4 / 48
4
しおりを挟む
「……え?」
まさかそんな反応が帰ってくるとは思わず、頭を上げて首を傾げる私。
しばらくそのまま無言で見つめ合っていると、「では明日からお願いできますかぁ?」と、伯爵の後ろの方にひっそりとたたずんでいた、バレージ家の執事が愛想よくニコニコと笑いながら、私たちの会話に加わった。
明日からかぁ……引っ越しの荷物ーー……いや、イルメラの荷物そこまで多くないし……正直、私がいなくても平気だろうし……ーーヒマしてるより魔法使いたい!
「分かりましたーーあっ⁉︎」
答えた瞬間に、肝心なことを聞いていないことに気が付き、淑女らしからぬ声が私の口から飛び出した。
「ーー何かございましたか?」
そんな私の態度に、ピクリと少しの反応を見せつつも、笑顔を崩さずに執事がにこやかにたずねてくる。
「あの…………」
私は伯爵や執事をチラチラと見つめつつ、モゴモゴと言葉を濁す。
……本当はご令嬢がこういう場で、お金のこととか口にするのは、大変よろしくないんだけど……今のイルメラには代わりに聞いてくれる侍女も使用人もいない……ーーつまりは自分で聞くしかないわけで……
気がついてほしいなぁ……と、チラチラと伯爵たちを見つめてみるけど、二人とも首を傾げるばかりで、気がついてくれる様子はない……
ーーこれ私が聞くしか無いやつや……
「その……私のお給料とか……? あ、見習いって扱いですか? ーーそうしますと……無給ってこと、なんですかね?」
チラチラと二人の反応をうかがいつつ、モジモジと指を動かしながらたずねる。
「ーー……では、月50Gでは?」
私の言葉に納得したように、ふむ……と頷いた伯爵がそう聞いてくるが……
……ヤバい。 さらなる問題発覚だわ……
「50G……ですか?」
ーーどうしよう。
その金額が多いのか少ないのかイルメラ分かんない……
イルメラは正真正銘のお嬢様だから、お買い物する時お金出した記憶とか、この体の中に全く無いんですけど⁉︎
え、Gっていうのはゴールドってこと? ……それが50なんだから……ーーそこそこ……⁇
「……ご不満でしょうか?」
伯爵の質問に答えずに、再び、チラチラ、モジモジとしだした私に、今度は執事が首を傾げつつたずねてきた。
「ーー……あの、ごめんなさいね? そういうものの相場を知らなくって……」
お金のこと言い出したの私なのに、そもそもの相場すら知らなくててごめんね⁉︎
でもどれだけ記憶を探ってもお給料の話なんて聞いた事ないんだものっ!
「あー……兵の中には月25Gという者も……」
私の答えを聞いた執事は、ヒクリと動いた顔をごまかすように、ポリポリと人差し指で頬をかきつつ、それでも笑顔で答えた。
ーーつまり1Gって1万程度ってことにならない⁉︎
それを50⁉︎
私の力ってば弱々なのに⁉︎
「ーーえっ、私 そんなにもらえるんです⁉︎」
「ーー……働き次第では昇給も認めよう……」
あまりの好待遇に驚き、身を乗り出して大声を出すという、淑女としてあるまじき態度をとった私にも動じず、さらなる増加の可能性までもを提示してくださる、太っ腹な伯爵様。
「ーーすっ末永くよろしくお願いしますっ‼︎」
あまりの高待遇に、思わず立ち上がり、この喜びを少しでも伝えようと、腕を突き出しつつ握手を求めるため、駆け寄った私が見たものは……
ギョッと目を見開きつつも咄嗟に己を守ろうとサッと身を引いた伯爵の姿と、同じようにギョッと目を見開いた執事が、襲撃者から主人を守ろうと、私たちの間に無理矢理体を割り込ませる姿だった……
「ーーあの……ちがくて……」
自分が何をしでかしたか理解した私が、オロオロと視線と指先を彷徨わせつつ、誤解だということを伝えようとするが、二人がその警戒心を解いてくれるには、しばらくの時間が必要なようだった……
あの、驚かせて本当にごめんなさい……
ーーイルメラ反省。
まさかそんな反応が帰ってくるとは思わず、頭を上げて首を傾げる私。
しばらくそのまま無言で見つめ合っていると、「では明日からお願いできますかぁ?」と、伯爵の後ろの方にひっそりとたたずんでいた、バレージ家の執事が愛想よくニコニコと笑いながら、私たちの会話に加わった。
明日からかぁ……引っ越しの荷物ーー……いや、イルメラの荷物そこまで多くないし……正直、私がいなくても平気だろうし……ーーヒマしてるより魔法使いたい!
