成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 実際、リアーヌの身柄が抑えられてしまえば、取り返すのに苦労しただろうし、リアーヌの外聞に傷がつくような噂の一つや二つは流れてしまったかもしれない。
 そして家族の誰かの身柄が抑えられた場合、交渉次第でどんな結果になったか分からない。
 そして、リアーヌたちだけ逃げられたとしても使用人たちが動けなければ、解決までにもっと時間がかかっていたことは明白だったーー
 そしてそれらの未来は、豪運のギフトが無ければ、ヴァルムやオリバーをもっててしても避けられなかったであろうことを思い、その出鱈目な能力に肩をすくめていた。

「なら……今はもう平気よね? だってみんなが無事で、黒幕は捕まったんだから」

 リエンヌの不安そうな言葉に、ヴァルムが笑顔で安心させるように大きく頷きながら答える。

「その通りでございますとも。 ……念の為少しの間は様子を見ますが、もうあの家にこちらを気にかけているような余裕はございません。 そこまでの警戒は必要ないでしょう」
「……なのに様子は見んの?」

 ヴァルムの言葉にザームが首を傾げながらたずねる。
 それに困ったような表情で答えたのはオリバーだった。

「ーーならば、こっちにかまってるような場合じゃないんですが……家より恨みが勝つなら、ちょっかいかけてきますからねぇ……?」
「あー……そういう?」

 ザームの言葉にオリバーは困ったように微笑み続けることで返事代わりにした。
 いくらサージュたちが使用人たちの砕けた態度を受け入れていたとしても「バカな奴はどこの世界もいますから……」とは口にできなかったようだった。

「ーー今回の騒ぎも全て“無かったこと”として処理されるようです」

 姿勢を正したヴァルムが、サージュに向かいスッと頭を下げながら報告する。

「……実際、と言えばそうなんだろうが……」

 困ったように笑いながらそう答えたサージュだったが、その視線がラッフィーナート一家の姿を捉えた瞬間、肩をすくめながらバツが悪そうにさらに口を開く。

「いや、だいぶ迷惑はかけちまったんだけどな……?」
「……それは、その通りなのですがーー」

 ヴァルムもサージュの視線の意味を理解し、気まずげに視線を伏せたが、気を取り直したように顔を上げながら再び口を開く。

「先の襲撃事件を表沙汰にしないと決めた以上、この事件を裁判で争うのは難しく……」
「あー……そっか、裁判かぁ……ーーそりゃあるよなぁ?」
「……我が国は司法国家でございますれば……」

 ガシガシと頭をかきながらヘラリ……と笑うサージュに頭を下げながら答えるヴァルム。
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