
軍の上層部はそれを知っているのだろうか? 知らないなら問題だし、知っているなら大問題だ。
「今回の私の案件は何か理由があるのでしょうか…?」
大尉は再び腕を組んで考えこむ。
「さっぱり分からん。ただ俺達が普段使っている『幽炉』っていう謎の装置に大きく関係してそうなのは間違いなさそうだけどな…」
『幽炉』… そう、正に謎の装置だ。輝甲兵が軍に正式採用されたのはおよそ50年前、虫との戦いが始まったのとほぼ同時期だったらしい。
それ以前は通常のジェット機関の戦闘機を使っていたそうだ。
現在でも物資輸送等で航空機は現役だが、前線ではほぼ根絶されている。それほど輝甲兵の兵器としてのスペックは高かったのだ。
超音速で飛行でき、稼動音がほぼ無音で、人体と同様の機動力、運動性を持ち近接格闘戦にも対応出来る、発着陸に滑走路を必要とせず、大口径の火器を携行でき、損傷を自己修復する。
更に操作は神経接続により、操者が自分の体を動かす様に機体を動かせる。航空機の様に何百、何千時間という講習や訓練の時間が、操者の適正にも依るが数十から百時間程度に短縮されたのも、宇宙怪獣との人類規模の戦いにおいて戦力拡充に有効だった。
輝甲兵と言う存在自体が謎に包まれているのもまた事実だ。『スペクトナイト』と『幽炉』と言う2つの新発明が世界を変えたのは確かだが、それらの正体について知っている人間は本当に少ない。
我々が分かっているのは「幽炉は小型なのにとんでもないパワーを持っている動力源」、「スペクトナイトは動力に繋げる事で、堅牢かつ自己修復機能を持ち、航空力学を無視して空を飛べる金属」と言う『利点』と、
「幽炉の内部補充は不可能、電池として使い切ったら廃棄(メーカー戻し必須)しかない」、「幽炉関係のメンテナンスは、基地に派遣されているメーカーの技術士にしか出来ない(許されない)」「幽炉の動力でしかスペクトナイトは反応しない」、「スペクトナイトがキラキラ発光する機構は解明されておらず、作戦中の隠密性に欠ける」と言う『難点』がある。
まぁ最後の隠密性云々は現在潜入等が必要な特殊工作に輝甲兵が使われていない為に問題にはなっていない。私も個人的にはあのキラキラは幻想的で大好きだ。
「『幽炉にはその名の通り幽霊が入っている』、なんて新人を驚かせる為の冗談かと思ってましたけど、強《あなが》ち笑って済まされる問題とも思えなくなりましたね」
「ふむ、いいか鈴代、この事は誰にも何にも言うな、これは命令だ。後は俺に任せろ。なんなら本当に休暇を取ってもいい。お前の3071はメーカーに返送して再調整してもらおう」
「では彼の… 3071の中の人格はどうなるのですか? それに彼はどういう手段を採ったのか、自力で『幽炉』を起動させられます。もし彼が移送に気付いて暴れだしたりしたら…」
「それなんだよなぁ、話が出来る奴なら俺が説得してみるか… 鈴代、『任せろ』って言った直後で申し訳ないが少し協力してもらえるか? これは命令じゃない、お願いだ」
気まずそうに頭を下げる大尉。申し訳ないのは私の方だと言うのに。
「もちろんですよ大尉。第一認証キーである私が居ないでどうやって彼と話すんですか?」
わざと意地悪っぽく言ってみる。大尉はその辺の部下の無礼には寛大な人だと知っているから。
大尉はイタズラが見つかった子供の様な笑顔を見せる。
「まあそうなんだけどな。なら『善は急げ』だ、格納庫に行くぞ」
「はいっ!」
私は大尉の後について走りだした。
「長谷川だ。これより鈴代少尉と共に3071の起動試験を行う。少尉の手を離れて暴れ出す可能性も否定できない。整備員諸君は離れていてくれたまえ」
この基地には1個大隊60機程の輝甲兵部隊が駐屯している。長谷川大尉は第1中隊の隊長で、大隊長は基地司令の鴻上大佐が便宜上兼任していて実際には空席だから、機動部隊の実質的な隊長は長谷川大尉になる。
その現場のトップの言葉に、整備員達は誰も疑う素振りも見せず71から離れて行く。
私はみたび71の操縦席に座る。ハッチを開けたままで接続するのは安全面から本来は禁止されているが、今は多分に非常時だ。長谷川大尉のお墨付きなので私も遠慮なく71を起動させ接続した。
《よぉ、お帰り。どんな感じ?》
