1,038 / 1,038
1036
しおりを挟む
「ーーそれに今日はちょっと予定が押してるから……そんなことしてると、本当にスフレが食べられずに帰ることになるかも……」
「それは……」
自分の言葉に悲しそうな表情になったリアーヌを安心させるように微笑みながらゼクスは更に言葉を重ねた。
「ーーこれってすごい偶然なんだけどね? あの店、うちとやりとりがある店でね? だからその繋がりでそれとなく確認してみるよ。 更生してればそれでおしまいだし、騙されそうになってたなら、きっとそれで対処できると思う」
「ーーなら安心ですね⁉︎」
「うん。 だから安心してスフレ食べに行こう?」
「はい! ーーあ、あの二人の手口はナンパを装って品物なんかを売りつける、デート商法ってヤツです! ってことも伝えてあげてください!」
「ーー分かったよ」
そう答えながらゼクスは心の中で(なるほど……? 君の中ではそういう話になってたんだね……?)と考えながら、。リアーヌの隣を歩いていく。
一瞬目があった騎士は、ゼクスがリアーヌになにかを仕掛けたのではないか? と疑っていたようだったが、その考えをリアーヌに告げることはないだろうと、胸を張って堂々と歩き続けた。
「ーーそういえばもうすぐいっぱいになっちゃいますね?」
スフレを堪能し、馬車に戻るまでの帰り道。
リアーヌは文具店のガラス窓の向こうに並んだスクラップブックを見つめ、思い出したように言った。
リアーヌとゼクスが交換しているスクラップブックの台紙の残り枚数があと少しで終わってしまうことを思い出したのだ。
(一旦バラバラにすれば、中の台紙を増やすことも出来るけどーー……なぜか最近のトレンドは『私たち今三冊目なの!』『凄いわね! 私たちはまだ二冊目なの』とかいう、どれだけ多くスクラップブックを交換しあったか? だからなぁ……ーーそのために最近の人気は小さくて台紙の数が少ないヤツらしいし……)
「ーーまだ無くならないから、また後で選ぼう?」
「え……でも、ここーー」
売ってますけど? という言葉をリアーヌが発する前にゼクスが遮るように言葉を続ける。
「俺に他の店で買ったスクラップブック持ち歩けって言ってる? 学園近くの店なんか、ほぼスクラップブック専門店みたいな品揃えしてるのに⁇」
「ーー考え無しでした……」
「分かってもらえたらそれでいいよ。 明日の放課後でも買いに行く?」
「はい!」
「……ーーこれから先も俺と何冊も何冊も交換し続けてくれる?」
「……いいですけど?」
「ーー……これからたくさん、色々なところに行ったり、一緒に楽しいことしたりして、たくさんの思い出を作っていきたいんだ。 リアーヌと」
◆
ゼクスはスクラップブックを絡め、甘い言葉をかけていた。
リアーヌはいまだにキョトンと首を傾げていたが、それをすぐそばで聞いていた騎士たちは、無表情を貫きながらも口をもにゅっと動かし、甘酸っぱい空気をやり過ごそうとしていたので、ゼクスの伝え方には問題が無いようだった。
「ーーああ! はい! これからもたくさん美味しいもの食べに行きましょうね!」
「うん。 それだけじゃなくてね……?」
「ーーあっ アウセレですか⁉︎ そうですよね! あそこの料理美味しいですもんね」
「ーーうん。 リアーヌが好きなもの、一緒にたくさん食べに行こうね?」
諦めたようにニコリと微笑んだゼクスの耳には「ーーはい!」というリアーヌの嬉しそうな元気な返事と、くふ……という騎士たちの噛み殺したような笑い声が聞こえていたのだったーー
しかしリアーヌの笑顔を見つめ返すゼクスの顔は幸せそうで、そのまま楽しそうに寄り添いながら馬車まで歩いていく。
ーー運命的な出会いでもなく、物語のような恋でも無かったのかもしれない。
打算も多々含まれた縁組で……真実の愛とは呼べない婚姻なのかもしれない。
しかしーーこの二人は、お互いが相手だったからこそ、いつでも自分らしく自然体でいられるのだろう。
そして、それを“幸せ”と呼ぶのなら、
『それから二人は、ずっと幸せに暮らしましたとさ』
なんて、物語のような言葉で締め括られる人生か待っているに違いないーー
