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みなさんのおかげで、あのお屋敷もここまでピカピカになれましたぁー! 本日はささやかではございますが、これまでの感謝の気持ちを込めて、そして、修理完了をしゅくしまして、このような会を開かせていただきました! 今日の日を迎えられたのは皆さまのお陰です! 本当にありがとうございました‼︎ カンパーイッ‼︎」

 私はそう言いながらグラスを高く掲げてみせる。
 そこかしこで「カンパーイ!」と掛け声が聞こえ、続いて楽しそうな話し声でザワザワと騒がしくなった。

 そんな緩い挨拶で始まった今日の会。
 ベラルディ侯爵家別邸の修繕完了を祝う為のパーティーです。

 とはいえ、ドレスコードもほとんど無いような立食メインのガーデンパーティだが、貴族が主催するパーティーとしてはかなりの緩さだ。
 ……でもさ? この会の趣旨しゅしが“お礼”と“ねぎらい”なんだから、お客様にマナーを押し付けるほうがマナー違反ってやつですよ。

 ーーたださぁ……?
 私はこう……おっしゃれーなガーデンパーティーにしたかったんだけど……
ーーなんか……小学校とかでやる豚汁とかを地域の方々と大鍋で作る行事的ななにかになってしまった気がしているよ……
 豚汁とおにぎりを配って、庭に布を敷いてその上で食べてもらっているのが原因か……?
 こんなことになるなら、おしゃれなんて捨てて焼きそばやお好み焼き、フルーツ飴の屋台とか出せばよかったかもね……?
  ーーお祭りに関する本もあったんだよなー。

「お嬢様!」
「あ、おかみさん」

 スピーチを終え、ジーノさんが用意してくれた席に戻った私に、駆け寄る人が一人。
 それはご近所にあるモンティー商会のおかみさんで、最近ビジネスパートナーになった方だ。

 私が作った化粧水や乳液、それからクリームなんかをひっくるめて、このおかみさんのお店で取り扱ってもらっている。

「今回は私どもの店を推薦頂きまして、誠にありがとうございます!」
「いえいえー。 私も代理で売ってくれるお店を探してたんで……」

 正直どこでも良かったんだけど、ここのおかみさんたちは初期も初期からお屋敷の修理を手伝ってくれていたし、ほがらかな人柄だということも分かっている。
 ーーそれに、ここから近い所のほうが買いに行くのも楽だしねー。

 実は、お母様たちにバラ撒いたのが原因なのか、化粧水などでお肌のケアをすることが社交界でちょっとした流行りゅうこうとなったらしい。
 当然、お母様たちはそれをエサに自分たちの派閥を拡大したり武器として有利に立ち回っていてーー
 それはつまり、必要となる化粧水たちの量も格段に増えるわけで……

 お母様たちから、送って欲しいとお願いされる手紙も増えた上に相手がねー……
 ーー母親と祖母二人に、兄弟の婚約者二人なわけで……
 全員を満足させられる量が作れない場合、誰をどの程度優遇ゆうぐうするのか? という非常にめんどくさい問題も発生したりする。
 それがなくても化粧水ばかり作り続ける毎日なんて、絶対イヤだし……

 私一人ではどう頑張っでムリだな……とさとった私は、すぐさまジーノさんに相談した。
 そして「元は宗教文字で書かれていた本に載っていたものですので、教会に製法を売ってはどうか?」という助言をもらった。

 ーーもらいはしたんだけど……
 教会にその打診をしたところで問題が発生した。
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