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 アルバ枢機卿の治療を終え、お米など欲しいものを伝えるたところ、うやうや恭しくおじぎをされたのち、なぜだか玄関へと案内される。

(……えっ? 私のお買い物まだ終わってないんだけど⁇ ーー着払い⁉︎ 当日持ち帰りじゃなくて、まさかの着払いなの⁉︎)

 困惑しつつエド様にエスコートされるがままに、出口へと進んでいく。
 教会の建物を出るとそこは中庭のような場所になっていて、わたしたちが乗ってきた馬車が置いてあるはずだったのだが……
 そこに馬車は無く、代わりに数多くの司祭やシスター、教会関係と思われる人たちが頭を下げて待っていた。

 ーーいったい何事⁉︎

「ーー謝礼の品々は、後日お屋敷へと届けさせて頂きます」

 私に枢機卿の治療を依頼した司祭が一番前に立っていて、深々と頭を下げながらそう言った。

「ーー謝礼……?」

 いや、私はお買い物に来ましたが……?

 困惑する私を置いてけぼりにしたままそう言った司祭は、少し頭を上げると、嬉しそうに顔を綻ばせつつ口を開く。

「今回のこと、どれだけの言葉を重ねようと感謝の気持ちには足りず、どれほど頭を下げようともあのような事態のお詫びには足りず……」

 いきなり、解読が必要なお貴族様な言葉使いするじゃん……?
 ーーえーと……
「治してくれて、マジでありがとう。  この感謝は言い表せねぇよ! でも倒れるほど治療させてマジ メンゴ」
 ……って感じかな?
 ーーなら私の答えとしては……

「お気になさらないで下さい。 私もれっきとした治癒師の端くれ。 当然のことをしたまでです」

 ーーくれるっていうなら全然貰っちゃうけど……ーーそうなると今さら追加しにくいな……? でも教会で買えるって聞いたし……さっきついでに言っとけばよかったなぁ。

「あと焼酎が欲しいんですけど……売ってもらえますか?」
「焼酎……お嬢様がおたしなみに?」
「いえ、飲むわけでは……ーーそれを使って肌を綺麗にするものが作れるんです。 私はそれが作りたくて……」
「なる……ほど……?」

 私の答えに、司祭はあごに手を当て、なにやら考え込み始めてしまう。

 ……あれ? 私なにか無茶振りしてしまいましたか……⁇

「ーーそれはジーノも知っているのか?」

 無言で考え込んでしまった司祭をよそに、エド様がたずねてくる。

「……ジーノさんですか? ……焼酎のことは今朝ルーナちゃんたち教わったんで……もしかしたらその話がジーノさんに伝わっている、かも……?」
「なるほど……?」

 私の答えに今度はエド様が考え込み始めてしまう。
 なんなの⁉︎  それ流行ってんの⁉︎

 ーー待って? もしかして焼酎って、買うのに年齢制限が存在してたりする⁇
 だってお酒だし、日本人が作ったものなんでしょ……?
 あっ、だからジーノさんの話? ジーノさんが知ってるならセーフ的な⁉︎

 ーーやばい。
 この状況下で焼酎くださいとか……
 私かなりの無茶振りしてるのかも……?

「ーーどの程度でしょう?」

 私が「焼酎はまた今度で……」と口にする直前、考え込んでいた司祭がパッと顔を上げ、真剣な顔つきでたずねてきた。

 ……なにか決意してるような顔してないこの人……?
 え、大丈夫⁇ 責任は自分が取ります! みたいな覚悟決めてるんじゃ無いよね……?
 
「あー……保存が効かないって聞いたので……えーとその……ご迷惑で無ければ一ビンいただいても……? あの本当、ご迷惑で無ければで……!」

 司祭の負担にならないように、そう提案してみたが、やはりここは断るべきだったかもしれない……

「……お持ちしろ」

 少しだけ緊張を含んだ司祭の言葉に、側に控えていた一人の男性がスススッと、教会の中へ入っていった。

 ーー帰ったらジーノさんにしっかり話して、この司祭様に絶対迷惑がかからないようにしないと……!
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