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「ーー無事かっ! イルメラ嬢‼︎」

 そう大声で叫びながら、こちらに走り寄るエドアルド様。

「エドアルド様‼︎」

 そしてそんなエドアルド様の登場に、安心したような満面の笑みを浮かべ走り寄っていくレベッカ。

 ーー……その方、わたくしの名前を呼んでましたけど……それでよろしいの……?

「きゃっ!」

 当たり前のようにエドアルド様の護衛に阻まれ、レベッカはうちの庭に転がることになったのだった。

「イルメラ嬢ーーっ! ーーどうか、怒りを納めてほしい……」

 そんなレベッカのことなどチラリとも気にしなかったエドアルド様が私の元にかけよってくる。
 そして私から漏れ出る魔力に気がついたのか、ギョッと目を剥いたエドアルド様だったが刺激をしないようにと、そっと伺うように言った。

 ーーレベッカのさっきの言葉は、おそらくデタラメなんでしょうけれど……確認しないわけにはいかない。
 そのぐらい重要なことだ。

「……あら、今回の件にご許可を出されたらしいエドアルド様ではございませんか。 ーー……遅いご到着ですが……ご招待なんてしておりましたかしら……?」
「許可……?」

 私の言葉を聞いたエドアルド様は訝しげに眉をひそめた。
 その返事が聞きたい言葉では無かったため、ツンとそっぽを向きジーノに視線を流した。
 その仕草で、説明する気などさらさらないと理解したジーノさんが、軽く頭を下げながらエドアルド様に説明の言葉をかけた。

「ーーそちらの者は武装集団を領地に入れても、エドアルド様が許可を与えてくれるはずだ、と……」

 そう言いながらジーノは、ドレスを泥で汚し、兵士に助け起こされているレベッカに視線を送った。

「まさか⁉︎ そのようなことを私が許すわけが無いでしょう⁉︎ ーーこの件は当家とうけからも男爵家へ抗議するつもりです」
「そんな⁉︎ だってその女はっ!」

 レベッカは、そう声を上げながらエドアルド様に取りすがろうとしたが、バジーレ家の護衛とーー今度はインザーギ家の兵士もレベッカを止めていた。

「ーーそのお言葉……信用してもよろしいのかしら?」

 念を押すように、もう一度確認を取る。
 ーー今の私の立場で、滞在している領の領主とやり合うだけの力はない……
 痛い目を見たくないのなら言質程度は取っておかないと……

「もちろんだ」

 右手でトントンと左胸ーー心臓を叩きながら力強くうなずくエドアルド様。
 ーーこれは騎士の誓いの合図だ。
 伯爵なのだから貴族的な誓いでもよかったような気もするけれどーー……見事なまでにさまになっていますし……些細な違いですわよね……?
 こういうのを“誤差”というのでしょう⁇

「そう……ですか。 ーーなんだか先程はひどい態度を取ってしまい、失礼いたしました」
「ーー……とんでもございませんとも」

 ニコリと笑いながら答えたその顔面にに、身体の中で渦巻いていた怒りが、しゅるしゅると解けて消えていくような気がした。
 そして同時にふわふわとした浮遊感も高揚感も萎んでいくのだったーー
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