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「リアーヌ! あっちの店にも行きましょう⁉︎」
お付きのメイドさんが会計を済ませてくれているのを待っているレジアンナが、瞳を輝かせながら窓の外を見つめて声を上げる。
しかしリアーヌはげんなりしながら首を振る。
「だから、あっちはラサロ通りになっちゃうから無理なんだって……」
「でもすぐそこじゃない。 きっと少しぐらい大丈夫よぉ……」
うるうると瞳を潤ませながら懇願するレジアンナに、少しの演技くささを感じつつも、大きなため息をついたリアーヌは諦めたように口を開いた。
「ーー聞いてくる」
「まぁ! さすがはリアーヌだわっ! お願いねー」
そんな素早い返しに、リアーヌは(やっぱり演技じゃん……)と内心でグチりながらも店の外に控える騎士に話を通そうと出口に足を向ける。
そんなリアーヌに駆け寄り、まとわりつくように楽しげに声をかける女子生徒が二人ーー
どちらもレジアンナのお取り巻きなのだが、今日はレジアンナから離れのびのびと思うがままに買い物を楽しんでいるようだった。
「リアーヌ様! ここでも先ほどの技を披露してくださいますの⁉︎」
キラキラとした瞳で尋ねられ、リアーヌは頬をヒクリと引きつらせながらも笑顔で答えた。
彼女たちのいう“技”とはリアーヌの『ねぎり』のギフトのことで、この店に入る前に少し立ち寄った露天商で、初めて友人たち披露し、大盛り上がりを見せていた。
のだが……今リアーヌたちが入っているのは、そこそこレベルの宝石を売る宝飾店。
腰を据え、膝を突き合わせてて交渉するのならまだしも、「友人たちと一緒にお買い物⭐︎」というライトな交渉で簡単に靡いてくれるような店には見えなかった。
「いやぁ……こういう店は値切りとかの交渉にあんまり応じてくれないかも……? ーーでも伝言が終わったらスキル使って見ますね?」
リアーヌの言葉に一種大きく肩を落とした友人たちだったが、慌てて付け加えた言葉に「期待していますわ!」と、満面の笑顔を取り戻していた。
ホッと息をつくリアーヌに友人たちはニコニコと楽しそうに笑いながら、さらに話しかける。
「ーーそういえばねぎり交渉自体はギフトの力ではないとおっしゃっていましたけれど……」
「あー……そうですね。 ギフトの力でしてくれそうな店が分かるだけで、交渉自体は地力で頑張るしかないです」
「ーーそれってつまり私たちにもできるってことかしら⁉︎」
どこか期待するような瞳で見つめられながら尋ねられた言葉に、リアーヌは脳内で目の前のお嬢様がたが必死に店員とねぎりの交渉をしている姿を想像していまい、ヒクリと頬をひきつらせる。
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