…『もしかして全部私の勘違いだったかもなぁ』と言う淡い期待をぶち壊すかの様に緊張感の無い男の声が頭に響く。
「まずは大人しく待っててくれた事に感謝するわ。今私の隣に上司の長谷川大尉が居るの。私が通訳するから彼と話してもらえるかしら? 貴方は外の声は聞こえているのよね?」
《ああ、見えてるし聞こえてる。でもその大尉さんはこの状況をどうにか出来んの?》
『彼をこの輝甲兵から解放する』と言う意味では答えは『No』だ。しかし、彼が本当に民間人だった場合は彼を戦いの場に置く事は出来ないし、我々軍人には彼を守る義務が生じる。
その結果が彼にとって好ましい物かどうかは次元の違う話だ。今は襲来する虫達を撃退、いずれは駆逐するのが人類の急務だ。それ以外の些事は後回しにされるべきだ。例え意識を持った輝甲兵がバラバラに分解されようとも、博物館に飾られようとも、だ。
「とりあえず貴方の言葉を私が口に出して大尉に伝えるわ。それでコミュニケーションは取れるはずよ」
彼の質問に私は敢えて答えなかった。大尉との交渉が始まる前に彼を絶望させる言葉を言うべきではないから…。
「大尉殿、準備完了です。どうぞ」
ここからの私はただの通訳だ。私情を挟む事は許されない。
「3071の中の彼、聞こえるかな? 私は第24輝甲大隊の長谷川と言う者だ。本当に輝甲兵の中にいるのかい?」
『あ、どうも。俺は宮本って言います。この状況になるまでは一応学生やってました』
その言葉に彼が答える。一字一句違えずにそのまま話せ、と大尉からは言われているので、慣れない男言葉で話してみる。
その後の会話は、先程宮本某が私に話した事を改めて大尉に話させる。彼にとっては二度手間ではあるが、途中で齟齬があれば私は気づける。嘘の供述をしていないかどうかも調べられる訳だ。
…差し当たって現状までの宮本某の二度の説明に矛盾は無かった。そして彼をここに導いた『真柄』と言う人物には私も大尉も心当たりが無かった。
「ではここからが本題なのだが、君を輝甲兵の中から救い出すのは我々軍の人間には不可能だ。従って君は『縞原重工』という輝甲兵のメーカーの工場なり研究所に送られて、精査された後に然るべき処置が取られるだろう」
『えっと、その然るべき処置って具体的に何ですか? この世界から帰してもらえるって事ですか? それとも存在ごと抹消《デリート》されるって意味ですか? もし後者なら俺ここで暴れますよ?』
これをそのまま大尉に言うのは躊躇《ためら》われたが、変に脚色すると大惨事になりかねないので仕方なくそのまま伝える。
「…正直、処置の内容は私にも分からない。縞原の連中の考えなど想像もつかんからね。個人的には前者である事を祈ってはいるがね」
暫く無言になる宮本氏。考えが纏まらない様だ。無理も無い、未だに半信半疑ではあるが、彼の言う通りに有無を言わさず機械の中に拉致されたら、私なら正気では居られないだろう。
《…なぁ鈴代ちゃん、俺どうしたら良いかなぁ?》
不意に彼の言葉が不安げ声が頭に響いた。しかし相談されても困る。
「申し訳ありませんが小官には分かりかねます。少なくとも縞原に行けば虫に殺される事も無く、輝甲兵から出られる可能性があるでしょう。ここに居たのでは貴方は永遠に機体に閉じ込められたまま、戦闘で死ぬ可能性が増えるだけです」
《そっか、そうだよな…》
正直なところ、こんな気味の悪い機械とはおサラバして、新しい機体を受領したいのだが、この基地に8機しか無いせっかくの新型の乗り心地と栄誉を手放すのは惜しい。
今からまたあの重い24式に乗り換えるとなると気持ちまで重くなってくる。いや24式は決して悪い機体ではない。30式が軽快すぎてもう戻れない、と言う意味だ。
しかしまぁ、どうしたら良いのか聞きたいのはこちらの方だ……。
「鈴代、どうした?」
大尉に声を掛けられる。宮本氏とは思考だけで話が出来るが、声に出さなければ大尉には伝わらない。
「はっ、申し訳ありません大尉殿。宮本氏より『どうすべきか?』との個人的な相談を受けたので答えておりました」
「…それも話せ」
私は今のやり取りを大尉に話す。話し終えるタイミングを見計らったのか、宮本氏が話し掛けてきた。
《なぁ、どうせ帰れないなら俺このままここに居ちゃダメかなぁ?》
は?
