上 下
1,023 / 1,038

1021

しおりを挟む
 リアーヌはそう相槌を打ちながら、ユリアにほんの少しだけ同情していた。

(そもそも、周りにいた子たちに嫌がらせされて、一番仲良しだと思ってた子に騙されて階段から脅されて、あげくギフトまで……それで今度は周りにいた人たちからの手のひらクルー……ーー人によっちゃ自殺の可能性すらありますよ……ーー正直なところ、思うところが無いわけでもないけど……ーー元気でいるならそれでいいのかな……?)

 そう自分の中で納得したリアーヌ。
 そんな姉を横目にザームがゼクスに疑問をぶつけた。

「……村に帰って平気なのかよ?」
「ーーえ?」

 疑問の声を上げたリアーヌに向き直ったザームは、首を傾げながら言葉に続ける。

「だってそこ、フォルステル家の領地なんだろ?」
「ーー言われてみれば⁉︎」

 リアーヌはバッと勢いよくゼクスに顔を向け、意見を求めた。

「……そこは大丈夫だと思う。 少なくとも変な嫌がらせされないよう、ユリア嬢とその家族はパラディールのヤツが庇護下に入れたから」
「ーーフィリップ様が?」
「……ま、奪われてしまったとはいえ、彼女は守護のギフトを発露してくれた人だからね? あんまり蔑ろにするのも外聞が悪い。 ーーそれに、そうしてフォルステル家に圧をかけることで、嫌がらせしたいんだろ」
「……フィリップ様がフォルステル家に?」

(……なんかやり合ってたっけ? そことそこ……?)

 眉をひそめながら首を捻るリアーヌに、ゼクスはクスリと笑いながらさらに説明を続ける。

「直接は関係ないけど……そこにレジアンナ様が入ると関係性が見えてくるだろ?」
「あー……ーーレジアンナがユリアのこととかでフォルステル家をよく思って無い……?」
「と言うか……『養女にして学院に通わせるなら、最低限の教育を施すのは親の義務』だと、お怒りなんだって。 だからアイツはご機嫌伺いがわりに嫌がらせをしてるらしいよ」
「……なんてハタ迷惑なご機嫌伺い」
「否定はしないけど、結果それでユリア嬢やその村の安全はたもたれてる」
「ーー村……?」
「……伯爵家から見たら、相手は自分たちの言うことを何も聞かないままに暴走するだけして、最後には騙されて守護のギフトを奪われたヤツ、だからねぇ……?」
「ほぼ自業自得のような……?」
「ギフト無しの平民相手にそう割り切ってくれる貴族は少ないかなー? ま、パラディール後ろにがついたからちょっかいなんかかけないだろうけどね?」
「ーーナイスご機嫌伺い」
「はは。 結果、だけどねー?」

 二人の話がひと段落ついたところでザームが首を傾げながら口を開く。

「ーーつまりパラディールが出張ったからあの女と村は無事ってことだな?」
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!

寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを! 記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。 そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!? ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する! ◆◆ 第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。 ◆◆ 本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。 エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

処理中です...