めでたし、めでたし♡
「それは……」
自分の言葉に悲しそうな表情になったリアーヌを安心させるように微笑みながらゼクスは更に言葉を重ねた。
「ーーこれってすごい偶然なんだけどね? あの店、うちとやりとりがある店でね? だからその繋がりでそれとなく確認してみるよ。 更生してればそれでおしまいだし、騙されそうになってたなら、きっとそれで対処できると思う」
「ーーなら安心ですね⁉︎」
「うん。 だから安心してスフレ食べに行こう?」
「はい! ーーあ、あの二人の手口はナンパを装って品物なんかを売りつける、デート商法ってヤツです! ってことも伝えてあげてください!」
「ーー分かったよ」
そう答えながらゼクスは心の中で(なるほど……? 君の中ではそういう話になってたんだね……?)と考えながら、。リアーヌの隣を歩いていく。
一瞬目があった騎士は、ゼクスがリアーヌになにかを仕掛けたのではないか? と疑っていたようだったが、その考えをリアーヌに告げることはないだろうと、胸を張って堂々と歩き続けた。
「ーーそういえばもうすぐいっぱいになっちゃいますね?」
スフレを堪能し、馬車に戻るまでの帰り道。
リアーヌは文具店のガラス窓の向こうに並んだスクラップブックを見つめ、思い出したように言った。
リアーヌとゼクスが交換しているスクラップブックの台紙の残り枚数があと少しで終わってしまうことを思い出したのだ。
(一旦バラバラにすれば、中の台紙を増やすことも出来るけどーー……なぜか最近のトレンドは『私たち今三冊目なの!』『凄いわね! 私たちはまだ二冊目なの』とかいう、どれだけ多くスクラップブックを交換しあったか? だからなぁ……ーーそのために最近の人気は小さくて台紙の数が少ないヤツらしいし……)
「ーーまだ無くならないから、また後で選ぼう?」
「え……でも、ここーー」
売ってますけど? という言葉をリアーヌが発する前にゼクスが遮るように言葉を続ける。
「俺に他の店で買ったスクラップブック持ち歩けって言ってる? 学園近くの店なんか、ほぼスクラップブック専門店みたいな品揃えしてるのに⁇」
「ーー考え無しでした……」
「分かってもらえたらそれでいいよ。 明日の放課後でも買いに行く?」
「はい!」
「……ーーこれから先も俺と何冊も何冊も交換し続けてくれる?」
「……いいですけど?」
「ーー……これからたくさん、色々なところに行ったり、一緒に楽しいことしたりして、たくさんの思い出を作っていきたいんだ。 リアーヌと」
◆
ゼクスはスクラップブックを絡め、甘い言葉をかけていた。
リアーヌはいまだにキョトンと首を傾げていたが、それをすぐそばで聞いていた騎士たちは、無表情を貫きながらも口をもにゅっと動かし、甘酸っぱい空気をやり過ごそうとしていたので、ゼクスの伝え方には問題が無いようだった。
「ーーああ! はい! これからもたくさん美味しいもの食べに行きましょうね!」
「うん。 それだけじゃなくてね……?」
「ーーあっ アウセレですか⁉︎ そうですよね! あそこの料理美味しいですもんね」
「ーーうん。 リアーヌが好きなもの、一緒にたくさん食べに行こうね?」
諦めたようにニコリと微笑んだゼクスの耳には「ーーはい!」というリアーヌの嬉しそうな元気な返事と、くふ……という騎士たちの噛み殺したような笑い声が聞こえていたのだったーー
しかしリアーヌの笑顔を見つめ返すゼクスの顔は幸せそうで、そのまま楽しそうに寄り添いながら馬車まで歩いていく。
ーー運命的な出会いでもなく、物語のような恋でも無かったのかもしれない。
打算も多々含まれた縁組で……真実の愛とは呼べない婚姻なのかもしれない。
しかしーーこの二人は、お互いが相手だったからこそ、いつでも自分らしく自然体でいられるのだろう。
そして、それを“幸せ”と呼ぶのなら、
『それから二人は、ずっと幸せに暮らしましたとさ』
なんて、物語のような言葉で締め括られる人生か待っているに違いないーー
めでたし、めでたし♡
19
お気に入りに追加
372
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説

愛しくない、あなた
野村にれ
恋愛
結婚式を八日後に控えたアイルーンは、婚約者に番が見付かり、
結婚式はおろか、婚約も白紙になった。
行き場のなくした思いを抱えたまま、
今度はアイルーンが竜帝国のディオエル皇帝の番だと言われ、
妃になって欲しいと願われることに。
周りは落ち込むアイルーンを愛してくれる人が見付かった、
これが運命だったのだと喜んでいたが、
竜帝国にアイルーンの居場所などなかった。

私には必要ありません
風見ゆうみ
恋愛
ユーザス王国には二人の王女がいた。姉のラムラは見目麗しく穏やかで、国民から愛されていたが、妹の私は違った。
姉の婚約者は隣国の王太子で、彼は幼い頃から人前には出なかったため、容姿が悪いのだと決めつけられ『怪物王子』と噂されている人物だった。姉が彼の元に嫁入りすることになった二日前のこと。姉を愛する両親の策略で私の婚約者と姉は関係を持ち、私が代わりに怪物王子の元に嫁ぐことになる。
昔の私は家族や婚約者に愛されたかった。でも、そんな気持ちは今の私には必要ありません。

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)

都合のいい女は卒業です。
火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。
しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。
治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。
どちらが王家に必要とされているかは明白だった。
「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」
だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。
しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。
この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。
それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。
だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。
「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」

婚約者に嫌われているようなので離れてみたら、なぜか抗議されました
花々
恋愛
メリアム侯爵家の令嬢クラリッサは、婚約者である公爵家のライアンから蔑まれている。
クラリッサは「お前の目は醜い」というライアンの言葉を鵜呑みにし、いつも前髪で顔を隠しながら過ごしていた。
そんなある日、クラリッサは王家主催のパーティーに参加する。
いつも通りクラリッサをほったらかしてほかの参加者と談笑しているライアンから離れて廊下に出たところ、見知らぬ青年がうずくまっているのを見つける。クラリッサが心配して介抱すると、青年からいたく感謝される。
数日後、クラリッサの元になぜか王家からの使者がやってきて……。
✴︎感想誠にありがとうございます❗️
✴︎ネタバレ見たくない人もいるかなと思いつつタグ追加してみました。後でタグ消すかもしれません❗️
✴︎カクヨムにも掲載中です

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。
するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。
だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。
過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。
ところが、ひょんなことから再会してしまう。
しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。
「今度は、もう離さないから」
「お願いだから、僕にもう近づかないで…」

名門の落ちこぼれですが、実家を出ようと思います。
兼望也泰
ファンタジー
名門の汚点と呼ばれ、耐え切れずに実家から逃げたメルは遠くの街で冒険者になる。名家の姓を持つ彼女は簡単にパーティに入れてもらえた。しかし、パーティ加入の翌日。ある機械が発表された。「ステータス計測機」。客観的に能力値を計測できる優れものだ。冒険前に測ってみたところ、ほとんどのステータスが最低値であることが判明してしまう。冒険に出る間もなくクビにされ、罵倒を受けて彼女は意気消沈する。
新しいパーティに入ることもできず、実家に戻ることもしたくない彼女は1人で簡単な依頼を受ける。しかし、安全なはずの依頼でドラゴンに出くわす。万事休すかと思われたが、メルは勝利して帰還する。なぜなら、ステータスは低くても能力は最強だから。
感想貰えると嬉しいです!
****
3/15 HOT女性向け4位、ファンタジー2位達成★
ありがとうございます😢
3/16 ファンタジー1位
ほんっとうに、ありがとうございます

俺を殺すはずの攻略対象との間に子どもを授かりました。
田鴫
BL
息子であるリアンを溺愛する主人公デリック。彼はただ息子と二人でのんびり生活を楽しみたいだけなのだがそうはいかなかった。若かりし頃のデリックと身体を重ねたアルノール、通称『ヒロイン溺愛botアルノール・ヴェーデルラ』はデリックに酷いほどの執着を見せた。
ヒロインを愛するはずの男の愛を素直に受け入れられない主人公デリックと執着心マシマシ公爵アルノール、そんな二人の間に生まれた息子のリアン、彼らが家族になるための御話だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
異世界転生ならタグ付けてください
わざわざ検索避けしてるのに
更新を楽しみに、読ませていただいてます。
最近のお気に入りで、気づけばもう、5回ほど読み直しております(笑)
物語は、不穏な空気が流れておりますね。
続きが、ヒジョーに気になるところですが・・・
大好きな、リアーヌとゼクスの幸せ領地経営を、何の憂いもなく、また、見たいものです。
楽しみに、待ってますー!
いつも楽しく読んでいます。今度のパーティーで、お久しぶりですって言ってもらえるかな……と、笑ってしまいました。
(´・∀・`)