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トイレを済ませ、全員が応接室に戻ってくると、部屋の中にはラッフィーナート家が用意した護衛が二人立っていた。
その二人はリアーヌたちが席に着くと同時に、ドアの前とカーテンで締め切られた窓の前に立って仕事を開始する。
見知らぬ護衛の姿に、リアーヌはこれから起こるかもしれない騒動を思い、緊張から来る喉の渇きを覚えた。
何度もお茶に手を伸ばしかけては(いや、これでいざって時トイレに行きたくなるのは……!)と、思い止まっていたーーそんなことが何回か続いた時ーー
ドアの外から聞こえてくる喧騒の質が変わった気がした。
「ーーザーム聞こえるか?」
同じくその気配を感じ取ったサージュが、ザームに声をかける。
感覚が優れているザームであれば扉で隔てられていても話している内容が聞こえているかもしれないと考えたようだった。
「……聞こえはするけど……」
「ーー難しいのか?」
「なんかすげえ長ったらしい名前言ってて、姉ちゃんが守護のギフトを強奪したのにしてないってウソ付いてる疑いがあるから、ここに姉ちゃんがいるか確認するからそこを退けって言ってる」
その言葉にアンナが控えめにたずねる。
「……長ったらしい名前、ですか? 王の命令、王族の名にてーーなどではなく?」
「いや? バルシュ……ッテとかなんとかの要請で来たって、正式な指令書は後から見せるって……」
ザームの言葉にハッとした顔つきになったアンナは、ゴクリと唾を飲み込みながら質問を投げかける。
「ーーバルシュミーデ侯爵家、でしょうか?」
「あー! そんな感じの家! 多分それ」
ザームの答えに、サージュたちが説明を求めるようにアンナに視線を向ける。
「ーー王妃殿下のご実家でございます」
「うわぁ……」
アンナの答えにリアーヌは思わずゲンナリとした声を上げていた。
(絶対王妃が黒幕じゃん……自分たちで下手うって失脚したんだから大人しく病気療養しててよぉ……)
「……それで? 今はどんな感じ?」
リエンヌがザームに話し合いの続きをたずねると、ザームは再びジッと扉越しに玄関の方を見つめながら喋り始めた。
「今は男爵が対応してる。 ここは商家の家とはいえ、男爵である自分が住んでる家でもあるから、正式な指令書が来るのを待つって……でもなんか、相手は「降爵家の要請に協力しないのですか⁉︎」とか「ご協力願う!」とか……なんか脅されてる……ーーでも、言葉だけだな」
「……今のところは、でしょう?」
ザームの話に不安そうに眉をひそめるリエンヌ。
しかしザームはフルフルと首を横にフリながらリエンヌの不安を否定した。
その二人はリアーヌたちが席に着くと同時に、ドアの前とカーテンで締め切られた窓の前に立って仕事を開始する。
見知らぬ護衛の姿に、リアーヌはこれから起こるかもしれない騒動を思い、緊張から来る喉の渇きを覚えた。
何度もお茶に手を伸ばしかけては(いや、これでいざって時トイレに行きたくなるのは……!)と、思い止まっていたーーそんなことが何回か続いた時ーー
ドアの外から聞こえてくる喧騒の質が変わった気がした。
「ーーザーム聞こえるか?」
同じくその気配を感じ取ったサージュが、ザームに声をかける。
感覚が優れているザームであれば扉で隔てられていても話している内容が聞こえているかもしれないと考えたようだった。
「……聞こえはするけど……」
「ーー難しいのか?」
「なんかすげえ長ったらしい名前言ってて、姉ちゃんが守護のギフトを強奪したのにしてないってウソ付いてる疑いがあるから、ここに姉ちゃんがいるか確認するからそこを退けって言ってる」
その言葉にアンナが控えめにたずねる。
「……長ったらしい名前、ですか? 王の命令、王族の名にてーーなどではなく?」
「いや? バルシュ……ッテとかなんとかの要請で来たって、正式な指令書は後から見せるって……」
ザームの言葉にハッとした顔つきになったアンナは、ゴクリと唾を飲み込みながら質問を投げかける。
「ーーバルシュミーデ侯爵家、でしょうか?」
「あー! そんな感じの家! 多分それ」
ザームの答えに、サージュたちが説明を求めるようにアンナに視線を向ける。
「ーー王妃殿下のご実家でございます」
「うわぁ……」
アンナの答えにリアーヌは思わずゲンナリとした声を上げていた。
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「……それで? 今はどんな感じ?」
リエンヌがザームに話し合いの続きをたずねると、ザームは再びジッと扉越しに玄関の方を見つめながら喋り始めた。
「今は男爵が対応してる。 ここは商家の家とはいえ、男爵である自分が住んでる家でもあるから、正式な指令書が来るのを待つって……でもなんか、相手は「降爵家の要請に協力しないのですか⁉︎」とか「ご協力願う!」とか……なんか脅されてる……ーーでも、言葉だけだな」
「……今のところは、でしょう?」
ザームの話に不安そうに眉をひそめるリエンヌ。
しかしザームはフルフルと首を横にフリながらリエンヌの不安を否定した。
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