私には予想外の返答だったが、それを伝えた大尉はニヤリと笑った。
「ふむ… 実はその言葉を待っていたんだよ。世界は違っても君は勇敢な日本男児であると信じていたからね。しかしどういう心境の変化だい?」
《もともと俺はロボットに乗って人類を救う為にここに来た訳だし、シマバラとかいう場所に行ったら俺は多分殺されるか モルモットにされるだけだろう。それならいっその事、夢と割りきってここで働いてやろうと思ったのさ。アンタも鈴代ちゃんも悪い人じゃ無さそうだしな》
ねぇ、その『鈴代ちゃん』っていうのやめて欲しいんだけど? しかし今はそんな事で口を挟める雰囲気では無い。
「とりあえず現地招集の三等兵と言う扱いになるが、君を歓迎するよ。ダーリェン基地にようこそ、3071、いや宮本三等兵。君には鈴代少尉専属で任務の補佐活動を行ってもらうよ。君の世話は鈴代少尉に任せるから仲良くな。必要な物があったら善処するから少尉に言ってくれ給え」
とんでもない事を勝手に決めた長谷川大尉は「鈴代、降りていいぞ」と言い捨てて機体から出て行った。慌てて私も機体を降りて後を追う。
「ちょっと大尉! どうするんですかアレは?! 司令に無断であんな事勝手に…」
大尉は無言のまま親指でグラウンドを指し示す。またあそこに来い、と言う事だろう。
「…とまぁ、そういう訳だ、仲良くしてやってくれ。お前にはあいつの監視任務も与えられるから、そっちも宜しくな」
さらっと仕事を増やしてくれる大尉、待って欲しい。
「何が『という訳だ』ですか? 全然説明になってないですよ! しかも何か全部私に丸投げっぽくなってませんか?!」
「ちゃんとフォローはしてやるって。とりあえずあいつが短気を起こさないよう見張ってろ」
「…それでどうするんです?」
「あいつが役に立つならそのまま使うし、役立たずならこっそりメーカー送りにするだけさ」
「それを私が世話するんですか? 大尉の30式と交換して下さいよ」
「機体は操者の個別認証されているから、それは最初から無理な相談だ。分かってるだろ?」
それはそうなんですけど……。
「登録の解除をするにも縞原の技術士がやらないと無理だし、理由も無くそんな事は出来ない。理由を聞かれたら何て答えるつもりだ?」
それは『中に幽霊がいるから…』って言ったら怒られるだろうなぁ……。
「それともおまえの30式を渡辺に譲って、また24式に戻るか? 今からあのドン亀に戻れるのか?」
うぅ、戻れないし戻りたくありません……。
「現実問題、今お前の30式に抜けられるのは戦力として厳しい。副長の渡辺を差し置いて中隊に2機しかない30式を託されたお前にはそれだけの責任もあるんだ」
「はい…」
「これは『頼み』であると共に『命令』でもある。宮本とうまくやってくれ」
それを言われると返す言葉も無い。どの道軍人である私には『命令』に逆らう事など出来はしないのだから……。
敬礼。
「了解しました大尉殿! 鈴代少尉、これより3071との友好構築任務に就きます!」
「当てつけがましい言い方するなよ。んじゃ鈴代少尉には単騎での偵察任務を命じる。周りは森しか無いけどちょっと奴とデートしてこい。新しい情報、例えば奴の元居た世界の情報とかを入手したら逐一俺に知らせるんだぞ?」
はぁ、これからどうなっちゃうんだろう…?