「分かりましたーーあっ⁉︎」
答えた瞬間に、肝心なことを聞いていないことに気が付き、淑女らしからぬ声が私の口から飛び出した。
「ーー何かございましたか?」
そんな私の態度に、ピクリと少しの反応を見せつつも、笑顔を崩さずに執事がにこやかにたずねてくる。
「あの…………」
私は伯爵や執事をチラチラと見つめつつ、モゴモゴと言葉を濁す。
……本当はご令嬢がこういう場で、お金のこととか口にするのは、大変よろしくないんだけど……今のイルメラには代わりに聞いてくれる侍女も使用人もいない……ーーつまりは自分で聞くしかないわけで……
気がついてほしいなぁ……と、チラチラと伯爵たちを見つめてみるけど、二人とも首を傾げるばかりで、気がついてくれる様子はない……
ーーこれ私が聞くしか無いやつや……
「その……私のお給料とか……? あ、見習いって扱いですか? ーーそうしますと……無給ってこと、なんですかね?」
チラチラと二人の反応をうかがいつつ、モジモジと指を動かしながらたずねる。
「ーー……では、月50Gでは?」
私の言葉に納得したように、ふむ……と頷いた伯爵がそう聞いてくるが……
……ヤバい。 さらなる問題発覚だわ……
「50G……ですか?」
ーーどうしよう。
その金額が多いのか少ないのかイルメラ分かんない……
イルメラは正真正銘のお嬢様だから、お買い物する時お金出した記憶とか、この体の中に全く無いんですけど⁉︎
え、Gっていうのはゴールドってこと? ……それが50なんだから……ーーそこそこ……⁇
「……ご不満でしょうか?」
伯爵の質問に答えずに、再び、チラチラ、モジモジとしだした私に、今度は執事が首を傾げつつたずねてきた。
「ーー……あの、ごめんなさいね? そういうものの相場を知らなくって……」
お金のこと言い出したの私なのに、そもそもの相場すら知らなくててごめんね⁉︎
でもどれだけ記憶を探ってもお給料の話なんて聞いた事ないんだものっ!
「あー……兵の中には月25Gという者も……」
私の答えを聞いた執事は、ヒクリと動いた顔をごまかすように、ポリポリと人差し指で頬をかきつつ、それでも笑顔で答えた。
ーーつまり1Gって1万程度ってことにならない⁉︎
それを50⁉︎
私の力ってば弱々なのに⁉︎
「ーーえっ、私 そんなにもらえるんです⁉︎」
「ーー……働き次第では昇給も認めよう……」
あまりの好待遇に驚き、身を乗り出して大声を出すという、淑女としてあるまじき態度をとった私にも動じず、さらなる増加の可能性までもを提示してくださる、太っ腹な伯爵様。
「ーーすっ末永くよろしくお願いしますっ‼︎」
あまりの高待遇に、思わず立ち上がり、この喜びを少しでも伝えようと、腕を突き出しつつ握手を求めるため、駆け寄った私が見たものは……
ギョッと目を見開きつつも咄嗟に己を守ろうとサッと身を引いた伯爵の姿と、同じようにギョッと目を見開いた執事が、襲撃者から主人を守ろうと、私たちの間に無理矢理体を割り込ませる姿だった……
「ーーあの……ちがくて……」
自分が何をしでかしたか理解した私が、オロオロと視線と指先を彷徨わせつつ、誤解だということを伝えようとするが、二人がその警戒心を解いてくれるには、しばらくの時間が必要なようだった……
あの、驚かせて本当にごめんなさい……
ーーイルメラ反省。
0
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する
春夏秋冬/光逆榮
恋愛
クリバンス王国内のフォークロス領主の娘アリス・フォークロスは、母親からとある理由で憧れである月の魔女が通っていた王都メルト魔法学院の転入を言い渡される。
しかし、その転入時には名前を偽り、さらには男装することが条件であった。
その理由は同じ学院に通う、第二王子ルーク・クリバンスの鼻を折り、将来王国を担う王としての自覚を持たせるためだった。
だがルーク王子の鼻を折る前に、無駄にイケメン揃いな個性的な寮生やクラスメイト達に囲まれた学院生活を送るはめになり、ハプニングの連続で正体がバレていないかドキドキの日々を過ごす。
そして目的であるルーク王子には、目向きもなれない最大のピンチが待っていた。
さて、アリスの運命はどうなるのか。
結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤
凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。
幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。
でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです!
ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる