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「あー……疲れた……」

 遊び疲れ、のどが乾いたーと、言い出した子供たちと別れ、私は再びジーノさんやメイドさんたちの元へと戻ってきていた。

「ーー何もあそこまでされませんでも……」

 ジーノさんが苦笑まじりにそう言って、冷たい果実水を差し出してくれる。
 私はそれを受け取り、グビグビッと喉を潤すと、肩をすくめながら答えた。

「実はーーこうやって大はしゃぎするの……憧れてたり?」
 「……そうなのですか?」
「男の子だったら多少は許されてたんですけど、私は……ーーだからこうやって、思いっきり遊ぶの憧れだったんです」

 これは本当。
 私の中にあるイルメラの記憶の中に、侯爵家の庭で、大声をあげながら笑い転げている兄弟たちを、お屋敷の中から眺め、羨ましがっているものがあった。
 ……イルメラは大声を出すのも、転げ回るのも“はしたない”と許されなかったし、なんなら天気がいい日に日傘もなく外に出るなんて、白い肌がよしとされている貴族のご令嬢としては、絶対な禁止事項だった。

「お嬢様……」

 私の寂しさが伝わってしまったのか、ジーノさんまで眉を下げて、しょんぼりとしてしまった。

「ーーでもここで子供たちと遊んでるだけなら、みんな「しょうがないなぁ……」って大目に見てくれるでしょ? ーーお母様たちはここにいないし⁇」

 湿っぽくなってしまった空気を買えるように、冗談めかして明るく言い放つ。

「……ーー限度はございますが……その通りかと」

 その思いすらきちんと伝わったのか、ジーノも、悪戯いたずらっぽくニヤリと笑うと、大きく頷いてくれた。

「ふふっ なので私は子供の頃の夢を叶えます! あ、お母様たちには内緒ですよ?」

 人差し指を口元に当てて笑って見せた。
 ーー本当にやめてね? 今お母様の機嫌を損ねるの、生活費の減額に直結するからね……⁇

「かしこまりました」

 私の心配をよそに、ジーノさんはクスクスと笑いながらそう言って、うやうやしく頭を下げた。



「姉ちゃま怪獣やってぇー?」

 来てくれたご近所さんたちへの挨拶回りの途中で、再び子供たちの襲撃に遭う。

「えー⁉︎ まだ休憩だよぉー。 もう少しだけ待ってー?」
「ええー⁇」
「えええー⁇」

 抱きついて来た女の子と見つめ合いながら、首を左右に傾け合う。

 ーーなんだこの愛くるしい生き物は⁉︎

 ……やってやろうじゃねぇか……
 まだ挨拶回り終わってないけど、別にいいと思います!

 私、この子たちと遊ぶ‼︎

  ーー私が、そんなことを固く誓った、そんな時だった……

 ガーデンパーティーという事で、開けっ放しだった、このお屋敷の正門のほうが急に騒がしくなり、武装した見慣れない集団が、うちの庭の中になだれ込んで来たのだったーー
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