「輝甲兵がひとりでに起動して、幽炉まで使った挙句、『異世界から攫われてきた』などと話しかけてきた」
…どう考えても正気の沙汰ではない。私は頭がおかしくなってしまったのだろうか?
子供の頃から輝甲兵の操者となるべく訓練を積んで来た。学業もオシャレも全てを投げ打って人類の為に虫を狩って来た。
ようやくトップエースの田中中尉の背中が見えてきたというのに、このまま精神病院に入れられて両親や弟にも会えなくなって……。
絶対に嫌だ……。
かと言って「何も異常はありませんでした」とも言えない。
コクピットから降りた私に長谷川大尉が近寄ってくる。
「どうだった? 何か分かったか?」
「それが…」
喉がつかえたかの様に言葉が出せない。嘘や誤魔化しを言うつもりは無い。正直に答えて輝甲兵を降ろされるのが一番怖い。
「ふむ… あった事をそのまま話せ」
大尉には見ぬかれている。私は目を閉じ心を決めた。
「はい… そのままですね…」
私は大尉に事の全てを報告した。
「…自分でも何を言ってるのか分からないのですが、全て本当の事です。まさか輝甲兵が喋るなんて…」
「ふむ…」
長谷川大尉が腕を組んで考えこむ。私の話の信憑性を彼の中で吟味しているのだろう。
仮に私が大尉の立場なら、私に休養と医者の診療にかかる事を勧める。最近オーバーワーク気味だったのは確かだから、少しリフレッシュしてこいとか何とか言うだろう。
「なぁ鈴代、お前は最近働き過ぎだし…」
やっぱりかよ。
「大尉殿も私がおかしくなったとお考えですか? 私はもう輝甲兵には乗れないのでしょうか?」
「お、落ち着け鈴代。ちょっと2人で話そう…」
そう言って大尉は私を格納庫の外へ誘う。
私は後ろの3071の方を向き直って『静かにしててよ』との意味を込めて口元に人差し指を立ててみせた。どうせ私の事を見てるんでしょ? 絶対に騒ぎを起こさないでね。
「ここなら誰も居ないな」
大尉に連れられて来たのは基地内にある訓練用のグラウンドだ。周りには誰も居ないし、盗聴器の類も無いだろう。他人に聞かれたくない話をするには良い環境かも知れない。
「実はな鈴代、『輝甲兵が喋る』ってのは割と有名な話なんだよ」
「えっ? そうなんですか? でも私は聞いた事が有りませんけど…?」
そこで大尉は言いづらそうに頭をポリポリと掻く。
「あぁ、士気に関わるんで隊長クラス以上にしか聞かされてないし、口止めもされている。何せ他人が検証出来ないから集団幻覚扱いなんだよな」
思い切り狂人扱いされる覚悟でいた私は、予想外の展開に少し驚いていた。
「そんな事が…」
「俺も過去の部下に何人か『輝甲兵の声を聞いた』って奴が居てな… まぁ輝甲兵との接続は消耗が激しいし、神経接続の際に生じるバグか、戦闘の極限状態で錯乱しているんだろうって思ってたよ。さっきまではな…」
さっきまで、と言う事は私の話は信じてもらえたのだろうか?
「だが俺が今まで話を聞いてきた輝甲兵の声ってのは無意味な呟きばかりで、今回のお前の様に明確な会話をしたって言うのは初めてだ」
「無意味な呟き、ですか…」
「ああ、『出してくれ』とか『死にたい』とか『帰らせてくれ』とか言う声が接続時に頭に聞こえてきたらしい。言葉の内容が内容だけに『士気に関わる』ってのも分かるだろ?」
…確かにそうだ。でも仮に3071の言葉が本当なら、他にも攫われて監禁(?)されている、あるいはされていた人達がたくさんいる、と言う事になる。
軍の上層部はそれを知っているのだろうか? 知らないなら問題だし、知っているなら大問題だ。
「今回の私の案件は何か理由があるのでしょうか…?」
大尉は再び腕を組んで考えこむ。
「さっぱり分からん。ただ俺達が普段使っている『幽炉』っていう謎の装置に大きく関係してそうなのは間違いなさそうだけどな…」
『幽炉』… そう、正に謎の装置だ。輝甲兵が軍に正式採用されたのはおよそ50年前、虫との戦いが始まったのとほぼ同時期だったらしい。
それ以前は通常のジェット機関の戦闘機を使っていたそうだ。
現在でも物資輸送等で航空機は現役だが、前線ではほぼ根絶されている。それほど輝甲兵の兵器としてのスペックは高かったのだ。
超音速で飛行でき、稼動音がほぼ無音で、人体と同様の機動力、運動性を持ち近接格闘戦にも対応出来る、発着陸に滑走路を必要とせず、大口径の火器を携行でき、損傷を自己修復する。
更に操作は神経接続により、操者が自分の体を動かす様に機体を動かせる。航空機の様に何百、何千時間という講習や訓練の時間が、操者の適正にも依るが数十から百時間程度に短縮されたのも、宇宙怪獣との人類規模の戦いにおいて戦力拡充に有効だった。
輝甲兵と言う存在自体が謎に包まれているのもまた事実だ。『スペクトナイト』と『幽炉』と言う2つの新発明が世界を変えたのは確かだが、それらの正体について知っている人間は本当に少ない。
我々が分かっているのは「幽炉は小型なのにとんでもないパワーを持っている動力源」、「スペクトナイトは動力に繋げる事で、堅牢かつ自己修復機能を持ち、航空力学を無視して空を飛べる金属」と言う『利点』と、
「幽炉の内部補充は不可能、電池として使い切ったら廃棄(メーカー戻し必須)しかない」、「幽炉関係のメンテナンスは、基地に派遣されているメーカーの技術士にしか出来ない(許されない)」「幽炉の動力でしかスペクトナイトは反応しない」、「スペクトナイトがキラキラ発光する機構は解明されておらず、作戦中の隠密性に欠ける」と言う『難点』がある。
まぁ最後の隠密性云々は現在潜入等が必要な特殊工作に輝甲兵が使われていない為に問題にはなっていない。私も個人的にはあのキラキラは幻想的で大好きだ。
「『幽炉にはその名の通り幽霊が入っている』、なんて新人を驚かせる為の冗談かと思ってましたけど、強《あなが》ち笑って済まされる問題とも思えなくなりましたね」
「ふむ、いいか鈴代、この事は誰にも何にも言うな、これは命令だ。後は俺に任せろ。なんなら本当に休暇を取ってもいい。お前の3071はメーカーに返送して再調整してもらおう」
「では彼の… 3071の中の人格はどうなるのですか? それに彼はどういう手段を採ったのか、自力で『幽炉』を起動させられます。もし彼が移送に気付いて暴れだしたりしたら…」
「それなんだよなぁ、話が出来る奴なら俺が説得してみるか… 鈴代、『任せろ』って言った直後で申し訳ないが少し協力してもらえるか? これは命令じゃない、お願いだ」
気まずそうに頭を下げる大尉。申し訳ないのは私の方だと言うのに。
「もちろんですよ大尉。第一認証キーである私が居ないでどうやって彼と話すんですか?」
わざと意地悪っぽく言ってみる。大尉はその辺の部下の無礼には寛大な人だと知っているから。
大尉はイタズラが見つかった子供の様な笑顔を見せる。
「まあそうなんだけどな。なら『善は急げ』だ、格納庫に行くぞ」
「はいっ!」
私は大尉の後について走りだした。
「長谷川だ。これより鈴代少尉と共に3071の起動試験を行う。少尉の手を離れて暴れ出す可能性も否定できない。整備員諸君は離れていてくれたまえ」
この基地には1個大隊60機程の輝甲兵部隊が駐屯している。長谷川大尉は第1中隊の隊長で、大隊長は基地司令の鴻上大佐が便宜上兼任していて実際には空席だから、機動部隊の実質的な隊長は長谷川大尉になる。
その現場のトップの言葉に、整備員達は誰も疑う素振りも見せず71から離れて行く。
私はみたび71の操縦席に座る。ハッチを開けたままで接続するのは安全面から本来は禁止されているが、今は多分に非常時だ。長谷川大尉のお墨付きなので私も遠慮なく71を起動させ接続した。
《よぉ、お帰り。どんな感じ?》
…『もしかして全部私の勘違いだったかもなぁ』と言う淡い期待をぶち壊すかの様に緊張感の無い男の声が頭に響く。
「まずは大人しく待っててくれた事に感謝するわ。今私の隣に上司の長谷川大尉が居るの。私が通訳するから彼と話してもらえるかしら? 貴方は外の声は聞こえているのよね?」
《ああ、見えてるし聞こえてる。でもその大尉さんはこの状況をどうにか出来んの?》
『彼をこの輝甲兵から解放する』と言う意味では答えは『No』だ。しかし、彼が本当に民間人だった場合は彼を戦いの場に置く事は出来ないし、我々軍人には彼を守る義務が生じる。
その結果が彼にとって好ましい物かどうかは次元の違う話だ。今は襲来する虫達を撃退、いずれは駆逐するのが人類の急務だ。それ以外の些事は後回しにされるべきだ。例え意識を持った輝甲兵がバラバラに分解されようとも、博物館に飾られようとも、だ。
「とりあえず貴方の言葉を私が口に出して大尉に伝えるわ。それでコミュニケーションは取れるはずよ」
彼の質問に私は敢えて答えなかった。大尉との交渉が始まる前に彼を絶望させる言葉を言うべきではないから…。
「大尉殿、準備完了です。どうぞ」
ここからの私はただの通訳だ。私情を挟む事は許されない。
「3071の中の彼、聞こえるかな? 私は第24輝甲大隊の長谷川と言う者だ。本当に輝甲兵の中にいるのかい?」
『あ、どうも。俺は宮本って言います。この状況になるまでは一応学生やってました』
その言葉に彼が答える。一字一句違えずにそのまま話せ、と大尉からは言われているので、慣れない男言葉で話してみる。
その後の会話は、先程宮本某が私に話した事を改めて大尉に話させる。彼にとっては二度手間ではあるが、途中で齟齬があれば私は気づける。嘘の供述をしていないかどうかも調べられる訳だ。
…差し当たって現状までの宮本某の二度の説明に矛盾は無かった。そして彼をここに導いた『真柄』と言う人物には私も大尉も心当たりが無かった。
「ではここからが本題なのだが、君を輝甲兵の中から救い出すのは我々軍の人間には不可能だ。従って君は『縞原重工』という輝甲兵のメーカーの工場なり研究所に送られて、精査された後に然るべき処置が取られるだろう」
『えっと、その然るべき処置って具体的に何ですか? この世界から帰してもらえるって事ですか? それとも存在ごと抹消《デリート》されるって意味ですか? もし後者なら俺ここで暴れますよ?』
これをそのまま大尉に言うのは躊躇《ためら》われたが、変に脚色すると大惨事になりかねないので仕方なくそのまま伝える。
「…正直、処置の内容は私にも分からない。縞原の連中の考えなど想像もつかんからね。個人的には前者である事を祈ってはいるがね」
暫く無言になる宮本氏。考えが纏まらない様だ。無理も無い、未だに半信半疑ではあるが、彼の言う通りに有無を言わさず機械の中に拉致されたら、私なら正気では居られないだろう。
《…なぁ鈴代ちゃん、俺どうしたら良いかなぁ?》
不意に彼の言葉が不安げ声が頭に響いた。しかし相談されても困る。
「申し訳ありませんが小官には分かりかねます。少なくとも縞原に行けば虫に殺される事も無く、輝甲兵から出られる可能性があるでしょう。ここに居たのでは貴方は永遠に機体に閉じ込められたまま、戦闘で死ぬ可能性が増えるだけです」
《そっか、そうだよな…》
正直なところ、こんな気味の悪い機械とはおサラバして、新しい機体を受領したいのだが、この基地に8機しか無いせっかくの新型の乗り心地と栄誉を手放すのは惜しい。
今からまたあの重い24式に乗り換えるとなると気持ちまで重くなってくる。いや24式は決して悪い機体ではない。30式が軽快すぎてもう戻れない、と言う意味だ。
しかしまぁ、どうしたら良いのか聞きたいのはこちらの方だ……。
「鈴代、どうした?」
大尉に声を掛けられる。宮本氏とは思考だけで話が出来るが、声に出さなければ大尉には伝わらない。
「はっ、申し訳ありません大尉殿。宮本氏より『どうすべきか?』との個人的な相談を受けたので答えておりました」
「…それも話せ」
私は今のやり取りを大尉に話す。話し終えるタイミングを見計らったのか、宮本氏が話し掛けてきた。
《なぁ、どうせ帰れないなら俺このままここに居ちゃダメかなぁ?》
は?
私には予想外の返答だったが、それを伝えた大尉はニヤリと笑った。
「ふむ… 実はその言葉を待っていたんだよ。世界は違っても君は勇敢な日本男児であると信じていたからね。しかしどういう心境の変化だい?」
《もともと俺はロボットに乗って人類を救う為にここに来た訳だし、シマバラとかいう場所に行ったら俺は多分殺されるか モルモットにされるだけだろう。それならいっその事、夢と割りきってここで働いてやろうと思ったのさ。アンタも鈴代ちゃんも悪い人じゃ無さそうだしな》
ねぇ、その『鈴代ちゃん』っていうのやめて欲しいんだけど? しかし今はそんな事で口を挟める雰囲気では無い。
「とりあえず現地招集の三等兵と言う扱いになるが、君を歓迎するよ。ダーリェン基地にようこそ、3071、いや宮本三等兵。君には鈴代少尉専属で任務の補佐活動を行ってもらうよ。君の世話は鈴代少尉に任せるから仲良くな。必要な物があったら善処するから少尉に言ってくれ給え」
とんでもない事を勝手に決めた長谷川大尉は「鈴代、降りていいぞ」と言い捨てて機体から出て行った。慌てて私も機体を降りて後を追う。
「ちょっと大尉! どうするんですかアレは?! 司令に無断であんな事勝手に…」
大尉は無言のまま親指でグラウンドを指し示す。またあそこに来い、と言う事だろう。
「…とまぁ、そういう訳だ、仲良くしてやってくれ。お前にはあいつの監視任務も与えられるから、そっちも宜しくな」
さらっと仕事を増やしてくれる大尉、待って欲しい。
「何が『という訳だ』ですか? 全然説明になってないですよ! しかも何か全部私に丸投げっぽくなってませんか?!」
「ちゃんとフォローはしてやるって。とりあえずあいつが短気を起こさないよう見張ってろ」
「…それでどうするんです?」
「あいつが役に立つならそのまま使うし、役立たずならこっそりメーカー送りにするだけさ」
「それを私が世話するんですか? 大尉の30式と交換して下さいよ」
「機体は操者の個別認証されているから、それは最初から無理な相談だ。分かってるだろ?」
それはそうなんですけど……。
「登録の解除をするにも縞原の技術士がやらないと無理だし、理由も無くそんな事は出来ない。理由を聞かれたら何て答えるつもりだ?」
それは『中に幽霊がいるから…』って言ったら怒られるだろうなぁ……。
「それともおまえの30式を渡辺に譲って、また24式に戻るか? 今からあのドン亀に戻れるのか?」
うぅ、戻れないし戻りたくありません……。
「現実問題、今お前の30式に抜けられるのは戦力として厳しい。副長の渡辺を差し置いて中隊に2機しかない30式を託されたお前にはそれだけの責任もあるんだ」
「はい…」
「これは『頼み』であると共に『命令』でもある。宮本とうまくやってくれ」
それを言われると返す言葉も無い。どの道軍人である私には『命令』に逆らう事など出来はしないのだから……。
敬礼。
「了解しました大尉殿! 鈴代少尉、これより3071との友好構築任務に就きます!」
「当てつけがましい言い方するなよ。んじゃ鈴代少尉には単騎での偵察任務を命じる。周りは森しか無いけどちょっと奴とデートしてこい。新しい情報、例えば奴の元居た世界の情報とかを入手したら逐一俺に知らせるんだぞ?」
はぁ、これからどうなっちゃうんだろう…?
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未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!
No One's Glory -もうひとりの物語-
はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `)
よろしくお願い申し上げます
男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。
医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。
男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく……
手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。
採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。
各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した……
申し訳ございませんm(_ _)m
不定期投稿になります。
本業多忙のため、しばらく連載休止します。
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』
橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。
それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。
彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。
実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。
一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。
一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。
嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。
そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。
誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
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この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
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そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
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アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
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特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
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鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
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第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
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朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
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