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「ーーそういえばご実家からの“便り”がようやく届いたとか?」

 甘い卵焼きに舌鼓したつづみをを打っていたエド様が、ふと思い出したように言う。

「そうなんです! 無事に手紙も回収出来て……」

 さっさと回収して来てくれたジーノさんにマジ感謝‼︎

「ーー……手紙?」

 事情を知らないエド様が、首を傾げつつ、視線で詳しい説明を聞いてくる。

 ……本当はお金の事とかペラペラ喋るのお上品じゃ無いんだけど……
 ーーま、今更でしょー。
 私、最初から給料の話とかしちゃってるし、エド様には馬車の中でそのあたりのことも喋っちゃってるしねー。

「……お爺様たちに、おこづかいをいただきたいとお手紙を……」
「ーーおこづかい、ですかー……」

 セストさんがお茶のカップに口を寄せながら、呟く。
 しかし、やはりご令嬢がこんな話をするのは珍しいのか、その頬はしっかりと引きつっていた……

「ええ。 その、親が出し渋るなら、その上かな? って。 どうせどっちもお金持ちですし、屋敷の1つや2つ直すくらいのお金、くれるんじゃないかなって……」

 別に私、恥ずかしいことなんかしてないもん!
 生きていくにはお金が必要で、私はまだ親の庇護下にあるんだから、親は私に生活費を払うのが道理なわけで、それをおこたったなら、その親が責任を持って支払うべきだと思う‼︎

 ーー大体、私にあんな仕打ちしておいて、生活費すら出し渋るとか納得出来るわけないしっ!
 ……手違いだったらしいけどー。
 ーー今回だけは信じてあげるけど、次に滞ったら、問答無用でお爺様たちに言い付けてやる!
 あ、お婆様たちの方がたくさん同情してくれそうだから、次はお婆様宛にしよーっと。

「ーー確か近所の者たちが手を貸し、順調に修復されているーーと聞いていたが……?」

 エド様は顎に手を当て、首を傾げると、下から見上げるように問いかけてきた。

 ーーヒュー! さすがイケメンっ! 絵になるわあ……

 あっ、鑑賞してたら変な顔されちゃった……ちゃんと答えなきゃ!

「……ええとーー確かにそうなんですけど、前までの予算では材料を買うのに精一杯で、せっかく手伝って下さっている皆さまに大した報酬もお支払いできず……正直なところ、結構な時間を拘束してしまっているので、いつまでも皆さまのご好意に甘えるわけには……」
「……あれ? でも食事は侯爵家の料理長が腕をふるってるはずですよね⁇」

 私の答えに、キョトンとした顔でセストさんが疑問を口にする。

「……それはそうですけど……お手伝いして、貰える物がちょっとした軽食のみとか……ーー今後のご近所付き合いを考えるレベルだと思いません……?」

 私なら間違いなく距離を置くレベル……
 お互い様っていうなら問題ないけど、侯爵家のお嬢様に「明日、うちの壁修理したいから手伝ってー」とか声をかけれる人なんていないじゃん……?

「力を使って、全ての者たちを治療していると聞いていたが?」

 そう言いながら、エド様が視線で、違うのか?  と聞いて来るが……
 治療したからなんだ?  って話じゃ無いですかね……?
 正直、ちょっとの怪我や病気なんて1回目の治療で終わっちゃってるし……

「治してはいますけど……ただ、散々コキ使われた後に疲労を取ってもらう事が、果たして報酬と言えるのかどうか……」
「むぅ……?」

 私の答えにエド様は首を傾げつつ、唸り声をあげる。
 なんだから納得いってなさそうですけど、普通に計算したら疲労でいえばプラマイゼロですけど、働いた時間は帰ってこないから、やっぱりマイナスになるんですよ……

「ーーでも普通、平民が回復魔法受ける機会なんてそうそう無いじゃないですか? 教会が聖者を派遣したって重病人やひどいケガしてる人でもなければ並ばせても貰えませんし…… だから、こう……ーー特別感はあるんじゃないですかね?」
「ーー特別感、ですかぁ……?」

 まぁ……ご近所さんたちの最初の反応から、セストさんの言いたい事は分かるけど……
 ーー今現在の私は、その回復魔法を大安売りしちゃってるわけで……それでもそのプレミア感は残っているのでしょうか……?
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